FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第165話 ぐだぐだ温泉物語1

 やがてオルガマリーたちが帰ってきたので、光己はさっそく信長たちのことを報告した。

 

「ジャンヌがサーヴァント反応が9つも出てきたって言うから急いで帰ってきたんだけど、そういうことだったのね。

 信長公たちは温泉旅行に来ただけで、しかも9騎中3騎と仲がいいんだから諍いにはならずに済みそうね」

「そうですね。1人だけ怖そうな人がいますが、1人だけですからこちらからケンカを売らなければ大丈夫だと思いますよ」

 

 それにしてもこんな所で信長たちと会えるとは。彼女たちは長居はしないだろうから自称竹取の翁との対決は手伝ってもらえないだろうが、会えただけでも本当に嬉しい。

 

「ひと休みしたらお邪魔しようと思ってるんですが、所長はどうします?」

「そうねえ。信長公と沖田とは一緒に戦った仲なんだから、行かないと失礼になるわね」

「私も、私も行きたい! 紹介して!」

 

 するとエリセが猛然と自薦してきた。

 エリセは信長一行の誰とも面識はないのだが、9人ものサーヴァントとお話できるチャンスとあって英霊オタクの血がめらめらー!と燃え盛っているのである。

 

「んー、まあそこまで言うなら。でも18人全員で行くのはさすがに多すぎですかね?」

「うーん、でも自己紹介を何度もしたりさせたりするのもよろしくないわね。とりあえず全員で行ってみましょう」

「それだったらクレーンさんも誘っていきませんか? みんなそろって大広間で夕食ってことになるかも知れませんし」

「そうね、そうしましょう」

 

 ということで、今回も部屋にいたクレーンも一緒に全員そろって訪問することになった。部屋に入り切れなかったら、その時はその時である。

 

「こんにちは、今いいですか?」

「あ、マスターですか? どうぞどうぞ!」

 

 光己が扉の前で呼びかけると沖田がいかにも歓迎という口調で答えてくれたので、さっそく中にお邪魔する。そこは光己たちの部屋よりちょっと広いところで、9人がのんびりお茶を飲んで休憩したり外の景色を眺めたりしていた。

 

「うわ、すごい大勢ですねえ!? ひの、ふの……19人ですか!?」

 

 沖田は目を丸くして驚いた。オケアノスの時も結構な大集団になっていたが、1つの組織だけで19人とはよく集めたものである。

 

「うん、だからまずは少人数で来ようかとも思ったけど、自己紹介何度もさせるのも何かなと思って」

「ま、まあ確かにそれもそうですね。それじゃちょっと狭苦しくなりますが、座って下さい」

 

 沖田2人が座卓を部屋の隅に立てかけてスペースをつくり、カルデア一行と信長一行が向い合って腰を下ろした。

 

「それじゃまずお互い自己紹介でも。こちら、ご存知の方もみえますがカルデアの所長のオルガマリー・アニムスフィアさんです」

「初めまして、フィニス・カルデアの所長を務めているオルガマリー・アニムスフィアです。

 世界各地に観測される、魔術が関わる異常事態を解決する仕事をしています」

 

 信長と沖田2人はカルデアの本当の仕事をもう知っているが、他の6人はまだ知らないはずだ。なので紅閻魔の時と同様、ぼかした表現にしていた。

 その後光己とマシュたちも名乗った時点で信長側にはいろいろ因縁を感じた者もいたが、まずは全員名乗るのが先である。

 

「うむ、ではまずわしから行こうかの。わしこそ第六天魔王、戦国の覇者織田信長じゃ!」

「さすが姉上、自己紹介もキマってますね!」

 

 すると信長の後ろで、彼女に似た少年が拍手するような仕草をした。

 視線が集まったのを感じて少年はちょっとバツ悪そうな顔をしたが、仕方ないので名乗ることにする。

 

「……どうも、姉上の弟の織田信勝です。よろしく!」

 

 人当たりの良さそうな笑顔で自己紹介した信勝は生前は信長に謀反を起こして敗死したのだが、今ここにいる彼は姉にわだかまりは持っていないように見えた。英霊になった後で和解したのだろうか?

 次は兜の少女が大仰に名乗りを上げた。

 

「わらわこそが日輪の寵姫、茶々なるぞ! バーサーカーのサーヴァントじゃ! うん、クラスは諦めた!」

「え、茶々君といえば秀吉公の?」

「ほう、そなたたちは遠い未来の者と聞いたがわらわと殿下のことを知っておったか! 褒めてつかわすぞ」

 

 光己よりエリセが先に興奮もあらわに反応すると、茶々は大げさに背をそらせて高笑いした。何というか、ローマで会ったネロを思い出させる物腰と言動である。

 次は例の怖い男性だった。

 

「詳しくは聞いてないが沖田が世話になったそうだな。新選組副長、土方歳三だ」

「アッハイ。ヨロシクオネガイシマス」

 

 土方は普通に自己紹介しただけのようだが、それでもずいぶんと迫力があるので光己は返事がカタコトになっていた……。

 似たタイプとしてヴラドやカリギュラと相対したこともあるのだが、土方はまだ味方とはいえないにせよ敵ではないので勝手が違うのである。

 オルガマリーやエリセも同様のようで、とりあえず沈黙していた。

 幸い土方は特に反応せず、次は白服の男性と黒服の女性になる。

 

「初めまして、坂本龍馬だよ。こっちは相棒のお竜さん。僕ともどもよろしく頼むよ」

「お竜さんだぞ。よろしくな」

((!?!?!?!?))

 

 2人の名乗りを聞いた光己とエリセは仰天してしまった。彼が日本史上有数の有名人であることもだが、それ以上に―――。

 

「あっ、あの。新選組と一緒にいて大丈夫なんですか……!?」

 

 自己紹介の最中に内情を訊ねてしまったが、これは致し方ないことだろう……。

 龍馬も気分を害したりはせず、普通に答えてくれた。

 

「ああ、確かに敵対していたけど、いろいろあって和解したんだよ。

 お互いサーヴァントになって、今ここには幕府も薩長土肥もないしね」

「そ、そうでしたか……まあ平和が一番ですよね」

「うん、そのために志士活動したようなものだよ」

 

 はにかんだ微笑を浮かべてそう言った龍馬は武器商人めいたこともしていたのだが、それは今の言葉と矛盾しない。あの時代に西欧列強から国を守るためには、何よりも優れた兵器が必要だったのだから。

 沖田2人はもう名乗る必要はないので飛ばして、最後はアルトリア顔の少女である。

 

「……コードネームはヒロインX。

 昨今、社会的な問題となっているセイバー増加に対応するために召喚されたサーヴァントです。よろしくお願いします」

「アッハイ。コチラコソヨロシクデス」

 

 その意味不明な自己紹介に、光己は土方の時とは別の理由でカタコトになっていた……。

 おそらく彼女はヒロインXXの関係者、あるいは別側面なのだろう。

 そしてこれでつつがなく自己紹介が終わったので、普通にお話する時間になる。光己はまず、戦国時代でできなかったことをやることにした。

 

「それじゃ信長公、こうしてまた会えたことですので、サインと写真お願いしていいですか? 家宝にしますので」

「ん? それは構わんが持って帰れるのか?」

 

 家宝にするとまで言われれば悪い気はしないが、光己が今頼むからにはあの時は持って帰れなかったはずで、ならここで書いても同じことではないのか? 信長はそう思ったが、今の光己はあの時の光己ではなかった。

 

「はい、ちゃんと持って帰れます。カメラもありますから」

 

 そう言いながらいつもの黒い波紋を出して、中から色紙とペンとデジカメを取り出す光己。

 実に便利なスキルを会得できたものだ、と今更ながらに感慨にふけった。

 

「おおっ!? 何かおかしな術を会得したようじゃのう」

 

 しばらく会わぬ間に精進したということか。信長はいたく感心して、彼の希望通りまずサインを書いた。

 次は写真となったところで、エリセが何かすごい形相で割り込んできた。

 

「キ、キミだけずるい! わ、私も欲しいから色紙と、あと撮った写真の印刷もお願い」

「おおっ!? 色紙ならたくさん持ってるから分けてあげるけど、印刷はここじゃ無理だぞ」

「そ、そんな……」

 

 プリンターが必要になる事態は想定しなかったから持って来ていないのだ。光己がそう言うと、エリセは露骨にがっくり落ち込んだ。

 光己にもその気持ちは分かる。なので彼女の望みをかなえ、ついでにこのサービスがいい女の子と末永くお付き合いできるようになる方法を提案した。

 

「じゃあ俺と契約して魔法少女、じゃなかったカルデアに来ない? そしたら印刷できるし、モルガン王妃とアーサー王のものも手に入るよ。もちろん個室もあげるし」

「行くっ!」

 

 何しろカルデアに入れば信長たちだけでなく、カルデア所属のサーヴァントたちのサインと写真ももらえるのだ。逆に断れば彼らの心証を悪くして何も得られなくなる可能性だってあるわけで、英霊オタクの上にまだ14歳のエリセが物欲で目がくらんでしまったとしても仕方ないといえるだろう……。

 といっても即答してしまったのはやはり軽率のそしりを免れないという向きもあろうが、彼女にも擁護すべき点はある。

 まずエリセは無一文で見知らぬ並行世界?に1人で紛れ込んでしまった身であり、今頼れるのはカルデアしかないこと、そのカルデアにはまだ疑念が残っているが、ジャンヌ・ダルクや長尾景虎といった正義派の人物が所属しているのだからそこまで悪い組織ではないと思われること、などである。

 まあ1番の問題点は光己が言った「契約」がサーヴァント契約だということに気づけなかったことなのだが、これは先ほど材木を閻魔亭に持ち帰る時に彼が竜モードになったのを見て、(ド、ドラゴンになれる元熾天使ってまさかルシフェル!? ……って、ルシフェルなら翼が6対のはずだから違うよね。うん、違うよ絶対。変身の魔術か何かだよきっと)と現実逃避したままいまだに正体を訊ねそこねているのが原因だったりする。

 なお信長はこの問答の一部始終を見ていたが、特に口出しはしなかった。光己はエリセを騙したわけではないし、ぞんざいに扱ったりもしないのは分かっているので。

 ―――何にせよこれでエリセはサインと写真をもらうための道具と、住居付きで英霊と一緒に働ける職場を手に入れたことになる。さっそく光己と一緒に、まず信長のサインと彼女のピンの写真、そして自分と並んだペアの写真を手に入れた。

 

「フッフフフ、我が家宝がまた1ページ……」

「英霊のサインと写真……そういうのもあったのか!」

 

(……何だか兄妹みたいじゃのう)

 

 光己とエリセがそっくりな表情で色紙を眺めて悦に入っているのを見て信長はそんなことを思ったが、口に出すのはやめておいた。

 そして2人が他の人たちの分をもらうために立ち去ると、10歳くらいの女の子が目の前に腰を下ろしてきた。

 

「さっきの名乗り聞きましたよー。私を推してる方なんですよね? 貴方はまともで貫禄もあるので許してあげます」

「なぬ?」

 

 信長は幼女にいきなり妙なことを言われて驚いたが、自分で名乗っている魔王のことだけに理由はすぐ分かった。

 

「……ああそうか、第六天魔王(マーラ)愛の神(そなた)と同一視されてるのじゃったな」

「ええ、今はカーマとマーラが6対4くらいですね。

 ちゃんと大人の魔王っぽい姿にもなれるんですが、あれは露出度が高いので人前ではやらないように言われてるんです。

 上から浴衣着れば問題ないんですが、それこそ魔王に見えませんしねー」

「まあ確かに、温泉旅館で浴衣を着た魔王というのもアレじゃのう」

 

 TPOに合わせた衣服の重要さは信長もよく知っている。正直目の前にいる幼女は神にも魔王にも見えないのだが、そこは武士の情けで言わずにおいた。

 

「というわけで、せっかくですから経歴とか聞かせてもらえません?」

「ふむ、魔王直々のお訊ねとあっては断れんの。よかろう、我が苛烈なる生涯をとくと語ってやろうではないか!」

 

 そんな感じでカーマと信長は意外とうまくやっていたが、そこから少し離れたところでヒロインXXとXが自分同士の邂逅(かいこう)をしていた。

 

「うーわー、懐かしいー! カッコ凛々しいですねえ! 温泉旅館に来て2シーズン前の私に会うなんて想像もしてませんでしたよ」

「2シーズン前って何なんです!? というか貴女本当に未来の私なんですか!? てか何で遊園地のスタッフみたいな服着てるんです?」

「ああ、私は水着サーヴァントなので人前に出る時はこうして上着を着てるんですよ。

 聖槍甲冑(アーヴァロン)は日常生活の中で着るものじゃないですからね」

「聖槍甲冑?」

「宇宙刑事の装備品ですよ。といっても公務員じゃなくて民間人ですし、ブラックを通り越したダークマター企業ですので、マスターくんと出会えたのを機に寿退職しようかなーとか思ってるんですけどね」

「!?」

 

 宇宙刑事とか寿退職とか、今のXにとっては意味不明な単語である。気ぜわしげに詳細を訊ねた。

 

「ど、どういうことなんです!?」

「うーん。あんまり未来知識教えるのも良くないかなとは思いますが、要するに無職でお金がなかったから就職しただけですよ。あえてもう一言加えるなら、就職先はよく調べろってところですか」

「むうー、重みを感じる言葉ですね」

 

 何しろ未来の自分を名乗る者の言うことだ。肝に銘じておくべきだろう。

 

「それで寿退職というのは?」

「それはもう決まってるじゃないですか。見た目は確かに何の変哲もないただの男の子ですけど、精神的にも物質的にも女を幸せにできる人なんですよ。

 まあ~、一夫多妻主義なのに目をつぶればですが」

「むうー」

 

 恋愛スキルほぼゼロのXにとってはちとハードルが高い話だが、逆にそれほどの魅力を持った男性ということなのだろうか? Xにはよく分からなかった。

 

「何でしたらマスターくんにお話してカル……いえ、何でもないです」

 

 XXはXさえ良ければカルデアに招こうと思ったが、考え直して口を閉じた。なぜならXにとって最優先の抹殺対象がいるからだ。

 今の自分のようにセイバーハンターとしての本能を抑えてくれるならいいのだが……。

 

「?」

 

 Xは彼女が自分をカルデアに勧誘しようとして、やはり止めにしたということは察せたが、なぜそうしたのかまでは分からなかった。何か複雑な事情でもあるのだろうか? 顔と名前が似ていて面倒だとか。

 

「まあせっかく会えたんですから、今夜はいっぱい食べて飲みましょう。ここはご飯もお酒も美味しいですよ!」

「本当ですか? それは楽しみですね!」

 

 2人ともアルトリアの系列だけに、そこは共通なのだった。

 

 

 

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