FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第216話 霧都の絵本

 光己たちは無事目的地である古書店に到着したが、入る前に今一度サーヴァント探知をしておくべきであろう。

 

「……ええと、1階にはいません。2階に2騎ですね。片方は万全な現界ではなさそうな感じですが」

「ほむ……」

 

 魔本がサーヴァントだとして、他にもいるということか? これは慎重に進まねばなるまい。

 

「それじゃ入ろうか」

「よし、じゃあ先頭はオレが行くぜ」

 

 するとモードレッドが1番手に立候補して、そのまま扉を開けて中に入っていく。光己たちもそれに続いた。

 中はごくありきたりな書店で、1階には不審なものは見当たらなかった。

 

「ホントにただの本屋みたいだな。それじゃ2階に行くか」

 

 そしていよいよ2階に赴くと、カウンターに10歳くらいの少年が座って本を読んでいた。青っぽい髪と目と服の、妙に大人っぽいというかヒネた印象を受ける。

 

「真名、ハンス・クリスチャン・アンデルセン。キャスターです。宝具は『貴方のための物語(メルヒェン・マイネスレーベンス)』、味方全体の攻撃力や防御力、回復力を強化するものですね」

 

 さっそくルーラーアルトリアが真名看破の結果を当人に聞こえないよう小声で告げる。名前がアンデルセンで宝具が「物語」となればかの有名な童話作家だと思われたが、光己とアルクェイドは別の人物を想起していた。

 

「アンデルセンっていったら、もしかしてブリュンスタッドさんのライバル?」

「そうね。ここは『()ろうぜユダの司祭(ジューダスプリースト)』とか言ってタイマンを受けるべきかしら?」

「何を言ってるんだおまえたちは。俺はただの童話作家、荒事なんてまったく縁がない男だぞ」

 

 2人の推測は大外れのようだった……。

 それはそうと、この少年やはり態度と声が外見年齢より妙に大人びている。まあサーヴァント、それも文豪つまり頭脳派ならそういうこともあるのだろう。

 

「……それにしてもようやくか。待ちくたびれたぞ馬鹿ども。

 おかげで読みたくもない小説を1シリーズ、20冊近くを読みつぶすハメになった」

 

 ついでに口がずいぶん悪かった。そういえばアンデルセン童話はバッドエンドが多いが、そういう……?

 

「おまえたちがヘンリー・ジキル氏の言っていた救援だな。では、早速こちらの状況を伝えるとしようか」

 

 しかし頭脳派だけあって話が早いのは楽だった。

 それによると、この古書店の店主はすでに魔本に襲われて昏睡中であり、ソーホーエリアの半数近くが同じ状況になっている。

 その魔本は、何とここの隣の部屋にいるそうだ。本当に話が早い!

 

「しかし先輩、屋内戦闘は危険です。建物も破壊してしまうでしょうし、なるべく避けるべきだと思いますが」

「ほむ……」

 

 するとマシュが場所を変えることを提案してきたが、確かに妥当である。隣の部屋に客が大勢来て自分のことを話しているのに反応がないくらいだからあまり活動的なサーヴァントではなさそうなので、逆に外におびき出すのは難しいかも知れないが、初手突撃もして来ないだろうし。

 そして一応はノックをしてから(返事はなかったが)部屋に入ると、その中央に高さが60センチほどもある立派な装丁の本がふわふわ浮かんでいた。

 表紙にメルヘンな感じの絵が描かれており、「ALICE IN WONDERLAND」というタイトルも書かれている。

 攻撃してくる様子はなく、話しかけてくる様子もない。もしかして眠っているのだろうか?

 

「不思議の国のアリス、かな?」

「そうみたいですね。本格的に、小説や物語が具現化する特異点になってきたようです」

「……これは、真名が『まだ』無いようです。サーヴァント未満というか以前というか、そんな存在です」

 

 ルーラーアルトリアが真名看破してくれたが、そのような存在までいるとはサーヴァントも色々あるようだ。

 

「もしかしたら、この本が街の人を襲っていたのはマスターたり得る人を探していたのかも知れません。

 契約を結ぶことによって、そのマスターを媒介に自身をサーヴァントとして確立させることができるのでしょう」

「ほむ、なら俺と契約すればこの本は味方になってくれるってこと?」

 

 光己ならずとも考えることであったが、ルーラーは首を横に振った。

 

「そうですが、その際にマスターの精神が悪影響を受けないとは限りません。ここは自重した方が良いかと。

 現に被害者は皆昏睡しているわけですし」

「ほむ……」

 

 なるほど確かに、正体不明のサーヴァント未満だか以前の存在と安易に魔術的な契約を結ぶのは賢明とは言えない。光己が引き下がると、太公望が話に加わってきた。

 

「いずれにせよ動かないなら話は早いですね。僕が外に放り出しましょう」

 

 太公望が持っている打神鞭の柄から赤いテープのようなものが伸び、魔本に巻きついて縛り上げた。窓を開けて、ぽいっと外に放り投げる。

 続いて光己たちも窓から外に跳び下りて、ようやく戦える態勢が整った。

 

「よっしゃ、もうやっていいんだな!」

 

 父上の前なので意欲が普段の10割増しなモードレッドがさっそく王剣で斬りつける。本はテープがすでにほどかれているので避けることは可能と思われたが、特に反応せず剣はまともに命中した。

 しかし傷ついた様子はない。

 

「あれ?」

 

 ならばと追加で二撃、三撃するもまったく効いた様子がない。メリュジーヌとバーゲストも参加したが、妖精騎士の剣ですら掠り傷1つ付けられなかった。

 

「これは一体? 幻術でごまかされてるとか、そういうのじゃないよね」

 

 最強の竜に最強の騎士の名前を与えられた者の剣が通じないとは。メリュジーヌがいささか当惑していると、攻撃に加わらず後ろで見ていた太公望が「なるほど!」とばかりに手を打った。

 

「分かりました。この本自体が『固有結界』なんですよ。普通は自身の心象風景で外界を侵食するものですが、おそらくこの本は自分自身に通常の物理法則とは違う法則を適用させているのでしょう」

「おお、こんな短時間で見抜くとは頭脳労働者も混じっていたようだな!

 それで、どうすれば倒せると考えている?」

 

 するとアンデルセンが「ご名答!」という感じで褒めてくれたが、倒し方は教えてくれなかった。分からないのか知っていてもったいぶっているのかは表情や口調からは判断できない。

 しかし解答は意外な所からやってきた。

 

「なるほど、そういうことだったんだね。それなら倒す手はあるよ」

 

 メリュジーヌである。やはり最強の竜の名はダテじゃないようだ。

 

「さすが俺のメリュ! それでどうすればいいんだ?」

「固有結界なら対界宝具で破れるからね。つまりお兄ちゃんのブレスなら一発だよ」

「ほえ?」

 

 この妹は何を言っているのか? 光己が首をかしげると、メリュジーヌは懇切に解説してくれた。

 

「僕の妖精騎士ランスロットじゃない、メリュジーヌとしての宝具はドラゴンブレスなんだけど、これは対界宝具なんだ。お兄ちゃんが吐いてるのもモノは同じだから、規模は小さくても対界宝具としての性質は持ってるはずだよ。

 もちろん僕の宝具でもいいんだけど、これは周囲の被害が大きすぎるからね」

「ほむ、なるほど……」

 

 そんな大層なものだとは思っていなかった光己が大仰に頷いている傍らで、モードレッドが宇宙猫状態になっていたのはまあ当然の流れだろう……。

 

(…………?? 「メリュジーヌ」がドラゴンブレス吐くのは分かるが、人間が対界宝具なブレス吐くって何の冗談だ?)

 

 ただ光己は忘れていたが、彼女は竜種への隔意はなさそうなのは幸いであった。

 

(あー、やっぱりこのマスターさん普通の人間じゃなかったわね。そういえばさっきわたし「古代の上位竜種」って言ったけど、もしかして大当たりなのかしら?)

 

 一方アルクェイドは人間ではないからか理解が速いようだ。偏見もなさそうである。

 それより攻略法が判明した以上、魔本が起き出す前にカタをつけるべきだ。光己がさっそくパワーチャージを始めると、危険を感じたのか本がぱらぱらページをめくったかと思うとその紙面から何やら飛び出してきた。

 

「もしかしてトランプの兵士ってやつか!?」

 

 不思議の国のアリスに登場する「トランプの兵士」が、そのものズバリな外見で50体ほどもわらわら襲いかかって来る。人間サイズのカードに手足がついて剣や槍といった武器を持っているのは、3次元で見ると実にシュールだ。

 

「ほほう、普通に心象風景を外部に投影することもできるとは。

 長持ちはしないでしょうが、戦闘に使う分には十分でしょうね」

「まさかこいつらにも剣が効かねえってことはねえよな!?」

 

 太公望はのんびり論評していたが、モードレッドは最前衛担当だけに気が急いていた。

 まああれこれ問答するより、試してみた方が早い。

 

「っせぁぁ!」

 

 モードレッドが王剣で手近なトランプ兵を斬りつけると、あっけなく両断されてそのまま消滅した。さすがの魔本も、外に出したものにまで固有結界内のルールを適用させることはできないようだ。

 

「何だ、大したことねえな。さっさと掃除して、対界宝具とやらの射線を開けてやるよ」

 

 モードレッドはメリュジーヌの言葉をまだ理解しきれてはいなかったが、現状では他に手立てがない。アルトリアたちも参加してトランプ兵を掃討していると、またしてもルーラーがサーヴァントの接近を報告してきた。

 

「皆さん、サーヴァントが2騎、前方から高速で接近してきています……!」

「チッ、またかよ……敵か味方か!?」

 

 モードレッドが忌まわしげに吐き捨てる。敵である可能性が高いと思ったようだ。

 その予感通り、魔本の向こうから現れたのはジャックとアタランテの2人だった。

 

「またおまえらか!? 何しに来やがった」

「やっと見つけた! ()()()()()は友達なんだから殺させないよ」

「何だと!?」

 

 まさかこの2人が魔本と組んでいたというのか!? それに「ナーサリー」とは何だ!? モードレッドも光己たちも面食らったが、その間にジャックは改めて魔本に声をかけていた。

 

「ナーサリー……えっと、フルネームは『誰かの為の物語(ナーサリー・ライム)』だったね。早く逃げよう」

 

 すると魔本が金色の光を放ち始める。やがてそれが収まった時、驚くべきことに身長140センチくらいの、黒いゴスロリドレスを着た女の子になっていた。

 まるでメルヘンな魔女の魔法でもかけられたかのようだ。

 

「何なんだ一体!?」

「む、やはりこうなったか……」

 

 モードレッドには何が何だか分からなかったが、アンデルセンはこうなるのが読めていたようである。

 どうやら名前を呼ばれることで、真正のサーヴァントとして存在が確定したらしい。

 

「………………!!

 ナーサリー……ライム……いいえ、ちがうわ。それは名前じゃない。名前は、アリス(あたし)

 ありす、どこ? ここには……ありすがいない……」

 

 ナーサリー・ライムは存在が確定したのはいいが、状況がよく分からず困惑しているようだ。「ありす」つまり元の本の主人公を探しているのだろうか?

 

「ねえ、あなたたち。ひとりぼっちのありす(あたし)はどこにいるの?」

「それは分かんないけど、今は逃げないと殺されちゃうよ。早く!」

「え、ええ」

 

 ナーサリーはこの2人が敵かどうかは分からなかったが、光己たちが敵なのは100%確実である。ここは2人についていく方がいいと判断して、ジャックに手を引かれるがままに戦線離脱を試みた。

 

「あっ、おい、待て!」

「悪いが、そうはさせられん!」

 

 モードレッドが思わず追いかけようと1歩前に出るが、アタランテの矢が素早くそれを阻む。この時点でトランプの兵士はほぼ全滅していたから皆でかかればアタランテを倒すことはできそうだったが、そうと見たナーサリーがまた本のページを開く。

 すると今度は身長が彼女の倍ほどもある、赤黒い悪魔のような怪物が飛び出してきた!

 

「おおっ!? こいつはちょっと手強そうだな」

 

 一見して段違いの迫力に前衛組が一瞬足を止める。これほどの怪物を出したらナーサリー自身の消耗も大きいだろうが、この場を逃げ延びることを優先したのだろう。

 実際、3人の姿は濃霧にまぎれてまったく見えなくなっている。

 

「うーん、また逃がしたか……この特異点に来てから逃げられてばかりだな」

「やはりこの霧が痛いですね……」

 

 魔霧のせいでサーヴァント探知の精度が落ちているし、濃霧の中で俊足の凄腕弓兵(アタランテ)を追うのは危険すぎる。残念だがこの場は致し方なかった。

 しかも現れた怪物はただのモンスターではないらしい。

 

「いや、ナーサリーとやらは実体を得たのだから、もうむやみに人を眠らせることはないはずだ。個人的には退治して()()()()()がな!

 それよりその怪物は『ジャバウォック』だ!

 原典ではヴォーパルの剣で倒されたというだけで、それでなきゃ倒せないというわけじゃなかったはずだが、おそらくそいつは普通の方法じゃ倒せない」

「とはいえ『本物』ではなく召喚あるいは創造された使い魔に過ぎませんから、魔力が尽きれば消えるとは思いますが」

 

 アンデルセンがさすがに慌てた口調で解説してくれたのに続いて、太公望も見解を述べる。強いことは強いが、無敵というわけではないようだ。

 

「要するに殴ってればそのうち死ぬってことだな! うん、特に珍しくもないな」

「そういうことなら私もやろう」

 

 それを聞いたモードレッドが実に脳筋な台詞をのたまいながら前に出ると、バーゲストもその傍らに並んだ。こちらは「強食」という魔力を奪うスキルがあるので、太公望の見解に沿うなら順当な配置である。

 もちろんメリュジーヌも前衛に入って、マスターを狙われないよう立ちはだかっていた。

 

「……オオォォオォ!!」

 

 怪物が3人に襲いかかってくる。特殊能力はないようで腕を振り回しているだけだが、その分強力でバーゲストでも素直に受けたら押し負けそうなパワーがあった。

 

「これほどとは……!

 しかし技はなってないな!」

 

 バーゲストがジャバウォックの豪腕を受け流しつつ、剣で脇腹を斬りつける。しかし硬くて思ったほどには傷つけられず、しかもその浅い傷すらすぐに治っていくではないか。

 

「なるほど、これが『ヴォーパルの剣でなければ倒せない』ということか!

 だが魔力は奪えている。果たしていつまで保つかな?」

「オォォオ!」

 

 すると怪物はバーゲストを危険視したのか、集中的に攻撃してきた。

 それを当のバーゲストが防御優先でさばきつつ、モードレッドとメリュジーヌが彼の左右から斬りかかる包囲攻撃で対処するカルデア前衛組。

 

「むう、僕がつけた傷はバーゲストがつけた傷より治りが速いな……」

「今回は大規模な宝具は使えねえしなあ」

 

 メリュジーヌが最強の竜の矜持を傷つけられたように感じてちょっとむくれたり、モードレッドがめんどくさそうにぼやいたりしていたが、ここに後衛組も参加すれば攻撃力は十分である。XXのビームが怪物の肉を灼き、太公望が投げた打神鞭が側頭部をぶっ叩いて膝をつかせた。

 

「あれ、打神鞭って一撃で頭カチ割れるんじゃないの?」

 

 さすがかの元始天尊みずからつくった宝貝(パオペエ)だけのことはある威力だったが、光己はそれでも不満であった。

 封神演義の記述によるなら、「あの程度の」怪物など一発で封神台送りにしてしかるべきだと思うのだが。いやこの特異点に封神台はないけれど。

 

「ええ、真名解放すればそうなると思いますが、今は通常の使用法、つまりアルトリア殿やモードレッド殿が聖剣や王剣でビームを出さず普通に振り回しているのと同じと思っていただければ」

「ほむ、なら真名解放すればいいんじゃ?」

「いえ、今やったら前衛の皆さんが巻き添えになりますので」

「なるほど、演義の記述とはちょっと違うのか……」

 

 詳しい仕様は後で聞くとして、どうやら今攻撃宝具を使える人はいなさそう……だと思ったら、意外な人物が立候補してきた。

 

「はいはーい! ここはわたしに任せて!」

「ブリュンスタッドさん? いやさっきのアレは思い切り巻き添えが出ると思うんだけど」

「ふっふーん、それはまだわたしを見くびってるわね。契約記念に真の力を……1%くらい見せてあげるわ」

 

 アルクェイドがそう言いながら槍投げのような姿勢を取ると、その右手に大きな木製の槍が現れた。

 彼女の宝具「空想具現化(マーブルファンタズム)」は本来自然からできるものを自由に作成するという超能力である。人間の手による科学化合物や建築物などは苦手だが、今回は「トネリコの木の枝」を削ったものだから難易度は高くない。

 アルクェイドがさらに魔力をこめると、槍が赤い光芒を放ち始めた。

 

「それじゃいっくわよー! くらえぇ、神槍グングニル(嘘)!!」

 

 タンッと軽く跳躍して、ジャバウォックが目を向けてきたところに念入りにも「虹の魔眼」で睨みつけて一時的に行動制限をかけた上で槍を投げるアルクェイド。

 ジャバウォックは避けられるはずもなく、胸板に槍がまともに突き刺さる。

 

「グォォォォ……」

 

 ジャバウォックは心臓を潰されても再生できる治癒力があるのだが、槍が刺さったままでは不可能だ。当然引き抜こうとしたが長すぎてすぐには抜けず、へし折ろうにもやたら硬くて折れなかった。

 その隙を逃すカルデア前衛組ではない。

 

「よし、チャンスだ! 『今は知らず、無垢なる湖光(イノセンス・アロンダイト)』!!」

 

 さっきまでは包囲を保つのが忙しかったので宝具解放の時間がなかったが、今ならやれる。メリュジーヌは両腕の剣をかざして、空飛ぶ蒼い槍のように突進した。

 

「ガッ……」

 

 剣の切っ先がジャバウォックの頭部をえぐり、完膚なきまでに破壊する。ところがこれで終わったかと思いきや怪物はなお生きており、腕を棍棒のように振り回してメリュジーヌをぶっ叩いた。

 

「くぅっ……! っく、げほげほ」

 

 体重の差で軽く吹っ飛ばされ、建物の壁に体を打ちつける少女騎士。最強を自称するだけあってケガはなかったが、衝撃でちょっと咳き込んでしまう。

 しかも怪物の頭部は首から少しずつ再生しつつあった。伝承に恥じないどころか上回る、恐るべき生命力である。

 

「メリュ、大丈夫か!? ……って、どうやらケガはなさそうだな。

 しかしここまで強いとなると、これは俺が出張るしかないのか?」

 

 怪物の予想以上の強さに光己は冷や汗を流したが、それはマシュが止めてきた。

 

「いえ、先輩。人間の姿では危険ですし、竜になりますと街に被害が出ます」

「うーん、やっぱ市街戦は面倒だよなあ……」

 

 ローマやオケアノスではこういう心配はあまりしなくて済んだのだが、魔霧といい今回は色々やりづらかった。

 しかしあっけらかんとした態度を崩さない者もいた。

 

「大丈夫よ。今度は頭に刺せばいいだけだから」

「へ!?」

 

 アルクェイドはそう言ってまた槍をつくると、今度はさらに高く跳躍して、なんとジャバウォックの真上から垂直に投擲した。つまり怪物の脳天から股間まで貫通させ、さらに地面に深く突き刺して固定したのである。

 

「おおぅ、なんて腕力……」

「というかあの槍宝具じゃなくて、弓兵(アーチャー)が作る矢と同じような消耗品扱いなんですね……」

 

 光己とマシュはもう驚嘆するしかなかったが、怪物は頭部と心臓を完全再生できなくなった上に動きを阻害されたからもはやサンドバッグに過ぎない。最初に太公望が言ったように、魔力がなくなるまで攻撃され続けてついに消滅したのだった。

 

 

 




 ジャックたちとの決着がなかなかつきませんが、どうなるかはまだ未定なのです。


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