FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第156話 150話記念お風呂回2

 所変わって男湯では、更衣室ですでにラヴっぽいやり取りが展開されていた。

 

「あ、あの、ますたぁ。着替えるところを見られるのは恥ずかしいので、向こうを向いていて下さいませんか」

 

 清姫とヒロインXXと景虎は自分から光己との混浴に臨んだわけだが、初手でハダカを見せることにはまだためらいがあるようだ。ローマではマシュがすみやかに彼を部屋から追い出してくれたのだが、今回はそのガーディアンがいないので自分たちで対応するしかないのだった。

 

「あー、それは仕方ないか」

 

 光己は当然女の子たちの着替えをかぶりつきで鑑賞したいのだが、嫌がる、とまではいってないが恥ずかしがっているのを無理強いする趣味はない。大人しく3人の希望通り回れ右した。

 後ろで女性陣がハダカになって、ついで湯浴み着をまとう気配とわずかな衣擦れの音が感じられたが、ここで欲望に負けてしまっては未来の王としてのメンツにかかわる。男とは時にはヤセ我慢をせねばならぬ生き物なのだ!

 

「……マスター、着替え終わりました」

「おお、やっとか!」

 

 光己がぎゅんっと最高速でまた回れ右すると、ローマの時と同じデザインの湯浴み着に身を包んだ美少女たちが、まだ恥ずかしいのか薄く頬を染めながら彼の言葉を待っていた。

 

「おお、1度見たけどやっぱりすげぇ……最後のマスターになって良かったと思える感動がまたここに!」

 

 セパレートのトップスは裾が短い、具体的にはおっぱいの下7~8センチくらいまでしかないタンクトップだ。ボトムスは光己と同じで、長い布を巻いて腰の横で縛っているだけである。これで下着をつけていないのだから、嫌でも興奮するというものだ。

 しかも軽くて柔らかい生地なので、たとえばくるっと回転したりすると裾がふわっと舞い上がって下乳やお尻が見えそうになったりするのが素晴らしい。

 ただこの利点は湯に入って濡れると無くなるが、その時はその時で肌に「微妙に」貼りついて「微妙に」透けるという別の利点に変わる。女性陣が逃げ出すほど露骨な透け方ではなく、かつ男子の劣情は煽るという匠の技だった。

 

「さすがはワルキューレ、男心を分かってるな!」

「そりゃもう、マスターとは付き合い長いからね!」

 

 光己がヒルドにサムズアップすると、ヒルドもノリ良く同じ仕草を返した。

 実はこの3姉妹、互いの経験を共有できるので「付き合い長い」というのは彼女たち視点では事実だったりする。

 それによるとスルーズは彼とローマのテルマエで「心を通じ合わせる」体験をしたそうで、ヒルドとオルトリンデはぜひ直接体験しようと意欲満々であった。

 

(あれは確かに幸せな時間でしたが、私たちもお姉さまのように堕としてしまう劇物かも知れません。ですから教えるかどうか迷いましたが、やはり隠し事はしたくないと思ったのです)

(そう言われるとちょっと躊躇(ちゅうちょ)しちゃうけど、でも興味は湧くよね!)

(はい、もしそうなってもマスターとならば)

 

 こういう思考が出るあたり、姉妹は光己を単なる勧誘対象として見ているのではなく、私的な好意も抱いているようだ。何しろ3人合わせると特異点Fからオケアノスまでずっと一緒にいたことになるわけだから、少なくとも戦友的な感情はあってしかるべきである。

 

「マスターってばいつもながらえっちですねー。

 でも好きですよそういうの」

 

 そこにカーマがニヤニヤ笑いながら光己の前に現れた。

 今回は復讐者(アヴェンジャー)の第3再臨、つまりカレンと戦った時の姿である。ただし空気を読んで炎とマントは消して、清姫たちと同じように湯浴み着を着ていた。

 

「おお、カーマは大人モードで来たか。うーん、率直に言っていいカラダすぎるな!

 それにいつもより雰囲気が明るいような気がする」

「へええ~~、そういうとこもちゃんと見てくれてるんですね。いいですよマスターさん。

 そう、アヴェンジャーの私はマーラの側面がより強く出た、季節外れの夏の魔王なのですから!」

「夏の魔王」

 

 カーマがドヤ顔で言い放ったパワーワードに光己は一瞬思考が止まってしまった。

 その間に魔王様がさらに自己紹介を続ける。

 

「といっても凡百の衆生にもはや興味はありません。マスター1人を堕とすのに特化したスペシャル形態なんですよ。

 ふっふふ、魔王を本気にさせたことを後悔……いえ後悔なんてさせません。私はマスターに愛してもらえて幸せ、マスターは私の縦横無尽の愛にひたれて幸せ。WinWinの関係でいきましょう」

 

 ドヤ顔魔王は途中でちょっとヘタれたが、むしろ彼女らしいといえるだろう。というかものすごい愛の告白である。

 

「縦横無尽の愛って何だと思ったけど、カーマならおかしくないのか。好きな容姿とそれに応じた中身になれるんだから」

「ええ。だから私1人いれば他の女はいらない……と言いたいところですが、それだと大奥になりませんので、特別に見逃してあげますね」

「うん、ありがとカーマ。俺も好きだよ」

 

 光己はそう言うと、告白してくれた魔王様をぎゅーっと力強く抱きしめた。

 

「きゃぁー、い、いきなり何するんですか」

 

 するとカーマは真っ赤になって慌て出した。実はアヴェンジャーカーマは攻撃力全振りのせいで恋愛面でも防御力がない、つまりチョロいのである。

 しかし光己にそんな事情は分からない。魔王様ボディの蠱惑的な感触と匂いにくらくらしつつも訊ね返した。

 

「何って、すごい告白してくれたからお礼のつもりなんだけど、何か問題あった?」

「こ、こくは……!? そ、それにマスターが私を好きって……!?」

 

 いやお互い好き合ってるのは普段から(魔力パス経由で?)お話する時は感情も通じ合っているから分かるのだけれど、ここまではっきり口に出してなんて。カーマは胸がばくばく鳴って頭も真っ白になってしまった。

 

「よ、よく分からんけど急すぎたのか? でもカーマだって抱き返してくれてるだろ」

「え!? あ、きゃあー」

 

 彼に指摘された通り、カーマの両腕は彼の背中にしっかりと巻きついていた。

 いつもやっているので癖になっていたようだ。こんな薄着なのに!

 でも素肌が触れて熱い体温を感じ合うのは気持ちいいしドキドキするし嬉しいので、もう少しこのままでいることにした。

 

「……って、いつまでやってるんですか!」

 

 まあマシュの代わりに清姫に引っぺがされたのだが、いつもならすぐ反撃するカーマも今回ばかりは頭が茹だっていてそのままへろへろになっていた……。

 その間に清姫がぐっと拳を握り締め、渾身の気迫で光己に愛を告白する。

 

「こ、こうなっては黙っていられません!

 ますたぁ、わたくしもフランスの頃からお慕い申し上げておりました! この命尽きる時まで、全力でおささえする所存であります。

 なので今お返事を下さい! はいか好きか愛してるで」

「それ選択になってない……まあいいや、『好き』で」

「ほ、本当ですか!? やりました!!」

 

 彼の言葉に嘘は感じられない。ついにやり遂げたのだ!

 清姫は拳を高く頭上に掲げ、3回ほどくるくる回って全身で感動と喜びを表現した。

 

「ではこの勢いで、わたくしを正室にするという御沙汰を!」

「いや、それとこれは別だから」

「…………むう、やはり旦那さまはいつもしっかりしていらっしゃる……」

 

 流れで押し切れたりしないかと思ったのだが、そうはいかなかったようだ。せっかく爆上がりしたテンションがしゅーんと半分ほど下がってしまう清姫。

 まあ考えてみれば出会った頃ならともかく、今の彼は多くの英霊たちとの戦闘や交渉でそれなりに経験を積んでいる。簡単に言質を取られるほど間抜けではないということか。

 

「しかしついに旦那さまに『好き』というお言葉をいただけたのは大変めでたいこと!

 この日を記念して、世界共通の祝日にするのはいかがでしょうか!」

「いやそれギャグになってないから」

 

 その世界自体が燃やされている状況ではさすがに光己は笑えなかった。いや清姫はガチ真剣なのだろうけれど。

 

「うーん、なんと真面目な旦那さま……でもそういう所も好き!

 ではそろそろ浴室に行きましょう!」

 

 自分の用事が済んだらさっそくメインイベントに進もうとするちゃっかり清姫。いや悪いことではないのだが、光己は一応、ヒロインXXと景虎にも顔を向けた。

 

「あー、いえ……3番目ではさすがに特別感がなくなりますので、また日を改めてということで」

「そうですね、私なんて一升瓶持ってますし」

 

 景虎も露天風呂で一杯飲むため、布袋に酒瓶と湯呑みを入れて持っていた。ただマスターは未成年ということなので、お茶入りのペットボトルも入っている。これで愛を告白してもカッコがつかないというものだ。

 2人ともいつ告白してもOKしてもらえる自信はある、というかもう気持ちは確認済みであとは体裁だけなので、いいシチュエーションを待つ余裕があるのだった。

 

「そっか、それじゃ行こうか」

「はい!」

 

 こうしてようやく浴室に向かった光己たちだが、戦闘と修繕から一拍置いて改めて見てみると、久しぶりの日本的温泉に感慨しきりであった。

 

「うむ、これぞ日本の旅館の温泉って感じだな!」

「そうですね、かけ湯をしたらさっそく一杯飲みましょう! お茶も用意してきましたから」

「おお、景虎はやはり分かってくれてるな! それならOKだ」

「ではわたくしもご同伴します!」

 

 そんなわけで湯舟に入ると、それぞれ湯呑みにお酒とお茶を注ぎあって乾杯した。

 

「かんぱーい!」

「おお、これはまさしく久しぶりの日本のお酒! 私は越後の酒が1番好きですが、これもなかなか良い味ですね。あと3年したら、マスターも一緒に呑みましょうね!」

「うん、まあほどほどにね」

「ますたぁをお酒に酔わせて……うふふ……」

「そういう手管って嘘判定はOKなの?」

「はうっ!? た、確かに正常な判断力を奪っていいようにするというのは愛の行為とはいえないような……」

「まあまあ、そこは逆に考えるのです。自分が酔っ払って介抱してもらえばいいと考えるのです!

 ただし加減を誤るとひどいことになりますが」

「や、やはりお酒は魔物なのですね……」

 

 などと日本人3人がぴったりくっついて楽しげに語らっているのをワルキューレズは後ろでじっと見つめていたが、特に介入はしなかった。

 施設を修繕したのは彼女たちなのだからもっと権利を主張してもいいのだが、ずっと1人、いや3人占めは難しいので1番美味しいところだけかっさらうために雌伏しているのである。

 

「そういうこととは別に、純粋に異文化を楽しむのもいいですしね」

「そうだね! こんな機会めったにないもの」

「これもお父様のお導きでしょう」

 

 そんな計画のもと、湯舟の中でのんびりおしゃべりしつつマスターの様子も窺っていると、XXも1人ではつまらないらしく彼の前に移動してきた。

 

「私もお酒もらっていいですか? 一応成人ですので!」

「もちろんいいですよ。どうぞ!」

 

 景虎はもともと自分の財布で買ったのではないだけに気前よく、予備として用意してあった湯呑みに酒を注いで寄こした。

 XXがさっそくそれを手に取り、キューッと喉に流し込む。

 

「くぅーっ、酒精が五臓六腑に染み渡りますね! これがマスターくんの故郷のお酒ってやつですか。

 ビールやワインとは違う独特の味がしますね」

「そうでしょうそうでしょう! お値段は真ん中辺くらいのものですが、閻魔様の旅館のものだけあって相当な上物です」

「なるほどー! では返礼です、どうぞ」

「や、これはどうも」

 

 今度はXXが景虎の湯呑みに注ぐと、軍神娘は八分ほども注がれたそれを軽く一気飲みしてしまった。生前は非常な酒好きだったので、いくら飲んでも病気にならない今はその度合いがさらに増しているのだ。

 

「まあ私は自他ともに認めるウワバミですので、XX殿は無理に私に付き合わなくていいですよ。

 嫌がる人に強いるのは義にもとるばかりか酒に失礼ですし、何より私の飲む分が減りますから!」

「なるほど、酒飲みのお手本のような持論ですね!」

 

 XXと景虎は割と気が合っているようだ。

 しかし光己と清姫はそちらの話題には入れないので、仲良くお茶をちびちび飲んでいるのだが、思春期少年の背中にはカーマがべったり抱きついていたりする。

 

「うふふふ、この位置ならマスターは私にさわれませんからね。さっきみたいなドジは踏みませんよ」

「うぉぉ、薄布越しとはいえおっぱいの感触がやばい……!」

 

 雄大にして弾力的な魔王ッパイの圧を受けて、光己はそろそろ股間あたりに謎の白い光が当たって視聴者?には見えなくなる寸前であった。

 その胸板に手を回して指先で「すき」などと書いて悪戯しつつ、愉悦の笑みを浮かべる魔王様。

 

「ふふふ、そう、こういう反応を待っていたんですよ! こういうのがマスターと私の正常な関係なんです」

「おのれ、反撃できない相手をいたぶって楽しむとは邪悪な魔王め。こうなったら後で同じことしちゃうからな」

「お、同じこと!?」

 

 するとカーマはぼっと顔を赤くして頭から蒸気を噴き出した。

 何かすごくいろんなことをされちゃうのを想像してしまったらしい。

 

「そ、それはまあ……マ、マスターがお望みなんでしたら好きにしていただいて、いい、んですけどぉ、ぉぉぉ……」

 

 さらには両目をぐるぐる回して、光己の背中にへたりこんでしまう。自分の発言内容の大胆さにも気づいていないようだ。

 

「カ、カーマ!? のぼせたのか? 大丈夫か?」

「ほ、本当に防御力低いのですね……」

 

 仕方ないので、光己と清姫は2人でカーマを抱えて湯舟の外に運び出してあげたのだった。

 

 

 

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