FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第201話 残酷な真実

 その頃ヒナコと項羽、そしてモルガンとバーヴァン・シーはそれぞれの個室に移動していた。メリュジーヌとバーゲストは空気を読んで主君親子に同行せず、光己たちと一緒に……今は何もすることがないと思われたが、アルトリア・キャスターがふと思い出したことを光己に訊ねる。

 

「あ、そういえば王子様。異邦の旅人(リツカ)ってカルデア(ここ)にいるんですか?」

「ん? ああ、そうだな、確かめておこうか。誰か所員の人……いやコフィンにはネームプレートが貼ってあるから、人に聞く前に直接見て回っとくか」

 

 光己は中(意味浅)に立香がいるので彼女がカルデアにいることを知ってはいるが、一応コフィンを見ておくことには意味がある。キャスターと一緒にコフィンエリアを見に行くことにすると、メリュジーヌとバーゲストも興味を持ったのかついてきた。

 さらに暇だからか、他のサーヴァントたちもぞろぞろついてくる。

 

「旦那さま、コフィンに何か御用でもおありなのですか?」

 

 清姫はストーキングスキルを持っているだけあって、光己が普段コフィンエリアをあまりうろつかないことを知っている。今日に限って何故と訝しんで声をかけると、何か予想もしなかった答えが返ってきた。

 

「ああ、実はね。妖精國……姫やモルガンたちの異聞帯に行ったマスターは俺じゃなかったそうなんだけど、そのマスターはどうやら俺の知り合いらしいから確認しようと思ってさ」

「え」

 

 それは容易ならぬ話だ。この自称白雪姫(真実ではないが嘘でもない)やモルガンたちが並行世界ではなくこの世界の未来から来たのであれば、光己は(2度目の)人理修復が終わる前にカルデアから去った、もしくは死亡してしまったことになるからだ。

 いや1度目の人理修復ができたら凍結してあるマスターたちを解凍するのだろうから、光己だけ働かせるのではなくその解凍したマスターを派遣したという可能性もある。それなら光己が去ったり死んだりはしていないと判断することもできるが……。

 

「まあ、そんな先のことを考えても仕方ありませんわね。

 そういうことでしたら、わたくしもお手伝い致します」

「うん、ありがと」

 

 コフィンは光己の分を含めても48基しかないから、手分けして探せばすぐだ。やがて「藤丸立香 Ritsuka Fujimaru」と書かれたネームプレートが貼られたコフィンが光己のものの隣にあるのを発見した。

 

「うーむ、まさか俺の隣だったとは。まあ立香も素人だろうから当然か」

「やっぱりいたんですね。でも自己紹介会の時にいなかったってことは、今はこの中で凍結されてるってことですか?」

「うん、魔術王を倒せば解凍できる技師を呼べるらしいんだけどね。

 それじゃさらに念を入れて、写真も見せてもらっておこうか。世の中には同姓同名の人もいるから、姫はその方が安心できるだろ」

「そうですね、ありがとうございます」

 

 光己には必要のないことだが、キャスターにとっては確かにその通りである。好意に甘えることにして、彼と一緒に担当らしい男性所員のところに行って事情を説明した。

 

「マジか。そういうことなら芥かアインツベルンが行くんじゃないかと思うが……それって何か怖いことになってないか!?」

 

 その所員、ムニエルは話を聞くとちょっと顔を青くした。

 端末で名簿を調べてみたところ立香は適応番号47、これは光己と同じ一般枠である。BチームからDチームまでの面々どころかガイアの精霊やアインツベルンの最優マスターを差し置いて派遣されるとは考えにくく、なのに立香が妖精國に行ったというのは、光己やヒナコやアイリスフィールを含む他のマスター全員が死亡したからではないかと思ったのだ。

 

「しかし妖精國に要員を派遣して支援もできたからには、カルデア本部は無事なんだよな。その状況で、不死身のはずの芥が死ぬとか……うーん、分からん!」

 

 なのでムニエルはこの場で結論を出すことをあきらめ、光己たちの要望に対応することにした。

 

「カルデアにも個人情報保護に関する内規はあるんだが、同僚の名前と写真だけなら決裁取るまでもないな。今画面に出す」

 

 ムニエルはそう言うと端末を操作して、立香のバストアップの写真を画面()()に表示させた。光己とキャスター、そしてその後ろからメリュジーヌとバーゲストがその画面を覗き込む。

 

「うーん、これは間違いなく立香……やっぱり来てたのか」

「はい、私が知ってるリツカでもあります。3歳か4歳くらい若く見えますが」

「……へ!? うーん、すると妖精國行くのは3、4年くらい後ってことになるのか。ずいぶん先だな」

 

 異星の神が来る時期によっては、立香が妖精國に行ったのが(現時点から見て)3年後だろうと4年後だろうとおかしくはない。しかしその間はずっとカルデアに居なければならないわけで、人理修復を担うマスターとは何とも窮屈なものだった。

 

「王子様もリツカも大変ですね……」

 

 キャスターは2人の境遇に本当に畏敬と同情の念を禁じ得なかった。

 人理修復の旅は質的にはキャスター自身がやった予言の旅とそんなに変わらないだろう。それを妖精ならぬ人間の身で3年とか4年とかどれだけー、とか思ってしまう。

 

「まあ仕方ないか。それじゃいつまでも居座ってると迷惑になるし、そろそろお暇しよう。

 それじゃムニエルさん、失礼します」

「あー、えーと。失礼します」

 

 まあそれはそれとして、光己たちは管制室から出るようなので、キャスターもついて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 光己たちは談話室とやらに向かうようだが、キャスターはちゃっかり彼の隣のポジションをキープしていた。カルデアに来られたのはいいが所属しているサーヴァントは美女美少女ばかりで、しかも光己に好意を持っている人が多いようだから、玉の輿に乗るためにはこのような細かい努力も欠かせないのだ。

 

「それにしてもカルデアって、何ていうか……ハイテクって感じがしますね」

 

 逆に妖精國の文明レベルは、もらった知識によると汎人類史(ここ)でいう中世くらいでしかない。良い悪いや正しい間違ってるの問題は抜きにしても、本当に遠い世界なんだなぁと思う。

 

「そうだなぁ。俺から見ても未来的でSFチックだけど、その分無機質で色が無くて温かみがない感じもするな。しかも外は吹雪しか見えないし。

 代わりに個室に観葉植物が置いてあるし、屋内型の農園まであるけど」

「へえー」

 

 そんな雑談をしつつ歩いている途中、光己がふと何かを思い出したような顔をした。

 

「ところで姫は玉の輿志望なんだよな。具体的にはどんな贅沢したいの?」

「へ? あ、うーん、そうですねえ」

 

 突然話を変えられてキャスターはちょっと戸惑った。

 キャスターはただの村娘だったので、たとえば女王や領主が実際にどのような贅沢をしていたかは知らない。美味しいものを食べたりいい服を着たりはデフォとして、住居が広いから使用人の類はいたと思うが、女王や領主がプライベートタイムにどんな暮らしをしていたかは知るよしもないのだ。

 まあ使用人なんて欲しくもないし、そうなると大きすぎる家は負担になるからそこそこのサイズで、その分衣と食……いや衣服や装飾品や金銀財宝にはそんなにこだわりはないから、やはり食に全ツッパになるだろうか。

 

「……食事ですね! 美味しいもの心ゆくまで食べたいです!」

 

 まさにアルトリアの系譜な答えであったが、それを聞くと光己はニヤソと薄く笑った。

 

「ほむ、メシか……今は紅閻魔さんがいるからいいけど、あの人は1年限りって話だからその後が問題なんだよな。いや清姫と玉藻の前とキャットも上手だけど、さすがにプロにはかなわんし。

 ―――だが安心するがいい。俺は今回の仕事と立香と聖杯のおかげでまたちょっとレベルアップして、ついに我が竜種の最上の財を出せるようになったのだから!」

「最上の財!?」

 

 光己が時々見せるこの芝居がかかった仰々しい言動は、これももらった知識によると中二病というらしい。キャスターが点稼ぎのためにツッコミは入れずあえて驚いた顔を見せると、王子様は得々とした様子で説明してくれた。

 

「フッフフ……そう、その名も如意宝珠! 詳しくは報告会の時に改めて語るが、要はあらゆる願いをかなえてくれる、小型の聖杯のようなものなのだ!」

「えええっ、本当なんですか!?」

 

 キャスターが今度こそ本気で驚くと、光己は逆にちょっとバツ悪げに中二オーラを引っ込めた。

 

「いや、()()()()()()はランクが低くてあらゆる願いとまではいかないんだけどね……。

 それでも飲食物や衣服を出したり、病気を治したり()()()()()()()()()できるから、姫の希望はかなえられるよ。他の特異点で聖杯メシ出してたこともあるし」

「聖杯メシ……?」

 

 謎のパワーワードにキャスターが目をぱちくりさせる。その隙に、後ろから何人かの食事にこだわりがあるサーヴァントたちがずざざっと2人の前に躍り出てきた。

 

「素晴らしいですね! 紅閻魔たちは確かに優れた料理人ですが、惜しむらくは和食に偏っているきらいがあります。なので洋食や中華も食べたいと思っていたところなのですよマスター!」

「うむ、それでこそ私のマスターだ。ノーマルが言う通りここのコックは腕はいいのだが、やはり私はジャンクが好みだ。スパムだ、スパムをよこせ!」

「そこまで贅沢は言いませんけど、マスターがごちそうしてくれるご飯と思うと美味しいですから!」

「久しぶりにユニヴァースなご飯食べたいんですけど、出せますかねえ?」

「私はベガス風がいいですね」

 

「…………あー」

 

 そういえばアルトリアズは食事に大変執着があるのだった。それを思い出した光己がちょっとげんなりした顔で頷く。

 光己としては、キャスターは汎人類史を助ける理由が玉の輿の件と立香との友誼しかないので少しでも対価を払おうという意図だったのだが、どうやらそれだけでは済まないようだった。

 まあ減るものではないからいいのだけれど……。

 

「あ、でも如意宝珠というのは聖杯と違ってマスターの私物ですから、それで食事を出してもらうのはマスターに個人的に奢ってもらうってことになりますよね。マスター所属のサーヴァントである私たちはいいですが、人間の所員さんたちは頼みづらそうですね」

「そうですねえ。ま、私は婚約者(フィアンセ)でもありますから何の問題もありませんが!」

 

 リリィの発言にヒロインXXはフンスと胸を張りながらそう答えたが、その中にキャスターにとって看過できない単語があった。

 

「え、あ、ちょ!? ちょっと待って下さい。婚約者って何なんですか!?」

「文字通りですよ。私とマスターくんは深い絆で結ばれていて、人理修復っていうか魔術王を倒したらマスターくんは正式に大奥王に即位して、私はその王妃様になるのです! いえまあ、名前だけで領土も領民もゼロなんですけどね。

 でも今さら国とか会社つくって運営するなんてメンドくさいだけでいいこと何にもなさそうですし、ご飯を生み出す珠(にょいほうじゅ)黄金を生み出す指輪(アンドヴァラナウト)でスローライフする方がいいですよね」

「えええっ!?」

 

 モルガンがこの場にいたらXXの台詞の最後の一行が刺さったわけだがそれはともかく。キャスターはXXがまた誇らしそうに胸をそらせた拍子に無駄に立派なおっぱいがぷるんと揺れたのがちょっとムカつき、でもなく光己の中二病も置いておいて。どうやらXXは本当に光己とくっついているらしいことにびっくりした。

 

「そ、それじゃ王子様って姉妹丼してるってことなんですか!?」

「……どこでそんな言葉覚えたんです?

 まあそれはともかく、姉上のは政略結婚っていうか、王様気質抜けてませんからサーヴァント(めしつかい)扱いされたくないっていうことみたいですよ。いえ仲は悪くありませんけど」

「あー、なるほど」

 

 確かにあの陰険サボリ魔はプライド高そうだったし、光己個人に恨みはなくてもカルデア自体は敵だったから、下風に立つのは嫌なのだろう。嫌みったらしく仮面夫婦めいたムーブをしているのに違いない。

 ならば愛はなさそうだから寝取るのは容易……いやXXの方は愛があるみたいだからこちらの方が強敵か?

 

「でも姉妹丼なのは事実ですよね?」

「それはまあ、大奥王ですからねえ。以前から一夫多妻ですし」

 

 大奥≒ハーレムと王様という男のロマンをくっつけたような称号だが、自分も王を名乗ることで王様系サーヴァントに位負けしないようにするためという実は結構切実な理由もあるので、この名乗りを本気で止めようとする者はいない。

 

「へ!?」

 

 光己が一夫多妻主義者でそれを実際にやっているというのはカルデア内では周知のことだが、キャスターには初耳である。王子様はちょっと女の子好きで、悪い女王(モルガン)にも騙されているかも知れないが、本当はお伽噺(メルヘン)のお姫様の相方らしく真摯で一途な人だと思っていたのに!

 

「お、王子様のえっち学派ーーーー!!」

 

 そしていつぞやのなすびサーヴァントよろしく、光己を突き飛ばして逃げて行ったのだった。

 

 

 




 長いこと引っ張っていた如意宝珠がようやく実装になりましたが、まずは低ランクからになります。「災いを防ぐ」とか「宝物を出す」とかはいきなり出すには強すぎですし(^^;


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