FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第223話 報告会7

 光己たちがモードレッドたちがいた所に戻ると戦いはすでに終わっていて、4人は自分たちだけでゾンビ退治に行くわけにもいかず所在なさげに立ちすくんでいた。

 モードレッドはいくつかケガの痕があるが、他の3人は無傷のようだ。光己はまずモードレッドを礼装で治療しつつ情報交換を始める。

 

「こっちは4騎中2騎倒して2騎は逃げられたけど、そっちはどうだった?」

「おう、きっちり退去させたぜ。確かに口だけのことはある強さだったが、オレの敵じゃあなかったな!」

「―――」

 

 観戦していたヒロインXXとランサーオルタは(もし一騎打ちだったらかなり苦戦するか、悪ければ負けていたかも知れないのに)とは思ったが、勝利を報告している場で水を差すのは控えた。

 

「でもあの人、生粋の吸血鬼じゃなかったのよね。無辜の怪物、っていうの? 生前は死ぬまで人間だったのに、後世の人が吸血鬼扱いしたせいで本当に吸血鬼として現界しちゃったんだとか何とか。

 サーヴァントって大変ねえ」

 

 アルクェイドはそういうことより、ヴラド三世の事情の方に関心があるようだ。

 生まれた時から吸血鬼だった彼女にとっては当然のことだろう。

 

「うん。吸血鬼扱いされたのは戦争や刑罰で残酷なことをしたからなんだけど、その残酷なことした理由が『キリスト教世界を守るため』だったんだから当人はたまらんだろうな」

「うっわあ、それであんなに不機嫌だったんだ。

 まあ倒されたの喜んでたから、こっちが気にすることはないわね」

「そだな。ヴラドとしては吸血鬼にされた上に囮扱いなんだから、さっさと退去したいだろうし」

 

 それはそうと吸血鬼を退治したなら、したくはないがしなければならない話がある。

 

「それでブリュンスタッドさん。吸血鬼は退治されたわけだけどこれからどうするの?

 俺としては最後まで一緒にいてくれると嬉しいんだけど」

 

 そう、アルクェイドがカルデア勢と一緒にいるのは吸血鬼を倒すためだったので、それを終えた今彼女は光己たちにもう用はないのだ。

 つまりアルクェイドとはこれでお別れという心配があったわけだが、しかしそれは杞憂だった。

 

「それはもちろん、マスターさんのご希望通り異変解決までお手伝いするわよ。

 ここで別れてもすることなくて退屈だしね」

「おお、やった! ありがとう」

 

 スペシャルな美人さん、もとい超有能な真祖が最後まで同行してくれる喜びに光己は全身でガッツポーズを決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 その後光己たちは残ったゾンビを掃討してからジキル宅に帰ると、まずは留守番組に今回の経緯を報告してランサーオルタを紹介した。

 

「聖槍を持ったアルトリアの、さらにオルタ、だと……!? 本当にいろんな側面があるのだなおまえは」

「姉上……!? まさかカルデアに所属していたとは」

 

 その時モルガンとランサーオルタがとても微妙な顔をしたが、今は2人とも争う理由はなかったし、目的を同じくする同志でもあるので、姉妹仲良くとはいかないが諍いにはならずに済んだ。

 それにしても聖槍のアルトリアは聖剣の方より図体がかなり大きい。聖槍に身体の成長を促進する効果があるのか、それとも聖剣に抑制する効果があるのだろうか? モルガンとしては妹が姉より大きいのは面白くないので、聖槍が促進説を採用したいところだったが。

 それが済んだら、延び延びになっていたカルデア本部への連絡である。空中に現れたスクリーンに、待ちかねたといった様子のオルガマリーとエルメロイⅡ世の顔が映った。

 

《みんな無事みたいね、良かった。

 昨日貴方のバイタルがおかしな変動してたから心配したけど、何かあったの?》

「はい、ちょっとした事件があったんですけど、とりあえず順番に」

 

 光己がそう言ってまずは時計塔で入手した本やアイテムの一部を見せると、Ⅱ世は《素晴らしい。よくやった》と褒めてくれた。

 

《個人的な好奇心があるのは否定しないが、人理修復した後協会とカルデアの扱いについて交渉する時の材料に使えるからな。マスターにはあまり関係ないことかも知れんが》

「いえいえ、所長とⅡ世さんが有効利用できるなら行った甲斐がありますよ」

 

 モルガンも欲しがっていたことだし、光己は自分が直接得をするかどうかにはあまりこだわっていなかった。

 いやえっちな服が手に入ったから直接的な利益も望めるが。

 

「ただ時計塔って、地下にアルビオンの遺骸が埋まってたんですよね。しかも完全に死滅したわけじゃなかったみたいで、俺が行ったらテレパシーか何かで誘導されちゃいまして」

《……!?》

 

 これは厄……でもなさそうだが激しく大事の気配がする。オルガマリーとⅡ世はぴしりとこめかみを引きつらせたが、光己は構わず続きを話した。

 

「地下は洞窟みたいなのが地下数十キロくらい続いてまして、その終点、でもなかったですが大きな空洞があってですね。俺がそこに着いたら急にぼうっとしてきて……後で聞いたら、アルビオンの遺骨に吸収されてたそうです」

《!?☆★※くぁせdrftgyふじこlp※★☆?!》

 

 彼にはこれまでも(当人の意志によるよらずは別として)いろいろと驚かされてきたが、今回のはその中でもヤバ過ぎる。2人は口から泡を噴いて失神しそうになったが、理性と気力を総動員して意識を保った。

 

《そ、そう……た、大変だったわね。

 み、見た感じ無事みたいだけど……そ、それでどうなったの?》

 

 続きを聞くのは大変怖いが、彼の雇用主としても個人的な情誼の面でも聞かねばならぬ。オルガマリーは勇気を振り絞って続きを促した。

 かなりどもっていたが、何しろ時計塔そのものと大きく関わりがある古い竜のことだから致し方ないことだろう……。

 

「はい、相手は大昔に死んでるとはいえ、俺とはサイズが違いすぎますから完全に取り込まれて意識も拡散して消えちゃいそうだったんですけど、立香とブリュンスタッドさんが気つけをしてくれてまして。

 遺骨がバラバラに散らばってたのが勝手に集まってきてて、それが終わったら何とかなるんじゃないかってことで耐えてたんです」

《えええええ……!?》

 

 まだ「生きている」アルビオンの遺骨が一ヶ所に集まるとかまずいんじゃないだろうか。オルガマリーはかすかにそんなことを思ったが、まずは口出しせず最後まで聞くことにした。

 

《そ、それでその後は?》

「2人ともがんばって気つけしてくれてたんですけど、それでも落ちそうでこのまま寝たら死ぬヤバいってなった時に、こちらのマーリンさんが来て夢魔的なワザで意識を保ってくれたんです」

《マーリン!?》

 

 マーリンといえば最優クラスの魔術師で、しかも人間と夢魔の混血という話だから、この件の助っ人としては最適である。実に心強い援軍だ。

 きっとアーサー王の縁で来てくれたのだろう。

 

「うん、みんなの妹マーリンお姉さんだよ!

 並行世界の出身だけど、怖い王妃様から気にするなって言われたからそうさせてもらってるよ」

《妹? お姉さん?》

 

 すると何かすごい美人が自己紹介してくれたが、伝承ではマーリンは確か男だったはず……なんてのは今更として、王妃様というのはモルガンのことだろうからその辺の事情も想像がつくとして、妹とはいったい。

 

《……まあいいわ。カルデアは内輪もめせずに協力してくれるなら、出身も種族も問わないオープンな組織だから》

 

 そもそも残存のマスター3人がガイアの精霊とアルビオンとホムンクルスというガチ人外で、サーヴァントにも妖精國組に加えて並行世界出身の元人類悪(カーマ)第三魔法的世界(ユニヴァース)出身の者までいるのだ。マーリンの事情なんて大したことはない。

 

「へえ、懐深いんだねえ。じゃあよろしくお願いするよ」

《ええ、こちらこそ。藤宮を助けてくれてありがとう》

「うん、どう致しまして」

 

 これでマーリンとの挨拶は済んだので、この際だからもう1人の新入りの眼帯の女性にも自己紹介してもらうことにした。

 

《ところでそちらの貴女は?》

「ギリシャのメドゥーサと申します。この特異点のはぐれサーヴァントですが、他の聖杯戦争でセイバー……アーサー王と知り合ってましたので、その縁で協力することになりました」

《メドゥーサ……ああ、それで眼帯してるのね。よろしく》

「ええ、こちらこそ」

 

 メドゥーサといえば姿を見た者を石にしてしまうという恐ろしい怪物だ。あの眼帯でそれを防いでいるのだろう。

 敵対するのは怖いが、味方となれば頼もしい存在である。オルガマリーは彼女を仲間にできた幸運を喜んだ。

 

《それじゃ話を戻しましょうか。遺骨が集まった後はどうなったの?》

「はい。マーリンさんによればアルビオンは俺を捕食したかったんじゃなくて、自分に相応しい精神と魂を持つ者に宿ってほしかったみたいで。つまり合体とか融合とか、そういう路線ですね」

《なるほど。死んで遺骨だけになってたアルビオンは、今生きている精神と魂と肉体を持つ者と融合したことで生き返ったというわけね。

 ……つまり、今の貴方はアルビオンそのものということ?》

「はい。幸い人間モードになる能力は残ってたので、こうして普通にお話できてますが」

《そ、それは良かったわね》

 

 つまりもしその能力が残っていなかったら、光己はずっと体長2キロの骨のままだったということになる。そんな代物カルデアでは扱い切れないわけで、ホントに危なかった!とオルガマリーは冷や汗を手を拭った。

 

《貴方から報告が来るたびに驚かされてるような気がするけど、何はともあれ貴方が無事で良かったわ》

 

 オルガマリーは万感をこめてそう言ったが、傍らのⅡ世はそれだけでは済まされない。

 

《経緯は理解した。どうやら私の依頼のせいで、マスターは人間からさらに離れた存在になってしまったようだな。

 申し訳ないことをした。できる限りの償いはしよう》

 

 話の始まりはアンデルセンの依頼だが、Ⅱ世がそれに乗っかったのも事実だ。責任を感じて謝罪したのだが、当人はさほど気にしていなかった。

 

「いえ、融合しなかったとしても純人間に戻るわけじゃありませんし、頭の中身は無事でしたからそんなに気にしないで下さい。

 もしそれじゃ気が済まないというのなら、人理修復が成功した時にその手柄と合わせて、俺と立香が()()()()不自由しないで済むようサポートしてくれると嬉しいですね」

 

 しかしいい機会ではあるので、いつか立香と話した事後の安全保障を求めてみる。なお「なるべく」を強調したのは、立香にも話した「神秘の秘匿」についても配慮したからだ。

 もとよりⅡ世もオルガマリーも光己と立香に報いる気持ちは大いにある。

 

《当然、いや控えめすぎるほどの要求だな。というかマスター(アルビオン)とその仲間たちと音信不通になるのはとても不安だから、嫌でも連絡を保たざるを得んのだが》

 

 連絡を保つというのは何か問題が起きたら相談に乗る、つまり彼の要求通りサポートをするということだ。

 なお「その仲間たち」と言ったのは、大奥組を無理に座に退去させたりはしないという意味である。人理修復が終わったら時計塔と国連はサーヴァントを退去させようとする可能性が高いのだが、それに応じる姿勢を見せたら光己と大奥組に加えてモルガン一党も敵に回すから怖くてできないのだけれど!

 幸いマシュ以外のサーヴァントは霊体化すれば査問の類は誤魔化せるから難しい問題ではないし。

 

《ただ後でこじれるといけないから今言っておく、というかマスターならおそらく分かっていると思うが、貴方の正体や功績を全世界に喧伝して英雄として賞賛するとか、そういうことはできないからあらかじめ承知しておいて欲しい》

「あー、それはもう。むしろ世間一般から注目なんてされたくないので、俺は魔力中継用のカカシで交渉や指揮は所長やⅡ世さんがやってたってことにしてもらってもいいですよ」

《そうか、なら良かった》

 

 ここで光己にゴネられたら面倒なのだが、やはり彼はその辺物分かりが良くて実にやりやすかった。

 しかしその物分かりの良いマスターに、Ⅱ世はもう少し嫌な話をせねばならない。

 

《ただ問題は、マスターを最初の体裁通り一般枠の素人ということにした場合、心ない魔術師がマスターを見下したり、あらぬ言いがかりをつけてくる恐れがあるということだな。

 魔術という特殊能力を持っているだけに、良く言えばプライド、悪く言えば高慢な面を持つ者も多いのだ》

「ほむ……」

 

 実はⅡ世の魔術師評は分厚いオブラートに包んだものなのだが、光己は部外者なのでそれには気づかず「確かに世の中そういうこともあるか」と普通に納得して思案し始めた。

 光己は今コフィンで凍結されている魔術師たちに難癖をつけられる謂われは全くないのだが、何十人もいる中には性格が悪いのもいて「俺がカッコよく世界を救うはずだったのに、よくも見せ場を奪いやがったな」とか「パンピーにアーサー王やワルキューレはもったいない。俺に寄こせ」とか言ってくる可能性はないとはいえない。その時に喧嘩を買ってアルビオンカラテで分からせたりしたら、それはまあ問題になるだろう。

 かといって言われっ放しは癪だし、ましてサーヴァントを譲るなど論外なのだが、Ⅱ世にはそれを避けるいいアイデアがあるのだろうか?

 

《うむ、単にマスターが魔術師を名乗れば済むことだ。

 幸いにして、竜言語魔術には貴方のドラゴンブレスや熾天使形態(ゼーラフフォルム)、だったか? それと外見的には類似したものが含まれているからな。それに獣性魔術や蝶魔術にも似たものがある。

 だから魔術師として最低限の常識だけ覚えておけば、魔術師を名乗るのに支障はない》

 

 しかも魔術師は自分の研究については基本的に秘匿するものなので、光己の芸当が魔術ではなくドラゴンの超能力であることを隠しておくのも容易だ。必要とあれば時計塔にいる自分に紹介状を書いてエルメロイ教室の生徒という身分を与えるのもやぶさかではないが、そうした細かい話は後日でいいだろう。

 

《まあ今すぐ決めねばならぬことでもない。興味があるなら、具体的なことはマスターがカルデアに帰った後で話そう》

「そうですね、分かりました」

 

 確かに今長話するべき用件ではないので、光己はこの話はここまでにすることにした。

 ついでヴラドやパラケルススの件を報告したら、今後の予定についても話すべきだろう。

 

「―――そんなわけで今の俺の冠竜形態(ドラゴンフォーム)は骨だけなんですが、立香が言うには魔力さえあれば筋肉や内臓も再生できる……といっても心臓を再生するまでは外部からの供給が必要なんですが、ブリュンスタッドさんが何とかできるそうなので、これからやろうと思ってます」

《そ、それはまたすごい話ね》

 

 骸骨状態から自力で筋肉や内臓を再生するとか、体長2キロの大怪獣がそれをやるだけの大魔力を個人の能力で調達できるとか、オルガマリーは今までの人生で得てきた魔術方面の常識が砂の山のように崩れていくのを感じたが、「このヒトたちは例外!」とジャンルを分けることで表面的な冷静さを保った。

 人理修復のためには有利なことなのだから、カルデア所長としては歓迎すべきなのだし。

 

「……ええと、今報告することはこのくらいですかね。それじゃまた後で」

《ええ、気をつけてね》

 

 そして通信を終えると、何かこういろいろ疲れて大きな息をついたのだった。

 

 

 

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