FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第190話 白雪姫2

 予言の子は棺から出ると、まっすぐ光己の前に行って彼の手を強く握った。

 

「王子様、助けていただいてありがとうございます!

 私は白雪姫と申します、よろしくお願いしますね!」

 

 そして愛想よく笑顔を振りまいたが、無論これには彼女なりの思惑がある。

 予言の子、本名アルトリア・キャスターは生前は予言の子の使命と「楽園の妖精」の役目を果たすだけで妖精生が終わってしまい、楽しいことはごくわずかで、しんどいことばかり多かった。なので死んだ後くらいは自分のために生きよう、幸せになってやる、うおおおおー!という心境なのである。

 その観点で見ると妖精國ではなく汎人類史で童話の主人公、それもハッピーエンドを迎えることになっているキャラクターとして現界したのは絶好のチャンスだった。なぜか妖精騎士が3人もいるが、今は王子様と初対面という重要な場面なのだから構ってはいられない。童話の展開通り王子様とくっつくために、まずは全力で媚びを売らねば!と考えているのだ。

 普段のやぼったい服ではなく、センスのいいデザインの一張羅を着て来られたのは運が良かった。白雪姫は名前が示す通り本物の王女なので、服装もそれに合わせたものが選ばれたということか。

 なお光己を王子様に認定したのは、目が覚めた時に周りにいた人たちの中で唯一男性で、しかもサーヴァント(けらい)を連れていたからだ。また予言の子アイでの鑑定によれば、「国王の子」かどうかは分からないが相当なお金持ちなのは確かであり、性格も良さそうに見える。見た目年齢も近いし、結構な良物件と思われた。

 ―――お金持ち! なんと聞こえのいい言葉か!

 そういえば生前に偽札でオークションに参加したことがあったが、お金持ちならその手の危険な橋は渡らなくていいのだ。素晴らしい。

 王子様はよく見ると純粋な妖精でも人間でもなく、ちょうど妖精騎士ランスロットに似た存在のようである。しかし予言の子はもうやめたのだし、そもそも妖精國自体がもう滅びたのだから気にせずアタックしよう。目指せ玉の輿!

 しかしいきなり求愛や求婚は気が早すぎる。まずは王子様と一緒にいられる状況をつくる所から始めるべきだろう。

 

「実は私、継母の女王に命を狙われていまして。

 もしよかったら王子様の国に連れていっていただけると嬉しいのですが」

 

 そこで童話の設定に沿って庇護を願い出てみると、王子様はちょっと困ったような顔をした。

 

「うーん、どうしたものかなあ」

 

 実際思春期男子としては可愛い女の子が「王子様♡」とか言って持ち上げてくれるのはとても気分がいいのだが、この娘は慣れてないのかあざとさが露骨なのが惜しかった。

 ……いやそういう問題ではなくて。これまで会ったここのサーヴァントは役柄の影響を受けてはいても名乗りは本来の名前だったのに、この娘だけ名乗りも言動も役柄そのものなのは、もしかして完全に洗脳されてるとかそういうレベルなのだろうか?

 だとしたらここに置いていくのは忍びないが、戦闘の場に連れていくのも悪い気がする。

 ―――なお光己のこの考察は明らかに間違いというか、アルトリア・キャスターに騙されているのだが、今の段階では無理もないことだろう……。

 

「これは難題……いや正直に事情を話して本人に選んでもらえば済むことか。

 お姉ちゃん、どう思う?」

「そうですね、それでいいと思います」

 

 ただ独断は避けて姉に意見を求めたところ同意してもらえたので、光己はとりあえずお姫様向けにカルデアとか人理とかいった専門用語は出さずに、自分たちはこの怪しい世界をつくった元凶を退治して元の世界に戻そうとしているところで、途中で危険な戦闘もあると思われるがそれでも来るかという趣旨のことを説明した。

 

「はい! 私こう見えても魔術はそこそこ使えますので、きっと王子様のお役に立てると思います!」

 

 すると姫は何故かノリノリで同行を選んだので、希望通りにさせてあげることにする。

 

「そっか、じゃあよろしくね」

「はい、こちらこそ!」

 

 うまくいった! キャスターは口では純真そうに答えつつも心の中ではにんまりほくそ笑んでいたが、そこに不埒にも生前の知り合いの大女が口をはさんできた。

 

「予言の子、さっきからなぜお姫様の真似事をしているんだ? 役柄に意識を乗っ取られたわけでもあるまいに」

「……予言の子? 聞いたことがない言葉ですが、何のことでしょうか。見知らぬ……いえ妖精(ドワーフ)の方」

 

 そこでまずはシラを切ってみたが、大女は思ったより賢かった。

 

「聞いたことがないって……おまえはついさっき『妖精生の春が来た』と言っただろう。本来の自分の意識が主体でなければ出て来ない言葉だと思うが」

「しまったぁぁ!」

 

 喜びのあまり、初手で致命的な失言をしていたとは。キャスターは絶望に身をよじってうずくまった。これで白雪姫のフリはできなくなったし、計画はおじゃんだろうか!?

 

「……で、どういうことなんだ?」

 

 すると大女がしつこく問いただしてきたので、やむを得ず起き上がって釈明することにする。

 

「別に深い理由はありませんよ。汎人類史(こちら)では玉の輿って女の子の憧れじゃないですか。サーヴァントは良くも悪くも逸話に引っ張られる存在だそうですから、白雪姫として振る舞っていた方が王子様を落としやすいと思っただけで」

「確かに白雪姫は王子と結ばれることになっているし、今の流れだとマスターが王子の役をしているというのも分かるが、マスターは王子でも何でもな……いや待て」

 

 特異点に現界したはぐれサーヴァントは通常は特異点が修正されれば英霊の座に還ることになるが、カルデアのマスターと契約すれば帰還先がカルデアになる。つまり新天地に連れて行ってくれるわけだから、まさに童話における王子のムーブそのものといえよう。

 ……とバーゲストは思ったが今少し考えてみるに、光己は妖精國に来た「異邦の魔術師」ではないのだから、予言の子は初見では光己がカルデアのマスターだと分からないはずだ。つまり今の考察は外れということになる。

 すると本当に玉の輿目当て……しかし光己は王族や貴族の出身ではなかったはずだが。

 バーゲストがその疑問を口にすると、予言の子はふふんと笑った。

 

「ええ、確かに王子様は貴種ではないかも知れません。でもお金持ちであることは分かりますから!

 むしろ身分や地位よりお金の方が大事ですね」

 

 開き直ってそう言うと、今度は生前は最後まで敵だったロリドラゴンが憤怒の相で割り込んできた。

 

「見損なったよ予言の子!

 お金目当てで男性に言い寄る卑しい女め! 愛にかけてお兄ちゃんは渡さないぞ」

「!?」

 

 こうまで言われてはキャスターも受けて立たざるを得ない。

 

「そちらこそ現実が見えてないお花畑め! 愛でお腹はふくれないんだぞ」

「現実が見えてないのはどちらかな? お兄ちゃんはもう陛下と結婚しているんだぞ」

「な、何だってー!?」

 

 雷に打たれたような衝撃でキャスターががくりとよろめく。

 ついで怒りをあらわに、光己に詰め寄って胸倉をつかんだ。

 

「裏切ったな、私の気持ちを裏切ったな。オベロンと同じに裏切ったんだ!」

「いやそんなこと言われても……」

 

 光己にとってはいわれなき弾劾でこう答えるしかなかったが、するとキャスターは思い直したらしく手の力を緩めた。

 確かにこれは光己が悪いというより、モルガンの打つ手が早かったというべきだ。あの魔境を2千年も統治していただけのことはあるが、今この場に来ていないとは詰めが甘い!

 

「こうなったら寝取ってやる! 男の人の好みのタイプは人それぞれだけど、だいたいは年増より若い子の方が好きだよね」

「ちょ!? それはさすがに予言の子として外聞が悪すぎるんじゃないかな」

「予言の子? 彼女ならもう死んだよ」

「そりゃそうだけどさあ!」

「#$%&*@¥!!」

「∀‰※=+△£!!」

 

「……」

 

 光己もジャンヌたちもどうしていいか分からず、2人の口論を呆然とみつめるばかりだった……。

 ところでバーヴァン・シーはモルガン以外のほぼすべての妖精が嫌いだが、予言の子だけは立場的には敵だったのになぜか嫌悪感が湧かず、普通に接することができていた。なので彼女のために仲裁に入ることにする。

 

「あー、何だ。2人ともその辺にしといた方がいいんじゃないか?

 私は愛とか玉の輿ってのは詳しくないけど、その泥仕合続ければ続けるほどマスターの好感度が下がってくってことくらいは分かるぞ」

「「!!」」

 

 まことにもっともな指摘で、メリュジーヌとキャスターは一瞬びくっと固まった。

 

「い、いや問題はないよ。確かに騎士としてちょっと品位に欠けてたかも知れないけど、お兄ちゃんを心配してのことだからね!」

「むぐぐ」

 

 とはいえメリュジーヌは動機は純粋だったのでダメージは少なかったが、純粋に不純だったキャスターは取り繕いようもない。雨に濡れた捨て犬のごとく、上目遣いで光己の顔を見上げるくらいしかできなかった。

 

(……うーん、どうしたものかな)

 

 当の光己は色々と予想外の展開にはたと考え込んでいた。

 今までの話から想像するに、予言の子というのは相当厳しい使命を課された存在なのだろう。だから死んで異世界転生(?)した後くらい、いい思いをしたいというのは分かる。

 しかし彼女を受け入れてしまっていいものだろうか?

 モルガンはカルデア式召喚で来た身だから汎人類史に敵対はしないはずだし、妖精騎士3人はモルガンが「我々は妖精國と汎人類史の争いでは中立を保つ」とでも言ってくれれば大丈夫だろう。しかし予言の子はモルガンの敵だったようだから、モルガンの命令に従ういわれはない。つまりカルデアが妖精國と戦うことになったら、レフがやったようなテロ行為をする可能性は否定できないのだ。

 

「……ところで君は妖精國の生まれの妖精なんだよね? 汎人類史の人間についてっていいの?

 ほら、将来汎人類史と妖精國が戦うことになったら居心地悪くなるでしょ」

 

 そこでまず軽く探りを入れてみると、予言の子はむしろ不思議そうな顔をした。

 

「へ? いえ、妖精國はもう滅びてますので、その心配は無意味かと思いますが……」

「いや、それがモルガンやカーマによると、俺たちがいる世界は妖精國や異星の神が来るより前の時間軸らしいんだ。つまり妖精國と接触するのはまだこれからってことでね」

「うえっ!?」

 

 何てことだ! キャスターは真っ青になってうろたえた。

 またあれをやらないといけないのか!? いやあの旅を後悔してはいないが、結果的には妖精國の滅亡の一因になったわけだし、またやりたいかと問われれば答えはノーである。

 といってモルガンの側について異邦の旅人(リツカたち)と争うのも嫌だし、それ以前にあの悪意の嵐の中にまた入るのはごめんこうむりたい。

 ……いや待て。確かリツカたちは汎人類史の(生身の肉体を持たない普通の)サーヴァントは妖精國には入れなかったと言っていたではないか。助かった!

 

「あー、えーと。聞けば汎人類史のサーヴァントは妖精國には入れないそうですから、私の意向に関係なく、どちらにもつかないということで……。

 いえ私自身どちらとも争いたくありませんので、何もしないということでご理解いただければと……。

 何でしたら、令呪で縛っていただいてもかまいません」

「うーん、そういうことならまあいいか……」

 

 カルデア式の令呪はサーヴァントへの強制力は低いし、やるつもりもないが、彼女の方からこう言ってくるからには嘘ではあるまい。カルデアに帰ったら清姫がいることだし、さしあたって現段階では彼女を拒む必要はなさそうに思える。

 

「といってもあれだな。愛でお腹がふくれないのは事実だけど、100%お金目当てなのも嫌だからまずはお友達からってことでいい?」

「アッハイ。ソウデスネ、ヨロシクオネガイイタシマス……」

 

 王子様のお沙汰はあの泥仕合を見た上での判断としては大変寛大なもので、キャスターはははあーっ!と頭を下げて全面承服するしかなかった……。

 ただそれはそれとして、確認したいことがある。

 

「ところで王子様はいろいろ知ってらっしゃるようですけど、どちらから見えられたのですか?」

「ん? ああ、カル……いやその前に、君のことは何て呼べばいいかな。俺は藤宮光己っていうんだけど」

「それはもう、白雪姫と! 長ければ姫、でも構いませんので」

「そ、そっか」

 

 どうやら彼女はあの泥仕合の後でもなお、自分を白雪姫だと主張したいようだ。

 まあ実害はないことだし、希望通りにしてあげてもいいだろう。

 

「それじゃ姫で。

 で、今言いかけたけど俺たちはカルデアっていう組織の現地調査部隊で、この特異点を修正するためにやって来たんだ」

「カルデア!?」

 

 その固有名詞にキャスターは仰天した。リツカたちが所属していた組織ではないか!

 

「知ってるの? ……って、カルデアのマスターが『異邦の旅人』なんだから知ってて当然だったか」

「はい、リツカという方なんですけど……」

 

 ただリツカは「最後のマスター」だったはずだが、するとこの少年はカルデアが妖精國と接触する前に辞職、もしくは死亡してしまうのだろうか? 辞職はともかく、死亡は困るのだが。

 まあその辺は今は知りようのないことだし、こちらから触れるべきことでもない。キャスターは気づかなかったフリをした。

 

「うーん、コフィンに入ってる人たちの名前は確認したことないからなあ」

 

 コフィンで凍結処置されている人たちのことを詳しく知ると精神的に重荷になりそうなので、光己はあえて避けていたのだ。だから今「異邦の旅人」がカルデアにいるかどうかは分からないが、予言の子がカルデアに来れば判明するから問題はあるまい。

 

「そういえば友達に立香って娘がいるけど、まあ無関係だろうな」

 

 そして何の気なしにそうごちると、まったく突然に頭の中に声が響いた。

 

(―――呼んだな、私の名を!)

「何っ!?」

 

 それは気のせいや幻聴で済ませるにはあまりにもはっきりし過ぎた声だったので光己は思わず反応してしまったが、すると気のせいではない証拠に明確な返事が来た。

 

(フフフフ……そう! オヌシのニューロンに居座る邪悪存ざ……もとい。あなたの頼れる脳内セ〇ム、藤丸立香ちゃんだよ!)

「アイエエエ!? 立香!? 立香ナンデ!?」

 

 藤丸立香と名乗った人物は実際光己の幼馴染なのだが、脈絡もなく人の頭の中に直接話しかけてきたとはいかなる事態か!? 光己は驚愕と恐怖におののいた。

 

(ふふん、いい驚きっぷりだね。満足だよ。

 でも声に出してると変な人扱いされるから、心の中で念じるだけにしといた方がいいかな。私はそれで分かるから)

(お、おう)

 

 確かにそうなので光己が立香の勧めに従うと、また彼女の声が聞こえた。

 

(実は今までもずっとあなたのサポートしてたんだけどね。

 今あなたが私の名前を呼んでくれたから、ようやくこうして会話もできるようになったんだよ)

(マジか。いや日本のこと思い出すと「みんな死んじゃったんだろなー」ってなって気が重くなるから考えないようにしてたんだよ。ごめん)

(んー、なるほど。それなら仕方ないかな、ただでさえ責任重大なんだものね。

 まあ今こうしてお話できるようになったからもういいよ)

 

 立香が鷹揚に許してくれたので、光己は話を進めることにした。

 

(それでサポートしてたって何? ていうか何がどうなってこうして話してるんだ!?)

 

 その根本的な疑問に対しては、一般人であるはずの立香にしては魔術的な回答が返ってきた。

 

(光己最初の頃はサーヴァントと契約するたびに魔力切れでダウンしてたでしょ。その心配がなくなったら今度はドラゴンになっちゃうとか、身体のケアが大変だったんだよ。

 私がいなかったら死んで……はいなかったと思うけど、今みたいな都合のいい状態にはなってなかったよ)

(マジか。全然気づいてなかった、ありがとな)

(うん、どう致しまして)

 

 立香のその一言には、深い情動(エモーション)が感じられた。特異点Fの頃からサポートしてくれていたのなら結構な長期間に渡るから、それにようやく気づいてもらえたということに感慨深いものがあるのだろう。

 

(うん、ほんとにありがと)

(うん。……といっても私が起きてるのは何かあった時か、こうして呼んでくれた時だけなんだけどね。光己も忙しい身みたいだし、暇な時にちょっとお話してくれれば十分だから)

(そっか、分かった)

 

 光己は忙しい身なのは事実なので、そちら方面を配慮してくれるのは助かる。また「私が起きてるのは何かあった時か~~」の真偽は不明だが、プライバシーにも配慮してくれているのだろう。

 学校ではコミュEXと謳われていた気配り上手だが、それだけのことはあると改めて感心した。

 

(で、そもそも何で俺のニューロンに?)

(あー、それはね。実は私もカルデアのマスターになってたんだけど、何かとても珍しい「レイシフト適性100%」らしくてね。だから光己たちがいうレムレムレイシフトみたいな感じでついて行けてるんだと思う)

(それなら俺のニューロンに住まなくても、普通に現界すればいいんじゃないか?)

(そこはそれ、私は身体の方は重傷で凍結処置されてるから、それが再現されたらその場で死んじゃうからじゃないかな)

(あ、そっか。ごめん)

 

 なるほどそれはその通りだ。光己がデリカシーに欠けた発言を謝罪すると、立香は「気にしなくていいよ」と大らかに許してくれた。

 

(ここにいる分には健康体だし、光己の脳内って居心地いいしね。

 何でか分からないけど布団とコタツとノートパソコンとお茶菓子まであるし)

(ううむ、人理修復なんて大仕事やってる友達の脳内で勝手にくつろぐとはやはり邪悪存在……。

 まあそれはそれとして、立香がカルデアに来てたとなると、妖精國組がいう「異邦の旅人」とか「異邦の魔術師」ってやっぱり立香のことなのかな?)

(うーん、どうだろ。今の状況からマスターが私1人になるというのは考えづらいし。

 まあ人理修復が終わって、私が解凍されてコフィンから出たら分かるんじゃないかな?)

(そだな。じゃああまり長引くとみんな心配するだろうから、また後で)

(うん、久しぶりにお話できて楽しかったよ)

 

 それで光己が脳内会話を切り上げて現実世界に戻ってくると、予想した通りメリュジーヌたちが心配そうにこちらの顔を見上げていた。

 

「お兄ちゃん、大丈夫? 突然ぼーっとして声かけても返事してくれないからどうしようかと思ってたんだけど」

「うん、もう大丈夫だよ。カルデアに来る前のこと思い出してただけだから」

 

 さすがに皆の前で脳内会話の実情は明かせないのでそう言うと、幸いメリュジーヌは素直に納得してくれた。

 

「ああ、そういえばお兄ちゃんは騎士とかじゃなくて一般人だったんだよね。なら仕方ないか」

「うん、でもなるべく心配させないようにはするから。

 ……で、姫はカルデアに来るってことでOK?」

「え? あ、はい、そうですね。お願いします」

「分かった、じゃあ忘れないうちに契約しとこうか」

「はい」

 

 ―――こうして、予言の子も無事カルデアに加入したのだった。

 

 

 

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