FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第239話 竜と獣6

 自称保護者に怒られたので、光己とドラコーとマーリンは()()()おとなしくすることにした。

 しかしおとなしくしていても出来ることはある。

 

「おお、軽く擦っているだけなのにあんなに泡が……」

 

 そう、マシュたちが石鹸とやらで体を洗っているのを見学することだ。ドラコーは未来文明の利器に大いに感心していた。

 

「うん、あれでただタオルで擦るだけより汚れが落ちやすくなるわけだな。

 オリーブオイル製の場合、詳しくは知らないけどお肌を保護する効果もあるとか」

「ほう……」

「たいしたものだねえ」

 

 ドラコーもマーリンも文明の利器でスキンケアする必要はない身だが、若い女性だからその辺の話題には多少の興味はある。未来から来た少年の話に興味深げに耳を傾けていた。

 

(しかし体洗ってる女の子ってエロいな! 泡まみれで肌が見え隠れしてるとことか、洗う動作のたびにおっぱいが揺れるとことか。

 水着なしのハダカだったらもう最高なんだけど)

 

 もっとも話をしている当人は内心こんなことを考えていたが……。

 マシュたちは今は、マシュの監督下でティアマトがアタランテの背中を流している。ティアマトはジャックの件をまだ知らないが、それを踏まえて見るとエロいを通り越してエモいの域だった。

 

(……これでだいたい洗ったから、次はいよいよおっぱいとお尻だな! 楽しみすぎる)

 

 水着の下にタオルを入れて洗うのは面倒だから脱ぐだろう。胸元や太腿を洗っている時は大変えっちで眼福だったが、それ以上のえちえちが期待できる。

 ―――などという不埒な目論見をマシュが看過するはずがない。水着の下以外を洗い終えると、どこからか手拭いを取り出して光己の鼻先に突きつけた。

 

「それじゃ先輩、これから水着の下を洗いますのでこれで目隠ししていて下さい」

「な、何だとぉぉ!? マシュ、おまえには人の心がないのか」

「あるから言ってるんです!」

「そのような心を俺は認めぬ! 媚びぬ! 省みぬぅぅぅ!」

 

 とか強気なことを言いつつ、ヘタレにも味方を求めて周りを見渡す光己。しかし当然ながら、好ましい反応はまったくなかった。

 

「ううむ、この世界のマシュは大変だな。いや戦闘時の負担は少ないはずだから、トータルでは同じくらいといえるのか……?」

 

 まあ大淫婦(ドラコー)がこんな風にごちているくらいだから、初めから勝ち目のない抗戦だったといえよう……。

 

「進んでも退いても構いませんが、目隠しは付けて下さいね!」

「うぐぅ」

 

 こうして光己はあえなく目隠しされてしまったが、ここでふと閃くものがあった。竜モードの時は目玉がないのに前が見えたのだから、目隠しされてる=目を閉じていても見ることはできるのではないか!?

 そこでさっそく精神集中したり、逆にリラックスしたりいろいろ試してみたが、成果はゼロだった。アラヤもそこまで至れり尽くせりではないようである。

 ……そのまましばらくすると、マシュがそばに来た気配がして目隠しを外してくれた。

 

「お待たせしました! それでは交代しましょう」

「……むー」

 

 マシュがとてもにこやかにしているのが光己はちょっとばかり怨めしかったが、彼女の濡れた白ビキニおっぱいを間近で鑑賞できたので差し引きゼロということにした。

 大きくて柔らかそうで形も良くて、揉みしだきたい欲求を抑えるのが大変だったが、何とかポーカーフェイスを保ちつつ湯舟の外に出る。

 その時ふとアタランテの姿が視界に入って、光己はふと気がついた。しなやかかつ強靭そうな肢体の美しさ……ではなく、いやそれもあるが彼女は今母親で、しかもお風呂が初めてというのを思い出したのだ。

 

「そうだな、ちょっと神経質だとは思うけどサービスでお湯を綺麗にしておこうか」

 

 なので少しでも良いお風呂を体験してもらって、できれば風呂好きの同志になって、あわよくばいつかどこかでまた混浴してくれれば理想的という計画である。如意宝珠(小)を取り出して「水を清める」権能を行使すると、たちまちお湯が森の奥の湖のごとく透明で澄んだ感じになった。

 下心混じりとはいえ、不本意なことがあった直後に人のために何かすることができるのは褒められていいところだろう……。

 

「へえ、マスターはなかなか気が利くんだね。じゃあ私も」

 

 するとマーリンもそう判断したのか、湯に軽く手をかざして今一度追い焚きをした。これで光己たちが入る前より浸かり心地が良くなったはずである。

 

「むむ。ここまで厚遇されるとちょっと心苦しいが、これは堪能させてもらうのが礼儀か」

 

 なのでアタランテはありがたくこのまま湯に入らせてもらうことにした。少しずつ足先から湯に浸かっていくと、じんわりした温かさが体に広がっていく。

 

「おお、これは確かに川や池で水浴びするのとは違うな。気分が緩む感じになるのは、湯の温かさのおかげか、それとも浮力で体が軽くなるからか? なかなか面白い趣向だな」

「そうか、じゃあわたしも入ってみよう。

 …………うん。生命の海は母なる海だけど、体温より温かい海はなかった。

 でもこの水の中は温かい。何だかいい感じ」

 

 ティアマトも喜んでくれたようだ。初体験者2人ともに好評を得られたことで、光己はほっと胸で撫で下ろした。

 

「良かった良かった。それじゃマシュ、後はよろしく」

「はい、お任せ下さい!」

「うん」

 

 こうして光己が体を洗うフェーズに移行して椅子に座ると、ドラコーとマーリンが左右に膝立ちで寄り添ってきた。

 

「先ほどは残念だったな。代わりに余が背中を流してやるから機嫌を直すが良い!」

「もちろん私もね!」

 

 2人とも実にサービスが良かったが、ここで光己は思うことがあった。

 

「おお、マジか!

 でもうーん。確かにすごく嬉しいんだけど、なぜみんな俺を洗ってはくれても洗わせてはくれないんだろう」

「んん? もしかして貴様、体を洗ってくれる女がそんなに大勢いるのか?

 いやそれは後で聞くとして、そんなもの貴様に洗わせたら襲われるからに決まっていようが。

 2人きりならともかく、皆の前では嫌だろう」

「なるほど、確かに!」

 

 まことにもっともなご意見で、光己は思わず手を打って賛同してしまった。

 やはり家族風呂が欲しいものである。カルデア本部でオルガマリーに申請しても却下されるのは目に見えているが、何かいいアイデアはないものだろうか。

 

「……ま、その辺はまたいずれとして、今は2人のご好意を堪能しようかな」

「うむ、テルマエ☆エンペラーと讃えられた余の洗体技術に酔い痴れるが良い!」

 

 もっともドラコーは石鹸とメッシュタオルを使うのは初めてなのだが、そこに突っ込むのは野暮というものだろう……。

 なお大淫婦としてカラダで洗う技術はA+++++の超抜級を誇っているが、このたびはマシュとティアマトが目を光らせているので不採用となっていた。

 

「へえ、じゃあ私もがんばらないとねえ」

 

 マーリンも張り合ってやる気が上がったようだ。2人はさっそく石鹸でタオルを擦って準備を整えると、まずは光己の手から洗い始める。

 

「おお、これは……!?」

 

 光己が驚いたことに、ドラコーは大言壮語した通りの洗体技術を持っていた。タオルで擦る力加減や速さが実に絶妙で気持ち良く、日本にはつい最近までいたという三助(さんすけ)を思い起こさせる。

 

「フフッ、どうかなマスター?」

「うん、すごくいいけど良すぎて大変……」

 

 一方マーリンには当然そんなスキルはないが、代わりにそのたおやかな手でこちらの手を握ってくれたり腕を撫でてくれたりとスキンシップが多い。さらに泡まみれのナイスバディが悩ましすぎて、光己は思春期の内なるビーストを抑えるのが大変だった。

 

「おやおや。まあその辺は辛抱してもらうしかないかな?」

 

 マーリンがこんなことを言いつつも楽しそうなのは、理解があるというより弄んでいるのだろう。光己はそれには気づいたが実際彼女の言う通りなので、悔しい、でも(ry状態であった。

 その後マーリンとドラコーは光己の頭の天辺から足の指先までていねいに洗ってくれたが、腰に巻いた手拭いの内側はさすがに飛ばしていたし、2人が自分を洗うところも見せてはくれたが、やはり水着の下についてはまたマシュに目隠しをされたので―――確かに素晴らしくはあったが、同じくらい生殺しなイベントになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 お風呂からあがって諸々の後始末を済ませた後、光己は当初の予定通り仮眠を取ることにした。

 その前にこれも予定通りマーリンに水晶玉を渡して「遠見の水晶」にしてくれるよう依頼し、ついでに先日ヒナコにもらった「太平要術の書」と「遁甲天書」を太公望に披露する。

 

「ある人にもらった仙道書なんですけど、どんなことが書いてあるかざっと見てみてほしくて。

 俺の鑑定眼によると原本か、写本だとしてもかなり良品だと思うんですが、内容までは分かりませんので」

「ほほう、確かに並々ならぬ雰囲気を感じますね……ええと、現界の時にもらった知識によると三国志演義に出てくるものですか」

 

 太公望は丁重に本を受け取ると、ぱらぱらと流し見始めた。

 

「ふむ、確かに仙道や仙術について書かれたものですね。うん、これは興味深い」

 

 何しろこの本を手に入れた張角と左慈は人間(あるいは仙人)の師匠なしで、本を読んでの独学だけで正史に名前が載るほどの術者になったのだ。技術指南書としては極上の部類といえよう。

 仙人志望者にとっては垂涎ものの一品、いや二品である。

 

「いやあ、まさに役得ですね! 喜んで読ませてもらいましょう」

「良かった、それじゃよろしく」

 

 こうして太公望も依頼を快諾してくれたので、光己はふうっと一仕事終えた顔をして―――マシュと並んで―――ベッドにもぐりこんだのだった。

 

 …………。

 

 ……。

 

 すっかり寝入っていた光己がふと目を覚ますと、隣でマシュが側臥位になってこちらに顔を向けていた。

 先ほど光己のセクハラを警戒していた割には、赤子のように無防備で安心しきった寝顔ですうすうと静かな寝息を立てている。寝ている時に何かするほど下衆ではないという信頼か、それとも単に番人がいるからか?

 

(まあ、いいんだけどさ)

 

 光己が内心で小さくごちると、敏感にも彼が起きたのに気づいたヒロインXXが(マシュを起こさないよう)小声で話しかけてきた。

 

「マスターくん、お目覚めですか? もう11時ですので、起きたままでいた方がいいですよ」

「ほむ、もうそんな時間か」

 

 モルガンが敵本拠地の位置を割り出すのは11時30分頃の予定だから、今から二度寝するのは時間的に中途半端だ。なので光己はもう起きて、先ほどマーリンと太公望に依頼した件について進捗を聞きに行くことにする。

 2人に割り当てた部屋に入ると、太公望はまだ本を読んでいたがマーリンはすでに作業を終えたらしく、水晶玉を掌の上でお手玉のように弄んでいた。

 

「マスター、いい夢見られたかな? ご依頼の品は完成させたよ」

 

 半夢魔めいた枕詞の後、マーリンが不躾にも貴重品のはずの「遠見の水晶」をぽいっと放り投げてきたので光己はびっくりしたが、とっさに受け止めようとした彼の掌の上3センチほどの位置で水晶玉はぴたりと止まった。

 どうやらこのホバリング機能を見せるためにあえて投げたようだ。

 

「おお、これは一体?」

「なあに、使う時に宙に浮いていたら格好いいんじゃないかという、マスターが好みそうな仕様にしてみただけだよ。気に入ってもらえたかな?」

「なるほど、さすがマーリンさん気が利く!」

 

 光己は大変喜んでさっそく使ってみようと思ったが、仲間に無断で覗くのはプライバシーの侵害になるし敵を覗くと逆探知される恐れがあるそうなので、今は控えておくことにした。

 

「太公望さんはどんな感じですか?」

「ええ、おおまかなところは分かりましたよ。

 両方とも本格的な仙道書ですが、一直線に不老長寿や還虚合道を目指すのではなく、術の比重がわりと大きめですね」

「ほむ、やっぱり」

 

 特に「太平要術の書」の方は名前からして個人的な成仙より天下太平のために書かれたものと思われるから、太公望の解説は正しいと見るべきだろう。

 

「しかしこれはマスターにとってはむしろ喜ばしいことですね。アルビオン・ルシフェルに人間用の長生術など不要でしょうから、そちらより術に頁を割いている方が有意義でしょう。

 ……マスターが望むなら日本語に翻訳するのもやぶさかではありませんが、習得するには真剣に取り組んでも年単位の時間がかかるでしょうから、人理修復の間に実用レベルにするのは難しいかと思いますが」

「おおぅ、やっぱりか」

 

 そんなところだろうと思っていたが、やはりそんなところだった。世の中って世知辛い!

 しかし太公望の方から翻訳を申し出てくれたのはタナボタである。歴史的著名人事典(サバペディア)によれば左慈は房中術を修めていたという記録もあるので、遁甲天書にはそっちのさわりくらいは書いてあるかも知れないし。

 といっても実際に翻訳をお願いするのは、2冊の各ページの写真を撮って端末(タブレット)に入れてからの話である。今日のところは、水晶玉と一緒に「蔵」にしまっておいた。

 

「じゃ、あとはモルガンから連絡が来るまで待つだけかな」

 

 というわけで、光己は暇つぶしに壁にもたれて歴史的著名人事典を読み始めたのだった。

 

 

 

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