FGO ANOTHER TALE   作:風仙

199 / 301
幕間
第199話 再会と出会い


 カルデア本部では特異点修正における最後の戦いの時だけはサーヴァントたちも管制室に入って観戦、及び光己たちが帰還した時にお出迎えする習慣になっている。しかし今回は通信が妨害されていたので最後の戦いがあったことを把握できず、光己たちが戻った時に管制室にいたのは一部の所員だけだった。

 所員たちは光己の存在証明と彼への魔力供給は何とかできていたが、通信はなかなか開通させられず悪戦苦闘しており、その最中に突然コフィンエリアにサーヴァントが9騎も出現したのでそれはもうびっくりした。

 

「な、もしかして特異点からの逆攻勢!? それとも魔術お……じゃないわね。ジャンヌたちがいるから、修正できて帰ってきたってことかしら」

 

 たまたま管制室に来ていたオルガマリーも仰天して一瞬心臓が凍る心地がしたが、サーヴァントたちの中に見知った者がいたことでほっと気分を緩める。

 何しろ今回の特異点はサーヴァントは入れずマスターだけを入れ、しかも通信を遮断するというまるでカルデアのマスターを抹殺するのが狙いのような所だったので、今までずっと不安だったのだ。

 

「はい、何度か戦闘はありましたが首謀者は退去させて、聖杯も入手してきました。

 こちらの6騎は、現地で会ってカルデアに協力してくれることになった方々です」

「そうですか、3人ともお疲れさまでした。

 ……そちらの皆様、私が人理継続保障機関フィニス・カルデアの所長、オルガマリー・アニムスフィアです。さっそく所員とサーヴァントたちを招集してお互いの自己紹介をしたいと思いますので、少々お待ち下さい。

 シルビア、所内放送お願い。ムニエルは藤宮のコフィンを開けて」

 

 オルガマリーはジャンヌの回答を聞くと、きびきびと所員たちに指示を下していった。

 しかしいくら現地班リーダーが自称大奥王とはいえ、来てくれた6騎中5騎が若い女性とはずいぶん偏った、しかもその内2騎は露出多めの褐色美人というのはどういう事情なのだろうか? 後でしっかり聞いておかねばなるまい。

 ……まあそれはそれとして、今はコフィンから出て来た功労者にねぎらいの言葉をかけておくことにした。

 

「今回もお疲れさま。サーヴァントがはじかれる上に通信まで邪魔されていた危険な場所だったのに、無事に帰ってきてくれてよかった」

 

 任務達成より生還についての言葉の方が長かったことにオルガマリーの心情が現れていた。光己はそれに気づきはしたが人前で口に出すほどヤボではなく、あえて任務についてのことを話した。

 

「はい、どう致しまして。聖杯は手に入れはしたんですがちょっと込み入った事情がありますので、後で説明しがてら渡しますので」

「……? まあ貴方がそう言うなら」

 

 特異点が特殊だっただけに、聖杯にも何か仕込まれていたのだろうか? オルガマリーは小さく首をかしげたが、急ぐ用事というわけではないので、彼の申し出通りにすることにした。

 ところで今回来た6騎の内5騎はカルデアに知人がいる。やがて所内放送を聞いた所員とサーヴァントたちが三々五々集まって来たが、最初に知人と会ったのはその知人がいることを知らなかったシバだった。

 

「アイエエエ!? シバの女王!? シバの女王ナンデ!?」

 

 この悲鳴のような叫びをあげたのはロマニ・アーキマンである。実はこの男、隠してはいるが元はマリスビリーのサーヴァントだった「魔術王ソロモン」が聖杯に願って人間になった存在なのだ。

 生前あるいはサーヴァントだった頃の彼ならこんなヘマはしなかっただろうが、今の彼は神的要素や頭のネジがだいぶ抜けた、善良で責任感はあるものの気弱なゆるふわ青年に過ぎない。W R S(ワイフリアリティショック)を発症して彼女の名前を叫んでしまったとしても無理もないことであろう……。

 

「…………」

 

 シバの方はロマニが自分を見つけるより早く彼の正体に気づいていて、しかも何か深い事情があると見て知らんフリしていたのだが、これには苦笑いを浮かべるしかなかった。オルガマリーもカルデアが誇る近未来観測機に名前を冠されるほどの大物が目の前に現れたことに驚きつつ、とりあえず情けなくも怪しい行動を見せた部下は追及せざるを得ない。

 

「あー、えーと。後で清姫と一緒に事情聴取させてもらうから、心の準備だけしておきなさいね……」

 

 清姫に同席してもらうのは真実を洗いざらい吐かせるという意志表示だが、ロマニにとって悪い話というわけでもない。何故なら本当のことを喋れば、それは無駄に疑われることなく信じてもらえるからだ。

 

「アッハイ……」

 

 なのでロマニに抗弁のすべはなく、首を垂れてうなずくしかない。彼は副所長のエルメロイⅡ世につぐカルデアのNo3なのでいつもはオルガマリーの傍らに陣取るのだが、今回は一般所員エリアの隅っこで肩をすくめていた。

 ―――次に現れたのは芥ヒナコ=虞美人だった。項羽の姿を見た瞬間、思考と足の動きが止まる。

 

「項羽……様……!?」

 

 彼と最後に会ってからもう2200年も経つが、それでも色鮮やかに思い出せる当時の彼と寸分変わりない姿。間違いなく愛する夫だった。

 駆け寄ってその胸に飛び込もうと思ったが、感動が過ぎたせいか足に力が入らない。

 

「ぐっちゃん、もしかして……?」

 

 すると一緒に来ていた友人に訝しまれたので、ヒナコは「ええ」と頷いた。

 

「ちょっとは期待してたけど、まさか本当に連れて来てくれたなんて……嬉しすぎて腰が抜けちゃった」

「そうでちか……それは良かったでチュ。さすがは藤宮様、いえぐっちゃんと項羽様の愛のなせる業でちかね。

 でも今はそこにいた方がいいと思いまチュよ。所員の皆様には独り身の方も多いでちから、熱愛ぶりを見せつけるのは趣味がいいとはいえまちぇん」

「そ、そうね」

 

 言われてみればもっともである。ヒナコ自身の評判はともかく、項羽の印象が悪くなるのは避けたい。

 なのでヒナコが大人しく所員エリアに控えていると、項羽の方も気づいたのか、時々不自然にならない程度に視線を送ってくるではないか。

 

(あわわ、項羽様のこの意味深なまなざし……ヤバい、ホントに腰抜けてへたりこみそう。

 いえ、耐えるのよ私! 項羽様の体面を傷つけるわけには)

「…………」

 

 ヒナコの今まで見せたことがない浮かれっぷりに紅閻魔はかなり面食らったが、長年の想いが報われためでたい時なのでツッコミは入れないことにした。

 ―――そして次に、アルトリアズ5人が揃って現れる。

 

(!?)

 

 カルデアにアルトリアズがいることを聞いていなかったアルトリア・キャスターが「ぶふうぅぅっ!」と思い切り噴き出した。実はこの少女、汎人類史のアーサー王(じぶん)にコンプレックスのような感情を持っているのだ。

 傍らの光己の袖をつかんで、泡喰った顔で訊ねる。

 

「お、王子様!? あれってもしかしてアーサー王なんですか!? 本物のアーサー王!? しかも5人も!?」

「ほえ!?」

 

 光己は光己でいきなり袖をつかんで腕を揺すられて驚いたが、そういえばキャスターは見た目はアルトリアリリィにそっくりだし、生前はモルガンを倒す役どころだった。つまり妖精國(むこう)アーサー王(アルトリア)ということなのだろうか。

 

「うん、そうだけどそういえばまだ言ってなかったな。でも何かまずいことでもあるの?」

「やっぱりそうですか……いえ、まずいというわけではないんですけれど」

 

 キャスターとしてはこちらが一方的に苦手意識というか尊敬というか理解できないというか、ちょっと表現しにくい微妙な感情を抱いているだけで、面識はないどころか、彼女たちはこちらの存在さえ知らないかもしれないのだから。

 しかしあの過酷な上に何も報われない人生をやり切っただけあって面構えが違う。高潔で凛としたアトモスフィアが……と思ったが、いかにも騎士王ぽいのは1人だけで、1人はモルガンみたいにスレちゃってるし、1人は何かすごい純真そうで眩しくて正視できないくらいだし、1人はいろいろ突き抜けちゃって服まで脱げて露出過多だし、ああでもスタイルいいのは羨ましい。

 

(って、何このヒト!?)

 

 そして最後の1人は王様というより貴婦人みたいで、なぜかモルガンより年上な感じでしかも胸がやたら大きかった。異世界とはいえ同一人物のはずなのに、こんな格差が許されていいのか!? 異聞帯差別反対!

 

(……って、そんなわけないか)

 

 汎人類史の中ですでに格差があるのだ。異聞帯だからどうこうという話ではあるまい。

 しかし1人で5種類ものサーヴァントになれるとは、さすが騎士王だけあっていろんな側面を持っている……と言っていいのだろうか。あのアーサー王にも黒い一面があったと知って、ちょっと安心してしまっている自分がいるのだけれど。

 

(まあそれはそれとして……考えてみたら私やアーサー王はしくじってもブリテンが滅びるだけで済むっていうか実際滅びちゃったけど、リツカや王子様は世界全部なんだっけ)

 

 責任の重さを人数で測るなら数十倍どころじゃない。リツカも光己もそちら方面では深刻さを見せなかったが、内心ではどう整理をつけているのだろう。「なんで私がこんなことしなきゃならないのか」とか「私なんかにできるわけない」とか思わないのだろうか。もう少し彼と親しくなったら聞いてみたいと思う。

 ―――キャスターがそんなことを考えている間に、今度はモルガンがやってきた。

 キャスターやバーヴァン・シーとバーゲストはカルデアにモルガンがいることを知っていたのでさほど驚かなかったが、モルガンの方は眼前の光景を信じ切れず3回ほども目をこすって見直してしまったほどだった。

 

「バーヴァン・シー……!? それにバーゲストと予言の子まで……!?

 夢でも幻でもない、本当にあの子が私の所に……!?」

 

 今回の特異点はヒナコの夫に会いたいという強烈な願望のせいで発生したとか言われているが、そのおこぼれにあずかったのであろうか。

 しかしバーヴァン・シーは自分の判断ミスであんな酷い目に遭わせてしまったのに、それでも来てくれたのか。それともメリュジーヌがまだ事情を教えていないのか? だとしたらどう接すればいいものか……。

 ―――モルガンにとってバーヴァン・シーが来たのは本来最高に喜ばしい出来事なのだが、罪悪感も深いため思考がまとまらずにいるようだ。一方バーヴァン・シーは心の準備をする時間があったので、さっそく母の前に出向こうとしたが同僚に手首を掴んで止められてしまった。

 

「メリュジーヌ!? 何で止めるんだよ」

「再会を喜ぶだけなら止めないけど、君は()()()()を詫びるつもりなんだろう? それは人前ではよした方がいいんじゃないかな」

「へ!? ……あ、ああ、そうだな。悪い」

 

 バーヴァン・シーは羅刹のような目でメリュジーヌを睨みつけたが、止めた理由を説明されると納得して謝罪した。

 まあ確かに、自分たちの惨い死にざまを大勢の前で語られてはモルガンもたまったものじゃないだろう。といってそれに触れず普通に挨拶するだけでは何か白々しい気がするし、ここは機会を待つのが得策のようだ。

 ついでにもう1人の同僚の方を見てみると、さすがガチガチの騎士様だけあって直立不動であった。予言の子はモルガンより自分に似た顔の女5人の方が気になっているようで、こちらも動く気配はない。まあどうでもい……いや抜け駆けされなくて良かったというところか。

 ―――その後所員とサーヴァントが全員揃ったところで自己紹介会となったが、キャスターがカルデア(ここ)に来てなお自分は白雪姫だと強弁したので、モルガンとアルトリアズはかなり戸惑うことになったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 自己紹介会の後は、ロマニの事情聴取をしている間に虞美人&項羽とモルガン一党に水入らずの時間を過ごしてもらって、その後で恒例の報告会と構内案内をすることになった。光己が聖晶石を持ってきたのでサーヴァントを新規に1騎召喚できるが、これは誰の所属にするかという問題もあるので明日ということにする。

 

「それにしても本当に項羽王が来て、しかもおこぼれ?でモルガン女王の娘まで来るなんて……ガイアの精霊ってすごいわね」

 

 なおおこぼれはもう1組あるのだが、それが判明するのは今少し先である。オルガマリーは幹部組のエルメロイⅡ世とダ・ヴィンチ、そして嘘発見役の清姫と万が一に備えてヒルドとジャンヌにも来てもらった上で所長室にてロマニ(とシバ)の事情聴取に臨んだ。

 

「さて……貴方には隠しごとしてた前科があるから、今日はきっちり全部しゃべってもらうわよ。隠すのは嘘ついたことにはならないって思ってるかも知れないけど、それは『もう隠してることはないわね?』って聞けば(あば)けるから。

 といっても貴方が人理とカルデアの敵じゃないのなら悪いようにはしないから、そこは安心してもらっていいわ」

 

 オルガマリーはそこまで言うと、チラッと清姫の方に目をやった。最後の台詞が嘘ではないと表明してもらうためだ。

 

「はい、今の所長さんの言葉に嘘はありません」

「アイエエ……」

 

 言い逃れの道を完全に断たれたロマニが哀れっぽい悲鳴を上げる。隣席のシバにアイコンタクトで助けを乞うてみたが、賢明なる知恵の女王にも打つ手はないらしく沈黙していた。

 ゆるふわドクターの明日どころか0.3秒後はどっちだ!?

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。