FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第185話 砂塵の女王3

 街の門には当然に門番がいたが、ゼノビアの顔と身分を知っていたようで深く頭を下げて通してくれた。彼女がいなければ盗賊に悩まされている街に初見の外国人が平和的に入るのは相当難しかったはずで、やはり情けは人の為ならずであった。

 街の中に入ってみると、高い壁で囲まれているからか、それともゼノビアが言った「ある特定のルート」の中だからか、砂嵐は吹いてなくて(外よりは)ずっと快適だった。

 まずはゼノビアの案内で役所だか商家の元締めだかの大きな建物に行って砂金を売却した後、大通りの露天商を回ることにする。ここでも彼女がいなければ換金できなかったりぼったくられたりする可能性があったわけで、コネの威力を改めて体感する光己たちであった。

 

「こんな暑いのにわざわざ外で商売するとは、汎人類史(こっち)の人間は気合い入ってるな!

 でもこれだけ店があると何買っていいか悩むな。たくさん持っていけばいいってものじゃねえし」

「バーヴァン・シー、はしゃぐのはいいけどはぐれないようにね。

 ……でもこういう活気のある街はいいね。こちらまで気分が明るくなる」

「そうだな。ところでゼノビアさん、別に商品を買い尽くしてしまっても構わないのでしょう?」

「いや、そういうのは止めてくれ。

 そうそう、この露天市は10日に1度だけ開かれるもので、毎日やってるものじゃないから誤解のないようにな」

 

 妖精騎士2人が街の活気に感心したり、マスターがしょうもないことを放言して注意されたりしつつ露天商を見て回るカルデア一行。食べ物や衣類や日用品の他、装飾品や武器や子供のおもちゃの類まで売っていた。

 もちろん靴も。

 

「うわぁ、これが砂漠で履く靴か! んーと、がっちりしたブーツとサンダルみたいなのと両極端……なるほど、ブーツは中に砂が入らないようにしてて、サンダルはその辺ハナから諦めて軽さ優先ってわけか。

 底は厚めだな。これだけ暑いと砂も熱いからかな。石ころも多かったし。

 ……ヒールはないか。当然だな」

 

 自然環境が厳しければ、履き物もそれに合わせたものになる。考えてみれば当たり前のことだが、そうなると逆に寒い所や湿気の多い所ではまた違う靴があるはずだ。実に興味深い!

 

「まあそれはまたいずれ、として。

 ……よし、これとこれとこれを買っていこう。マスター、頼む」

「ん、分かった」

 

 マスターは話が分かる人だし、本当にここに現界して良かったと思う。

 ―――その後すべての店を回っていろいろ買い物をしたが、聖晶石は残念ながら売っていなかった。

 

「まあそこまで都合よくはいかないってことか。

 それじゃそろそろお昼にしようか。建物の中の店はそれから回るってことで」

「そうか、では料理店に案内しよう」

 

 やはり現地を知っている人がいると捗る。光己たちは女王様御用達のお店で、ご当地産のパンやナツメヤシ、砂漠めいたラクダの隊商から購入したと思われる肉や野菜やジュースまで堪能することができた。

 しかしその途中、ジャンヌがはっと表情を引き締める。

 

「マスター、サーヴァントが接近してきています。北の方から……1人、いえ2人です」

「む、またか……ご飯食べ終わるまで待てない感じ?」

「そうですね、ちょっと厳しいです」

「ぐぬぬ」

 

 食べ残すのはもったいないが、そういうことならやむを得ない。北から来るということは、例の盗賊である可能性もあるし。

 一同は代金はきっちり払うと、急いで北に走った。外壁の内側に付けられた階段を昇って、壁の上の通路の上から外の様子を窺う。

 

「んー、サーヴァント以外に10人、20人……40人くらいいるな。

 1人が逃げてて、それを40人が追ってる形みたいだな」

 

 追っている方はおそらく例の盗賊だろう。だとしたら旅行者を襲っているのだろうか? もしくはそうと見せかけて外壁の門を開かせて乱入する策なのかも知れない。

 いやサーヴァントならそんな小細工を使わずとも正面から突破できるはずだから、やはり旅行者襲撃説が正しそうである。あくまで推測だが。

 

「お姉ちゃん、真名看破いける?」

「ええと、追っている側は集団にまぎれてるので難しいですが、追われてる方はいけそうですね。

 …………真名、シバの女王。キャスターです。これも本当の名前とはいえませんが、確定した名前が伝わっていないせいだと思われます。

 宝具は『三つの謎かけ(スリー・エニグマズ)』、彼女に仕える三つ子の霊鬼(ジン)が連携攻撃をするというものですね」

「……シバの女王? 三つの謎かけ?」

 

 その名前に光己は激しくピンときた。

 彼女が褐色の肌で露出が多いスタイル抜群の美女の女王でゼノビアと共通点が多いとか、ケモ耳&ケモ尻尾というレアな萌えポイントまで持ってるとかそういう問題……が7割ほどだが、残り3割は真面目である。

 

「メリュ、確保ーーーーー!!」

「分かった」

 

 光己がシバの女王を指さしてメリュジーヌに出動を促すと、ドラゴンの妖精は弾丸めいた速さでカッ飛んでいき、その襲来をまったく予想していなかった女王をかついで戻ってきた。

 元いた通路の上に着地すると、素早く彼女の後ろから両手をつかんで拘束する。「無窮の武練」を持つだけあって見事な手際だった。

 

「終わったよ。褒めて」

「うん、さすが俺のメリュ! ありがと」

「えへへー」

 

 お兄ちゃんに褒めてもらえて妹は満足そうだったが、さらわれた側は納得いたしかねる顔をしていた。まあ当然のことで、突然誘拐した理由を訊ねる。

 

「あのぉ、この扱いは一体?」

「いえ、まだ敵か味方か分からないからってだけで他意はないです。追われてるのを助けたわけだからプラマイゼロってことにしてもらえると助かります。

 貴女には心当たりないかも知れませんが、ある犯罪の重要参考人として話を聞かせてほしいと思いまして」

「犯罪の参考人!?」

 

 シバの女王は何のことかさっぱり分からなかったが、目の前の少年はいたって真面目な顔をしており酔狂や冗談ではなさそうに思える。何があったのだろうか?

 

「でもその前に、追ってきてるあの連中は何なんですか?」

 

 そちらについてはむしろ積極的に語りたい。女王は急いで説明した。

 

「はいぃ~。実は私、何も悪いことしてないのにあの盗賊たちに追われてるんですぅ。

 何故か知りませんが、アリババとかいう男の役を当てはめられまして。それで私がお宝を盗んだとか、シバにゃん萌え~とか言ってあのように」

「ほむ」

 

 つまりエリザベートやバーヴァン・シーと同じように、童話の登場人物の役割を持たされてきたということか。そういえば戦国時代でも景虎と信長はともかくアルトリアリリィやエルメロイⅡ世は赤の他人の武将のポジションで現界していたし、稀によくあることなのかも知れない。

 

「あー、でもアリババが盗賊に追われてるとしたら、それは宝を盗んだのがバレたからなのでは?」

「やってません! そりゃまあお金は好きですけど、私はあくまで商人ですから。

 それより連中、もうすぐそばまで来てますよ」

「んー、それは確かに」

 

 ここに清姫がいれば彼女の発言の真偽をすぐ鑑定できるのだが、いないものは仕方がない。争っている両者の片方の発言だけを鵜呑みにして動くのも軽率なので、先に追っ手の正体も知りたいところである。

 

「お姉ちゃん、そろそろあっちも看破できない?」

「……はい、できました!」

 

 ジャンヌはようやく役目を果たせて明るい表情になったが、なぜかすぐにどよーんと暗く淀んでしまった。

 

「…………ええと、オケアノスで会ったエドワード・ティーチです。宝具も『アン女王の復讐(クイーンアンズ・リベンジ)』のままですが、陸地で召喚されたからか、それとも童話の役割のせいなのか、船は無しで部下の亡霊を召喚するだけのものになっています。

 つまり彼の周りにいる盗賊たちですね」

「え゛」

 

 まさかあの最悪の海賊が、砂漠という最もアウェーな地に現れるとは! 彼を知っているジャンヌオルタも心底げんなりした顔をした。

 しかしこうなると、追う側と追われる側のどちらに非があったかは明白である。光己は女王に深くお詫びした。

 

「これは大変な失礼を致しました。黒髭に目をつけられるという苦難に遭われた女王を疑うような発言をしてしまうとは我ながら汗顔の至り、深く反省しております」

「え、え、えぇ……!? ま、まあ、分かってもらえればいいんですけどぉ~?」

 

 少年が突然態度を変えたのでシバの女王は当惑したが、疑いを解いて待遇を改めてくれるのであれば文句はない。それより盗賊たちはもう外壁のすぐそばまで迫っているから、急いで対処すべきである。

 シバがそう言うと少年もぎゅっと表情を引き締め、改めて壁の下を見下ろした。

 そして盗賊たちの中でも頭抜けた巨漢の姿を認めると、慌てて仲間たちの顔を見渡す。

 

「みんな、スカートの裾を押さえろ! 黒髭のことだからパンツ覗こうとするぞ」

「!?」

 

 ジャンヌ2人は同意見のようで、ばっと片手で股の辺りを押さえる。メリュジーヌとバーヴァン・シーは黒髭のことを知らないので何事かと思ったが、マスターの指示なのでとりあえず従った。

 エリザベートとゼノビアとシバの女王は服の形態的に下から覗かれてもそこまで問題ではないが、あの大男の視線はとても不快な感じがする。そこで手を放してもらったシバの女王がアラビア風の金のランプを取り出して指でこすると、その口から白い煙が噴き出してきて下方からの視線から彼女たちの下半身を隠した。

 

「な!? 拙者の数少ない楽しみを奪うとは、そこの(マス)も愛しのシバにゃんも冷酷すぎるのではござらんか!? 黒髭差別反対!」

 

 ここの黒髭は光己のことを覚えていないようだが、駄弁とセクハラにブレーキがないのは相変わらずだった……。

 

「おまえに見せる女体など1ミリもないわ!

 ところで女王は宝を盗んだりしてないって言ってたけど、そこんとこどうなんだ?」

 

 光己が負けずに反論しつつ一応は盗賊側の主張も聞いてみると、黒髭もそこは答えてくれた。

 

「いや、確かに盗まれたでおじゃるよ? そう、拙者のピュアなハートを」

「……」

 

 必要なことを最低限話しただけなのに早くも神経がゴリゴリ削られるこの感触、黒髭は陸に上がっても恐るべき大海賊であった。仲間にするなんてあり得ないし、速攻でケリをつけないと(メンタルが)危ない。

 しかし黒髭の動きも素早かった。敵集団の(かなめ)であるマスターが前に出ている今こそ好機と、部下たちとともに一斉に銃撃を浴びせる。

 ……が、光己は1度戦っているのである程度彼の思考は読めた。一手早く、「蔵」から昨日手に入れた甲冑が持っていた盾を取り出して顔の前にかざす。

 キンキーン!と軽い金属音がして、銃弾はあっさり弾き飛ばされた。盾で守られていない下半身の方にも飛んでいたが、そちらはシバの女王が出した煙が受け止めている。

 シバの女王は訓練を積んだ魔術師というわけではないが、紀元前10世紀という神秘が濃い時代の生まれで、しかも人間と精霊(ジン)の間の子だ。サーヴァントとしては相当に強い部類に入るのである。

 

「オモチャめ!

 愚かな! 豆弾を飛ばして(いき)がる無能者! 一片のカラテの足しにもならぬわ!」

「ぐぬぬ。言葉の意味は分からんが、とにかくすごい自信でござる!」

 

 光己の罵倒にも黒髭は余裕ある態度を崩さなかったが、一斉射撃が効かなかったのだから多少は動揺しているはずだ。すぐに反撃すべきである。

 

「みんな、こいつのヤバさはもう分かったろ。こっちも一斉攻撃だ!」

「うむ。パルミラの風紀と治安は私が守る!」

 

 ゼノビアが1番に反応し、両肩の脇にバリスタを出して矢を撃ち始める。ジャンヌオルタたちもそれに続いた。

 

「この女王様自身も風紀乱してる気がするけど、まあ他所の国だしどうでもいいか。

 暴悪なる黒髭よ、我がサバトの炎で燃え死ぬがいいわ!」

「そうね~♪ みんなで~シバきましょう~♪」

「そうだな、あれを倒すのはきっといいことなんだと思う。仕事しよう」

 

 黒い炎と水色のビームと赤黒い魔力弾が雨あられと降り注ぎ、黒髭盗賊団はあっという間に半壊した。死亡した部下が次々と霧のように消えていくが、しかしそれと同じペースで新しい部下が召喚されてくる。

 

「なんと!?」

「デュフフフフ、拙者ここでは『40人の盗賊』でござるからな。同時にいるのが39人までなら、低コストで部下を呼べるんでござるよ」

「おのれ、ならばおまえ自身を!」

 

 ゼノビアが黒髭本人を狙って矢を連射するが、黒髭はぬるりと避けたり部下を盾にしたりするのでなかなか当てることができない。

 

「ああ、あれです! あれで私も逃げるハメになったんですぅ」

 

 そのさまを見たシバの女王が嫌そうに体験談を口にする。この戦法で魔力を消耗させられて逃走を余儀なくされたのだ。

 黒髭は彼女を無傷で捕えることにこだわって飛び道具を使ってこなかったから逃げ切れたが、そうでなかったら捕まっていたかも知れない。

 しかし今回は人数に差がある。このままなら先に魔力切れに陥るのは黒髭の方だと思われたが、歴戦の海賊である彼がそれに気づかないはずがない。

 どこからか木製のタルを取り出すと、外壁に向かってぽいっと投げる。

 

「ん?」

 

 何かヤバいと気づいたゼノビアがとっさに矢を放って射ち落とすが、タルの中身がまさか火薬だったとは。

 射った矢が間が悪いことに火矢だったので―――盛大に爆発し、轟音と火炎をまき散らすのだった。

 

 

 




 空を飛んで山越えすると盗賊イベントがなくなりますので、ここで発生させました。
 ただ原作通り40人鯖を出すのは無理がありましたので、部下を出せる盗賊ということで黒髭に白羽の矢を立てさせていただきました。南無~(ぉ


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