FGO ANOTHER TALE   作:風仙

240 / 301
第240話 決戦準備

 その後光己たちがマシュを起こしたり部屋の掃除をしたりしてモルガンから連絡が来るのを待っていると、11時半の5分前に妖精騎士3人が呼びに来たので一緒にジキルの部屋に帰還した。

 そうしたらさっそく敵の本拠地の位置……の前に、ドラコーからこの特異点の情報を聞いておく方がいいだろう。光己がドラコーにも言った通りカルデア本部に通信を入れると、ダ・ヴィンチとシバの女王がスクリーンに映った。

 

「そろそろ来る頃だと思ってたよ。でも所長と副所長はティアマトの件を聞いたらショックで寝込んでしまってね、代わりに私たちが聞くことになったからよろしく」

 

 なおロマニは医療部門のトップとして2人の看護をしているそうだ。

 

「実際にドラコーやティアマトと対面したキミたちがしゃんとしてるのにトップが倒れるとは何事だと思うかも知れないけど、トップには現場以外の仕事や心労もあってね。大目に見てやってくれるとありがたい」

「あー、それはもう。お大事にって伝えて下さい」

 

 光己はまだ学生だがダ・ヴィンチの言うことが分かるくらいの常識はあるし、現地組が人類悪の脅威を軽く考えすぎているという見方もある。オルガマリーとエルメロイⅡ世を責めようとは思わなかった。

 

「いやあ、いつもながら藤宮君は物分かりが良くて助かるね。

 それじゃドラコー、さっそく話してもらえるかな」

「うむ。ただマスターにはすでに言ったが、並行世界でのことの上に概略に過ぎぬから、あくまで参考程度に考えてもらいたい」

「うーん、まあ仕方ないかな」

 

 言われてみれば、100%正確かつ詳細になんてのは高望みにもほどがある。ダ・ヴィンチも現地組もやむを得ないこととして受け入れた。

 

「よし、では何から話すか……そうだな、やはりまずは事の核心からか。先ほども言ったが、この特異点で貴様らは奴と対面することになるのだからな。

 すでに知っておるかも知れぬが、このたびの人理焼却の犯人は魔術王ソロモンではない……いや完全に別人というわけでもないな。つまりソロモンの遺体の魔術回路に巣食っている奴の使い魔、72の魔神柱の集合体なのだ」

「な、何だってーーー!?」

 

 この爆弾情報にはダ・ヴィンチも現地組も心底魂消(たまげ)た。

 しかしこれなら「生前のボク、あるいはサーヴァントだった頃のボクであれば、人理焼却なんて考えもしないと思います」というロマニの発言とも符合する。とはいえ遺体及び使い魔の管理不行き届きという罪は残るが、これらはあくまで過失だから故意犯よりは罪が軽いはずだ。シバは少しだけ気分が楽になった。

 

「ふむ、その反応だとまだ知らなかったようだな。

 では奴……ゲーティアの目的も話しておくか。人理焼却も目的と言えなくはないが、どちらかというと手段なのだ」

「つまり、人理焼却を利用して何か別のことをするつもりだということかい?」

「そうだ。奴は人類史を文字通り『焼却』して、己が地球創生期に時間移動するための燃料にした、いやしようとしている、か」

「地球創生期に時間移動!? そんなことをしてどうしようと」

「余も詳しくは知らぬが、要は地球の代わりに己が永遠不滅の新たな星になろうということのようだ」

「何だって……!?」

 

 ダ・ヴィンチは凍りついたように表情を固まらせたまま次の言葉を紡げずにいたが、ここで場違いなほど軽い音調でぽんっと手を叩く音が響く。

 ドラコーがそちらに目を向けると、金髪紅眼の女が何やら腑に落ちたぽい顔をしていた。

 

「ん、貴様はブリュンスタッドだったか? 何か分かったのか?」

「ええ、わたしがここにいる本当の理由がね。

 吸血鬼を討つのはただのオマケ、本当は地球を滅ぼすかも知れない者を偵察するために送り込まれてきたのよ」

「ああ、そういえば貴様はただの吸血鬼ではなく地球の触覚なのだったな。

 星の抑止力(ガイア)もさすがに危機感を抱いたということか」

 

 実に順当な話である。ドラコーはいたく感心した。

 元の世界ではアルクェイドの姿を見たことはなかったが、この世界の星の抑止力はなかなかに鋭い感覚と機敏な行動力をお持ちのようだ。

 もちろん人類にとっても強力な援軍だが、多少の注意点はある。

 

「……ふうむ。星の抑止力に派遣されたのであれば、人間の召喚術とは別物だからサーヴァントの身であってもネガ・サモンを突破できるかも知れぬな。

 仮にできたとしても、ここではやらぬ方がいいが」

「どういうこと?」

 

 ここでアルクェイドが小さく首をかしげたのは、ネガ・サモンという言葉についてと「やらぬ方がいい」理由の両方からである。ドラコーもそれを察して、大事なことなので丁寧に説明した。

 

「ネガ・サモンというのは名前の通り敵の召喚術を否定・破却する、ひいてはサーヴァントによる攻撃は通用しないというものだ。奴からの攻撃を防ぐことはできるが。

 ソロモンは召喚術の祖ではあっても英霊召喚の専門家ではなかったはずなのに都合の良いものだが、余やティアマトも似たようなものだから深くは追及するまい」

 

 どうやらビーストのネガスキルは共通してそうしたものであるらしい。光己のものもそうなのかどうかはまだ不明だが。

 

「やらぬ方がいいと言ったのは、仮にこの特異点で奴を倒しても本拠地で再生するだけで滅びはしないからだ。余計な情報は与えぬに越したことはない。

 だから貴様とマスター、あと余とティアマトはマーリンの幻術か何かで正体を隠しておくべきだろうな」

「なるほどねー」

 

 敵が本気でこちらを潰しに来るならともかく、自分の優位を過信しての散歩感覚であるならこちらも全力を出さずに逃走なり何なりする方が後々有利だ。アルクェイドが納得して頷くと、ドラコーは次の話題に移った。

 

「奴の倒し方については、また()()語ろう。

 あとはこの特異点の黒幕だな。3人いてそれぞれ『P』『B』『M』と名乗っているが、首領は『M』マキリ・ゾォルケンで、奴だけはサーヴァントではなく生身の人間だ。何でもこの時点で齢何百歳という老人だとか」

 

 「P」「B」「M」の存在を知っているのならドラコーの情報は信頼度高そうである。そして「マキリ・ゾォルケン」の名を聞いたメドゥーサがぴしりと頬をひきつらせた。

 

「ゾォルケン……!?」

「おや、知っているのか?」

「ええ、別の聖杯戦争での私のマスターの祖……義祖父だった人物です。なるほど、彼なら自分の目的のためなら人理焼却でも何でもやらかすでしょう。

 ……あ、私の知り合いだからといって遠慮はしなくていいですよ。むしろこの手で始末したいくらいですから」

「ああ、合点がいきました。マキリ・ゾォルケンで間桐臓硯(まとうぞうけん)なのですね。

 ええ、確かに彼に気を遣う必要は絶無ですね」

 

 するとアルトリアも先ほどのアルクェイドと似た表情でぽんと手を打った。どうやらゾォルケンは敵にも味方にも嫌われるタイプのようだ。

 

「そうそう、マスターもまったく縁がないわけではないですよ。冬木で会った間桐雁夜の父親ですから」

「何だと?」

 

 そこでアルトリアの台詞に反応したのは光己ではなくモルガンだった。

 

「つまりそのゾォルケンとやらがあの(おぞ)ましき蟲屋敷の主だったのだな?

 ブリテンの首都に毒霧を撒いただけでも許しがたいのに、あのような大罪まで犯していたとは……。

 メドゥーサ、この手で始末したいと言ったな。ならば楽には死なせず、たっぷりと苦しませて苦しませて苦しみ抜かせてから殺すのだ。もしそのために魔術的な支援が必要なら、望むだけくれてやろう」

「アッハイ」

 

 メドゥーサはモルガンの家来ではないのだが、珍しく憤怒と嫌悪をむき出しにした女王様の迫力の前には首を縦に振るしかなかった……。

 そんなに憎いなら自分でやればいいのにと思わなくもなかったが、聞いても良いことはなさそうなのでやめておいた。

 

「……私怨を晴らすのはいいが、隙を突かれぬ程度にな?

 あと『P』がヴァン・ホーエンハイム・パラケルススで、『B』がチャールズ・バベッジだ。両名とも学者だと思ったが、バベッジはなぜか鉄人形の姿をしていたな」

「ゥ……ウ、ゥ! ……ウゥ……ァ……ア、ウ」

「ん、何か言いたいことがあるのか?」

 

 今度はフランが反応したが、ドラコーには彼女の言葉が理解できず首をかしげた。表情からすると何か異議があるようだが……。

 するとフランの言葉が分かるモードレッドが通訳してくれた。

 

「ええと、バベッジはこんなことする人じゃないとか何かの間違いだとか言ってるみたいだな。

 オレはバベッジって奴のことは知らないから何とも言えねえけど」

 

 モードレッドはそこでいったん口を閉じたが、ふと思いついたことがあってまた口を開いた。

 

「いや、2人とも合ってるって線もあるな。つまりバベッジには何かよっぽど深い理由があるか、でなけりゃ単に強制されてるってことだ。

 佐々木小次郎、だっけ。おまえもそうだったんだろう?」

「そうだな、というかまともな者であれば皆そうだろう」

 

 まあよほど性根がブッ飛んでいるか、あるいは人類そのものを憎んでいる者でもなければ人類皆殺し計画に積極的に加担はするまい。小次郎の回答はいたって常識的なものであった。

 

「なら話は簡単だ。強制されてるんなら解除した実績がある奴が今ここにいるし、そうでなかったらおまえが説得すればいい。そうだろ、フラン」

「……ゥ、ゥ!」

 

 するとフランは大いに元気づけられた様子で何度も頷いた。しかも「深い理由」があるなどとは露ほども思っていない様子である。

 モードレッドも笑顔になって、光己の方を顧みた。

 

「つーわけだけど、できるよな?」

「うーんと。如意宝珠(大)は竜モードでないと使えないから、まずさっきの公園みたいな広い所に連れて行く必要があるな。それと当人の意志表明が必要だから、佐々木さんみたいなケースならいいけど完全に洗脳されてて自分の意志がゼロになってると無理だ。

 その場合はモルガンと太公望さんとマーリンさんで解呪ってことになるかな」

「……んん? 完全に洗脳されてる奴こそより優先的に解呪すべきなんじゃないのか?」

「俺もそう思うけど、なぜかそういう仕様なんだ」

「そうなのか、やっぱ竜種ともなると人間とは感覚違うのかな?

 まあ母上とマーリンと、よく知らんが東洋の凄ぇ術者までいるなら何とかなるだろ」

 

 モードレッドは如意宝珠の仕様についてはまだ不満というかよく分からない様子だったが、モルガンたちの技量には信を置いているようで強くはこだわらなかった。

 ただこの時そちらに思考を奪われていたせいで、アルトリアズが(モードレッドにも幼子(?)を労り励ますという心根があったのですね)とやわらかい微笑を浮かべていたのを見逃してしまったのはまさに痛恨の極みであった……。

 

 

 

 「P」についてはすでに何度も遭遇していたので誰も言及しなかったため、ドラコーの黒幕説明はこれで終わりとなった。

 あとは彼らの所在地だがこれは今調査が終わった所なので、選手交代してモルガンが話し始める。

 

「灯台下暗しとはこのことだった。奴らの本拠地はここシティ・エリアの地下深くにある。もちろん聖杯もな。

 カルデアで見た資料によればロンドンでは1863年に世界最初の地下鉄が開業したそうだが、それよりずっと深い」

「ほえー。つまり地下鉄の構内に秘密基地の出入り口があるってこと?

 魔術協会も大英博物館が入口だったし」

 

 相変わらずのほほんとして緊張感に欠けるマスターだったが、この見解は合っていた。

 

「ええ、空気の流れを見る限りではその可能性が高いですね。

 地下鉄と何らかの関わりがあるのか、通路に使っただけなのかは分かりませんが」

 

 どちらにせよモルガンほどの大魔術師が時間をかけて調べただけあって、侵入のための経路もある程度割り出せているようだ。入口を探すために右往左往せずに済むのは大変ありがたい。

 その後は現地組もダ・ヴィンチとシバも特に意見はなかったので、作戦会議はお開きとなった。

 

「よし、それじゃいよいよ最終決戦……の前に」

 

 恒例の、写真とサインをもらうのを忘れてはいけない。人数が多かったのでちょっと時間がかかったが、これで本当に決戦……ではなく、もう1つ用事が残っていた。

 

「ナーサリー、ちょっといいかな」

「あら、私に何かご用かしら?」

 

 これから最後の戦いに向かおうというまさにその時、総大将たるカルデアのマスターが絵本の概念に名指しで声をかけるとは何用であろうか? ナーサリーは思わず体をこわばらせてしまった。

 

「うん。実は俺宝具的サムシングで巨大ロボ出せるようになったんだけど、それには相方が必要でさ。で、その相方になれる条件を満たしてるのはここではナーサリーだけなんだ。

 これだけの人数だし行き先が地下道だから使うことはまず無いと思うけど、備えあれば憂いなしと思って。竜モードは胴体がまだ骨だけだから戦闘では使いたくないし」

「……??」

 

 このたびの決戦では敵のラスボスが来るそうだから、光己が万が一を警戒するのは分かる。しかし巨大ロボとは何であろうか? ナーサリーは頭の上にはてなマークをいくつか浮かべて理解不能の意を示した。

 光己も察して説明を始めようとした時、モルガンが割って入ってきた。

 

「我が夫、その『巨大ロボ』とか『条件』とかいうのは何なのですか?」

「ん、モルガンも興味あるの?

 まあ簡単に言うとヘルタースケルターとかオートマタが身長20mとか50mになって、人間がその中に乗り込んで戦う兵器ってとこかな。

 んで条件っていうのは、理由はまだ分からないけど『魔導書』属性を持ってる必要があるんだ」

 

 条件は先刻は不明だったが、光己が寝ている間も立香は仕事をしていたようだ。

 ナーサリーは絵本の概念とはいえ、本自体が固有結界だったり物語の登場人物を外に出せたりするから「魔導書」と呼ばれる資格は十分だろう。

 

「なるほど、大きいというのはそれだけで強みですね。だからといってマスターがむやみに前線に出るべきではないというのは変わりませんが。

 しかし魔導書ですか」

 

 そこでモルガンは考え込む、というか迷ったような顔をした。

 普段の戦闘等では本など使っていないが、もしかして隠し持っていたりするのだろうか?

 光己がそれを訊ねると、モルガンは意を決した様子で頷いた。

 

「ええ。この霊基では持っていませんが、キャスターの霊基なら持っています」

 

 なおモルガンのキャスター霊基は「雨の魔女トネリコ」「救世主トネリコ」「水妃モルガン」の3種から選べるという豪華仕様だが、魔導書を持っているのは「雨の魔女トネリコ」だけである。その内容は「1冊の本の内容を凝縮して、現象として再現する」「起きた事を本にして、それを魔術として会得する」という、1番目の神秘の在り方ともいわれる代物だ。

 

「……そうですね。ナーサリーとはこの特異点限りで別れるわけですし、我が夫の『唯一の』相方になれるというのは悪くありません。

 デメリットはありませんし、ちょっと変えてきます」

 

 これで好感度を稼げば妖精國救済計画に有利ですし、とまでは言わなかった。

 そして1度別室に引っ込み、その数分後に白黒青の3色を基調にした品の良い服に着替えたモルガン、いやトネリコが現れた。雰囲気がかなり変わり、いかにも善なる白魔女といった印象を受ける。

 頭にはいかにも魔女チックなとんがり帽子をかぶり、なぜか眼鏡をかけていた。右手には木製の杖を持ち、黒い装丁で青い紙の大きな本が宙に浮いている。

 なお光己的には肌の露出が激烈に減ったのは巨大なデメリットだったが、彼女にそれを言うのは怖かったので沈黙を保った。

 ―――というか反応したのはある意味当然なバーヴァン・シーだった。

 

「ま、魔女様!?」

 

 しかも母ではなく魔女と呼んだあたり、モルガンとトネリコが同一人物であるとは知らなかったようである。義母娘の間柄であっても明かせぬ事情があったのだろうか?

 

「ええ、そうです。皆の前でわけを話すのも何なので後にしますが、今まで通り母と呼んでくれますか?」

「え、あ、う、うん! それはもちろん」

 

 バーヴァン・シーは生前も「魔女」に感謝し尊敬していたから、それが母だったと聞かされて愛がもう天元突破する勢いだった。普段の性悪ムーブが吹っ飛んで、目がキラキラ輝いている。

 

「良かった、いえ信じてはいましたけどね?

 メリュジーヌとバーゲストも、今まで通りに接してくれると嬉しいです」

「は、はい、それはもう……」

 

 まさかかの魔女=救世主が自身の主君であったとは。メリュジーヌとバーゲストも唐突な自己開示に驚愕したが、何とか女王に対する礼節を保って頭を下げる。

 トネリコはそれを見届けるとふうっと安心したように息をついて、改めて光己に向き直った。

 

「そういうわけで、この姿の時はトネリコと呼んで下さい。そう名乗っていましたので」

「あー…………う、うん」

 

 モルガン改めトネリコのイメチェンぶりの激しさに光己も仰天していたが、じかに声をかけられたのでとりあえず頷いた。どうやらモルガンの過去の姿のようだが、本当にイメージ変わり過ぎだと思う。

 

「それでは皆を待たせていることですし、さっそくロボとやらを出してみましょう。

 いえここじゃダメですね。先ほどの公園にでも行くのですか?」

「あー、うん。そうだな」

 

 こうして一同は予定を少し変えて、巨大ロボットの召喚実験のために公園に赴くのだった。

 

 

 

 

 

 

 ロボットのサイズや性能は実際に召喚してみないと分からないので、光己とトネリコだけが公園の中央に陣取り、他のメンツは隅の方に控えていた。

 実験が終わったらそのまま地下道に行く予定なので、今回ばかりは留守番なしの全員参加である。人間であるジキルも、マーリンの魔術でしばらくは魔霧に耐えられるようにしてもらって同行していた。

 光己とトネリコが並んで、宝具(的サムシング)の真名を高らかに詠唱する!

 

「「獣の機神(デウス・エクス・マキナ)!!」」

 

 すると2人の後ろに、未来的な感じがする紫と黒の装甲板を全身にまとった巨人が地面からせり上がるようにして出現し始めた。身長は40mくらいで、武器の類は持っておらず素手のように見える。

 足元まで地上に出終わると、巨人の首の後ろから大きなカプセルが射出された。光己とモルガンのそばに降りていって2人を中に入れると、同じ経路で帰って行ってまた巨人の体内に収納される。

 

「な、何だアレ!? お母様拉致されちゃったのか!?」

「いえ、ロボットの乗組員として搭乗したのだと思いますが……あんな乗り込み方をするとは思いませんでした」

 

 その奇天烈すぎる展開にバーヴァン・シーが顔色を変えて慌て出したが、マシュは一応現代人だけあって状況を正確に理解していた。ただこの先どうなるかは予想できず、はらはらした面持ちで巨人を見守っている。

 そして20秒ほど経った頃、巨人の仮面の内側で黒く閉ざされていた双眸に白い光が灯った。

 

「あれは……巨人、いえロボットが無事起動したということでしょうか!?」

 

 正解である。その頃光己とトネリコは、先ほどのカプセルの中で外の光景を眺めていた。

 巨人が見ているものがカプセルの内側に映されているのだ。ただカプセルはかなり狭くて、2人で入ると身動きもできないのがつらかったが。

 

「おお、無事開帳できたみたいだな。俺はついに男のロマンを現実のものにしたのだ……」

「男のロマン……?

 まあそれはともかく、まずは仕様を知りたいところですね」

 

 ところで人型巨大ロボットともなると操縦は戦車や戦闘機よりずっと複雑で難しいものになると思われたが、このロボはパイロットの頭に付けたヘッドセットを通じて思考波で操縦するのでハンドルやレバーといったものは不要である。トネリコが仕様を見せるよう念じると、カプセル内側の一角に四角いメッセージ欄が表示された。

 その内容は―――。

 

 

 〇名称   :未定

 〇種別   :厄災及終末装置及悪妖精討伐用騎士型決戦兵器

 〇身長/体重:40m、1000t

 〇運動能力 :人間サイズに換算すると時速65kmで走れる程度

 〇稼働時間 :通常5分

 

 〇UNDバリアー:E

   世界を拒絶し、世界と分離する概念結界。

   堅牢な防御力を誇るが、使用中は強い孤独感にさいなまれる。

 

 〇捕食同化・現象登録:C

   捕食した対象のデータを魔導書に記載する。次回以降の召喚時にそのデータを参照できる。

 

 〇聖剣遙か夢の名残(メモリー・オブ・ロンディニウム)改:B

   ロボットに見合う武器を製造する。不要になったら霧散させることもできる。

 

 

「んんー、何かよく分からん上に物騒な記述が……」

「ですねぇ……」

 

 5分というのはこの手の宝具の持続時間としては(2人で開帳しているからか)長い部類だが、細かい検討をするには短い。どこから始めるべきか、2人は並んで頭をひねるのだった。

 

 

 




 唐突にロボットが出現しましたが、この特異点で使う用事はちゃんとありますので!


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。