FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第208話 精霊様からのヤバい礼品

 報告会が終わったら予定通り新入りサーヴァントたちに構内案内と部屋割りをするわけだが、これはいつものことなので特に滞りもなく終了した。しかしその時にはもう夜になっていたので、諸々の細かいことは明日にして今日のところは解散と相成った。

 ただヒナコには、光己に約束していた礼品を渡すという用事がある。光己の方は1人で行くのは何なので、この機に項羽と虞美人からサインと写真を貰おうという意図もあってエリセを誘って同行した。

 その道の途中、ふとヒナコが光己に訊ねる。

 

「そういえば後輩、おまえ如意宝珠を持ってるんだったわね。談話室で『食べ物や衣服出すのと、あと病気治すのと濁った水を清めるのだけ』って言ってたけど本当なの?」

「本当ですよ。低ランクのやつですので、ここの制服みたいな魔術付きの服とかは無理ですけど」

「そう……じゃあ肩や背中の()りは治せたりする?」

「肩こりですか? そうですね、完治すると約束まではできませんが、効き目はあると思います」

 

 それを聞くとヒナコは思い切りガッツポーズを決めた。

 

「よっしゃー!

 じゃあちょっとお願いするわ。何千年も生きてると結構深刻でね」

 

 すると光己が答える前に、ヒナコの傍らにいた項羽が口を開いた。

 

「ふむ、我が妻は精霊の身でありつつも、人が持つような身体的な悩みも持ち合わせていたか……。

 ならば私が、夫として按摩(あんま)の1つも学ぶべきだろうか?」

「こ、項羽様!? い、いえ項羽様にそのような手間をかけさせるわけには、ああでも項羽様にマッサージしていただけるなんて最高すぎじゃないかしら!? それでもって、していただいてる内にお互い気分が高まってきて(ry」

「……」

 

 ヒナコが顔を真っ赤にしてくねくね踊り始めたので、光己とエリセはちょっとあきれつつも項羽に目配せしてフェードアウトしようとすると、さすがに気づいたヒナコが正気に戻って光己の手首をつかんだ。

 

「待ちなさい、いくら何でもそこまで色ボケしてないわよ。

 それに褒美を与えると言ったでしょう」

「アッハイ」

 

 そういうわけで4人はヒナコの部屋に入ると、ベッドの上でうつ伏せになったヒナコの傍らに光己が立って如意宝珠をかざした。

 

「それじゃ始めますね」

 

 光己が如意宝珠に念を込めると、珠から白く柔らかな光が放たれてヒナコの背中に吸い込まれていく。数十秒ほどすると、ヒナコがもう感極まったかのような気持ち良さげな声をあげた。

 

「おおぉおぉ、これは凄い、これほどとは……。

 積年の凝りが嘘のように溶けていくではないか。閻魔亭の按摩は仙人の技だったが、それとはまた違った絶妙さよ……」

「おお、効果あったか。精霊にも効くってよく考えたらすごいな」

「というか閻魔亭に按摩のサービスなんてあったんだね。雀の羽や足でどうやってたんだろう」

 

 ……などと光己とエリセが感心したり雑談したりしていると、ヒナコが注文を付けてきた。

 

「しかし……ううむ。絶妙ではあるが、完全とはいかぬ……。

 もう少し強くならぬものか?」

「強くですか? はい、でも初めてやることですので、強すぎだったらすぐ言って下さいね」

 

 光己がそう前置きしてから、少しずつ珠の出力を上げていく。するとヒナコは全身が汗ばみ、悲鳴のような声を上げ始めた。

 

「お、ぉぉおぉぉ……こ、これは……。

 身体の芯までほぐれるどころか、煮られて溶けていくような……ぉぉお……んぅぁ。

 何という威力……し、しかし項羽様以外の者の前でこんなだらしない声を出してしまうとは……」

「うーん、それはご自身でこらえていただくしか……あと身体に力入れるとエネルギーの通りが悪くなりますので、リラックスして下さいね」

「うむ、それはもう頭はともかく体は強制的に溶かされているが……ふぉぁ」

 

 ヒナコは積年の凝りとやらが治っていく感覚が相当激しいらしく、身内以外の人の前で出してはいけない声と表情をしているが、自力で止めることはできないらしい。

 なおその項羽はどうしていいか分からないらしく、とりあえず沈黙していた……。

 しばらくすると感覚が収まってきたのか、ヒナコは表情が普段通りになり声も出さなくなってくる。

 

「そろそろ良くなった感じですか?」

「……………………そうね、もういいわ。感謝する」

 

 光己が訊ねてみるとたっぷり20秒ほども経ってから、ヒナコはうつ伏せのままちょっとかすれた声で返事してきた。

 そして光己が如意宝珠を引っ込めると、いかにも大儀そうにのろくさと体を起こす。

 

「……ふぅ。まさかカルデアに来てこんな癒しを体験するとは思わなかったわ。

 シャワー浴びてくるからちょっと待ってなさい」

 

 そう言って、ちょっとふらふらしながらシャワールームに歩いて行った。

 肌が火照って汗だくなのは、血行促進とか新陳代謝とかデトックスとかそういうのが大量に行われたからだろう。

 項羽は心配そうにしているが、光己とエリセの前でシャワールームに付き添うのは気が引けたのか、何か他の配慮があるのか、はたまたそこまでする必要はないと判断したのか、そのまま妻の後ろ姿を見守っていた。

 待つことしばし、ヒナコがいかにもすっきりした様子でシャワールームから出て来る。

 心なしか、その美貌もまた一段増したように見えた。

 

「待たせたわね、それじゃ約束通り礼をしよう。望みのものを好きなだけ持って行くがいい」

 

 そう言いながら部屋の隅に置いてあった箱を持ってきて、物をたくさん置ける場所がないことに気づくと床にシートを広げて箱の中身を並べ始めた。

 

「仙境の秘宝ってわけでもないのに、人間の商人に見せると馬鹿みたいな買値がつくのよね。ホント人間の価値観って分からないわ」

「ほむ……おお、これは確かにグレートな品揃え……」

 

 光己はシバの女王の「精霊の目」ほどの高等な鑑定眼は持っていないが、「コレクター:D」のスキルによりお宝の価値を何となく値踏みすることができる。それによると二束三文にしかならないものもあったが、出す所に出せば驚愕の高値がつくものや、金銭では評価できない代物すらあった。

 

「光己さん分かるの?」

「うん、といってもごく大ざっぱにだけどね。

 特にすごいのはこの木の枝っぽいのと、本の中でもこの2冊だな。この辺の陶磁器も相当な骨董品と見た」

「それに目をつけるとは言うだけのことはあるわね。その枝は『蓬莱の玉の枝』といわれてるやつの本物よ。ああ、これだけは『仙境の秘宝』っていってもいいかもね」

「デジマ!?」

 

 光己もエリセも噴き出しそうになってしまった。蓬莱の玉の枝といえば「竹取物語」に登場する有名なレアアイテムであり、閻魔亭で鵺が盗まれたと主張していた品物でもある。

 夫を妻の元に連れてきたお礼にもらう品としては最上級のものといえるだろう。

 

「本は題名が書いてあるね。『太平要術の書』に『遁甲天書』……って、確か三国志の張角だか左慈だか于吉だか、その辺りの人が持ってた本だよね。本物!?」

「うん、この感覚だと原本か、写本だとしてもかなり良品」

「ほんとに」

 

 エリセはまたびっくりしてしまった。まさかこちらも創作上のアイテムではなく実存したとは。

 まあ太公望が普通の軍師ではなく道士だったのだから、仙術について書かれた本があっても当然なのかも知れない。

 

「じゃ、この3点をいただくということで……」

「陶磁器も持っていっていいわよ。私にとっては大したものじゃないし、おまえなら邪魔にならないでしょう?」

「それじゃお言葉に甘えて。それとこの際ですので、お2人のサインと写真が欲しいんですが」

 

 約束の品を受け取ったところで光己が計画通りいつものお宝をお願いしてみると、ヒナコは一瞬首をかしげた。

 

「サイン? 写真? ああ、そういえばさっきもそんな話してたわね。

 そうね、項羽様がいいんだったら」

「ふむ。この2人が悪しき呪術に使うとも思えぬし、断るほどのことはなかろう」

「おお、ありがとうございます!

 あーでも芥さんは現代の服着てると虞美人っぽくないですね。服出しますので、着替えてもらえませんか?」

「……別にいいけど」

 

 ということで、光己は「蓬莱の玉の枝」「太平要術の書」「遁甲天書」「考古学的にヤバい陶磁器10点」「項羽と虞美人のサインと写真」を手に入れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 その夜。光己が床に就いてからふと気がつくと、マンションの一室の土間らしき所にぽつんと立っていた。寝た時と同じパジャマを着ている。

 どうやら知らない部屋のようだ。電灯がついていなくて暗いが、暑くも寒くもなく適温なのでエアコンはついているのかも知れない。

 

「……? もしかしてまたレムレムレイシフトか?」

 

 とりあえず壁にあったボタンを押してみると、電灯がついて明るくなった。正面は廊下になっており、左右に風呂・トイレ・洗面所・台所がある。

 廊下の向こうはドアになっていてその先は見えない。

 

「……うーん。玄関前じゃなくて土間に出たんだから、この家から出るんじゃなくて部屋を訪ねるべきなんだろうけど……用心はしといた方がいいか」

 

 そこでまず波紋を出してみたが、メリュジーヌは来なかった。彼女が寝ていたら感知できないようだ。

 ジャンヌとジャンヌオルタも「白夜」に戻していないので、今呼び出すことはできない。

 

「仕方ない、せめて武器でも持っとくか? いやそれじゃモロ強盗だな」

 

 光己はしばらく悩んだ末、「白夜」を服の内側に隠していくことにした。そしておもむろに廊下に上がり、ドアを軽くノックする。

 しかし反応はない。今一度、もう少し強く叩いてみる……が、やはり返事はなかった。

 

「むう……しょうがない、入ってみるか」

 

 慎重にノブをつかみ、軽く回してみる。カギはかかっていなかったようで、ドアはゆっくりと開いた。

 

「…………」

 

 その向こうは12~14畳くらいの洋間だった。電灯はやはりついていない。

 室内には机やら本棚やら姿見やらいろいろ家具が置いてあるので空き部屋ではなさそう……というか部屋の真ん中に布団が敷いてあり、誰か女の子が眠っていた。

 

「うーむ、珍しい展開だな……」

 

 光己がそう呟きつつ左右を見回すと壁に先ほどと同じボタンがあったので押してみると、ぱっと部屋の電灯がつく。

 それで光己が部屋の主の素性に気づくのと、部屋の主が目を覚ましてこちらを見たのはほぼ同時だった。

 

「え、まさか立香!?」

「光己!?」

 

 何とびっくり。立香が昼間言っていた「光己がその気になれば夢の中で会えると思う」が本当に起こったのである!

 

 

 

「……えーと。いったん部屋出た方がいい?」

 

 親しい幼馴染とはいえ女の子が寝ている部屋に入ってしまったということで光己がこう訊ねると、立香は気にした風もなくむっくりと上体を起こした。

 

「ううん、大丈夫だよ。まだ寝入ってなかったし」

 

 そしてかけていたタオルケットをどけて立ち上がったが、その直後に2人してびっくり顔で頬を染める。

 何故なら立香は1人暮らしの部屋着ということで、ラフにタンクトップとパンツだけという寝姿だったのだ!

 ちなみに上下とも無地の薄ピンク色のシンプルなもので、ブラジャーはつけていないことも光己の鑑定眼にはしっかり識別できていた。

 

「え、えっと。ちょっと向こう向いててくれる?」

「お、おう」

 

 お宝映像はちゃっかり心のHDDに保存しつつも言われた通り回れ右する光己。やがて後ろから「もういいよ」という声が聞こえたのでまた向き直ると、立香はさっきの服にドルフィンパンツだけ追加して立っていた。

 これでもかなりラフというか露出高めだが、光己なら構わないらしい。

 

「あーびっくりした。

 でもまさか初日に来てくれるなんて思わなかったよ。ありがと、すごく嬉しい」

 

 立香がそんなことを言ってくれたので、光己も言葉を返しておくことにした。

 

「そだな、俺も立香に会いたいと思ってたけどホントに来られて嬉しいよ。

 うん、これこそまさに愛の証明だな」

「うんうん、私も愛してるよー」

 

 などときわどいことを言い合っているが、これでもこの2人恋愛関係ではないのである。

 

「とりあえずその辺に座って。お茶淹れてくるから」

「ん」

 

 光己が頷いてテーブル、というか布団を外したコタツの前に腰を下ろすと、立香は台所からお盆にポットとカップとお菓子を乗せて持ってきた。

 

「さっき光己にお願いして食べてもらったスイーツだよ。他にも出して食べてみたけど、5つ星だけあってどれもこれも美味しかった!」

「そっか、それは良かった」

 

 光己は特に甘いもの好きというわけではないが、ケアしてくれている幼馴染が喜んでくれるなら何よりだった。

 しかしこちらが出すもの出した以上、もらうべきものももらわねばならぬ。

 

「うん、言わなくても分かってるよ。3着あるけどどれがいい?」

「え、3着?」

 

 さすがコミュEXは察し力が違った! しかし3着とはいったい。

 

「オケアノスでアルトリアさんのランサーのオルタ?さんがランジェリーみたいなの着てたでしょ。あれもあるんだよ。

 光己の思春期パワーはすごいねえ」

「マジか。じゃあそれで!」

 

 ならばチョイスはそれしかない。他の2着はマシュとアイリスフィールに着てもらえるが、あのランジェリーは今ここでしか見られないのだから!

 今でも鮮明に思い出せる、あれは白い薄布のベビードールめいたデザインで、花柄模様をあしらった部分以外は半分透けて見えるという危険な服だった……。

 裾は一応足元まであるのだが、体の前面部分は腰の左右から深いスリットが入っていて、脚の前面はほぼ露出している。

 透けて見えているパンツは黒で、布面積少なめの上に細かいレース模様が入っているアダルティな一品だった。しかもそこに黒ガーターベルトと黒ストッキングも添付しており、総じて男性の情欲を煽ることに特化した服といえよう。

 

「おおぅ、まさか即決でそれを選ぶとは。光己に女の子にえっちなランジェリーを着させて喜ぶ趣味があったなんて……」

 

 立香は大げさに震え上がるポーズをしているが、本当にイヤなら最初から教えなければ良かったわけで、単に言葉遊びをしているだけであろう……。

 実際顔色も変えずに立ち上がってタンスに向かった。

 

「それじゃまた向こう向いててね」

「おー!」

 

 そしてまた待つことしばし。立香は本当にあのえっちな礼装?を着てくれた!

 さすがに恥ずかしいらしく頬を赤くしてもじもじしているが、普段の活発美少女ぶりとのギャップで凶悪的なまでに可愛い。

 問題の首から下だが、この服はランサーオルタのような大人の女性向けと思われる意匠だけにやや浮いてみえるきらいはあるものの、色っぽさは普段の200%増である。たわわに育った胸の谷間を思い切りよく出していたり、ピンク色の突起が微妙に透けているように見えるのもポイント高い。

 黒のパンツとガーターとストッキングも、健康的な素肌とのコントラストが実に映える。

 

「おおぉ、これはマジでヤバいですよ立香=サン……」

「あー、えーと。あんまり見つめられると恥ずかしいから、ほどほどにしてくれるかなぁ……?」

 

 思わず見入ってしまっていた光己だが、ちょっと引いたような声で苦情をつけられて我に返った。

 

「あー、ごめんごめん。立香があんまり綺麗だったからさ」

「うん。見せるために着たんだから見るのはいいけど、襲うのはやめといてね」

「それはもう。嫌がる立香を無理やり押し倒すなんて絶対にないから」

 

 光己はその点にはそれこそ絶対の自信があったが、すると立香はちょっと訝しむような顔をした。

 

「……うん。でももし嫌がってなかったら?」

「嫌がってないなら問題ないんじゃないか? 責任取れるだけの甲斐性はあるつもりだし」

「それもそっか」

 

 しかしすぐ納得してしまったようで、光己に倣ってコタツの前に腰を下ろした。

 

「それじゃお茶とお菓子、どうぞ」

「おー、ありがと」

 

 立香が紅茶を淹れてくれたのでそれを飲みつつ、約束通りあーんしてでスイーツを食べさせてもらう光己。1度食べたものだが、何度目でも美味なものは美味だった。

 えっちな服を着た可愛い幼馴染のあーんしてプレイで倍プッシュだし。

 

「うん、実際美味しいな」

「2人でこうしてお茶するの久しぶりだよね。懐かしいな。

 和むねえ、幸せだねえ」

「うん。ベタな言い方だけど、日本にいた頃はこんな毎日がずっと続くと思って……いや、そういうことを考えてもなかったな」

「平穏な日常がある日突然、ってやつだね。

 ……日常といえば、光己は人理修復、っていうか魔術王倒したらどうするの? いったん日本に帰るの?」

 

 何だか日本にいた頃のような気分になってのんびり心地だった光己だが、そう問われて頭の回転をちょっと速めた。

 

「そうだなあ。異星の神が来るのが分かってるといっても、スジでいうならBチームとかの人に任せて俺や立香は引退になるところなんだろうけど」

 

 とはいえアルビオンより強い魔術師なんていないだろうし、モルガンやワルキューレズあたりは光己が途中で投げ出すのは許さないような気がする。他のマスターに移籍なんて納得するはずもないし。

 

「だから異星の神打倒までカルデアにいることになると思うな。

 でも立香は別に……いや待て。実は俺はカルデアには拉致されて来たんだけど、立香はどういう経緯でカルデア(ここ)に来たんだ?」

 

 立香はレイシフト適性100%だそうだが、それでも普通なら高校生が年度途中に外国の会社?に就職するなんてことはまずない。光己自身のケースと同様、非合法なことが行われたのではあるまいか。

 

「あ、光己もそうだったんだ!

 私は献血に行った時に適性がどうとか言われて熱心に勧誘されたんだけど、初対面の女の子にいきなりそんな話持ち出すなんてどう考えても怪しいよね。だからどうにか波風立たないように穏便に抜け出そうと思ってのらりくらりしてたら眠くなってきて、気がついたらカルデアにいたんだよ。

 目が覚めた時は『誘拐か!? 身代金か!? 犯罪組織か!?』ってなってパニクったけど、周りにいた人は全然そんな感じじゃなくてさ。でもスマホは圏外で外とは連絡取れないし、何がどうなってるのか分からないからとりあえず流れに任せてたら例のテロに巻き込まれたってわけ」

「うぬぬ、俺とまったく同じだな。俺だけならともかく立香まで……ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」

 

 光己は激怒した。かならず、かの邪知暴虐の誘拐犯をシバかなければならぬと決意した。

 

「でもレフは別として、所長やドクターやダ・ヴィンチちゃんが犯罪に手を染めるとは思えんからな。組織ぐるみじゃなくて、担当者個人の暴走ってとこか? あんまり後先考えてなさそうだけど」

 

 もし光己と立香がオルガマリーたちに訴え出たら、担当者はしかるべき罰を受けるだろう。それを考えてなかったのか、分かっていてやるほど追い詰められていたのか?

 

「でも拉致は拉致だからな。俺の父さん母さんも立香のご両親も警察に捜索願出してるだろ。それで何ヶ月も経ってからひょっこり帰ってきたら面倒なことになるだろうなあ」

 

 そこまで口にした時、光己はふともっと根本的な問題に気がついた。

 

「……って、待てよ。前にちょっと話したことがあるんだけど、神秘の秘匿ってかなり重要らしいからカルデアとか魔術とか人理修復とかサーヴァントとか、その辺全部社外秘だよなあ。拉致の件を別にしても、俺たちがどこで何をしてたかは一切しゃべるなって話になるんじゃないか?」

「ふええっ!?」

 

 これには立香も驚倒した。両親だけならともかく、警察に黙秘しきれるとは思えないのだが。

 いやそもそも、そんな事情があるなら何故一般人を勧誘したのか!?

 

「だから1番手っ取り早いのは口封じに始末しちゃうか、さもなきゃ魔術で記憶を消すとか、そういう方向だろうなあ。

 所長たちが俺たちを殺すってのは考えづらいけど、神秘の秘匿ってやつの重大さによっては記憶を消すのはあり得るな」

「うぐぐぅ~~。そりゃ拉致とかテロとか凍結とかいい記憶じゃないけど、消されちゃうのは嫌だなぁ。

 それに記憶がなくなっても追及はされるよね」

「うん、俺たちはまったく幸せにならない。

 だからまあ、日本に帰らずカルデアに就職するか、どこか遠くで新しい人生始めるか、そんな感じになるんかな? 俺は表世界に残りたかったらモルガンと一緒にイギリスに行くしかない身だからそっちの選択の余地はないけど」

「あー、光己にはそっちの問題があったんだったね」

 

 その辺は立香にも思うところはあったが、当人が後悔していないのは知っているので言及は避けた。

 

「まあ立香は解凍してもらってから所長たちに相談すればいいだろ。俺が同席すれば悪いようにはされないだろうから」

「……うん、ありがと。光己はいつも優しいね。

 それじゃ胃が痛くなる話はこの辺にして、楽しい話にしようか」

「そだな、じゃあそのランジェリーの素晴らしさについてでも語る?」

「それは『楽しい』じゃなくて『えっち』っていうんだよ」

「むうー」

 

 ……などと仲良くお茶している内に、2人はだんだん眠くなってきた。

 

「まあもう夜中だしな。立香、もう寝る?」

「うん、それじゃその前に歯磨きしとこっか。ここの食べ物で虫歯になるかどうかは分からないけど、歯ブラシと歯磨き粉はあるから。

 ……って、そういえば光己って自分の意志でここから帰れるの?」

「いや、実はレムレムから帰るのはいつも強制だから、自分で帰ったことってないんだよな」

「そっか、じゃあ一緒に寝よう。目が覚めた時には帰ってると思うよ」

「いいの?」

「うん、もちろん」

 

 女の子と同衾するということで光己が一応念押しすると、立香は安心しきった表情で答えてくれた。

 光己の方にも前言を翻すという選択はないので、2人は健全な一夜を過ごしたのだった。

 

 

 




 蓬莱の玉の枝は原作の閻魔亭イベでパイセンが持っていたもので、陶磁器はラスベガスイベで持っていたものですね。でもそれだけでは寂しいので、読書好きという設定からヤバい本も追加してみました。
 ぐだの拉致については漫画版でも描かれているのですが、ホントどうなっているのか……。


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