FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第147話 聖杯問答3

 光己とモルガンが偽アイリに自爆攻撃をさせたのは単なる挑発や酔狂ではなく、アルトリアが光己たちの所に戻る時間を稼ぐという目的もあった。彼女がちゃっかりアーチャーの酒甕(さかがめ)を持ってきたのはアレだったけれど。

 アイリスフィールは自分と同じ姿の者が爆発四散するのを見せつけられて思うところはあったが、同盟相手の身の安全には替えられない。あえて無言を保った。

 ライダーとウェイバーは巻き添えを避けるため後ろに下がった。どちらの味方をするのも気が進まなかったので、見物に徹することにしたわけだ。

 

「せっかく強敵同士が戦ってくれるんだ。ここはおとなしくしておいて、勝った方を殴るのが頭のいいやり方ってやつだよな。少なくとも手の内は見せてもらえるんだし」

「戦略的には確かにそうだな。面白みはないが」

「だから何でオマエはそう刹那的感覚優先なんだよォ!?」

 

 ライダー陣営は凸凹コンビなところがあるようだ……。

 一方カルデア組は無事合流に成功していた。

 

「アルトリアお疲れさま。満足できた?」

「はい、いろいろ手伝って下さってありがとうございます。

 ところでこの酒甕、マスターの蔵に入りますか?」

「……。俺は未成年だからお酒は宝にカウントされないけど、この甕はいい物だからOKだな。

 あとアルトリアは見た目15歳なんだから、人前では飲まないようにね」

 

 光己はそう答えると甕を蔵にしまったが、波紋は出したままである。ポルクスの剣を取り出し、角と翼を尾を出した。

 マシュが前に出て盾をかまえ、万全の迎撃態勢を整える。

 その数秒ほど後。こちらもダメージから立ち直ったアーチャー、いや英雄王ギルガメッシュが攻撃を始めた。

 

「雑種共……くだらん小知恵で王の玉体に傷をつけた罪、冥府の底で悔やむがいい!」

 

 黄金の波紋から数十本の武器が現れ、猟犬のような勢いで認識阻害で隠れているはずのカルデア一行めがけて飛んで来る。これは単に盾をかざしているだけでは防げない。

 

誉れ堅き雪花の壁(シールドエフェクト)、発揮します!」

 

 パーティ全員を守るべく、半球形に防御陣を張るマシュ。気力を集中して、武器が衝突する瞬間に備える。

 ―――しかしその瞬間は来なかった。武器はすべてシールドの2メートルくらい向こうで一瞬止まった後、引力に引かれて雨粒のようにぽとんと地面に落ちたのだ。

 

「……!?」

 

 マシュもギルガメッシュも、何が起きたのか分からなかった。

 マシュはとりあえずそのまま警戒態勢を続け、ギルガメッシュは先ほどの倍の武器を打ち出す。

 

「何をしたか知らぬが、これは防ぎ切れるか!?」

 

 しかし結果は同じ。すべての武器はいったん空中で止まった後、まっすぐ地面に落下した。

 何かに当たって跳ね返されたとか弾き飛ばされたとかではなく、まるで見えない手に掴まれたかのように止まったのだ。

 

「……障壁の類ではないな。サーヴァントどもの誰か、それともあの妙なマスターの特殊能力か?

 まあ良いわ、どんな能力だろうと我が財の前には無駄なあがきであると知れ―――!」

 

 今度は光己たちの前、左右、上からそれぞれ50本ずつ射出されてくる。確かに口ほどのことはある在庫量だった。

 

「こ、これほど大量の武器を同時に打ち出せるなんて!?」

 

 アイリとセイバーが敵の強大さに青ざめ、光己も一瞬恐怖を感じたがすぐに立ち直った。

 

「いや、これくらいで折れてたまるか!

 今こそ燃え上がれ俺の妄想力(コスモ)、イシュタルの位まで高まれ!」

 

 そこでギルガメッシュにとって仇敵ともいえる女神の名前が出るあたり、光己はまだ余裕があるようだ……。

 光己のパワーが高まり、全身から黄金色のオーラが噴き上がる。前左右上、しめて200本の武器がすべて停止した。

 どうやら今まで武器を止めていたのは彼のようだ。ただ上方の武器はまたすぐ重力に引かれて落ちてきたが、このくらいならマシュのシールドには大した負担にならない。

 この芸当は「竜の遺産(レガシーオブドラゴン)」と機竜の翼を併用することで「誰かの手に持たれていない財宝」に慣性制御を行使できるというもので、本来は遠くにある財宝を回収するためのものだが、逆にこちらに来るのを止めるために使っているのだった。

 

「なるほど、どうやら貴様の仕業だったようだな。しかも(オレ)の前であの駄女神の名を出すとは、よほど命が要らんと見える」

「アイエエエ!?」

 

 自業自得な悲鳴を上げた光己に、さらにペースが上がった武器の雨が降り注ぐ。光己は必死に止め続けていたが、やがて追いつかなくなってシールドにぽつぽつ武器が当たり始めた。

 なにぶん習得したばかりで、妄想力を高めることでやっと実用レベルになった技である。敵の攻撃の密度が上がれば処理しきれなくなるのは当然だった。

 

「フハハハハハ、どうやら底が見えてきたようだな? 滑稽だぞ雑種」

「あばばばば……『最後のマスターに同じ技は2度も通じぬ、今やこれは常識!!』とか言ってみたかったけど無理! だ、誰か助けて」

 

 なのでついに泣きが入ったが、しかし光己には頼れる仲間たちがいる。まずはモルガンが直接ギルガメッシュを攻撃した。

 

「もちろんです。『はや辿り着けぬ理想郷(ロードレス・キャメロット)』!!」

 

 モルガンは転移系の魔術が得意で、マシュの後ろからでもシールドの外側に自在に攻撃を繰り出せるのだ。

 最高に相性のいいコンビというべきで、ギルガメッシュの上空から12本の巨槍が彼を閉じ込めるかのように落下する。

 

「ぬうっ!?」

 

 しかしギルガメッシュもさる者、光己たちに向けていた武器をとっさに上向きに切り替えて迎撃した。

 数十本の武器に群がるように打ち叩かれてさすがの巨槍もヒビだらけになったが、何とか地上に着弾して蒼い炎を吹き上げる。

 

「ぐぅおぉぉぉっ!」

 

 これにはギルガメッシュも腕で顔をかばい身をすくめて炎が消えるのを待つしかなかったが、巨槍が傷ついて威力が落ちていたおかげで何とか耐え切った。

 炎と槍が消えたところで、ふうっと呼吸を落ち着ける。

 

「おのれ、またしても我に傷をつけるとは……」

 

 ギルガメッシュはもう怒りで頭に血が上りすぎてこめかみの血管が切れそうであった。しかし今はガマンして、敵の攻撃に対処せねばならない。

 

「消えなさい」

 

 モルガンが黒いタールのような濁流を放つ。これは武器が刺さっても穴が開くだけで撃ち落とされたりはしないので、ギルガメッシュは移動して避けるほかない。

 

「チッ!」

 

 ついでその移動先に、上から大きな槍が落ちてくる。ギルガメッシュは花弁のような形をした盾を出してそれを止めた。

 次は青白い斬撃がすぐ斜め上から飛んでくる。これは防げなかったが、鎧が多少傷ついた程度でギルガメッシュの身体には届かなかった。

 しかしこれほどの連続攻撃を受けては反撃ができない。逆に光己は息をつく時間ができた。

 

「おお、さすがモルガン……ありがとう、助かったよ」

「どう致しまして。しかしあれ程の技、なぜ今まで隠していたのですか?」

「覚えたばかりだから、ギルガメッシュの武器を止められるかどうか自信がなくてさ。

 むしろ教えたせいでマシュが油断しちゃう方が怖かった」

「なるほど……」

 

 理解できなくはない話だ。モルガンは素直に頷いた。

 

「というかこの技、戦闘用としてはほぼ対ギルガメッシュ専用なんだよな。何しろ『財宝』しか止められないから。

 俺の『蔵』は中身を射出する機能なんてないしさ」

 

 光己の「蔵」はギルガメッシュの「蔵」より性能も在庫数も劣るが、対決する分にはメタを取れる。そういう関係なのだった。

 今回は未熟だったから途中でギブアップしたが。

 

「そ、そうなのですか」

 

 ちょっと乾いた声で答えつつも、モルガンは攻撃の手は休めない。軽く掲げた左手をぐっと握ると、ギルガメッシュの腹の辺りに赤い光がはじけた。

 

「ぐぅっ!? やはり空間転移系の攻撃か」

 

 空間転移といえばこの時代では魔法級の大技なのに、こんな簡単に連続使用できるとは。

 認めたくないが、この攻撃をしのぎながら敵の二重の守りを突破するのは難しい。ここは一時撤退するしかないようだ。

 

「おのれ、今は貴様らが強い……!」

「む、逃げる気か!?」

 

 ただその時、遠くの上空で何かが小さく光ったのに気づいたのは光己とジャンヌだけだった。

 

「……ん?」

「サーヴァント1騎、超高速で接近中……?」

 

 それはまるで流れ星のように。青白い光の尾を引きながら、暗い夜空を迷いもせずに翔けてくる。

 モルガンに注意を向けざるを得ずにいたギルガメッシュが気づいた時はもう遅かった。

 

「アルビオン・キーーーック!!」

「がッ!?」

 

 側頭部をまともに蹴られたギルガメッシュが即死しなかったのは、耐久力においても英雄王は一流という事実を示したものと言えよう……。

 10メートルほども蹴り転がされたギルガメッシュが痛みと怒りをこらえながら立ち上がると、その視線の先には乱入してきたと思われるサーヴァントが1人立っていた。

 身長150センチ弱の、ちょっと不健康そうな肌色をした10歳代前半くらいの少女である。服は黒い前掛けとパンツだけといささか露出過多な上、腕と脚がアザか刺青のような黒い何かで覆われていた。あの不埒なマスターと同じ黒い機械めいた翼を持ち、両腕に剣とも槍ともつかぬ大きな武器をつけている。

 

「貴様何者だ!? この我に不意打ちで飛び蹴り喰らわすとは、魂まで砕け散る覚悟はできておるのだろうな!?」

「うるさいよ」

 

 少女はギルガメッシュの罵倒をなかば無視して、光己のそれと似た不自然な急加速で斬りかかる。エコーがかかったように聞こえるその声は、彼女が人類とは違う何かであることをおぼろげに感じさせた。

 

「くっ!?」

 

 すでに盾を出していたおかげで、ギルガメッシュは防ぐのが間に合った。

 少女の動きは明らかに慣性力が適用されていない奇怪なもので、それでも接近戦になったからか空間転移攻撃が来なくなったので、とりあえず防戦はできている。ならこのまま下がってセイバー陣営と距離を取り、その上でこの謎の女を討てば撤退可能になるはずだ。

 ギルガメッシュはそのように計算したが、そのセイバー陣営がいつの間にかシールドから出て自分を囲んでいようとは。

 

「……!? セイバーが2人、いや3人だと? 貴様らは一体」

「決着の時だ! リリィまで毒牙にかけようとしたその罪、今こそ裁いてやろう」

「コスモギルガメス死すべしフォーウ!」

「意味が分からぬぞ!?」

 

 ギルガメッシュがそう叫んだのはまことに順当なものであったが、カルデア一党はマスターの性格のせいか、こういう時は人情とか風情といったものがまったくないムーブをする。返事もせずに襲いかかり、さらには狐耳と肉球手袋をつけた獣人ぽい娘までが包囲に参加した。

 

「うぅーうにゃあーんっ! その脂身を燃やす!」

「せめて理解できる言葉をしゃべれ!」

「それには同意するが、貴様はここで倒す」

「くっ!」

 

 セイバーの一撃が肩口に決まり、ギルガメッシュが痛みによろめく。

 続いて5人がかりのリンチで、ついに霊核に致命的なダメージを受けてしまった。

 

「おのれッ! なんたる茶番か……ッ!」

 

 ギルガメッシュはそう吐き捨てながら現世から退去したが、それに同意してくれる親切な者は残念ながらいなかった……。

 

 

 

 

 

 

「やったぞ……第4次聖杯戦争最大の難敵、英雄王がこれで脱落だ!」

 

 ギルガメッシュが退去したのを確認すると、エルメロイⅡ世はそう言って相好を崩した。

 ただしすべてが片づいたわけではない。残り案件の1つめとして、謎の少女が吶喊してきた。

 

「わあっ!? と、止まって下さい」

 

 謎の少女は助太刀してくれたのだから敵ではないと思われるが、味方と断定できるわけでもない。マシュが盾をかざして制止すると、少女は足は止めたものの苛立たしげに文句を言ってきた。

 

「なぜ邪魔するの? 私はただ、私の……えーと、一心同体? (つがい)? 私自身? とにかくこの世界にたった1人の同胞に会いに来ただけなのに」

「つ、番!?」

 

 その刺激的な単語に初心なマシュは真っ赤になったが、幸い状況を理解できた人が話に加わってくれた。

 

「落ち着けランスロット……いやメリュジーヌか。おまえの気持ちは察するが、今は立て込んでいるのでな。話をする時間は後で取ってやるから、今は大人しくしていろ」

「へ、陛下!?」

 

 謎の少女はモルガンの姿を見ると心底驚き、ついで地面に片膝をついて深く頭を下げた。どうやら生前はモルガンの臣下だったようだ。

 作法通りの挨拶をした少女、いやメリュジーヌにモルガンは「うむ」と鷹揚に頷くと、(おもて)を上げることを許した。

 

「おまえのおかげでアーチャーを逃がさずに済んだが、まだあちらにライダーが残っている。

 しかし彼を倒すと決まったわけではないから、結論が出るまで私とおまえは待機だ」

「……? 現界した時に得た知識によれば、聖杯戦争というのは最後の1騎になるまで殺し合うものらしいのですが」

「その通りだが、私たちはそれを防ぐために来ているのだ。

 よく見てみろ。こうして徒党を組んでいる私たちだけで、すでに7騎を超えているだろう?」

「……は、確かに」

 

 どうやら複雑な事情がある様子だ。メリュジーヌは立ち上がると、とりあえずライダーからモルガンをかばうような位置に移動した。

 

「ああ、それと。おまえのその姿は、汎人類史で人前に出るにはちと破廉恥な上に目立ち過ぎる。着名(ギフト)をつけておけ」

「……はっ」

 

 メリュジーヌが着名とやらをつけると、肌つやが良くなり服も黒に近い濃く暗い紺色のピッチリとしたミニスカ付きアンダースーツの上に全身に淡く光るラインが走るどこか未来戦闘機風な蒼色の軽装鎧を着た姿に変わった。翼と尾と黒い痕が消え、武器もだいぶ小さくなる。

 さらに甲冑を消して服がドレスになる霊衣もあって、こちらなら武器さえ隠しておけば、街中に出ても無用の人目を引くことは―――美しさで注目を浴びることはあるかも知れないが、まあそれくらいなら無害だろう。

 ちなみに彼女のお目当てであろう光己は、先ほどの戦いで打ち落としたギルガメッシュの武器を血眼になって回収している。その姿は人類救済を願う最後のマスターというより、邪竜と海賊が悪魔合体した財宝コレクターにしか見えなかった……。

 

「…………うーん、ここまでか。半分もゲットできなかったけど、もともと棚ぼたなんだからこれで良しとしとくかな」

 

 ギルガメッシュの退去とともに彼の財宝もすべて消えると、光己はふうーっと息をついて肩の力を抜いた。

 ライダー陣営のことはエルメロイⅡ世たちに任せておいたが、今どうなっているだろうか?

 ―――先ほどの戦いのせいで認識阻害が破れていたらしく、ライダーとウェイバーはこちらを発見して近づいて来ていた。カルデア側からはⅡ世が前に出て、その後ろにジャンヌとジャンヌオルタが護衛についている。

 やがて会話ができる距離になるとライダーが口を開いた。

 

「最後はちとアレだったが、ケガ人も出さずに英雄王を倒したのはさすがと言っておこうか。

 いろいろ聞きたいことはあるが、そこの乱入者が『早く帰れ』と言わんばかりに殺気丸出しで睨んできておるから、うちの坊主がうろたえるどころか失神しそうなのでな。

 今日のところは引き揚げるから、次に会う時までになだめておくがいい」

「…………そうだな。

 1つだけ言っておくと、我々に貴方と敵対する意志はない」

「……そうか、覚えておこう」

 

 ライダーは意味ありげにそう言うと、ウェイバーを連れて戦車(チャリオット)で飛び去っていくのだった。

 

 

 




 自爆攻撃→空間転移攻撃→不意打ち→リンチ、って主人公チームがやる作戦じゃないような気もしますが、邪竜ですから是非もないヨネ!
 メリュ子さん前倒し登場です。天の衣も欲しいなあ(思春期脳)。
 感想、評価お待ちしてます。


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