FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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Accel Zero Order
第133話 新しい特異点


 光己がワルキューレズに頼んでモルガンとアルトリアを引っぺがすと、2人は皆の前で大人げなくキャットファイトをしてしまったことをちょっと恥ずかしく思ったらしく、表向きしおらしくなって争いをやめた。

 2人が落ち着いたところで、改めて質問を再開する光己。

 

「ええと。ブリテン征服と裏世界送りのことは後回しにしておいて、汎人類史のサーヴァントは異聞帯のブリテンには入れないってどういうことですか?」

「ふむ、ちゃんと私の話を聞いていたようですね。

 文字通りですよ。他の異聞帯はどうか知りませんが、ブリテンには今の私やアルトリアも含めて汎人類史のサーヴァントは入れないようになっているのです。

 現地で味方になる者はいるでしょうが、カルデアから連れて行けるのはマシュだけですね」

「むう……」

 

 どうやら異聞帯ブリテンは他の所と条件が違うようだ。何とも心細い話である。

 

「ですので今の内に暇を見て鍛えておくといいでしょう。

『異邦の魔術師』は何騎かのサーヴァントを戦闘中だけ一時的に召喚することはできていたようですが、訓練すればその人数を増やすこともできるでしょうし」

「……??」

 

 光己にはそんな芸当はできないし、オルガマリーたちから聞いたこともない。後で確認しておくべきだろう。

 

「妖精國の詳しい内情については、今話しても意味がありませんから実際に行く時になってから話すことにします。行くと決まったわけでもありませんし」

「んー、確かに行くとしてもだいぶ先の話ですからねえ」

 

 まあ確かに、そんな未来のことを話されても行く頃になったらほとんど忘れていそうである。モルガンの方が忘れることはあるまいし、その時になってからでいいだろう。

 

「あとそれから、『臣下』はともかく『夫として』ってどういうことですか?」

 

 「臣下」というのは気位が高くて召使い(サーヴァント)扱いされたくないからだろうが、自己紹介でいきなり「夫」なんてパワーワードが出て来た理由を知りたいのだ。

 彼女は確かに美人だが、理由も分からないまま夫扱いはさすがに受け入れづらい。雰囲気的に怖いし。

 

「別に深い意味はありませんよ。クリプターのベリル・ガットという男を、体裁上『夫』という扱いにしていましたから踏襲しただけのことです。

 こちらの概念でいうなら、政略結婚という感じでしょうか。むろん夫婦愛とかそういった要素は絶無でしたが」

「ほむ」

 

 光己が思ったよりは穏当な理由だった。そういうことなら話は分かる。

 

「ただ俺も体裁上とはいえリーダーしてる身ですから、臣下扱いは困るんですよね。

 で、実は俺も将来的には大奥王になる予定ですので、ここは王同士の同盟とか、そういう形でどうでしょう。もちろん政略結婚でもいいですが」

「大奥王」

 

 もらった知識にも妖精國にも存在しない謎ワードに、今度はモルガンが目をぱちくりさせる。

 ロクなものではなさそうなのは語感から分かるが、まあ初対面でそこまで深く突っ込むこともない。元の話を先に進めることにした。

 

「では夫ということで。

 しかしこれは困りましたね」

「……何がですか?」

 

 また困り顔をしたモルガンに光己がそう訊ねると、女王陛下はチラッとアルトリアの顔を流し見てから話を始めた。

 

「現界した時に得た知識によれば、汎人類史では私が悪玉でアルトリアが善玉ということになっているようですね。それだとどうせブリテンの王配(女王の配偶者)になるのなら、相手は私より彼女の方がいいとあなたが思っても仕方ありません」

「あー、それは」

 

 確かにそれはなくもない。モルガンはどうしようというのだろうか?

 

「ですので、試用期間を設けることにしました。

 つまり世間の印象がどうであれ、事実としてはアルトリアより私の方が意欲も人格も力量も、ついでに容姿も妻としての気配りもはるかに上だということをあなたが理解するまで、先ほどの要求は保留にしようということです」

「こ、この駄姉ーーーーーッ!!」

 

 アルトリアがまた激昂してつかみかかろうとしたが、スルーズが羽交い絞めにしたのでキャットファイトにはならずにすんだ。

 モルガンはそちらを見もせずに話を続ける。

 

「そういうことでどうですか?」

「えーと、さしあたっては普通にサーヴァントとして協力してくれるということですね。

 それじゃよろしくお願いします」

「ええ、こちらこそ。

 これであなたは私の夫で同盟者でマスターなのですから、今後は敬語を使う必要はありません。あなたがリーダーなのも承知していますから、指示には耳を傾けます」

「……うん、ありがとう」

 

 モルガンがわりと話が分かる様子なのは、自分で言ったようにアルトリアを意識しているからだろう。

 光己は交渉が何とか成功したことにほっと深い深ーい安堵の息をつきつつ、モルガンと握手して友好の意を示したのだった。

 

 

 

 

 

 

 こうしてモルガンも無事仲間入りしたので、光己は他のサーヴァントたち、あと幹部組にも自己紹介してもらうことにした。

 モルガンの方は順番にそれを聞いていくわけだが―――。

 

(サーヴァントの人数が多いのはともかく、アルトリアが5人もいるなんて聞いてなかったぞ!?

 そんなに側面が多いのかこの駄妹は)

 

 これには女王もびっくりである。

 青の彼女は汎人類史の生前のアルトリアそのものだったし、白い彼女の純真さとひたむきさは妖精國で会ったアルトリアを思い出させる。黒い彼女はむしろ今の自分に似た感じだ。

 いやこの3人はまだいい。4人目はサーヴァントユニヴァースなんて聞いたこともない謎世界出身で名乗りも謎のヒロインとか何者だ。頭の中身はお軽そうで、そのくせ武器は宇宙のロンゴミニアドとかわけが分からん!

 最後の1人は妹のくせに見た目姉より年上で、しかもこの貴婦人的かつ包容力ありそうな雰囲気と雄大な胸部はどうだ。それにマスターとはちょっとした会話でも楽しそうで心が通じ合ってる感じだし、油断ならぬ強敵と思われる。

 ―――何しろモルガンは先ほどの発言とはうらはらに妻的スキルや花嫁力は全然ないので、そちら方面が強そうな相手には相性不利なのだ。

 しかし妖精國女王は不屈である。幸い時間はあるのだから、その間に勉強して追い抜けば良いのだ。

 今のところ青い彼女以外の4人はさほど敵意を示して来ないし。

 

「…………我が夫。さっきはアルトリアより私の方がはるかに上だと言いましたが、5対1ではさすがに無理がありますので、採点の仕方には配慮を要求します」

「そ、それはそうだな。うん、その辺は柔軟に取り計らうから」

 

 それでも5人の点数を合計されたら勝ち目は薄いので公正な審判を求めてみたところ、マスターはちょっと戸惑った様子ながらも了承してくれた。ものの道理というものが分かっているようで、これはモルポイント1点アップである。

 

「じゃ、次は施設の案内するよ。個室とか食堂とか、よく行く場所もあるしね」

「はい」

 

 この辺はいつも通りのルーチンだったが、その途中清姫が光己に話しかけた。

 

「あの、ますたぁ。人理修復が終わったらますたぁが裏世界に放逐されるというのは本当なのですか?」

 

 自称でも妻ならば当然気になる話だが、光己にも確かな答えはできない。

 

「うーん、それはなぁ。純血の竜種だったら99%放逐になるんだろうけど、俺は生まれは人間だからな。なるかならないか分からないんだ。

 だからモルガンも『かも知れません』って言ったんだろうし」

「そうなのですか……」

 

 清姫が悲しげに目を伏せる。放逐が確定なのならまだ対処や心の準備のしようもあるのに、かも知れないというのはもっとタチが悪い。

 仮にも人類を救う(救った)者に対して、何とも情のない仕打ちではあるまいか。

 

「でもご安心下さい! 昨日も申し上げた通り、わたくしはどのような異界だろうとお供いたしますので!!」

 

 両拳をぐっと握って、明るい顔をつくって光己を励ます清姫。狂化EXの危険な少女ではあるが、夫(予定)を想う気持ちは本物なのだ。

 

「…………」

 

 その話の間モルガンが沈黙していたのは光己の考察に同意である旨を示すものだが、頭の中では(私以外のバーサーカークラス……不要だが、私の実力はまだ見せていないのだから、解雇を求めるのは時期尚早か)なんてことを考えていたりする。

 

「仕方ありませんねー。寂しがり屋のマスターのために私もついて行ってあげますから、激しく感謝して下さいね」

「もちろん私も行きますのでー! お酒があって戦える敵がいればなお良いですね!」

「いっそユニヴァースに来ませんか? マスターくんなら私が養ってもいいですよ」

 

 そこにカーマと景虎とXXも尻馬に乗ってきた。メンタルパンピーな元一般人としては感に堪えない。

 

「ありがと4人とも。放逐になるのは確かに嫌だけど、もしそうなっても4人も来てくれるなら寂しくないかな」

「異界ならヴァルハラがお勧めだよ! 仲間大勢いるし、お酒も戦いも山ほどあるから、特に景虎にとっては理想郷じゃないかな」

 

 ワルキューレ3人娘は私欲というか仕事で言ってる感があるから感動は薄いけれど。

 

 

 

 

 

 

 その後はサーヴァントの一時召喚の件をダ・ヴィンチに話して研究を依頼したり、モルガンが光己のヴァルハラ式トレーニングを見て「鍛えておくといいとは言いましたが、そこまでしろとは言ってませんよ」と少々引いたり、モルガンとアルトリアが口ゲンカをして騒いだりしたが、おおむね平穏におさまって。しかし翌日の夕方頃、光己とサーヴァントたちは例によって会議室に呼び出されていた。

 今日はカレンダーでは12月29日(火)で、今年はクリスマスも通常業務だったので年末年始は最低限の仕事以外はお休みということになっていたのだが、新たな特異点が発見されたとあっては仕方ないのだ。

 

「休みなのに新しい特異点なんてイレギュラー押しつけて悪いわね。でも貴方にしかできないことだから……」

「いえ、それは事務方さんも同じですから気にしてないですよ。でも新しい特異点って何なんですか?」

 

 申し訳なさそうにしているオルガマリーを光己はそう言ってなだめたが、事情は知っておきたい。特異点というのは魔術王が人類を滅ぼすために作った異界で、新規に増えるようなものではないと思っていたのだが。

 いや夢で戦国時代に行ったが、あれはあれで別の意味のイレギュラーだと思うし。

 

「言葉通りよ。人理が完全であれば特異点なんてそうそう発生しないんだけど、今は焼却されてるから不安定で、何らかの事情で発生してしまうこともある―――みたいなの。

 なにぶん類例のないことだから、100%正しい答えというのは出せないんだけどね」

「そうですか……」

 

 まあ確かにこんなことは人類史上初めてなのだから、予想してなかったことが発生するのも致し方ないことだろう。

 オルガマリーもエルメロイⅡ世たちも大変なものだと思う。

 

「それで、その新しい特異点というのはどんな所なんですか?」

「それはもちろん説明するけど、その前にダ・ヴィンチちゃん。例の件について説明してあげて」

「例の件?」

 

 光己は軽く首をかしげたが、ダ・ヴィンチはそれに構わず話を始めた。

 

「一時召喚の件だよ。言われてみればサーヴァントの侵入を拒む特異点や異聞帯というのはあり得るから研究はするけれど、これはかなりの難題でね。一朝一夕ではできないから、しばらく待ってほしいということさ」

 

 できれば魔術に詳しそうなモルガンにも手伝ってほしいものだが、彼女はまだ来たばかりで友好を深めていないのでダ・ヴィンチは口には出さなかった。

 

「それとね。君はオケアノスでまた強くなったから、今回連れて行けるサーヴァントは6騎だ。

 それとジャンヌオルタがつくった短刀を持っていくのなら、2騎分の勘定になる」

 

 「白夜」はそれ自体が宝具級の業物の上、ジャンヌとジャンヌオルタを収納しているわけだから、2騎分で済むならむしろ御の字なのだった。

 

「申し訳ないとは思うけど、今この場にない袖は振れなくてね。

 今後も増強は続けるから、今回は勘弁してほしい」

「むうーー……でもまあ確かに、無理なものは無理ですね」

 

 ダ・ヴィンチたち技術班もサボっているわけではない。光己はあまり強くは言えなかった。

 

「それじゃ私からはこれだけだから、あとはエルメロイⅡ世に譲るよ」

「ふむ」

 

 特異点についての話は彼が担当であるらしい。

 

「というのも実は私はこの特異点……1994年の日本の冬木市で起こった聖杯戦争に『私がいた世界』で参加していてね。説明と案内を務めるには打ってつけというわけさ」

「……へえ!?」

 

 そう言われても光己やマシュにはまだよく分からなかったが、アルトリアは一瞬で理解したらしくギラリと底意がありそうに眼を光らせた。

 

「ほほぅ、まさかあの第四次聖杯戦争がここで特異点になるとは……。

 ならば私も行きましょう。あの紀元前の蛮族どもを聖剣のサビ……いえそんなことをしたら聖剣が穢れますからマスターに金ピカから財宝を奪ってもらってそれでやるべきか……もとい。現地の私を説得するのはマスターや貴方より私の方が適任ですからね」

「あ、ああ……貴女ならそう言うだろうと思っていた」

 

 Ⅱ世は頭脳派らしく、アルトリアの怨念めいた気迫にちょっとビビりつつも、彼女の発言自体は予測の範囲内のようだった。

 しかし光己にはやっぱりよく分からない。

 

「……? もしかして、その第四次聖杯戦争にはアルトリアも参加してたの?」

「はい。極めて不本意な結果に終わりましたが、あれはあれで良かったのだと思います」

 

 何しろ冬木の聖杯は「この世すべての悪」で汚染されていて、願いをかなえようとしたら最悪の形でゆがめた解釈をして大災害を起こす代物なのだ。従って今回は聖杯を持ち帰らず、現地で処分するという方針になる。

 もっとも仮に汚染されていなかったとしても、聖杯で歴史を変えるというのは魔術王がやっていることと同じで新しい特異点をつくってしまうので、どちらにしてもアルトリアは現地のアルトリアの願いを諦めさせねばならないのだが。

 

「ですので今回は事前の勉強会はいりません。私とエルメロイⅡ世と、あと4人選抜したらすぐに行けます。

 僭越ながら私が推薦するとしたら、かの地にはジル・ド・レェがいますのでジャンヌたちを連れて行くと話がしやすいと思います」

「あ、ちょっと待って下さい。金ピカがいるんなら私も行きますよ。コスモギルガメス死すべしフォーウ」

「……ほむ」

 

 アルトリアとヒロインXXの自薦を聞いて、光己はこの度の人選について考えた。

 今名が挙がった5人にニューカマーのモルガンを加えるともう6人だ。そうするといつもの固定枠が入れられなくなる。

 ……いや今回はアルトリアとⅡ世が情報を持っているからルーラーとニンジャはいなくても良さそうだし、モルガンは大魔術師だそうだからワルキューレズの代役はできるだろう。

 つまりXXは現地で令呪を使って呼ぶことにして、代わりにマシュを入れればいいということか。

 

「それじゃアルトリアとⅡ世さんとお姉ちゃんとジャンヌオルタ、それにマシュとモルガンってことでいい? XXは特異点に着いたらすぐ呼ぶから。

 …………リリィとブラダマンテとスルーズと景虎は連続で留守番になって申し訳ないけど、何かで埋め合わせはするからさ」

 

 光己としては連続留守番という事態はいろんな意味で避けたいのだが、人数制限があるのでは致し方ない。頭を下げてそう言うと、4人とも彼に悪気がないのは自明なのですぐ分かってくれた。

 

「いえそんな、頭を上げて下さい! せっかく来たのに参加できないのは残念ですけど、事情は分かりましたから」

「でも次は優先枠に入れて下さいね!」

「そうですね、マスターの責任ではありませんし。埋め合わせは期待しますが」

「皆さんの言う通りですね。どうか気にしないで下さい」

 

「……うん、ありがと」

 

 やはりみんな好意的で物分かりもいいので、素人マスターとしては本当に喜ばしい。

 目尻が濡れて熱くなってきたので、慌てて腕で拭った。

 

「でも現代日本だと銃刀法があるから、白夜はいいとしてポルクスの剣は持っていけないよな。あれがないとギャラク〇アンエクスプ〇ージョンやれないんだけど。

 ……まあ仕方ないか。それじゃみんな、今回もよろしく」

「「はい!!」」

 

 こうして光己たちは第四次聖杯戦争という新たな戦場に乗り込むのだった。

 

 

 




 というわけで、次はイベント特異点になります。
 AZOになったのはせっかくエルメロイⅡ世がいるのですから出張らせたいのと、ローマで「おまえが隠し子になるんだよ!」されたりパンツを大公開させられたり、あまつさえ宿敵が召喚されたりしてお労しいアルトリアさんにさらなる案件を楽しんでもらおうという愉悦心からであります(ぉ


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