FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第205話 報告会4

 マシュが考えるにこのデンジャラス・ビーストなる服はいくら有用とはいえ盾兵(シールダー)にはアンマッチだし、何よりハレンチすぎる。こんな物を着て人前に出られないし、かといって他の人に押しつけるのも憚られる。

 とはいえ有用な魔術礼装なのは事実だし、下心満載とはいえ「先輩」が贈ってくれた物を捨ててしまうのも気が進まない。

 

「ですのでこれは私が厳重に保管しておきますね!」

「つまり人前では着ないけど、俺と2人きりの時は着てくれるってことでOK?」

「どうしてそうなるんです!?」

 

 マシュは真っ赤になってぷりぷり怒っているが、口調や雰囲気にはトゲがないので、実際は怒りより羞恥心の方が大きいのだと思われる。オケアノスでは一緒にお風呂に入ったり同じテントで寝たりしたほどの仲なので。

 

「むう、このお固さは盾兵だからか、それとも箱入りだからなのか……?

 しかし話をいつまでも引き延ばすのも皆に悪いし、次に行くべきか。というわけでアイリスフィールさん、どうぞ」

「うーん、これも普通の服とはだいぶ違ってそうね……!?」

 

 アイリスフィールは普通に服を受け取ったが、マシュのがアレだったのでまずはちゃんと見てみることにした。

 ツノと翼と尻尾の形状からすると、悪魔を模したデザインのようである。胴体部分は露出度高めの水着かレオタードのような感じだった。

 

「ガーターベルトとストッキングとアームカバーまであるから、水着でもなさそうだけど……?

 女王様、これはどういう服なのかしら?」

「そちらは『ハロウィン・プリンセス』といいまして、攻撃力と耐久力、さらには宝具あるいはそれに類したものの威力も高めてくれるんですぅ。

 さらには宝石魔術のように事前に魔力を貯蔵しておいて、宝具を使う時に一気に引き出すという用法もできますぅ」

「まあ、するとこれはハロウィンの仮装をイメージして作られたものなのね?

 ……ああ、それで悪魔ってこと! 何だかわくわくしてきたわ。でも今はまだ1月だから当分先ね。残念だわ」

 

 仮装用の服だとするとかなり露出度が高いデザインだが、アイリは気にしていないようだ。それよりハロウィンパーティーの方が楽しみな様子である。

 天の衣を披露した時はちょっと恥ずかしがっていたが、おそらく光己の視線を感じたからだろう。あるいは下着をつけていなかったからかも知れない。

 

「うん、10ヶ月近く先ってのはさすがにアレですよねえ。

 ところでマシュに贈った服も多分ハロウィン用だと思いますので、ここは逆に考えて、2ヶ月遅れの仮装パーティーを3人でやるっていうのはどうでしょう」

 

 こちらは脈アリと見た光己が(マシュも入れることで2人きりになるわけではないという小細工を弄しつつ)すかさずアプローチしてみると、アイリはわりと乗り気そうな顔をしてくれた。

 

「いいわね、カボチャ料理とかは貴方が用意してくれそうだから紅閻魔さんに負担かけずに済むし。

 でも貴方用の服はあったの?」

 

 もちろんそれはある。あるから提案したのだ。

 

「それはもちろん。かなり重いですが、アイリスフィールさんとの仮装パーティーのためなら平気平気」

 

 などと調子のいいことを言いながら波紋から西洋風の全身甲冑一式、さらに剣と槍と手榴弾を取り出す光己。これにはアイリも驚いた。

 

「うわあ、そんなものまであったの?」

「ええ、こちらもかなりの掘り出し物です。シバさん、解説お願い」

「はいは~い。まずそちらの武具一式は名前はついていませんが、伝説の()()()()()()がとある強敵と戦う時に使った逸品ですぅ。オークションに出したらいくらになるか見当もつきませんねぇ。

 手榴弾の方は()()()()()がそれとは別の冒険で使ったものの複製品ですね。複製品とはいえ、なかなかの神秘がこもってますからお値段はそれなりにいけそうですぅ」

「へええっ!? 本当なのアルトリア」

 

 アイリは冬木では別のアルトリアのマスターだったので、アーサー王ゆかりの品と聞いてまた驚いた。とりあえず当人に真偽を訊ねてみる。

 

「うーん、私はどれにも見覚えありませんが……鎧は明らかに体格が合いませんし、まして手榴弾なんて見たこともありません。

 ルーラーにXX、貴女がたはどうですか?」

 

 アルトリアは自分やオルタとは違う人生を歩んだと思われる2人に水を向けたが、こちらの2人も知らないようだった。

 

「うーん、私も生前にこのようなものを使ったことは……」

「そうですね。もし女王の鑑定が正しいとするなら、平行世界で男性に生まれた私が使ったものだと思います」

「へええ……」

 

 平行世界の存在については、アイリ自身やカーマが今ここにいることで証明されている。アーサー王が男性だった世界もあるだろうし、その世界の物品が何かの拍子で流れてきたというのはあり得ないことではない。

 

「しかし今の女王の解説、『騎士アーサー』と『アーサー王』と言い分けられてますね。修業時代と王位に即いた後の区別までつくとは、さすが聖書で語られた知恵の女王です」

「いえいえ、それほどでもぉ」

 

 ルーラーがシバの鑑定眼を賞賛すると、シバはにこやかに微笑みつつ謙譲の美徳を発揮した。

 ただシバは銭ゲバの傾向があるのを早々に露呈していたが、多分計算の上でのことであろう……。

 

「手榴弾は神秘が乗ってるって話だからダ・ヴィンチちゃんに暇を見て複製をお願いするとして、甲冑の方も女性用に鍛え直して欲しいところなんだよな」

 

 そこに光己がまた何か技術局の仕事が増えることを言い出すと、当人より先にアルトリアリリィが反応した。

 

「つまり私にくれるってことですか?」

「うん、それもアリだけどいつかエリザベートに必要になるような気がするんだ。根拠はなくて勘だけなんだけど。もともと彼女(シンデレラ)の家にあった物だしね」

「へええ~~。まあ私は重鎧着込むタイプじゃありませんのでいいんですけど」

「うん、だからとりあえずその時まで保留ということで」

「はい」

 

 そんな感じで武具一式の扱いは決まったが、それを待っていたかのようにマシュが光己に喰ってかかった。

 

「甲冑の扱いに異議はありませんが、私はパーティーに出るなんて一言も言っていないんですが! だからといってアイリスフィールさんと2人きりはもっとダメですけど!」

 

 まあ当然の主張だったが、そこに意外な横槍が入る。

 

「そんなに嫌なんだったら、私がその礼装引き取りましょうか?」

「え、所長!?」

 

 しかもこの言いようだと、パーティー()に参加するつもりなのではあるまいか。比較的潔癖な方だと思っていたオルガマリーがこんな話に乗ってくるとは。

 

「だってその礼装、サーヴァントが着ても有効なくらい強力なんでしょ? 人間の魔術師が着たらどれくらいの効き目になるのか興味はあるわ。術式の解析もしてみたいし。

 その格好で日常業務やれって言われたら嫌だけど、藤宮に1回見せるだけなら安いものよ」

「そ、それはまあ……」

 

 オルガマリーの言い分は一理、いや三理くらいある。マシュは言葉に詰まった。

 しかしこのような暴挙を受け入れるわけにはいかない。

 

「でもダメです! これは私がもらった物なんですから、所長は安心して業務に専念して下さい!!」

「そ、そう? 残念ね……」

 

 なのでマシュは感情の赴くままに、礼装を抱えたまま脱兎したのだった。

 

 

 

 

 

 

 逃げたマシュをメリュジーヌが文字通り飛んで行って連れ戻すと、報告会はつつがなく再開された。

 

「本当は地図とか元凶の手掛かりが欲しかったんですが、それはなかったんですよね。まあゼノビアさんが来てくれたから何とかなりましたけど」

「うむ、こちらもマスターに乗せてもらったおかげで移動が楽になったからWinWinというやつだな。そもそも私1人で進んでいたらおそらくどこかでやられていただろうし」

「うん、やはり現地サーヴァントとは仲良くするべきだと再確認した」

 

 それが美女美少女で有能とくればさらに倍プッシュなのだが、光己はそこまでは口にしなかった。

 

「ああ、順序が逆になったけど、家探しの前に情報交換はちゃんとしましたよ。

 それで城の場所と行き方が分かりましたし、砂漠の中に街があることも教えてもらいましたし」

「砂漠に街……なるほど、オアシスの街ってことね」

 

 オルガマリーがほわーっとした声をあげたのは、多分アラビアンな砂漠の街を想像して異国情緒を感じたからだろう。あるいは行ったことがあるのかも知れない。

 

「はい、ゼノビアさんのおかげで要らないトラブルやぼったくりに遭わずに済んで良かったです。やはり現地現時代サーヴァントは正義……!

 あ、これ街で買ってきたお土産です。マジックアイテムとかはなくて、露天市で買ってきた食べ物や日用品ですけど」

「うん、いつもありがとう」

 

 光己が波紋から袋を出してオルガマリーに渡すと当人は嬉しそうに受け取ったが、例によって太公望はまた首をかしげた。

 

(買ってきたお土産……?

 そう都合よくカルデアが特異点で使える通貨を持っていたとは思えませんが、先ほどの一軒家にあったということでしょうか? いやマスターはそうは言わなかったような)

 

 それとも光己がもともと持っていたのだろうか? というか彼が出すあの黒い波紋、どこにつながっているのだろう。

 彼は見た目の印象は道士や魔術師ではなく市井の善良な一般人なのだが、魔力はやたら強い上に人外のものだし、先ほどもドラゴン云々という話があった。いったい何者なのだろうか。

 

(聞くべきか、聞かざるべきか……これは難しいですねェ)

 

 サーヴァントとして人理修復という大業に臨むなら、マスターの素性や生い立ちや性格や能力を知っておくのは必須、とまでは言わないが重要である。しかしただの一般人でないのならそこにどんなトラウマが潜んでいるか分からないわけで、知り合った直後にいきなり踏み込むのは軽率かも知れない。

 ただでさえ、(光己が人理修復のために訓練を積んできた魔術師か軍人の類でないのなら)大変な仕事に巻き込まれてストレスが溜まっているはずだし。

 

(もう少し様子を見ますか……知ってそうな人に聞くという手もありますし)

 

 なので太公望がこんな結論に至って沈黙を保っていると、光己の話はその街に入って買い物して昼食を摂っていたらまたサーヴァントが現れたという展開になった。

 

「仕方ないんでそっちに行ったんですが、街の外壁の上に行ってみるとサーヴァント1人を別のサーヴァント1人と手下40人が追いかけてるって構図だったんですよね。

 で、追われてる方を真名看破してもらったらシバの女王さんでしたので、先手を取ってメリュに確保しに行ってもらったんです」

「女王と『魔術王』の関係にすぐ気づいて、しかも僕に頼めばすぐ連れて来られることにも考えが及ぶなんて、やっぱりお兄ちゃんは賢いね!」

「そりゃまあ、メリュの兄貴なんだからそのくらいはね」

「えへー」

 

 間接的に褒める上に好意も示した台詞に妹はご満悦であった。

 まあ確かに、高校2年生がとっさにした判断としては上々のものといえよう。

 そして次は名前が出たシバの女王の番である。光己は褐色露出多めおっぱい美人に左右から挟まれて大変幸せだったが、シバとはまだそこまで親しくなっていないので顔に出すのは控えた。

 

「え~と、私の番ですねぇ~。

 私もはぐれサーヴァントでしてぇ、何故か『アリババと40人の盗賊』のアリババの役を付けられて現界したんですよぉ。迷惑ですよねぇ」

 

 シバが困り顔でそう言うと、バーヴァン・シーがしごく同意といった風に頷いた。

 といってもバーヴァン・シーには実害というほどのものはなかったのだが、シバにはとても大きな実害があった。

 

「そのせいでさっきマスターが言った40人、つまり『40人の盗賊』に追われてたんですよぉ」

「ああ、『アリババと40人の盗賊』ってそんな話だったわねえ。

 でもどうしてそんな役つけられたのかしら?」

 

 オルガマリーが同情しつつもそう訊ねてみると、シバも光己も首をひねった。

 

「うーん、それは最後まで分からなかったんですよねぇ。

 モレーさんは色々語ってましたけど、その辺には触れなかったですし」

 

 光己の体内の聖杯を奪うのが目的だったのなら、はぐれサーヴァントに童話の登場人物の役をかぶせる、いや役をかぶるようにする必要はなかったと思うし、実際それでモレーが何か得をした様子はなかった。

 

「あるいは、モレーさんが意図的にやったんじゃないのかも知れません」

「なるほど、特異点をつくってる内に偶発的にそんな法則ができちゃったということもあり得るのね……。

 特異点修正ってホント大変なのね。みんなありがとう」

 

 オルガマリー自身何度か特異点に行ったことがあるが、正直に言って大した手柄は立ててない。だから光己とサーヴァントたちには感謝と敬意を忘れないようにしたいし、自分の今のメインの役目である裏方の取りまとめはきっちりやり遂げたいと改めて思うのだった。

 

「どう致しまして。所長のお仕事も大変でしょうけど、あんまり無理しないで下さいね」

 

 すると光己がそう言ってくれたが、実際オルガマリーの仕事は魔術王を倒した後が本番なので、今根を詰め過ぎるのは良くないのだった……。

 

「……うん。

 それで、『40人の盗賊』の方のサーヴァントは誰だったの?」

「…………黒髭。エドワード・ティーチです」

「黒髭」

 

 忘れもせぬ、あれはオルガマリーが管制室でオケアノス特異点における最終決戦を見ていた頃……黒髭、エドワード・ティーチはその(おぞ)ましき言動によりカルデアの女性陣を阿鼻叫喚の坩堝(るつぼ)に陥れた恐るべき強敵だった。その黒髭がまた現れたというのか。

 

「ええと、その……本当に大変だったわね」

「そうですね、たった1人で追われていた女王の心中は察するに余りあるかと」

 

 男の光己でさえ、二言三言話しただけで甚大な精神的ダメージを受けたのだ。若い女であるシバが冷静さを保てていたのは僥倖だったといえよう……。

 

「今回は黒髭は1人きりで、しかも思い切りアウェーの地だったのに、倒すの苦労しましたからねぇ。世界一有名な海賊だけのことはありました」

「そうねえ。まあ黒髭にとっても望ましい召喚じゃなかったとは思うけど」

「―――」

 

 光己はここで「黒髭は『愛しのシバにゃん』とか『拙者のピュアなハートを盗まれた』とか言ってましたから、美女美少女美幼女がいればどこでもOKだと思います」と言おうと思ったが、シバの心情に配慮してやめておいた。

 

「まあ黒髭についてはあまり語りたくもないのでこの辺にして。

 その後はシバさんと改めてお話して、人理焼却と魔術王のこと話したら仲間入りしてくれたわけです」

「はぃぃ~、あの方の冤罪を晴らすためですから」

 

 まだ冤罪と決まったわけではないのだが、シバとしてはそう思いたいのだった。

 

「ええ、一緒に頑張りましょう。

 それでその後はどうしたの?」

「さすがにすぐ出立する気にはなれませんでしたので、気分直しがてら街で買い物して宿屋で一泊して、次の日の朝になってからチェイテ城に行くことにしたんです」

「なるほど、まあ妥当なところね。

 でもエリザベートはともかく、城まで召喚されたのはどういうことなのかしら。いろいろ謎が残るわね」

「そうなんですよねぇ……」

 

 オルガマリーがふと口にした疑問に、光己も改めて首をひねるのだった。

 

 

 

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