FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第211話 霧都の殺人鬼

 サーヴァントと人形?の群れ、リーダーがどちらに注力すべきかといえば、考えるまでもなくサーヴァントの方だろう。なので光己は北側を向いて、背後は妖精國組で1番頑丈そうで体も大きいバーゲストに守ってもらうことにした。

 

「ふむ、まあ仕方ないか」

 

 バーゲストとしては帰参してからは初陣となるこの戦いで目立てないのはちと不本意だが、マスターの言うことは妥当である。素直に承知した。

 彼は前回の特異点では騎士アーサーの盾とかいう防具を使っていたが、あれをモードレッドに見せたらめんどくさいことになるのは必定だし。

 

「うん、よろしく」

 

 これでひとまず安全になった、と光己がほっと息をついたところで、まずは南側からの来訪者が到着した。金属とプラスチックで作られたマネキンのようなモノがぱっと見数十体、耳ざわりなモーターめいた駆動音を上げながらすごい速さで迫って来る。

 意図的なのかそうでないのか、無表情で動きも機械的なのが恐怖を煽っていた。

 そのさまを見たモルガンが小さくごちる。

 

「……敵が来たなら落ち込んではいられないな。

 ふむ、確かにあれは生物の使い魔ではなく自律駆動する人形(オートマタ)といったところか。

 それだけならたいしたことはないが、どういう仕組みで周囲の光景の内容や敵味方を識別して次の行動に反映させているのかは興味が湧くな。それとも持ち主がどこかで見ていて遠隔操縦しているという線もあるか?」

 

 自動人形の仕組みに関心を抱いた辺り、戦闘になったことでいくらか立ち直ったようだ。それでも普段よりだいぶ気力が落ちているように見えるが……。

 ところでモードレッドはこの人形たちは敵だと言っていたが、やはり女王たる者、1度は帰順勧告をしておくべきだろう。モルガンはそう判断すると、魔術で声に指向性を持たせて人形たちの方に強く飛ばした。

 

「人形ども、止まれ! 女王モルガンの面前だぞ、膝をつき(こうべ)を垂れて慈悲を乞うがいい!」

 

 その勧告は確かに威圧感十分で、一般市民なら言われるがままに平伏していたかも知れない。しかし人形たちはまったくの無反応であった。

 

「むう。やはり気落ちしていると声にも力がこもらぬか……」

「あの、お母様……気持ちは分かるけどそういう問題じゃないんじゃ」

「う、うむ。そうだな」

 

 モルガンはやはりまだ本調子ではなかったようだが、愛娘に注意されるとさすがに気を取り直した。

 

「女王の勧告を無視した以上、もはや情けは要らぬな。

 まずは私が一当てして、連中の力を測ってみるとしよう」

 

 そう言いながら掲げた槍に周囲の魔力が吸収されていく。誰の制御下にもない無料の魔力(リソース)が大量にばらまかれているのだから利用しない手はない。

 その間、人形軍は近づいて来るだけで攻撃はしてこなかった。飛び道具は持っていないようだ。

 

「……モルゴース」

 

 そしてタイミングを見計らって槍を振り下ろすと、その先に高さ3メートルほどもある黒いタールコールのような濁流が出現して人形たちの方に向かって行った。

 人形たちが十把一絡げの雑魚なら、これで全部押し潰せるだろうが―――。

 

「……おお!?」

 

 何と人形たちは身軽にも、ジャンプして濁流を跳び越えてきた。この時代どころか、1世紀先の技術を上回る高性能ぶりである。

 ただジェット噴射の類ではなく単なるジャンプのようで、空中で軌道を変えることはできないようだ。そうと見たバーヴァン・シーがすぐさま黒い(やじり)を乱射する。

 

「文字通りに、壊れちゃえ!!」

 

 人形たちは身をよじったり腕を振って払いのけようとしたりしたが、それで回避できた鏃はごく少数だった。ほとんどの鏃は人形の頭部や胴体にぐさぐさと突き刺さり、ひび割れ砕けて動かなくなっていく。

 しかし約半数、15体ほどは行動可能で、特に痛そうな様子も見せずに向かってきた。

 

「よし、あとは僕が!」

 

 ここまでで人形の性能はだいたい分かった。恐れるほどのことはない、とばかりにメリュジーヌが両手に剣を出して突っ込んでいく。蒼い光芒が縦横無尽に駆け抜けるたびに、人形が両断されて地に倒れた。

 

「ふむ、こちらは問題なさそうだな。まだ油断はできんが……」

 

 どうやら後衛の位置までは来られなさそうだ、と判断したモルガンがふうっと軽く息をついた。このままいけば、破損が少ないものを回収して持って行く暇もできそうである。

 その前に北側は?とモルガンが少しだけ様子を窺ってみると―――。

 

「見えました! 真名、ジャック・ザ・リッパー。アサシンです。本名ではなく、それが不明なので一般に伝わっている俗称のようです。

 宝具はまず『暗黒霧都(ザ・ミスト)』、自身の周辺を硫酸の霧で覆うもので、これ自体にも毒性がありますがもう1つの宝具の準備にもなっています。

 それが『解体聖母(マリア・ザ・リッパー)』、霧が出ている、夜である、対象が女性である、の条件を満たした場合に攻撃対象を呪的に殺害するというものです」

 

 ルーラーアルトリアはきっちり真名看破を行ったが、その台詞が長かったので、ジャックはそれが終わるのを待たずに攻撃を仕掛けてきた。モードレッドがそれを迎え撃ち、2人の得物がぶつかり合って火花を散らす。

 ジャックは見た感じ10歳くらいの無邪気そうな幼女で、上半身は黒いボロ布をはおっているが下半身はスカートやズボンといったものを穿いておらず、小さな黒いパンツがチラチラ見えていた。黒いニーソックスと桃色の靴は何の変哲もないものだったが、外見年齢や雰囲気にそぐわない大型のナイフを両手に持っている。

 ジャック・ザ・リッパーといえばイギリスの有名なシリアルキラーだが、その正体がこんな幼女というのはさすがに無理が……いや刃物を持っているから衝撃の正体というやつなのだろうか!?

 

「またあなた……わたしたちはおかあさんの中に帰りたいだけなのに、どうして邪魔するの?」

「おまえがブリテンの民を殺してるからだろうが!!

 つーかまだ分かんねえのか!? 1度出ちまったモンは、どうあがいても帰れやしねえんだよ」

 

 ジャックとモードレッドは前にも遭ったことがあるようだ。

 ジャックは子供の割に素早く身軽だったが、腕力と剣技は円卓の騎士には及ばないらしく劣勢である。

 実はジャックには「情報抹消」というスキルがあって他者に自分のことを忘れさせることができるのだが、モードレッドは再度遭遇したことで思い出したのだろう。

 

「おお、強い……!?」

 

 見た目特に武術を修めている風でもない幼女が曲がりなりにも円卓の騎士と渡り合えている様子に、光己が感嘆の声を上げる。

 宝具2件は逸話再現タイプと思われるが、殺人の技術は生前から持っていたのかも知れない。

 しかし「わたしたち」とか「おかあさんの中に帰りたい」とかいう意味深な台詞にはどんな意味があるのだろうか。

 

「まあ、どっちにしろ倒すしかないか……」

 

 モードレッドの台詞をジャックは否定しなかったから、彼女は実際にロンドン市民を殺害しているのだろう。ましてこちらにまで襲いかかってきた以上、幼女だろうと何だろうと容赦はできない。

 

「アルトリアとルーラーはジャックの退路を塞いで! 太公望さんは何か支援お願い」

「え、父上も動くのか!? ……まあいいか」

 

 モードレッドは父上2人の前だからいい所見せたいのだが、敵がジャックなら逃走を防いでくれるのはむしろありがたいので文句は言わなかった。ここは挟撃の態勢が整うまでジャックに宝具を使わせないための牽制をするのが良策かと判断したが、ジャックは1人きりだからか反応が1歩早く、ふっとバックステップすると同時に宝具開帳に入る。

 今は昼間だから「解体聖母」を使っても強力なサーヴァントは倒せないだろうが、濃霧で身を隠す効果は見込めるのだ。

 

暗黒()―――」

「させませんよ。風王鉄槌(ストライク・エア)!」

「きゃあっ!?」

 

 しかしそれはルーラーが開示した情報があったため読まれていた。不意に襲った突風に出足をくじかれ、ジャックは宝具開帳に失敗した上に建物の壁に叩きつけられた。

 

「さすが父上! とどめはオレが!」

 

 当然モードレッドは喜び勇んでとどめを刺しに行こうとしたが、それを何故かルーラーが押しとどめる。

 

「いえ、待って下さい! またサーヴァントが1騎、北側から猛烈なスピードで近づいてきています!」

「え、また……!? しかも北側ってことは、もしかしてジャックの味方か!?」

 

 モードレッドがそう言い終える前に、霧の向こうから若い女性のサーヴァントが姿を現した。頭にネコミミっぽいものが生えていたり肩当てが猛獣を模していたりする以前に、醸し出している雰囲気がもうすでに獣っぽい。

 腕と肩と膝から下は金属製の黒い鎧を着けているが、胸の下部と腹部と太腿は露出している。つまり黒いパンツが丸出しの上に、へその下にはいかがわしげな紋様まで浮かんでいた。

 左手に黒い弓を持っているからアーチャーだろうか?

 

「あ、貴女はアタランテ!?」

「!? も、もしかして汝らはカルデアの……う、ぐ、うぁぁぁ!!

 すまない、許せ……!」

 

 アタランテと呼ばれた黒鎧の女性は苦悶の表情を浮かべたが、行動に逡巡はなかった。ジャックの方に近づきつつ、弓に魔力の矢を数本同時につがえてルーラーたちの方に向ける。

 

「!? 何故!?」

「やばい、マシュ頼む!」

「は、はい!」

 

 モルガンたちはまだ北側に背を向けており、背後から射られたら危険だ。とっさにそう判断した光己がマシュに防御を依頼すると、マシュも盾兵の役目は重々承知していてすぐに「誉れ堅き雪花の壁」を発動させる。

 放たれた矢は太公望が張った魔力障壁のおかげでルーラーたちには当たらず、外れた矢もマシュのシールドエフェクトに跳ね返されて、モルガンたちの所には届かずに終わった。

 しかしその間に、アタランテは右腕でジャックを抱えて逃走してしまっていた。

 

「やれやれ、間一髪でしたが間に合いましたか。

 逃げられたのは残念ですが」

「おお、太公望さんも防御してくれてたのか……。

 まあ確かに、この濃霧の中で追いかけるのは危険かな。今回は諦めた方がいいか……。

 しかし一体何だったんだ!?」

 

 今の矢は不意打ちではあったが、アタランテが射ったものとしては精度も速さも劣っていた。つまり本気ではなかったと思われたが、しかし何故カルデアの敵に回ってシリアルキラーをかばったのか? 彼女が子供好きなのは知っているが、殺人者をかばったせいで別の子供が殺されたらどうするのだ。

 あとフランスやオケアノスで会った時とは姿と雰囲気が違うのは何故なのだろうか。

 

「髪や鎧の色合いからしてオルタっぽいから、アルトリアみたいに性格変わってるのかな?

 下乳と淫〇付きのお腹とパンツと太腿見せつけてくれるのはノーマルよりグッドだけど」

「先輩……」

 

 光己の駄弁はともかく、マシュやルーラーにはアタランテの思惑がさっぱり分からず、せっかくのチャンスを奪われたモードレッドもいまいましげな顔をした。

 

「畜生、今度こそやれたと思ったのに。

 しかしあの女、どこかで見たことあるような……?」

「モードレッド、アタランテのこと知ってるの? ……いやそれより南側ケリつけるのが先かな」

「……そうだな」

 

 確かにそうなので2人が後ろに向き直ると、そちらは特に問題もなく勝勢だった。メリュジーヌが最後の1体を両断し、モルガンが動くものや魔力反応がないことを確認してから光己たちの方を向く。

 

「こちらは今終わりました。そちらは何かあったようですが、大事ありませんか?」

「うん。サーヴァントは2騎とも逃がしちゃったけど、ケガ人はなし」

「そうですか、それなら良かったです。

 ところで我が夫、自動人形の残骸をいくつか持ち帰ってもかまいませんか?」

「いいけど、何に使うの?」

「面白そうな技術が使われていそうなので、研究してみたいと思いまして」

「そっか。マシュ、頼んでいい?」

 

 モルガンが「面白そうな技術」というほどの代物とはいえ、叩き壊された残骸ではお宝認定は難しい。それに万が一「蔵」の中でまた起動されたら大変なので、あえてマシュに頼んだのだった。

 

「はい、そういうことでしたら」

 

 マシュが持っている収納袋はダ・ヴィンチちゃんの特製品で、特異点で入手した物品をカルデアに持ち帰れるのはもちろん、携帯している間重さをほとんど感じさせないよう魔術がかけられている。今回の人形のような物を持ち帰るには打ってつけの装備であった。

 モルガンが人形の品定めをしている間、ふとモードレッドが光己に話しかける。

 

「ところでおまえはサーヴァントじゃなくて人間なんだよな。この霧の中で平気なのか?

 魔術師でも長時間いたら危険だと思うんだが」

「うん、これでも頑丈さには自信があるから」

「それで済む話なのか……?

 いや仮にも父上2人のマスターなんだから、そのくらいできて当然か。何か知らんが、母上まで『我が夫』なんて呼んでるしな。

 ……ん、我が夫? ってことはアレか。おまえはオレの義父に当たるってことか?」

 

 モードレッドがものすごく困惑した顔をする。光己としても、初対面で見た目同年配の人物を義娘認定するつもりはない。

 

「……いやあ、政略結婚みたいなものらしいし、その辺は深く考えない方がお互いのためじゃないかな」

「そ、そうだな。そうすっか」

 

 そしてあっさり同意に達し、お互いちょっと気まずげな顔で数歩距離を取ったのだった。

 

 

 




 モルガンと結婚するとモーさんとトリ子が娘になってくれるってマ!?(死亡フラグ)


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