FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第232話 ヘルタースケルター2

 今回の出撃はジキルとモルガンとバーヴァン・シーとバーゲストとヒロインXXが留守番で、その他の18人が出向くことになった。この特異点に来てからまだ1日半しか経っていないのに、メンバーがずいぶん増えたものである。

 

「……しっかし、慣れたとはいえこうも視界が悪いとイライラするぜ」

「……ゥ」

 

 モードレッドとフランは光己たちよりこの特異点に来て長いが、やはり魔霧は不快なものであるようだ。

 そしてハッと何か思いついたような顔をする。

 

「なあ藤宮、おまえんとこの宮廷魔術師……いやそっちを頼るまでもねえな。

 並行世界出身とはいえマーリンがいるんだから、遠見の水晶とか作ってもらえばもっと簡単に済むじゃねえか」

「おお、なるほど!」

 

 水晶玉に遠方の景色を映すというのは、21世紀でもファンタジー系の創作ではよくあるシチュである。マーリンほどの大魔術師なら朝飯前だろう。

 そういえば太公望も封神演義では占い師をしていたことがあるから、物探しは得意なはずだ。

 

「マーリンさんに太公望さん、どんなもんでしょ」

 

 光己もモードレッドもグッドアイデアだと思っての提案だったが、すると2人は鏡で映したようによく似た動作で肩をすくめた。

 

「確かに作れるけど、遠見の水晶なんてそんな都合のいいものじゃないよ?

 もしそうだったら、たとえば王がお求めだった聖杯や聖剣の鞘のありかだって分かったわけだしね」

「右に同じですね。特定の誰かや何かを探すというのは、簡単なようで難しいんです。

 桃精柳鬼を討った時だって、占いで探したわけじゃありませんしね」

 

「なあんだ、思ったほど頼りにはならねえんだな。

 いや言われてみれば確かにそうなんだけど」

 

 モードレッドは悪意はないものの露骨にがっかりした態度を見せてマーリンと太公望を苦笑させていたが、光己は彼女より諦めが悪く物欲が強かった。

 

「いや、魔術師マーリンお手製の遠見の水晶ともなれば実際お宝……!

 なので後で作ってくれないかな」

「へ!? そりゃキミの頼みとあれば否はないけど……。

 でも素材になる水晶玉は持ってるのかい?」

「もちろん。水晶玉でもQP玉でも、何ならヴィーヴルの宝石の瞳もあるよ。

 他にも翡翠とか琥珀とか血玉石とかトルコ石とか、たいていの石は持ってる」

 

 ここでアルクェイドが一瞬耳をそばだてたが、それ以上の反応はしなかったので理由は不明である。

 

「……そ、そう。なかなか物持ちなんだね」

 

 マーリンは微妙に引いてしまっている感じだったが、光己は構わずさらに押した。

 

「そりゃもう大奥王たる者これくらいのお宝はね。

 それで、マーリン製の水晶玉ってどれくらいの性能なの?」

「そうだねえ。今回の件でいうなら、ヘルタースケルターの所有者の姿や周囲の景色は見えるけど、それがどこかは分からないって感じかな。その『周囲』に、場所を特定できる何かがあれば、それで判明することはあり得るけど。

 あとそれとは別に、ターゲットの魔術スキルによっては見てることがバレて呪詛とか飛ばしてくる可能性もあるね」

「ほむ、『カルデアのマスター! きさま! 見ているなッ!』ってやつか……」

 

 なるほど魔術王や高位の魔術師系英霊であればそんなこともできそうである。あまり他人のプライベート(?)を覗き見するのは良くないということか。

 ―――そしてフランのナビゲートに従って道を急ぐ光己たちだったが、彼女の誘導が正しいと証明するかのようにヘルタースケルターが何度も襲いかかって来る。しかしヘルタースケルターだけでサーヴァントも他のエネミーもいないので戦術の幅が狭く、もはや脅威とはいえず単に硬くて手間取るだけの敵になってしまっていた。

 

「ま、同じ攻撃方法を何度も見てたら慣れるよな」

「そうねー、同じ芸ばかりじゃお客さんに飽きられちゃうって分かんないのかしら」

「確かにそうですが、マスターもブリュンスタッド殿も油断はしないようにして下さいね」

 

 アルクェイドあたりはそろそろ飽きが来ていたが、太公望は軍師だけあって慎重であった。

 そしてさらに進むと、アルクェイドのリクエストに応えたわけでもあるまいがオートマタやホムンクルスも混じってくる。しかしサーヴァントの姿はなく、ルーラーアルトリアと天草の探知スキルにも反応はない。

 

「まだ遠いの?」

「さてな……この先はウェストミンスターエリア、国会議事堂もある所だから黒幕気取りが拠点にしたがりそうな場所だとは思うが」

「ほむ……」

 

 民主主義国家で生まれ育った一般人としては外国とはいえ国会議事堂で派手なバトルは避けたいものだが、敵がいるのでは仕方がない。特異点修正で修繕されるのを願うばかりである。

 そして本当に議事堂正面まで来てしまった。すると前方から、他のものより三回りほど大きなヘルタースケルターが通常型を20体ほども引き連れて出現する。フランのセンサーは確かだったようだ。

 

「おお、あれか!? 普通サイズも結構いるぞ」

「今回はオレはフランの護衛に回る。フランはオレの後ろから離れるなよ!」

「サーヴァントではないようですが……!?」

 

 しかし大型ヘルタースケルターはサーヴァントではなく、所有者当人が近くに潜んでいる様子もない。ここに至ってなお出て来ないとは何を考えているのだろうか?

 

「まあ、倒すしかないか……」

 

 何にせよ、敵が外に出てきてくれたのはもっけの幸いである。(議事堂内に)逃がさないように立ち回るべきだろう。

 

「それじゃ空飛べる組はヤツらの後ろに回って! 挟み撃ちで一気に仕留めよう」

「承知しました」

 

 まずアタランテや天草が矢や投剣で牽制してから、アルトリアや小次郎たち前衛組が吶喊する。その間に光己の指示通りメリュジーヌや太公望たちがヘルタースケルター勢の背後に回って、あっさり挟み撃ちの態勢を整えた。

 あとは火力の差で逃亡すら許さぬ一方的殲滅である。カルデア側は光己・マシュ・モードレッド・フラン・アンデルセン・シェイクスピア・ナーサリーがほぼ不参加だから実質11人なのだがまったく問題にならない。

 大型ヘルタースケルターはサイズに見合った耐久力とその割に素早い剣腕を備えており、武闘派でないサーヴァントなら倒し得るスペックはあったが、今回の敵はそういうレベルではないのだった。

 

「そーれ、っと! これでおしまい」

「……敵性存在、全機沈黙しました。戦闘終了ですね」

 

 特にアクシデントもなく最後のヘルタースケルターが倒れると、カルデア本部からの依頼でマシュが残骸の映像情報を送信し始めた。そしてその最中、大型機に何やら刻印がされているのを見つける。

 

「これは……製造者の氏名でしょうか。『チャールズ・バベッジ AD.1888』と書いてあるようですね」

「…………ゥ!!?」

 

 その名前を聞いたフランが一瞬顔色を変えたが、それに気づいた者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 その頃カルデア本部の所長室では、光己が今度はルチフェロなりしサタンの疑似サーヴァント的なものになったという報告を受けて緊急の対策会議が開かれていた。

 

「シバの女王。改めて確認しますが、藤宮の人格に変化はなかったということでいいのですね?」

「はいぃ~。本人はその旨を述べた時に『清姫を呼んでもいい』と言っていましたし、マシュさんたちの態度も変わっていませんでしたから確かだと思いますぅ」

「そう、なら今まで通りの扱いでいいわ。変に警戒すべきじゃないし、まして排除なんてもっての外よ」

 

 シバの女王の報告を聞いて、オルガマリーは心底安心したという様子でおかまいなしという判断を下した。エルメロイⅡ世も同意といった風に頷く。

 

「そうだな。1人の人間としても、カルデアの副所長としても、彼を追放あるいは殺害することには反対だ」

 

 ぶっちゃけ光己所属のサーヴァント以外の戦力で彼を殺すのはほぼ不可能だし、それどころか計画が露見した時点で大奥組が突撃してくるだろう。確実にこちらが死ぬ。

 武力によらない方法として彼が特異点にいる時に存在証明を取りやめて意味消失させるという手があるが、彼は最初の特異点Fの時はコフィン無しでレイシフトした上に存在証明無しで生存していたし、まして「単独顕現」の素質を得た今は通じないと考えた方がいいだろう。

 

「歴史的には君主が功臣の叛逆を恐れて、あるいは単に邪魔になって粛清するのはよくあることだが、それがクーデターの引き金になって返り討ちに遭うのもよくあることだからな。

 それに我々は一般人の未成年に、古今東西の英雄つまり変わり者を率いて歪められた歴史と戦うという難業を強いているのだ。彼が人の心を保っている間は、それを信じるのが我々の責務だろう」

 

 この発言は光己が人の心を失ったら何らかの措置を取るという意味でもあるが、それはカルデア副所長として当然の仕事であり、オルガマリーも反論はしなかった。

 しかしここでⅡ世は傍目にも分かるほど表情と口調を変えた。

 

「それにだな。例の竜言語魔術の石板の翻訳はまだまだ時間がかかるし、竜宮城のお土産といえば玉手箱以外は貴重な呪具や書物が目白押しだ。

 彼が無事なまま人理修復を終えられればモルガン女王やワルキューレに魔術を習うチャンスもあるだろうし、いっそのこと如意宝珠で根源……までは無理でも、魔術の才能を上げてもらうくらいは可能なはずだ。

 魔術師としては、敵対するより友好関係を結ぶべき相手だとは思わんかね」

「アッハイ」

 

 珍しく私欲全開で力説してきたⅡ世の本気ぶりに、オルガマリーは首を縦にこくこく振るしかできなかった……。

 光己とは友好関係を結ぶべきという意見には大いに賛成なのだけれど。

 なおロマニもシバもダ・ヴィンチも現時点で光己をどうこうすべきだとは思っていなかったのでこの件はこれで満場一致となったが、彼については別の問題が残っていた。

 

「それはそれとして、アルビオンと融合したとなるともうカルデアのコフィンではレイシフトさせられないと思うわけだけどどうしたものかねえ?」

「な、何ですってー!?」

 

 ダ・ヴィンチが投下した爆弾発言にオルガマリーたちが一斉に目を丸くする。

 つまりコフィンの最大出力でも光己を霊子変換することはできないだろうという意味なのだが、ここで彼の「単独顕現」の素質が逆に幸いする。霊子変換させる代わりに単独顕現を後押しすれば、特異点に赴くことは可能だと思われた。

 しかもこれができれば彼の存在証明をしなくて済むようになり、職員の負担を減らせて一石二鳥である。

 ちなみに存在証明はカルデア本部でマスターが現地にいることを認識できれば事足りるので、必ずしも当人の映像や音声を鮮明に拾い出す必要はなく、現在も用事がある時以外はプライバシーに配慮してそうしている。いやもし24時間鮮明な映像や音声が必要だとなると現地マスターは入浴やトイレに至るまでプライバシーゼロということになるので、少なくとも女性はマスターになるのを拒否していたであろう……。

 

「でもお高いんでしょう?」

「それはもう、コフィンを大改造するわけだからね」

 

 ただ機能を追加するだけではなく、光己が翼を出した状態でも入れるよう筐体を丸ごと作り変えるレベルの改造になるのだから、多大な手間暇資材が必要になるのは当然だ。

 改造中の特異点修正はヒナコかアイリスフィールに行ってもらえばいいから、人理修復の日程という点では問題ないけれど。

 

「まあしょうがないわね……でも単独顕現の後押しなんて本当にできるの?」

「実はそこがネックでね。ズバリ、1から研究を始めるレベルだよ!

 そもそも本当に単独顕現なのか確認しなきゃいけないしね」

「間に合うのそれ!?」

 

 オルガマリーの悲鳴が所長室に木霊した。

 

 

 

 

 

 

 光己たちがジキル邸に帰るとそれに気づいたモルガンが部屋から出てきて、夜半頃には敵本拠地の場所をおおむね特定できると教えてくれた。今5時30分だから、あと6時間ほどである。

 あくまで「おおむね」ではあるが、ルーラーによるサーヴァント探知があるからそれで十分なのだ。

 

「そっか、ありがと。じゃあちょっと仮眠するかな」

 

 昨晩は寝ていないから、決戦に備えて休養を取っておくべきだろう。問題はどこで寝るかだが……。

 

「やっぱり空き家を探すしかないか」

 

 ジキル邸は彼1人の家としては十分広いが、今は20人以上いるのに別室をモルガンが使っているので、ゆったり眠れるような環境ではない。人がいる家に押しかけるのは気が引けるが、空き家ならいいだろう。

 すると太公望がひょいっと手を挙げた。

 

「では先ほどのリクエストに応えて、占いで空き家を探してみましょうか?」

「おお、マジですか」

 

 太公望の道術スキルなら人の気配で空き家を探すのは容易だろうが、それをせずあえて占いを披露してくれるというのだ。光己が喜んで彼の前に腰を下ろすと、太公望はジキルに紙切れとコインを借りてまず簡単なクジを何本か作った。

 

「ではこの中から1本選んで引いて下さい」

「ほむ……」

 

 光己が言われた通りクジを1本引いて太公望にそれを渡すと、太公望は次はコインを6枚床に放った。表と裏の組み合わせは2の6乗で「易経」でいう「六十四卦」になり、そこに光己が引いたクジでさらに「六(こう)」に細分するという方式のようだ。

 

「…………なるほど。

 ではマスター、この部屋を出たら右に曲がって、その先にある階段で2つ上の階に行って下さい。通路に入って3つ目の部屋が空いているはずです」

「ほほう……」

 

 コインとクジで何をどうすればそんな結論を導き出せるのか光己にはまったく分からなかったが、とにかく行ってみることにした。

 こちらも生身なので一緒に寝ることにしたマシュと、護衛を買って出たルーラーアルトリアとヒロインXXとアタランテ、遠見の水晶を作ることになったので静かな場所が欲しいマーリン、そして太公望本人の7人でジキル邸を出て現地に向かう。

 たどり着いた部屋は当然ながらカギがかかっていたが、マーリンが魔術で開けた。中は真っ暗だったが、これもマーリンが魔術の明かりを灯して解決する。

 

「魔術って便利だなあ……」

「フフッ、お褒めにあずかり光栄だよ」

 

 室内は太公望の占い通り無人で、しかも比較的綺麗な上に家具がいくつか残っていた。寝室に行ってみるとベッドも置いてあるではないか。

 

「なるほど、空き家の中でも過ごしやすい部屋を見つけたってわけか……。

 単に住人の魔力を探知するだけじゃこういうことは分からないもんなあ」

「さすがは有名な道士ですね!」

 

 マシュも東洋の神秘に感嘆しきりである。

 こうして光己たちは安眠できる場所を手に入れたのだった。

 

 

 




 遠見の水晶については原作で実際にモードレッドが言及しているのですが、これでヘルタースケルターの所有者の居場所が分かったら今後人や物を探す系のミッションが全部解決してしまうので、ハーミットパー〇ルくらいの性能にすることにしました。
 主人公が今後どうやって特異点に行くのかについては先の展開をお待ち下さい!


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