FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第142話 魔王参戦?

 話し合いが終わった後、カルデア一行は客室を男性用と女性用の2部屋貸してもらったのだが、寝る前の一休みをしている時光己はふと一案を思いついた。

 

「ジルを寝かせたままにしておくんだったら、雨生から取り上げた令呪は使っちゃってもいいんですかね?」

「そうだな。万が一に備えて1画は残しておいた方がいいが、あとの2画は使っても良かろう。

 しかし何に使うんだ?」

「はい、カーマを呼ぼうと思いまして」

 

 昨晩3画使ったが1画は復活したので、これでカルデアに残っているカーマか清姫をここに呼ぶことができるようになったわけだ。

 

「ふむ、それか……聖杯問答のために残しておきたい気持ちもあるが、明日になればまた1画増えるから問題ないか。

 それで清姫ではなくカーマを選んだ理由は?」

「あー、大したことじゃないんですがカーマも『魔王』ですから、王様問答の評論でもしてくれたら面白いかな、と思いまして」

「第六天魔王というのは人間世界の王や君主とは違うものだと思うが……まあ、清姫がいないと困る事情もないから構わんか」

「じゃあさっそく……いや、ここじゃなくてマシュたちの部屋でやるかな」

 

 軍師の許可は得たが、人数的には多数派の女性陣に無断でやるのはまずいだろう。光己は隣の女性部屋に行って彼女たちの同意を得てからやることにした。

 

「ああ、それもそうか」

 

 するとⅡ世も当然ながらついて来たので、最終的にサーヴァント全員同席の上でカルデア本部に連絡を取ることになる。

 マシュが通信機のスイッチを入れると、空中にスクリーンが現れオルガマリーの顔が映し出された。

 

《こんばんは。こんな時間に何か急ぎの用事かしら?》

「あ、所長。夜中までお疲れさまです。

 カーマを召喚したいので、呼んで下さいますか?」

《え? 昨日XXを召喚したばかりなのに?》

 

 令呪はまだ1画しか回復していないはずだ。召喚ができるアイテムでも入手したのだろうか?

 

「はい、ほかのマスターの令呪を分捕りましたので、それを使おうと思いまして」

《令呪を分捕ったって……貴方どんどんあさっての方向に成長していくわねえ》

 

 オルガマリーは感心したような呆れたような顔をしたが、光己の希望についてはすぐ承知してくれた。内線電話でカーマを呼び出すと、女神様がダッシュで管制室に現れる。

 なお彼女の霊衣は黒のキャミソールとホットパンツの上に紫色のパーカー、それに黒の帽子とブーツというコーディネートだ。見た目10歳くらいの彼女にはちょっと背伸びしたデザインに見える。

 

《そんなに私と一緒にいたいんですか? こんな子供をあてにして、仕方のないマスターですねぇー》

 

 スクリーンに映ったカーマはいつものように皮肉っぽいことを言ったが、見るからにそわそわして内心は丸分かりなのがとてもかわいかった。

 

「うん。実は明日『聖杯問答』という飲み会が開催されることになってて、それにアルトリアが出席して他の王様たちと王様論を一席ぶつそうだから、カーマに解説っていうか論評してほしいと思って」

《へ!?》

 

 これはロリ女神様にとって、ちと荷が重い要請だ。さすがに顔をしかめた。

 

《いえあの、第六天魔王というのはそういうものじゃなくてですね。王様論なんて出来ませんよ》

 

 王という称号がついてはいるが、支配とか統治といったことを司っているわけではない。

 というか「仏道修行を妨害する魔」に何を期待しているのだろうか、こののほほん顔のマスターは。多分アンチテーゼ的なものなのだろうけれど。

 

「うーん、それじゃ愛の神的にでもいいから」

《仕方ありませんねえ。そう大したことは言えませんが、それでいいなら》

 

 しかしそれでせっかくのお招きを取りやめにされてはたまらない。カーマが予防線は張りつつもそう言うと、光己はあっさり承諾した。

 

「うん、それじゃお願い」

《はい、ではいつものように『カーマちゃん愛してる、カーマちゃんの愛を下さいー!』って渾身の力で叫んで下さいね》

「俺がいつそんなこと言った!?」

「もう、ホントにシャイなんですからー」

 

 残念ながらマスターは愛を叫んではくれなかったが、寛大なる女神カーマは許してあげて、普通の召喚で彼の元に移動した。

 代わりに抱きついて、胸に顔をすりつけたりしてみる。

 

「んー、こうしてると気分いいですねー」

「うん、俺もだよ」

「えへー」

 

 すると彼も抱きしめてくれたので、もう少し体を密着させた。

 思い返せばずいぶん仲良くなったものだと思う。この前も、彼が異界放逐になったらついていくなんて大それたことを当たり前のように言ってしまったし。

 いやそれを後悔してるとか取り消すなんてつもりは全ッ然なく、自分の心境の変化に驚いているだけだが。

 

(……そういえば私、ずっとこの幼い姿のままでいますよね。マスターと同い年や年上の姿になったら喜んでくれる、とは思うんですけど)

 

 しかしそれをすると大人扱いになって甘やかしてもらえなくなるのが難点だった。いや姿を変えればメンタルもそれに応じたものに変わるのだが、こうして小さな妹みたいにべったり甘えられる上に、他のメンツにも多少のわがままは大目に見てもらえる今の環境には大変未練があった。

 彼をロリコン扱いしてからかうのは楽しいし。

 

「カーマ、どうかした?」

「あ、いえ。マスターはよくこんな性悪なロリ女神と仲良くできるなーって思っただけですよ」

 

 心が通じ合ったり分かり合えたりするという幸せには、感情や気分の変化を読まれやすくなるというデメリットがついてくる。カーマはとりあえず、光己の腕の中から離れて気を落ち着けた。

 

「それはそれとして、何か立派なお部屋ですけど今どうなってるんですか?」

「ああ、そこから説明すべきか」

 

 光己はカーマと、あと補佐役としてⅡ世とアルトリアをテーブルに招いて、備えつけのお茶を飲みながら冬木に来てからの経過を説明することにした。

 その序盤、ヴリトラを喰った辺りでカーマの額に縦線効果が20本ほど入る。

 

「あの……理屈は分かりますけど、もう少し考えて行動した方がいいと思いますよ。最後のマスターが頭ワルキューレじゃまずいでしょう」

 

 ヒルドたちが聞いたら多少の反論はあるだろうが、今は通信を切っているので問題はない。

 

「うん、確かにあれには問題あったと思うけど、今回は結果良しだから」

「何かいいことあったんですか?」

「んー、まあな」

 

 光己が次の流れとしてアルビオンに進化したことを話すと、カーマは今度はぷーっと頬をふくらませて露骨に拗ねた顔をした。

 

「えー、インドの竜を吸収したのにイギリスの竜になったんですか? そこは当然インドの竜、具体的には私に所縁があるマカラになるべきだったんじゃないですかね」

 

 マカラというのは古代インドの最高神ヴァルナの乗り物である竜というか怪魚っぽい生物で、カーマのシンボルでもある。カーマが光己の進化先として希望するのは当然だったが、それはさせぬとばかりにモルガンが割り込んだ。

 

「待て、我が夫の翼はおまえの影響によるものだと聞いたぞ。2度も干渉しようなどという贅沢は控えるのだな」

「むー、余計なお世話……というか、貴女こそいつまで()()マスターを夫扱いしてるんです?」

「無論、死ぬまで」

「政略結婚のくせによく言いますねー」

「契機は関係ないな。むしろその政略結婚のたった2日後に私に最も相応しい存在になってくれたのだから、運命の出会いとしか思えん」

「口だけは達者ですねこのやさぐれ女」

「気にするな、おまえにも成長の余地はある」

「どういう意味で言ってるんですかねー」

 

 なおこの2人、お互いに相手のことを「元は善良だったが酷い目に遭ってグレた」と見抜いており、しかもその傷をマスターが癒してくれている(くれるかも知れない)と思っている似た者同士である。

 カーマはモルガンの事情など知るよしもないが、モルガンは現界の時に得た知識でカーマの略歴を知っていた。

 カーマがグレたのはシヴァ神に殺されたからだけではなく、もう1つくらい理由がある……と思っているが、それを訊ねるほどの仲間意識は持っていない。

 

「ところで確か貴女も生前は王様でしたよね。王様問答には参加するんですか?」

「いや、私には別の役目があるから不参加だ。

 それに王の器、つまり君主として望ましいあり方なんてものは時代や地域や状況、果ては個人の主観によってさえ大きく違ってくるものだからな。全く違う生まれの者同士で優劣を競い合っても意味はない。

 聖杯にかける願いについても同様だな。どんなに大仰な、あるいはささやかな願いだろうと、当人にとってはそれが1番大事なのだ。比べても仕方なかろう」

「つまり勝つ自信がないからですか?」

「耳が悪いのか性格が悪いのかどっちなんだ?」

 

 2人とも同病相憐れむ気はないようだ……。

 

「まあいい。アルビオンは竜種の冠位だというから、これ以上の進化などないだろうからな」

「それはよござんしたねー」

「うむ」

「……」

 

 2人とも熱くなるタイプではないので、口ゲンカしてもテンションはむしろ下がるだけですぐ自然終了してしまうようだ。モルガンはさっきまで座っていたベッドに戻り、カーマも光己たちの方に向き直る。

 お茶を1杯飲んでのどを潤してから、光己に話の続きを促した。

 

「それで、どこまで聞いてましたっけ」

「俺がアルビオンになった所までだな。その後は日暮れまで街で時間潰してから、キャスターの根拠地の下水道に行ったんだよ」

 

 光己は人前でなければこの程度の口論にあれこれ言うつもりはないらしく、そのまま説明を始めた。

 

「んで紆余曲折あってキャスターは眠ってもらって、アインツベルン陣営のアイリスフィールさんとセイバーさんと同盟して今ここに至るわけだな」

「なるほどー。それでこの先はどうするんですか?」

「今日はこのまま寝るだけ。明日は日暮れになったらバーサーカー陣営の勧誘に行って、その後ここでさっき話した聖杯問答をする予定だな。その先はまだ未定」

「それじゃ明日は夕方までは暇なんですね。ずっととは言いませんけど、少しは遊んで下さいね。あとおやつも欲しいです」

「そうだな、それくらいの時間は取れるだろ」

「わーい」

 

 カーマは子供らしく無邪気な仕草で喜んだが、ふと気づいたことがあった。

 

「でも今までの話だと、今すぐ大空洞ってとこに行ってマスターなりアルトリアさんなりがビームぶっぱすれば事件解決するんじゃないですか?」

「……」

 

 そしてこちらも子供らしい無邪気で率直な問いに、アルトリアとⅡ世がものすごくバツ悪そうに顔を見合わせる。

 

「ま、まあまあカーマ! 確かにそうなんだけど、いろいろ手間かけてるのはあれだ、オケアノスでヘクトールとヘラクレスの気持ちを考えて魔神柱とメディアに手出ししなかった時みたいな、そういう英雄の心情に配慮したムーブってことでひとつ」

「…………マスターがそれでいいなら、私もいいですけどね」

 

 しかし幸い、理解があるマスターのおかげで丸く収まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 翌朝の朝食の後、光己はアインツベルン城の中庭を借りてトレーニングをしていた。

 ヴァルハラ式は部外者のレディーに見せるものではないので、今回は新スキルの「光のブレス」と「慣性制御」の練習である。モルガンに大きな的をつくってもらって、それに向かってブレスを吐いていた。

 

「コォォォォ……はぁっ!」

 

 光己が口の中に溜めた「力」を一気に吐き出すと、それは金色の光の奔流となって的にぶつかり、無色の衝撃波が広がった。

 今は威力よりコントロール重視の方針なので、かなり手加減しているから的は損傷していない。敵にダメージを与えるより味方にフレンドリーファイアしないことの方が大事だし、そもそも人様の屋敷の中なのだから全力を出すなんてもっての外である。

 

「うん、だんだん感覚がつかめてきたな」

「さすがですね我が夫」

 

 光己がうんうんと満足そうにごちると、モルガンも嬉しそうに相槌を打った。

 彼が吐いている光は、「彼女」が吐いていた光と全く同じではないがかなり近い。夫がアルビオンであることの証明がまた1つ増えて大変喜ばしかった。

 なおここにルーラーアルトリアがいたら、「私の宝具の光とも似ていますね」と感想を述べていたところだが、今ここにはいなかった。

 

「不思議な感じの光よね。境界にかかる虹、だっけ? 具体的にはどういうものなの?」

 

 するとジャンヌオルタがそう訊ねてきたが、光己もモルガンもそれは知らなかった。

 

「うーん、実は俺にも分からんのだな。普通の『光』だったら爆風とか出さないと思うから、単にドラゴンの魔力が光って見えてるだけなのかも」

「つまりただの魔力ビームってこと?」

「うん。もし『光』だったら、『境界』と『慣性』との合わせ技でレーザー核融合とかできたかも知れないけど」

「そんなものどこで使う気だ……」

 

 Ⅱ世が疲れた声でツッコミを入れたが、誰も聞いてはいなかった……。

 

「じゃあそろそろ慣性制御の方もやろうかな。モルガン、的ありがと」

「はい、どう致しまして」

 

 モルガンが的を消すと、光己は次のメニューに移るため彼が名づけたところの神魔モード、角と翼と尾を出した形態になった。

 

「!? や、やっぱりあの子一般人じゃなかったじゃない!

 逸般人どころか人間の枠からも外れてるわよ」

「あれほどの神性、そして魔性……人か竜か神か魔か、私にも彼の正体は想像がつきません」

 

 見学していたアイリスフィールとセイバーも驚愕と畏怖を隠せない。思い切り泡喰いつつも、彼らと同盟できた幸運を天に感謝した。

 そんな2人の視線の先で、彼はせっかく出した翼を羽ばたかせるでもなく、魔力放出で反動をつけるでもなく、ただ突っ立った姿勢のまま滑るように真横にスライド移動した。

 

「!?」

 

 次は速度をまったく変えずに真上へと飛び上がったかと思うと、同じ速さのまま直角に曲がったり、何の予兆もなく加速したり減速したりし始めた。さらには高速飛行から一瞬で停止したり、逆に停止状態からいきなり最高速になったりしている。

 明らかに物理的におかしい動きをしているが、人間はあんなことができるものなのだろうか。

 いや空を飛ぶ魔術は実際に存在するが、あの変態的な駆動はそれとは概念レベルで違うと思う。

 

「一部の幻想種は何か神秘的な力で空を飛ぶことができますが……あれの真似はできないと思います」

 

 たとえばイスカンダルが持っている戦車(チャリオット)は牽いている神牛の力で空を飛ぶことができるが、最高速度のまま急カーブしたら牛は遠心力で転倒するだろうし、イスカンダルも戦車から放り出されるだろう。それを回避できるとはいったい。

 

「……世の中って広いのね、セイバー」

「そうですね、アイリスフィール」

 

 結局その現象を最後まで解明できなかったので、2人は仲良く現実逃避したのだった。

 

 

 

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