FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第228話 ルチフェロなりしサタン

 太公望たちが第三勢力の4騎を全員連れてきたことにアルトリアたちは目を丸くしたが、報告を聞いてみるとマスター決裁案件のようなので、サーヴァント全員が同席の上で光己と対面してもらうことにした。

 小次郎の時同様に怪しい(もや)を通り抜けると、同様に巨大な竜の骸骨が天草たちの目に映る。

 

「な、ななな……!!??」

 

 そのあまりに異様な姿にアタランテは硬直し、ジャックとナーサリーは後ろによろめいて尻もちをついてしまった。しかし天草は厚き信仰心の賜物か、動転したのは一瞬のことですぐ戦闘態勢に入っていた。

 

「あ、あれはまさしくルチフェロなりしサタン……なるほど、大天使ミカエルに受けた傷を癒すために魔霧の魔力を吸い込んでいたというわけですか。

 すると太公望殿たちは操られているということに!?

 ……勝てる気はしませんが、抗わぬわけにはいきません」

 

 なおとある特異点では悪堕ちした天草がその「ルチフェロなりしサタン」の使徒になっていたりするのだが、今ここにいる天草は彼とはまったくの別人である。

 

「待て! ジャックの願いをかなえる邪魔はさせないぞ!」

 

 するとアタランテも我に返って、天草を後ろから羽交い絞めにする。

 なおアタランテが動かなければメリュジーヌあたりがもっと過激な方法で止めていたので、天草はむしろアタランテに感謝すべきところなのだが、当人にそんなことに気づく余裕などあるわけがなかった。

 

「ちょ、アタランテ殿!? サタンのことは知らなくても、この骸骨の禍々しき気配は感じられるでしょう。人間の願いを素直にかなえてくれると思いますか!?」

「思う! カルデアのマスターに何が起こったのかは分からないが、彼らはこの街の住人を殺していないからだ」

「そ、それは確かにそうですが」

 

 なるほどカルデア一行はロンドン市民を殺害するどころか、それをしている黒幕を打倒するために活動しているのは事実だ。しかしそれだけで人類の味方と断定はできない。

 

「ですがあの蝙蝠の翼の悪魔的なオーラを見て下さい。住人を殺していないといっても、何か裏があると見るべきではないでしょうか」

「それはそうかも知れんが、そうと決まったわけでもあるまい」

「しかしですね」

 

 ……などと2人がもめていると、上から重厚にして貫禄ある声が降ってきた。

 

「少し落ち着いたらどうか、いと小さき者よ」

「しゃべった!?」

 

 しかも人間への呼びかけ方がそれっぽい。2人はびっくりしてしまった。

 上からの声が続く。

 

「人理の影法師である青年よ、汝は何故我に剣を向けるのか?」

 

 その白々しい質問に天草は露骨に眉をしかめた。

 

「知れたことを。貴方がサタンであるならば、まぎれもない人類の宿敵でしょうが」

「ほう? だが()()イブに知恵の樹の実を食べさせなければ、かの夫婦は無垢なままずっと2人きりでいただろう。つまり我がいなければ、汝らは皆この世に生まれていなかったというのにか?」

「んんんっ!? そ、それは」

 

 骸骨はあっさり己がサタンであることを認めたが、それは自分が人類の恩人だと主張できる理屈を持っていたからのようだ。

 確かに一理あるが、それを認めるわけにはいかない。自身が魔王サタンと直接話をしているという聖書的状況に非現実感と不思議な高揚感、そして総身が震えるほどの畏怖を感じつつも反論を試みる天草。

 

「い、いやそれは結果論でしょう。

 それに貴方は人間を惑わして神に罰されるハメに陥らせたでしょう。それも善だと言い張るのですか?」

「我が悪とされるのは、単に負けたからに過ぎぬ。汝の生国でも、楠木正成が朝敵だったり石田三成が奸臣だったりした時代があったであろう。それと同じことだ」

「なんと!?」

 

 予想外にも、サタンは日本の歴史に詳しかった。

 しかし敗者が悪とされるのは人間世界ではままあることだが、天界でもそうだというのだろうか。

 

「否、天界においてはそのようなレッテル貼りは行われぬ。何故なら宇宙で起こるあらゆる事象、すなわち『神』の采配は人の価値観や感覚を超えた高き視点から見れば全て完璧だからである」

「な、何ですって……!?」

 

 まさかサタンが神を称賛するとは。ただでさえ太公望との討論で頭が疲れていた天草はすっかり混乱してしまった。

 とりあえず、1番の疑問点を率直に訊ねてみる。

 

「つまり、貴方は人類の味方だというのですか?」

「然り。このたびの人理焼却案件においても、人類を救うため尽力している」

「な、なんと……」

 

 まさかサタンがこれほどはっきり、己が人類の味方だと明言するとは。

 いやそれもこれもこちらを惑わすための虚言という可能性もある。天草はますます混乱してきて両手で髪をかきむしったが、すると見かねたのか若い女性が仲裁に入ってくれた。

 

「我が夫、(もてあそ)ぶのはその辺にしておいては?

 天草はともかく、マシュが困惑していますから」

「え!?」

 

 言われてみれば盾を持った少女がなぜか妙におろおろしているが、それは先方の内輪事情として、もっと気になることがあった。

 

「夫……? サタンが……? ということはまさか貴女はリリス!?」

「大外れだ。私はモルガン、ここ汎人類史においては、アーサー王の姉でありロット王の妻であった者だ」

「へ!? そ、それは失礼しました……」

 

 天草はとりあえず見立て違いを謝罪したが、なぜイギリスの王妃がサタンを夫と呼ぶのか? 遅まきながら真名看破してみたが、彼女の真名は名乗った通りだった。

 モルガンたちは本当に自分の意志でサタンに従っているのか、それとも洗脳か何かされているのか? 一体何がどうなっているのか、天草のSAN値(しょうきど)はもう直葬寸前であった。

 それでも黙っているわけにはいかない。もしモルガンが洗脳されているのなら何を聞いてもサタンに都合のいい答えしか返って来ないだろうが、それを確かめるためにも会話は必要だ。

 といっていきなり「夫婦」の内輪事情を詮索するのは紳士的とはいえないので、まずは今彼女が口にした「弄ぶ」という単語について訊ねることにする。

 

「それで、サタンが私を弄んでいるとは一体?」

「我が夫がおまえに言ったことは()()()()が出任せということだな。あの姿と声の迫力もあって、一応はもっともらしく聞こえるのがタチが悪い」

「……は!?」

 

 天草呆然である。完全に思考停止して、再起動するまで数十秒ほども要した。

 

「……ほわい!? なぜそんなことを!?」

「簡単なことだ。我が夫は先ほど『俺は体は悪魔になった……だが人間の心を失わなかった』と言っていて、しかも『人類を救うため尽力している』と言ったのは本当だ。なのに見た目だけで人類の敵扱いされれば、不快に思うのは当然だろう」

「見た目だけで判断するのが良くないのは分かりますが、さすがにあれはちょっと……いやそれより、サタンは人間だったというのですか!?」

 

 またもSAN値が削れる驚愕の新情報だ。聖書の記述に矛盾するのはもちろん、当人の「イブに知恵の樹の実を食べさせた」発言とも矛盾してそうな点がさらにCOOL。いやそこはやはり出任せでデタラメだったのだろうか?

 

「やっぱりおかしくないですかそれ!?」

「何もおかしくはないな。端的にいえば今の我が夫は人間藤宮光己がアルビオンという竜の遺骨と融合して、それがルシフェル、おまえのいうルチフェロなりしサタンの疑似サーヴァントになった、ようなものなのだから。

 つまり本物のサタンではないのだから矛盾はあるまい。

 ……おっと、言い忘れるところだった。サタンといっても100%魔王なのではなく、天使長と魔王が半分ずつであるおかげで人格への影響はないそうだ。だからこそ人間の心を失わずに済んだのだな」

「!!!?!!?☆※#*★!? …………、……!!」

 

 まずは己の宿願の是非に挑戦する危険で重大な情報をいくつも提示され、次はおぞましき大悪魔(?)に弄ばれ、さらには宗教的信条ともかかわる密度が高すぎる話まで聞かされた天草はついにSAN値がゼロになって発狂、もとい知恵熱が上がり過ぎて失神したのだった。

 

 

 

 

 

 

 天草はアタランテに羽交い絞めにされているままなので、失神しても地べたに倒れたりしないですんだが、そのままにしておくのは何なのでナーサリーが本からファンシーなベッドを出してそこに寝かせておくことになった。

 それが済んだところで、マシュが気ぜわしげな様子でモルガンに訊ねる。

 

「あ、あの、モルガンさん! 先ほどのお話はいったい……それと先輩は無事なのでしょうか!?」

 

 無事というのは、光己の意識がルシフェルに乗っ取られていないかという意味だ。疑似サーヴァントはエルメロイⅡ世(諸葛孔明)のような一部の例外を除いて、依代の人格はなくなってサーヴァントの人格だけが表に出るようになるので、光己もそうなってしまったのではないかと心配になったのである。

 人類の敵扱いされて腹が立ったとしても、相手の宗教的信条をつついて弄ぶなんて光己らしくないと思うし。

 するとモルガンはマシュの心配が杞憂であると示すかのように小さく笑った。

 

「心配は要らん。我が夫の頭の中身は藤宮光己のままだ。

 といっても普段よりは秩序・悪に寄っているがな。らしくないというならそのせいだ」

「えええっ!?」

 

 前半はともかく、後半は心配要ると思うのだけれど。やはり異聞帯の女王ともなると感性が違うのだろうか。

 

「でもどうしてですか?」

「我が夫は先ほど『元々天使的パワーと悪魔的パワーが同じで中和されてたおかげで精神面は影響なかった』と言っていたな。しかし今はどうだ?」

「ああっ、確かに!」

 

 言われてみれば、今の光己は悪魔の翼だけがあって天使の翼がない。ならば精神面が悪魔側に引っ張られるのは必然だ。天使の翼ができるまでのこととはいえ、本当に心配要らないのだろうか?

 マシュは今一度光己の顔を見上げてみたが、遠い上に骸骨なので彼の内面はまったく判断できなかった……。

 

「アルビオンと融合したことで精神干渉への耐性も上がったはずだが、あの翼も巨大だからな。単に意志力や善性が強いというだけでは抵抗しきれまい。

 なのにこの程度で済んでいるのは奇跡……などではなく、ちゃんとカラクリがある」

 

 モルガンがそう言って光己の方に目をやると、骸骨の頭部はむうーっと感心したような動作をした。

 

「さすがはモルガン、ここまで完璧に見抜くとは……」

「フフッ、政略結婚とはいえ妻ですからね。このくらいは察しますよ」

「……むー」

 

 モルガンが自慢気に小さく鼻を鳴らすのを見てマシュは何となく不愉快になったので、気づかってくれた彼女には悪いと思いつつ割り込むことにした。

 

「そ、それでそのカラクリとは何なのですか!?」

「如意宝珠に精神安定を願っているのだ。それで悪魔の翼の影響を減らせる」

「な、なるほど! さすがは先輩です」

 

 これまで素晴らしい機知で何度も戦況を好転させてきた彼だが、これは今までのトップ3に入るナイスアイデアではあるまいか。アルビオンやルシフェルといった超存在になっても驕り高ぶる所はないし、まさにこの冬ナンバーワンのマスターである。

 しかしこの妙案と光己の心理状態をも的確に見抜いたモルガンもまた、異聞帯の女王を2千年もやっていただけのことはあるというべきか……。

 

「つまりこの先は、骨格が6対とも出来上がったら天使の翼を重点的に再生するという流れになるのでしょうか?」

「そうだな。最初からそうすれば良かったといえばその通りだが、6対出来たのは当人にも予想外だったようだから仕方あるまい」

「そうですね。先輩には驚かされてばかりです」

 

 マシュとモルガンがそれでいったん話を締めると、今度はアタランテが「やっと話ができる」といった面持ちで近づいてきた。

 

「それで、結局何がどうなっているんだ? 恩義があるのに敵対しておいておこがましいとは思うが、もう少し分かりやすく説明してくれないか」

 

 神話時代のギリシャ人であるアタランテには、アルビオンとかルチフェロとかサタンとか言われても何のことかさっぱりである。頼み事をするために来た身だが、そこは聞いておかないと落ち着かない。ジャックとナーサリーが怖がって自分の後ろに隠れているし。

 善良で純朴なマシュはその辺気にせず、親切にアルビオンとは何かとか、光己がなぜ今こうなっているのかを懇切に説明した。

 

「―――そういうわけで、先輩はこの場で翼だけでも再生しておこうとしているのです」

「うーん、そんなことになっていたのか。どう言葉をかけるべきか悩んでしまうが……何にせよ、無事ではあるわけだな?」

「はい。天使の翼が再生されれば気分も落ち着くはずですので、もし込み入ったお話があるのでしたらその後にするのが良いかと」

「ふむ、ではそうさせてもらうか」

 

 こちらの頼み事は特に急ぎではない。相手が現在精神的に不調だというなら、治るまで待つのが道義的にも頼み事を了承してもらえる可能性的にも順当な判断だと思われる。

 天草については、その天使の翼ができるまで寝かせておくのが彼のためであろう……。

 

「それにしても、目に見える速さで骨が生えていくというのはすごいな……」

 

 アタランテも生前は猪退治に参加したりアルゴー号に乗船したりといろんな冒険をした身だが、こんなのを見るのは初めてだ。しかしこれなら、そう長いこと待たなくても良さそうである。

 そして翼の骨格が6対とも完成すると、モルガンの見立て通り1番上の骨格に肉や皮が生えてきた。

 はっきりいってグロい。狩人のアタランテや解体マニアのジャックはわりと平気だったが、絵本の概念であるナーサリーは我慢できず両手で目を隠してしゃがみこんでいた。

 しかし羽毛が生えてくると骨や肉が隠れてグロさが薄まり、代わりにその美しい純白の羽根が放つまばゆい光の神々しさといったらもう、適切に表現する言葉が思いつかないほどである。

 なるほどこれほど強大な存在ならば、ジャックの願いを叶えるくらい造作もなかろう。もしかしたらアタランテの願いさえ実現できるかも知れない。

 

「うわ、すっごいきれい……」

「天使様だわ、天使様だわ。羽だけは」

 

 ジャックとナーサリーも感嘆の声をあげていた。2人はなるべく悪魔の翼から目をそらして、天使の翼だけ見るようにしているようだ。

 そして再生が完了すると白い羽翼は一段と荘厳さを増して、アタランテたちはまるで神殿の中にいるような気分だった。骸骨と蝙蝠の翼を視界に入れなければ。

 

「―――ふう、これで人心地ついたな。あとは4対同時進行でいいか。

 お待たせしちゃったけど、アタランテたちがここに来たってことは何か頼み事でもあるの?」

 

 するとまた声が降ってきた。

 声質は竜種の冠位らしい重厚なものだが、口調は以前の光己と変わらないのほほんとしたものなので大変違和感がある……が、アタランテにもそれを指摘しない程度の慈悲はある。すみやかに用件に入った。

 

「その通りだ。身勝手なのは承知しているが、それをかなえてくれたらまたそちらの味方になろう」

「ほむ……」

 

 もしかして太公望が如意宝珠のことを教えたのだろうか? いずれにせよ、まずは彼女の望みを聞いてみるべきだろう。

 

「で、どんな願い事?」

「ああ。ジャックは実は見た目通りの存在ではなくてだな―――」

 

 そこでアタランテが太公望に説明したことを繰り返すと、さすがに光己はちょっと渋い顔をした。太公望が予想したように、倫理的な面で不快感を抱いたのだ。

 ジャックは自分からカルデア側にも攻撃したから尚更である。

 

(簡単に承知したらモルガンやアルトリアたち、あとモードレッドが気を悪くしそうだしな。

 でも太公望さんが連れて来たからには何か考えがあるんだろうから、その辺話してもらおうか)

 

 思案の末そのような結論に達した光己が軍師に目を向けると、太公望も当然心得ていてモルガンたちにも聞こえるように話し出した。

 

「―――というわけで、我々は警察でも裁判所でもありませんから人理修復に得か損かで判断した方がいいと思うのですよ」

「なるほどな。犯罪者を安易に赦免するのは治安維持と市民感情の観点から好ましくないが、公表されないなら問題ない。

 再犯防止になるのならやっても良かろう」

「むう、まさかモルガンがここまで真っ当な政治論を述べるとは……遺憾ながら、まったく反論の余地がありません」

「そうですね、いいのではないでしょうか」

「マスターくんがそれでいいなら!」

 

 元ブリテン王組が同意したのなら、光己は言うことはない。他のメンバーもそうだろうし、最後に当人の意向を確かめておくことにした。

 

「それで、君はアタランテのお腹の中に入るのが願いってことで間違いない?」

「うん。そうしてくれたら、もう解体しないから」

 

 ジャックは太公望たちが話していたことを全て理解できたわけではないが、自分の願いをかなえてもらうための条件が人殺しをやめることであるのは分かっていた。まあおかあさんの中に還れたなら解体する理由自体がなくなるわけだから、条件を飲むのは支障ない。

 

「ほむ、じゃあやるか。

 あー、いや待った。その前に天草にお別れとか言わなくていい?」

「え!? あ、うーん。おねえさん、どうしよう?」

「ふむ……天草が起きたらまたもめるかも知れないからな。私が後で言っておくから、汝は気にしなくていい」

「うん、じゃあそうする」

 

 ジャックはちょっと迷ったようだが、アタランテに「挨拶はいらない」と言われるとあっさり頷いてしまった。まあ特に親密というわけでもなし、もめるかも知れないとあっては仕方ないことだろう。

 

「それじゃナーサリー、またね」

「うん……元気でね」

 

 といってもナーサリーにはちゃんと挨拶していたが……。

 

「よし、それじゃ改めて。

 いやまだその前に。おかあさんの胎内(なか)に入るなら、服は脱いどく必要があるな。

 アタランテもパンツ脱いでね」

「「……!?」」

 

 唐突にハラスメントなことを言われて、ジャックもアタランテも真っ赤になってしまった。

 いや言われてみれば確かに、胎児は服など着ていないし、パンツを穿いていては胎内に迎えることはできない。光己の指摘は正当といえよう。

 しかしこんな人前、まして野外で脱ぐわけにはいかない。

 

「う、うむむむむ……そうだ、魔術で衝立か何か出してもらうわけにはいかないか!?」

「あー、なるほど。男はもちろん、女同士でも見られたくないよなあ。もちろん大丈夫だよ。

 でも俺だけは……」

 

 そこで光己がいったん言葉を切ったので、アタランテとジャックは思わず生唾を飲んでしまった。やはり施術者である彼には見せなければならないのだろうか!?

 

「見なくても問題ないんだな、これが」

「先輩、その言い回しだと本当にセクハラですよ!? 見なくてもできるなら、わざわざ『俺だけは……』なんて不安を煽るようなこと言わなくていいじゃないですか」

「いや待て落ち着けマシュ! これは思春期男子として自然な欲求なんだ。『見てないとできない』とは言わなかったんだから、よく自分を抑えたと思ってるくらいなんだが」

「それでよく抑えたと思っているのなら、先輩には常識とか配慮というものがまったく足りてません! 後でまたお説教です」

「そう言うマシュには男性性への理解が足りてないんじゃなかろうか」

 

 アタランテとジャックがほっと安堵するのをよそに光己とマシュはまた夫婦漫才を始めたが、いつものことなのでカルデア組は誰も気にしていなかった……。

 そして漫才が一区切りついたところで、モルガンが魔力でドームをつくってアタランテとジャックを皆の視界から隠す。

 

「これでいいな。脱いだら声をかけるがいい」

「済まないな」

 

 そしてかすかな衣擦れの音の後、ドームの中から声がした。

 

「準備できたぞ。始めてくれ」

「分かった」

 

 その後何が起こったのかは、ドームの外からでは見えない。

 やがてアタランテが終わった旨を告げてモルガンがドームを消すと、そこにいたのはアタランテ1人だけだった。

 

「うまくいった?」

「ああ、無事ジャックは胎児に戻って私の中に入った。感謝する。

 この恩は粉骨砕身して戦うことで……ああいや、それは次回以降ということにして、今回は後衛専門にさせてもらいたいが」

「そりゃそうだよな。もちろんそれでいいよ」

 

 というわけで光己の思春期の欲求は満たされなかったがジャックの願いはかなって、アタランテがカルデア側についたのだった。

 

 

 




 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致しますm(_ _)m


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