FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第22話 大遭遇戦

 ジークフリートは呪いは解けたが体力(魔力)の回復には今少し時間がかかるので、出発は昼食の後ということになった。

 

「ではその間に、昨日お約束した護身術の手ほどきでも」

「う、ういっす」

 

 1度約束したことなので、光己は乗り気でなくてもやらねばならない。首を縦に振ったが、その背中に不意にやわらかい重みがかかった。首にも腕が巻きついている。

 

「じゃあまずは準備運動だね。あたしとペアでストレッチでもしよう」

「お、おう!?」

 

 ヒルドが後ろから抱きついてくれたのだ。すると背中でたわんでいるこの感触はおっぱいか!?

 おそらく光己の気分を察して、何かご褒美でもないとやる気が出ないと見てサービスしたのだろう。彼女の出自を考えれば自然な思考法である。何しろワルキューレの2人にとって、彼はマスターであると同時に勇士候補なのだから。

 なおストレッチは1人でやるよりペアでやる方が効果が高いといわれているので、必ずしもヒルドの私情だけというわけではない。

 

「じゃ、じゃあお願いしようかな」

 

 ヒルドの読み通りお手軽にモチベが上がった光己がそう答えると、また女の子が2人ばたばたと割り込んできた。

 

「ペ、ペアでストレッチ!? そ、そういうお肌が密着ぽいのは妻であるわたくしが!」

「先輩はまだ独身ですが、それはさておき先輩のトレーニングの手伝いは後輩の役目だと思います」

 

 清姫とマシュである。ヒルドはどうしても自分がやりたいというほど執着してはいなかったが、ただ譲ってしまうのも面白くなかった。

 

「じゃあ交代制にしない?」

「むう、仕方ありませんね」

 

 清姫とマシュも総取りは無理と見て妥協する。光己にとっては降って湧いたタナボタだが、顔に出すのが得策でないことくらいは分かるので、ポーカーフェイスを装っていた。

 

「それじゃ、今日のところは言い出しっぺのあたしからね。ヴァルハラ式じゃなくて現界した時にもらった知識の21世紀の方法だから安心していいよ」

「りょうかいっ!」

 

 光己は元気よく頷くと、魔術礼装を脱いでTシャツとトレパンに着替えた。ここは安全だし汗をかいたら礼装が汚れるのでという理由だったが、本音は清姫が「お肌が密着」と言ったようにその辺を期待しているからである。

 

「それじゃ始めよっか。マスターは力抜いて、何もしなくていいから。

 でも痛かったらすぐに言ってね」

「おー!」

 

 光己はシートの上に座って、ヒルドが後ろから首から順に伸ばしていく。思春期男子的には彼女が後ろにいて姿が見えないのが残念だが、彼女の強い戦士なのに普通の女の子のように小さくやわらかい手の感触がちょっとどきどきした。

 さらに進んで、座って前屈するのに背中を手で押せばいいところをあえて上半身をかぶせて押してくれるとは!

 

(おおお、おっぱいが押しつけられてる!!)

 

 礼装を脱いでおいてよかった!と光己はいたく感動した。何しろ光己の背中とヒルドの乳房の間にあるのは薄布2枚だけなのだ。大きなやわらかいふくらみがたわむ感触がマジやばい。

 しかもこの密着面積の広さはどうだ。光己の腰と彼女のお腹、太腿と太腿までぴったりくっつているなんて。

 

「マスター、どうかした?」

「え!? あ、いや、何でもない」

 

 ヒルドが耳元にささやいてくる声に、光己はそう答えて平静を装うのが精一杯であった。もしかして遊ばれてる? 小悪魔なのか!?

 

「じゃ次は背筋だね」

 

 立って背中を合わせて腕を上に伸ばして、ヒルドが光己の手首をつかんで前屈すると、光己の背中が後ろに倒れてヒルドの背中に乗る形になる。彼女の体温が何だか温かかった。

 

「それじゃ次は腰からお尻にかけてだよ」

 

 これは光己がまず仰向けに寝て片脚を曲げて膝立ちになり、ヒルドがそれを押して反対側にゆっくり押して倒すというものだ。密着度は低いが、光己の上半身は上を向いたままなので、ヒルドの胸の谷間辺りを見ていても不自然ではないという長所があった。今はショールが邪魔になるので脱いでくれているので、谷間はバッチリ素肌なのだ! 形のいい双丘が実に美味しそうである。

 ―――そんなこんなでようやく準備運動が終わる。

 

「今日は初回だから念入りにやっておいたよ。がんばってね!」

「おう、ヒルドのためにがんばるぞ!」

 

 どうやら体は十分ほぐれてやる気も増したようである。それで本番は何をするのだろうか?

 

「うん。マスターは流れ矢とかでやられちゃうことはないのは強味だけど、体力は今んとこ人並みだから敵に捕まったらおしまいだからね。そこで『魔力放出』のスキルと、それを使った逃げ足を鍛えるのが1番先かな。

 マスターは魔術礼装はちゃんと使えてるから、出力はともかくやり方を覚えるだけならすぐだと思うよ」

 

 魔力放出とは魔力で身体能力をブーストするもので、上達すれば武器に込めて威力を増したりもできる。冬木で会ったリリィとアーサー王が得意とする技だ。

 なおこの2人は竜の心臓で魔力放出に必要な魔力を賄っているが、光己の場合は本人の魔力はまだ成長中だが、カルデアからの供給で補えるという算段である。

 

「人理修復におけるマスターの1番の役目は、サーヴァントを現界させておくための要石。つまりは生き残ることですからね。男の子としては逃げるだけなのは面白くないかも知れませんが、まずはこれを習得して下さい。

 ある程度上達したら、反撃用の技も習うのはやぶさかではありませんが」

「んー、なるほど」

 

 ついでマルタから補足があったので、光己はすぐ了承した。

 実際光己が1人で行動することはまずないから、彼が敵を倒さねばならない事態などまず起こらない。サーヴァントたちが対応してくれるまで逃げ延びるスキルがあれば十分だろう。

 とはいえマルタが言うように逃げるばかりでは気分的に面白くないが、上達したら攻撃技も教えてくれるというのなら不満はない。

 そしてマルタの話が終わると、オルトリンデが進み出てきた。

 

「では始めましょうか」

 

 今回の技術指導は彼女のようだ。マルタはここでの仕事が終わったら別れる身なので、実技ではなく統括的なポジションに回ったのだろう。

 

「ああ、お手柔らかにね。21世紀日本基準で」

「はい」

 

 光己は冗談めかしつつも、あくまで自分は平和な時代の一般人であることを前置きしたが、オルトリンデは真顔のまま頷いただけなので、今イチ安心できなかったりする。

 予想通り彼女の指導はスパルタというかヴァルハラ式で、光己が魔力放出の初歩を覚えたらさっそく実戦的な訓練に入っていた。彼がめったなことでは傷つかないのをいいことに結構なパワーで槍をブン回したりビームをブッ放したりと一般人なら確実に死ぬ攻撃を連打されて、光己は気分的には死ぬような心地で体力が尽きるまで逃げ回ったのであった……。

 

 

 

 

 

 

 昼食の後、今後の方針についての会議が行われた。

 来た道をそのまま戻ってラ・シャリテに行ってもいいのだが、それは芸がないのでここからほぼ真西に100キロほど行った所にあるティエールに寄って行こうという案が出たのだ。

 さほど大きな街ではないが、寄って損をするというわけでもない。光己はその案を採用することにした。

 

「じゃ、行こうか」

 

 そんなわけでカルデア一行は針路を西に取ったが、半分くらいまで来たところで放棄されたらしい砦を見かけた。

 

「また戦ってないといいんだけどね……って戦ってる!?」

 

 先頭のアストルフォが驚いて声を上げる。しかも最初に見たドンレミ付近の砦より大きく、敵の数も多いようだ。

 目を凝らして見ると、地上からは狼人間(ウェアウルフ)の群れが数百人、空からはワイバーンが数十頭で砦を襲っていた。砦からは兵士が弓や槍で応戦している。

 ちなみに中世ヨーロッパでは、キリスト教関係で獣人化は悪魔の仕業だと言われたりして、狼人間の疑いをかけられた者は追放されたりしているので、竜の魔女=イカサマの異端審問で殺された者の手下としてはふさわしいかも知れない。

 

「とにかく助けないとだね!」

「そうだな、早く行こう!」

 

 アストルフォの言葉に光己たちも同意して、急ぎ戦場に向かう。その途中でカルデアから通信が入った。

 

《行くのはいいけど気をつけるのよ! 砦のそばにサーヴァント反応が4つも検出されたわ》

「マジですか!?」

 

 砦の中にフランス軍の大物でもいるのだろうか。しかしオルガマリーはファヴニールがいるとは言わなかったから、竜の魔女自身が出張るほどの相手ではないということか。

 どちらにしても光己たちがやることは同じだが。

 

「連中が全員で来なかったのはラッキーだな。サーヴァントを狙い打ちして倒そう」

 

 味方を集中させて分散した(させた)敵を各個撃破というのが戦の常道である。敵がわざわざ自分から戦力を分けてくれたのだから、この機に叩くべきだろう。

 さっそく竜の魔女軍を横から襲うべく急行すると、敵もそれに気づいたのかサーヴァントが出張ってきた。

 

「3人……1人は砦攻めに残してるってことかな」

 

 1人は黒い服を着て槍を持った壮年男性、1人は黒っぽい全身甲冑を着て黒い棍棒を持った騎士。両者ともただならぬ威圧感と迫力、そして狂暴なほどの殺意が感じられる。

 少し後ろにいる最後の1人は細身で美形だが男か女かよく分からない。青い帽子をかぶり白いマントをつけておしゃれな感じがする剣士だ。

 

「マルタさん!?」

「ええ、3騎とも知っています。槍の男性がヴラド、鎧を着ているのがランスロット、性別不明がデオンです!」

 

 敵の数は少ないが、油断できる陣容ではない。光己はここは総がかりでいくのが賢明かと思ったが、英雄とは得てしてこういう常識的な判断の範疇から外れるものである。

 

「っ……! 私がフランス軍の救出に向かいます!

 皆さんはそのサーヴァントたちを!」

「え゛!?」

 

 ジャンヌが敵3人の横を抜けて砦の方へ向かおうとしたので、光己は驚きのあまりしゃっくりのような声を上げてしまった。

 せっかく敵がまた二手に分かれてくれたのにホワイ!? というかジャンヌは人前に顔を出せないことを自分でも承知しているはずなのに、フードもかぶらずに軍隊の前に行くのはまずいとは思わないのか!?

 とにかく放置はできない。

 

「ああもう、せっかくエリザの宝具でまとめて先制攻撃しようと思ったのに!

 ジークフリート、ジャンヌの援護頼む! こっちの命を大事にする方向で」

「わかった」

 

 ジークフリートがジャンヌの後を追って走り出す。敵の3人はチラッと横目でそちらを見たが、追えば光己たちに横から攻撃されると見たのか動かなかった。

 

「…………Arrrrrrrrrrrr!!」

「マルタか。まさか寝返っていたとは驚きだが、人前で我が真名を露わにするとはな。不愉快だ、実に不愉快だ。代償というわけではないが、血と魂をいただくとしよう」

 

 ランスロットが狂った野獣のように咆哮し、ヴラドは吸血鬼らしく血を吸って殺すと予告してきた。

 デオンはまだ沈黙している。見た感じ雰囲気が他の2人とだいぶ違うので、気が合わないのかも知れない。

 

「先輩、これが先輩の故郷の言葉で言う『ここで会ったが百年目』というやつですね!

 まずはあのヒトヅマニアから殲滅しましょう!」

「マシュステイ!」

 

 マシュは力をもらっただけで自身は英霊ではないのに狂戦士と吸血鬼の殺気に耐えてくれるのはうれしいが、この盾兵らしからぬアグレッシブさはいかがなものか。

 いやそれより早く作戦を考えねば。光己は超特急で頭をひねった。

 

「とりあえずフランス組は槍の人、マシュとワルキューレはランスロット!

 段蔵とエリザはデオンの牽制だけ、清姫は援護頼む!」

 

 ヴラドだけ名前で呼ばなかったのは、彼が真名を暴かれたことを怒っていたからである。メンタル強度人並みだけに、本当に吸血鬼になった「串刺し公」の逆鱗に触れるのは怖いのだった。

 そしてデオンだけ牽制としたのは、むろん味方にすることを念頭に置いているからだ。とはいえ敵が3人そろっている状況では難しいから、まずはヴラドかランスロットどちらかを斃さねばなるまい。

 ヴラドとランスロットを仲間にすることは考えていない。手加減するのはリスクが高すぎるし、仮に契約できても御せそうな気がしないので。ぶっちゃけ怖い。

 

「はい! マシュ・キリエライト、吶喊します!!」

「だからステイだって!」

 

「Arrrthurrrrr!!」

「よかろう、始めるとするか」

「……ふむ、仕方ないね。

 シュヴァリエ・デオン。此度は悪に加担するが―――我が剣に曇りはない。

 さあ、全力で立ち向かってみせろ! この悪夢を滅ぼすために!」

 

 こうしてフランスに来て初めての、複数のサーヴァント相手の戦いが始まった。

 




 筆者もヒルドとペアストレッチしたいです(粉みかん)。
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