FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第151話 掛け金全乗せ

 女神同士の戦いはほぼ互角であった。

 カーマが桃色に輝く光の矢を放つと、カレンも同様の矢を射って打ち落とす。カレンが手を止めずに2射目を放つと、カーマは横に移動して避けた。

 両者とも弓術の専門家というわけではないのだが、そこは神霊だけあって生半可なアーチャーをしのぐ技量だった。

 

「じゃあこれでどうです!?」

 

 カーマが今度は空中で10本ほどにも分裂する矢を射る。カレンにはこの芸当はできないので、代わりに急加速して逃げながら大きな筒のようなものを取り出し、そこからピンク色のハート型のエネルギー塊っぽい物をいくつも発射した。

 筒も塊も見た目はファンシーだが、実体は大砲と砲弾である。カーマは特に驚きもせず、また分裂する矢を射ってすべて爆破した。

 

「弓矢で決めてみませんか、とか言っておいて何ですかその妙ちきりんな武器は。負けを認めるのなら帰ってもらってもいいですよ? 追い討ちは……しますけど」

「いえいえ、これも『矢弾』を撃つ装置ですから立派な弓ですよ。それより貴女の方こそ、愛の神とは思えない殺伐とした言い草ですね?」

「愛の神は休業中ですから。今は愛を与える仕事じゃなくて、愛を受け取るプライベートの最中なんですよ。

 ところで先ほど私をコケにしてくれましたけど、貴女には愛を与えてくれる人はいるんですか? 思い出とかじゃなくて、今現在ですよ」

「主からの愛ならばこの身から溢れるほどに」

「へーほーふーん」

 

 容赦なく矢を射ち合いつつ、舌戦も止めない女神2柱。ただカレンは頭や心臓といった急所を平気で狙っているのに対し、カーマはそこは外さないといけないのでだんだん劣勢になってきた。

 

(うーん、このままじゃマズいですね……っと、アレは何ですか!?)

 

 不意に前方の一点が砂地になったと思ったら、それがどんどん広がっていくとともに上空まで空気の感触が変わっていく。これは人間の魔術師が使う「固有結界」とかいう高等魔術ではあるまいか。

 さらには古代の兵士まで湧き出てきたから、多分アルトリアが言っていた「王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)」が開帳されたのだろう。

 

「あの兵士が割り込んできたら面倒ですね。距離を取りましょう」

 

 今は「結界」に取り込まれたからかカルデア側とイスカンダル軍はかなり距離が開いているが、すぐに接近戦になるだろうから離れるべきだ。そう判断したカーマはいったん後方に下がって仕切り直しにしようとしたが、当然カレンはそれを許さず追いかける。

 

「ちっ、しつこいですねえ!?」

「愛は追いかけるものですから♪」

 

 カレンが極太の光の矢を射る。カーマは何とか避けたが、余波でちょっと肌が焦げた。

 

「痛たたたたっ!?」

「さらにおまけです!」

 

 次に来たのは普通サイズの矢だったが、避けたはずのそれはカーマの後ろでUターンして背中に炸裂した。

 

「がふッ!?」

「そちらの事情は分かっていますが、こちらも人数が少ないのですから加減はしません。そーれ!」

 

 痛みで咳き込んで動きが止まったカーマの正面に、次は大量のハート弾が迫る。あわてて顔だけは腕でかばったが、それ以外の場所にはまともに着弾して桃色の爆光がきらめいた。

 

「うぐぐぐぐ……っ」

 

 痛い。ずいぶんケガをしたようだ。

 対等の条件ならともかく、ハンディがあってはやはり不利は否めなかった。魔力供給量的な面でも、こちらのマスターは普通の魔術師よりずっと多いが、相手は聖杯に直接招かれたサーヴァントだから良くて互角なわけだし。

 しかしカーマは逃げようとはしなかった。

 

「ざっけんじゃねえですよ……!

 こちとら本気で第二の神生やってるんです。試練だか愉悦だか知りませんが、ウエメセで遊んでるクソ女に負けてたまるものですか」

 

 まして彼の前でそんな無様はさらせないし、その無様の結果彼が愛の矢を射られるようなハメになったら憤死してもまだ足りない。

 

「後悔しなさい。私の本気、見せてあげます!」

「―――!?」

 

 カレンはチャンスを逃さずとどめまで持っていこうと次の一矢をつがえたが、その直前に敵の姿と気配が大きく変わったせいで一瞬遅れる。それでもすぐに放ったが、その光の矢はカーマが手に持った大きなリング型の物体、おそらくはインドのチャクラムと呼ばれる武器でブロックされた。

 

「!? そ、その姿は」

 

 カレンがびっくりして思わず目をこすったのも無理はない。普通のサーヴァントは霊衣を替えても本人の姿や能力や主要武器は変わらないものなのに、カーマはいまや10歳ほども成長したばかりか、明らかに雰囲気が「魔」寄りになった上にとても破廉恥な格好をしていたのだ。

 首に巻いた襟から下に伸びている紫色の長い帯?が何本かある他は、胸と局部を蒼い炎で覆っているだけという、シスターとして見過ごせない露出過多にカレンはつい突っ込みを入れてしまった。

 

「そこまで脱いで恥ずかしくないんですか?」

「平気ですよ。今の私は季節外れの魔王ですから」

「魔王!?」

 

 カレンが驚いている間に、カーマはチャクラムをぶん投げてきた。蒼い炎をまとって、高速回転しながらカレンの身体を両断する勢いで飛んでくる。

 

「ちょ、まさか殺しに来たんですか!?」

「さて、どうでしょうねぇ!?」

「くっ!」

 

 カレンはギリギリで回避したが、その先に伸びてきた例の帯に両腕を強打され、しかも巻きつかれて動きを制限されてしまった。

 その隙にカーマは目の前まで接近してきており、その両手のひらがカレンの頭をはさむように伸ばされる。

 

「現界経験の差を思い知りなさい! 必殺『魔王掌』!!」

 

 これはこの姿での宝具「恋もて堕とすは愛果てなり(マーラ・シューニャター)」の対単体版とでもいうべきもので、両手のひらの間で敵の頭をバスケットボールのドリブルのように連打・往復させつつ、蒼い炎をその手のひらの間の狭い空間≒敵の頭部だけに展開するというものである。

 全力でやれば対象の頭部は焼け砕けるが、手加減すれば火傷と脳震盪くらいに収まるだろう。

 わざわざ対単体版にしたのはこれが一撃必殺系の技であることに加えて、対全体版より小規模なので魔力消費が少ないからだ。マーラパワーを高めると人類悪に近づいて強くなる―――権能は奪われたままだから、あくまでいくらか強くなる程度だが―――代わりに消耗も激しいので、ケガしていることもあって省エネを心がけたわけである。

 

「~~~きゅぅ」

「これが魔王の力です。いえ、私とマスターの絆の勝利と言っておきましょうか」

 

 カーマは気絶して墜落していくカレンの襟首をつかんで確保すると、誇らしげに勝利宣言したのだった。

 

 

 

 

 

 

 一方地上では「王の軍勢」の両翼の騎兵部隊が動き出し、カルデア一行を包囲しようとしていた。個々の兵士はサーヴァントとはいえ強さは生前と変わらないが、何しろ数が万単位なので囲まれたら面倒なことになるだろう。いや彼ら自身より、彼らを相手している間に神牛の戦車(チャリオット)に空から突撃されるのがなお危険である。

 

「マシュ嬢、宝具を! 我々を囲むように展開するんだ」

「はい! 『いまは遥か理想の城(ロード・キャメロット)』!!」

 

 エルメロイⅡ世の指示通り、彼らを囲む形で10メートル四方ほどの広さのキャメロット城の幻像が出現する。これで「王の軍勢」の主力の重装歩兵と騎兵を無力化できた。

 残るは少数の投槍兵と投石機と破城槌だが、彼らが短時間でキャメロット城の城壁を破るのは無理だろう。

 あとは城壁の上から、イスカンダル本人の突撃を警戒しつつ(ほぼ)一方的に兵士を攻撃していればいい。

 

「おお、何だあの壮麗な城は!? あれがマシュとやらの宝具か!?」

「確かにこう、芸術品みたいな風格を感じるな。あれがアーサー王の城なのか……」

 

 イスカンダルもウェイバーも、どういうわけかマシュの宝具がキャメロット城を建てるものと知っていたようだ……。

 

「しかしあれは固そうだぞ。歩兵と騎兵は下げるしかないか」

 

 イスカンダルの「王の軍勢」は彼個人の負担は少なめとはいえ、ずっと出していられるわけではない。あの城も永続的なものではないだろうが、こちらの方が長時間保つという確信がない以上、全軍一時撤退して睨み合いという策は使えない。

 

「そもそもそんな引っ込み思案な作戦じゃ、あの(しか)め面軍師もつまらんだろうからな!

 あいつが城を建てたというなら、ガンガン攻めてやるのがケンカ売った側の義務ってもんだろうて!」

「だから何でオマエはいつも感覚優先なんだよォ!?」

 

 しかも方針そのものは理性的に考えても特に間違ってはいないのがなおさら腹立たしい。ウェイバーの憤懣は天元突破寸前であった。

 ―――それはともかく。司令官が転進を命じても、1度動き出した軍隊というのはそう簡単に方向転換できるものではない。密集隊形を組んでいる歩兵(ファランクス)ともなれば尚更だ。

 逆にⅡ世はそれを知っているからこそ、イスカンダル軍がある程度動き出してから城を建てたわけで。敵軍が渋滞している隙を逃すほど悠長でも慈悲深くもなかった。

 

「よし、今だ! みんな総攻撃を!」

「ええ!」

 

 Ⅱ世の指示に応じて、城壁の上から火炎や濁流やビーム弾、果てはオムライス型爆弾といった魔術的だったりSF的だったり奇天烈だったりする攻撃が雨あられと降り注ぐ。

 マスターの魔力量がケタ違いの上、彼は今現在も悪魔の翼を出して周囲の魔力、すなわち固有結界の空間中の魔力を派手に吸い取っているのでモルガンたちはガス欠の心配をすることなく攻撃を続けることができていた。

 

「むう、連中なかなかやるではないか!

 それに心なしか、固有結界の維持が普段よりキツいような……?」

「あの天使か悪魔か分からないマスターだ! アイツ多分、この空間自体の魔力を吸収してる」

 

 恐ろしい勢いで戦死者が増えていくのを見てイスカンダルとウェイバーはさすがにあせった様子を見せたが、その分析は極めて正確であった。

 

「なるほど、あの男まだ若いのにそんな芸当までできるのか。

 当然サーヴァントが守りを固めておるから投げ槍や石は届くまいな……そうなると余自身が行くしかないわけだが」

 

 ただそのタイミングは慎重に計る必要がある。騎士王2人と旗を持った娘が攻撃に参加していないのは、こちらの吶喊を迎撃するために違いないのだから。

 少なくとも、攻城兵器で城にある程度ダメージを与えて3人の気をそらしてからでなければマスター撃破は難しい。

 ―――やがて多大な被害を出しながらも前衛と後衛の入れ替えが完了する。投石機が城壁とその上のサーヴァントたちめがけて大きな石を投げ始め、破城槌が城門を乱打する激しい音が響き出す。

 しかしキャメロットの城壁はマシュの心が折れない限り決して砕けない不壊の守りだ。先輩は()()守る、という意固地なまでの信念は征服王の精鋭たちをもせき止めるに十分な堅固さを持っていた。

 

「うおおおおおお! たとえ何万人が攻め寄せようとも、この壁は絶対に壊させません!

 マシュ・キリエライト、全力防御し続けます!!」

「その意気だ! 皆は攻城部隊、特に投石機に攻撃を集中するんだ」

 

 マシュがこの調子なら、破城槌は恐れるに足りない。それより投石機が投げる大石が何かの間違いでアイリスフィールに当たってしまう可能性の方がまだ高いとⅡ世は判断したわけである。

 この作戦により、目立つ上に動きも遅い投石機部隊はあっという間に全滅してしまった。これでアイリスフィールの安全はほぼ確保できたと思われたが、逆にイスカンダルはついにみずから最前線に乗り込む決意を固める。

 

「まさか余の近衛兵団がここまで攻めあぐねるとは大したものだ、世界は広いな!

 そしてそんな強者どもと直接矛を交えられるとは……うむ、だからこそ人生は面白い!」

 

 ただ空を飛んで突撃するのにウェイバーを連れていくと高確率で死んでしまう。どうしたものか?

 

「うん、まあ、置いていくべきだわな。

 仮に首尾よくあのマスターを討ち取ったとして、坊主もやられてしまっては相打ちだ」

「あ、ああ……一緒に行っても足手まといにしかならないよな」

 

 古代の戦車にシートベルトなんて気の利いたものはない。戦車が空中で急カーブあるいは急ブレーキでもしようものなら、ウェイバーは間違いなく放り出されてしまう。その後は墜落死、あるいは敵サーヴァントに捕まって殺されるだけだろう。

 つまり同行したらイスカンダルの機動力を削ぐことにしかならないわけで、最後の攻撃についていけないのは残念だが諦めるしかなかった。

 

「だからせめて掛け金を追加してやるよ!

 令呪3画を以て命じる。ライダー、あいつら全員まとめて蹂躙制覇しろ!!」

「おお!?」

 

 まさか万が一のための絶対命令権をまとめて寄こすとは。その大盤振る舞いにさすがのイスカンダルもちょっと驚いた。

 

「こりゃすごい力だ! しかしそれ以上に、貴様の心意気が心地いいぞ!

 これは余も全力で応えねばなるまいな」

「ああ、行ってこい!」

 

 戦車が離陸し、まず少し旋回して勢いをつけてから城に突き進む。

 ただし一直線にではなく、ジグザグに曲がりながらだ。それを見たアルトリアがハッと青ざめて周りに注意を促す。

 

「あれは私の宝具を警戒している……!? そうか、アムールに私たちの宝具の内容を聞いたんですね!!」

 

 イスカンダルが単に光己を討ち取りたいだけなら、全速力で突っ込んでくるのが1番手っ取り早い。しかしそれでは「約束された勝利の剣(エクスカリバー)」で迎撃されるのを知っているので、ああして狙いをつけづらくしているのだ。

 しかも遠目に見るだけでも分かる異常なほどの魔力の猛り、おそらく令呪を全部使ってもらったのだろう。

 

「ううむ、さすがは征服王。豪放そのものに見えてソツがないな。マスター!」

 

 Ⅱ世が例によって主君を褒めつつ、ちょっとダウナー気味のマスターに発破をかける。むろん光己も事ここに至っては萎えてなんていられない。

 

「分かってますよ。世界の運命と王様の覇道に、マスターの令呪まで全ツッパしてきたんですから―――そう、こっちもレイズだ!!」

 

 光己が顔を上げ、ジャンヌに右手をかざす。

 

「令呪5画を以て命じる。お姉ちゃん、イスカンダルをはね飛ばせ!!」

「は、はい!」

 

 あわてて頷いたジャンヌだが、令呪5画分という空前絶後の魔力量はA級サーヴァントの彼女にとっても身体がはじけそうな密度だった。大急ぎで宝具を開帳して体外に放出する。

 

「我が旗よ、我が同胞を守りたまえ! 『我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』!!」

 

 ジャンヌの周囲に今までにない強さの、もはや見るのもつらいほど眩く輝く結界が展開された。ついで光己がジャンヌを後ろから抱きかかえ、2人でイスカンダルめがけて飛び上がる。

 

「おおっ!? 令呪5画とか聞こえたが、あの様子ならあながち嘘でもなさそうだな。

 しかも自分から突っ込んでくるとは、これを避けたら征服王の名にかかわるよなあ!?」

 

 むろんここで2人を避けるために急カーブなんてしようものなら、その減速している隙に聖剣ぶっぱ2連発を喰らいかねないという冷静な計算もあったわけだが、それと感性で出した答えが一致するといういつも通りの征服王ムーブであった。

 

「では征くぞ、遥か万里の彼方まで! 『遥かなる蹂躙制覇(ヴィア・エクスプグナティオ)』!!」

 

 イスカンダルが令呪3画の魔力を全開放して戦車の真名を開帳する。いきなり急加速して、まっすぐに光己とジャンヌめがけて爆走した。

 

 

 ―――赫ッ!!

 

 

 合わせて令呪8画分という誰にとっても想定外な魔力が正面衝突し、空間自体が軋んでひび割れるような耳障りな轟音が響き渡る。

 周りに広がった衝撃の余波もすさまじく、立っていられたのはサーヴァントたちだけで、城の外の兵士たちはみんな転倒どころか地べたに押しつけられて動くことすらできなかった。

 

「くうううううううううう!」

「ぬああああああああああ!」

 

 ジャンヌとイスカンダルが膨大な魔力の圧迫に顔をしかめつつも、互いに相手を打ちのめそうと鎬を削る。

 ただジャンヌの結界の先端部は単なる光のフィールドだが、イスカンダルの戦車の先端は(牛の間の仕切り棒を除けば)神牛2頭の鼻なので、両者が受けるダメージは違っていた。

 神牛はすでに顔が潰れ頭蓋もひび割れていたが、それでもなお前進を止めない。

 

「すまんなゼウスの仔らよ。だがこれが大一番ゆえ、最後の最後まで駆けてくれ!」

「■■■■■■■■■ーーー!!」

 

 神牛はおそらく了承の(いなな)きを発しようとしたのだろうが、口も潰れていたので、出たのは空気を吐き出すかすれた音だけだった。

 

「うわわわわ、これはとんでもない……!」

 

 一方光己は全乗せしてついてきたはいいものの、予想以上の力の奔流をこらえるのが精一杯でジャンヌを手伝う余裕など全くなかった。ただ彼女が勝つことを心の中で祈り続ける。

 ―――それはとても長い時間に思えたが、実際は10秒程度のことだったろう。神牛2頭がついに息絶え、推進力を失った戦車が城の内側に墜落する。

 当然征服王を討ち取るチャンスだ。アルトリアも城壁の上から飛び下りた。

 ただイスカンダル自身はすぐ立ち上がっており、しかも身体にはまだ令呪の魔力が残っているように見える。アルトリアはいきなりは斬りつけず、まず牽制を放った。

 

風王鉄槌(ストライク・エア)!」

 

 聖剣を見えなくするためにまとわせている風の塊を投げつける飛び道具である。イスカンダルは「キュプリオトの剣」という名剣を持っているがそうした武器で防げるものではなく、吹き飛ばされて城壁に背中を打ちつけた。

 

「ぐっ! ……なるほど、それが貴様の剣の真の姿か!」

 

 しかしイスカンダルはすぐ体勢を立て直すと、いまやその全容を衆目にさらした聖剣の美しさに感嘆の声をあげた。まだそのくらいの余裕はあるようだ。

 

「そうだ征服王! この剣で退去となることを誇りに思うがいい」

「面白い、受けて立とう!」

 

 そう言って剣を構えたイスカンダルに、アルトリアが聖剣の真名を開帳しつつ躍りかかる。

 

「いくぞ! 『約束された(エクス)―――」

「……何!?」

 

 その動きにイスカンダルが不審げに目を細める。確か彼女の宝具はビームを撃つものではなかったか?

 実際その通りである。ただ光を遠くに放出せず、刀身に残したまま斬撃用の刃として使うこともできるというだけだ。

 

「―――勝利の剣(カリバー)』ッッ!!」

 

 アルトリアが輝く聖剣で袈裟懸けに斬りつける。イスカンダルは戸惑いつつも剣で受けたが、真名開帳した一撃には耐えられず折れてしまう。

 聖剣の刃がイスカンダルの右肩から左腰まで切り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 致命傷を受け、退去寸前となったイスカンダルの前にⅡ世が駆け寄る。

 それに気づいたイスカンダルが顔を向けて、彼を称えるかのように笑みを浮かべた。

 

「ぐッ……見事だ……フフフ、これはしてやられたわい」

「……私自身の力によるものではない。皆の助けあってのことだ。

 結局、私は自分の力では、貴方に及ぶことなど……」

 

 主君の称賛もⅡ世にとってはあまり喜ばしいものではなかったようだが、そんな彼にイスカンダルはさらに言葉を重ねた。

 

「ハハ、ばかもん。

 覇道を拓くのに、揮う力が誰のものかなんぞ関係ないわ。

 それをいかに御し、導くか……肝要なのはそっちだ。

 余の『王の軍勢』を目の当たりにしたのなら、その程度は悟れよな。この唐変木め」

「ライダー……」

「……さて、どうやらここまでか。いやぁ、いい戦だった。

 済まんな坊主、余は、ここまでのようだ……」

 

 最後にそう言い終えると、イスカンダルは光の粒子となって消えていった。

 

 

 

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