FGO ANOTHER TALE   作:風仙

246 / 301
第246話 絢爛なりし蒸気の果て6

 竜モードになった光己は、まずはテュフォンに声をかけてみることにした。彼女はまだここにいる、つまり退去していないのだから生きてはいるはずだが、意識があるかどうかすら不明な様子に見えたので。

 

「テュフォン、起きてるか?」

 

 そのテュフォンは(ロボ基準では)すぐ近くに(ロボ基準でも)巨大な存在が出現したというのに、それに気づく様子もないほど重篤な状態だったが、声をかけられると1つだけ無事に残った左の頭を動かしてそちらを向いた。

 

「ん、我はまだ生きているのか? ……ってわぁぁ!?」

 

 予告抜きでアルビオンの超巨大かつ異様な姿を直視したエフェメロスが呂律の回らない奇声を上げる。まったく、今にも退去しそうなほど弱っているのに何て心臓に悪い!

 

「な、なななななな何者だ!?」

「あー、はい。ドーモ、カルデアのマスターの藤宮光己です」

 

 光己の方はこうした反応はもう慣れているので、ごく淡々と改めてアイサツをした。

 エフェメロスは一瞬信じがたげな顔をしたが、このアイサツや口調は彼そのものなので偽者疑惑は口に出さず、とりあえずこのまま話を進めることにする。

 

「…………うーん、こちらのカルデアのマスターはこのような芸当まで持っていたのか。

 ならば最初からこの姿で戦えば……いやそれはつらいか」

 

 骸骨竜がどんな能力を持っているかはまだ不明だが、動作はそんなに素早くないだろう。たとえばテュフォンに肋骨の内側に滑り込まれて、露出した心臓を殴られでもしたら痛いでは済むまい。こちらを半死半生まで追い込んだからこそ、安心して骸骨の姿をさらしたのだと思われる。

 しかしそれなら今回もロボットで来れば……いやあれは宝具的サムシングだと言っていたから、連続使用は難しいということか。

 人間の姿で来るのは……こちらが急に寝返りでも打った日には押し潰されてしまう。軽率に近づかないのは当然だろう。

 

「しかし何故我を殺さない?」

 

 巨人がテュフォンを全部食べずに消えたのは宝具の時間切れか、でなければ「無常の果実」ごと食べてしまうのを恐れたからということで説明がつく。それは分かるが、今骸骨竜が自分を踏み潰さずに会話を試みている理由はエフェメロスには見当もつかなかった。

 前回の現界の時のマスターなど「聖杯の雫」を弾丸にしてまでしてこちらを抹殺したくらいなのに。

 

「あー、それはね。俺はとどめを刺そうと思ったんだけど、ティアマト神がそれは可哀そうだって。

 それでまあ、逃がすわけにはいかないけど、和解して仲間入りするならいいかなということで」

「ティアマト……なるほどな」

 

 エフェメロスは現界時に得た知識のおかげで、ティアマトというのが何者かを知っていた。

 テュフォンとは共通点が多いからシンパシーを抱いたというわけか。創世神の一角ともなれば発言力も強くて、マスターもむげにはできなかったのだろう。

 

「だがそれで我が裏切ったらどうするのだ?」

「それは大丈夫。この会話は嘘を見破るのが得意な娘が聞いてるから、擬装降伏は通用しないよ」

「嘘を見破る……!? なるほど、単なるお人好しではなかったのだな」

 

 それでも危険性を挙げるなら、今は本心から降伏したが後で心変わりするというケースだが、それは待遇次第というものだ。使い捨ての鉄砲玉にするためであれば待遇なんて下の下でいいという考え方もあるが、それは圧倒的強者が弱者に対してすることで、いくら何でも太祖竜にそんな扱いはしないだろう。

 

「まあね。

 それでどうする? 仲間になるなら皆と平等な扱いを約束するけど、嫌なものを無理にとは言わないよ」

「……そちらから勧誘してきたわりには淡泊な口ぶりだな。やはり本当は我を仲間になどしたくないのか?」

「いや、強い人ってたいていプライド高いからさ。しつこい誘い方すると怒るかなと思って。

 『この我が命惜しさに降伏などするとでも思っているのか? 舐めるなよ人間(ヒューマン)』とかそんな感じで」

「おまえは我をどんな目で見ているのだ……?」

 

 なるほどプライドと生命を天秤にかけてプライドを取る事例はあるだろうし、武闘派の英雄にはそういうタイプが多そうな気はするが。

 ちなみに今のエフェメロスは命の方がわりと大事である。だから勧誘自体はむしろ好ましいことだった。

 

「……まあ、おまえに悪気はないのは分かった。

 しかしそうか、和解して仲間入り、か……」

 

 思い返せば前回の現界でも、「あのマスターとサーヴァントみたいに」なんてことを考えたりした。それが叶うというのか?

 このマスターは「あのマスター」とは性格がだいぶ違っててちょっと不安はあるし、仲間入りといってもこの狭い特異点を修正するまでのわずかな時間だろうが、それでも、生前には仲間や友人などいなかった、できるはずもなかった果実や怪獣には意味があることなのではないかと思う。

 ……神々や英雄は嫌いだし、このマスターには酷い目に遭わされた、というか現在進行形でまだ痛いのだが、ケンカを売ったのはこちらだ。その辺りは飲み込んでおくことにした。

 ―――とはいえもう少し聞いておきたいことはある。

 あのマスターとプトレマイオスの言葉で「生きるのを目的にしていいのだ」と気づいたが、このマスターはどうなのだろうか?

 

「ところで全く違う話になるが、おまえは『命』に意味はあると思うか? とある英雄は『生きて、生きて、生き足掻いて、死んだ後にやっと、命の意味が決まるんだ』と言っていたが」

 

 すると骸骨竜は「意味分からん」というような顔をした。と思う、多分、雰囲気的に。

 

「そうか? 死んだ後に決まるってことは、他人が勝手に決めるってことだよな。俺は命の意味は自分で決めるもんだと思うけど」

 

 光己は誰かに何かを強いる態度をあまり取らないことが示すように、自由意志を重んじる傾向がある。ゆえに「自分の」存在意義は自分で決めるべきという発想になるのは必然だった。

 単にガチ一夫多妻という21世紀初頭では世間に受け入れられがたい志向を持っているから、存命中だろうと死後だろうと他人に決められたら困るからかも知れないが。

 

「いやその英雄にとってはそうなんだろうけどさ。『(かん)(おお)いて事定まる』って言葉もあるし。

 俺みたいなパンピーと違って、特に王や武将だと行動の1つ1つが大勢の人に影響するからそちらを重視せざるを得ないのかも」

「誰がパンピーだって……?」

 

 エフェメロスはどう突っ込むべきか言葉に迷ったが、面倒になったのでスルーすることにした。

 

「まあいい、とにかくおまえはそんな風に思うのだな。

 ではおまえにとってその意味は何だ? 前の現界の時に会ったマスターには『私たちはきっと生きるために生きるんだ』と言われたが」

「今度は禅問答か何かか? 俺はそんな生きてるだけで幸せみたいな境地には達してないぞ」

「幸せ、か。つまりおまえは幸せになるため、もしくは幸せであるために生きているということか?」

「まあそうなるかな? 俺だけじゃなくてたいていの人類はそうだと思うけど。

 ただし何が幸せかは十人十色だな」

「ふむ、ではおまえにとっての幸せとは何だ?」

 

 エフェメロスは妙に熱心だった。

 というのも、先ほどの「生きるために生きる」という言葉は彼女が「あのマスター」に「叶っても幸福など訪れないと悟ったはず」と言った時の返事だったからである。ここでその「幸せ」という共通のキーワードが出て来たので興味を惹かれたのだ。

 前の現界の時に「思うままに生きる」と決めたはいいものの、その具体的な内容の参考になるものが欲しかったというのもある。

 

「それはもちろ……いや待て。確かあんたにそれ言ったら叶わなくされるんじゃなかったか?」

「今更それをする気はないが……仮にやったとして、このボロボロの状態でおまえほどの巨大な存在に干渉はできん。

 何かの間違いでできたとしても、願望機を持っているならそれで相殺すれば済む話だろう」

「ほむ」

 

 自分の権能を無力化する方法を明かしたとなれば信じて良さそうである。清姫からの注進もないし。

 

「それじゃ明かすか。……ズバリ、美女美少女といちゃいちゃしたり、身体的()()()に深く触れ合ったりすることだな!

 あと最近は紅閻魔さんと如意宝珠のおかげでメシが旨い」

「……………………」

 

 エフェメロスは光己の返事を聞いた直後はかなり呆れた顔を見せたが、やがて思い直したのか納得した様子になった。

 

「いやおまえくらいの年代の男子ならむしろ自然か?

 王とともに外国を征服するとか元同僚を蹴落として自分が王になるとかいうのに比べれば、確かに一般人のささやかな幸せといえるものだ」

 

 それに彼の立場が()()()()()()軍隊の小隊長(ただし部下は神々英雄豪傑)のようなもので、しかも敗北が許されない重責を負っていると考えれば、それを紛らわせるために若い女性との触れ合い(意味深)を求めるのも無理はない。咎めるのは酷だろう。

 

「だが今の台詞だと、願望機で食事を出しているように聞こえたがそれはいいのか?」

「何か問題ある? ドレイクさんも聖杯でやってたし、如意宝珠は使い減りするものじゃないしね。

 人間ぽい姿の時に人間の食事ができるなら、あんたにも当然出すよ」

「そ、そうか」

 

 反願望機としては願望機をそんな俗な使い方されるとちょっともにょる。ドレイクというのは多分この国の海賊だか提督だかのドレイクのことだろうが、やはり英雄は好きになれない……。

 聖杯や如意宝珠が使い減りしないものなら、1度喰われたら終わりになる「無常の果実」とは扱う時の感覚が違うのは当然かも知れないが。

 あと光己が食事をしている時は幸せだというのなら、「叶っても幸福など訪れない」は必ずしも正しくないと認めざるを得ないようだ。いや彼に言ったことではないが。

 ―――さて、訊きたいことはこのくらいだろうか。

 

「まあ、どれもこれも青筋立てて怒るほどのことではないな。

 分かった、そういうことなら和解して同行しよう。嘘判定がしたいなら好きなだけするといい。

 ただ我は見ての通り半死半生でまともに動けない身だが、おまえの願望機は治せるのか?」

 

 なのでエフェメロスが最終的にそんな結論を出してそう言うと、骸骨竜は1度斜め下を向いてから、改めて向き直って来た。

 

「それは良かった。清姫チェックは通ったから、これからは仲間ってことでよろしく。

 治すのはやってみないと分からないけど、サイズ比的には多分できると思う」

「サイズ比?」

 

 エフェメロスにはその言葉が何を意味するのか分からなかったが、光己が空中に現れた波紋の中に手を突っ込むという不思議芸の後そこから取り出した球体を見て驚くとともに理解した。

 

「おお、如意宝珠というのはそんなに大きいのか!」

 

 聖杯と同じく人間の掌サイズだと思っていたが、まさか直径20メートルもの巨大アイテムだったとは。なるほどそれなら「サイズ比」的には人間の掌サイズの珠で人間を治すよりも楽である。

 

「うん、ランクによるんだけどね」

 

 光己はそう答えると、まずドラコーの竜が放り捨てたテュフォンの右上腕を彼女のそばに持ってきてから宝珠の力を行使した。

 その効能は素晴らしく、ちぎられた両腕と両翼があっという間にくっつき、他の傷もどんどんふさがっていく。1分と経たぬ間にテュフォンは完治してしまった。

 

「大したものだな。しかも願望機の力が反願望機である我に良い効果をもたらせるとは……。

 そうだ、この際だから聞いてみるが、その如意宝珠でテュフォンを起こすことはできるか?」

 

 エフェメロスはその出自ゆえの感傷に浸りつつも、ちょっと欲が出て来たようだ。

 起こす、の3文字だけでは理解してもらえなかったがいろいろ説明して―――やってくれるかどうかは難しいところだとエフェメロスは思っていたが、返ってきた回答は何だか妙なものだった。

 

「つまりあれだけ強くてまだ昼寝状態ってことか。とんでもないな……。

 ただ如意宝珠は仏教由来だから悪事の原因になったりエゴを助長したりするような願い事はNGになっててね。そんな強い力を得るのなら天地が引っ繰り返っても悪用しない……ブッダやキリスト並みの聖者にならないと無理だと思う」

「…………は?」

 

 エフェメロスは10秒ほど思考が止まって目が点になってしまった。反願望機に聖者になれとはまたご無体な。

 やがて再起動したところで、考えをまとめて返事をする。

 

「そ、そうか。いや無批判にどんな願いでも叶えてしまうよりは良心的ともいえるか。

 初めからダメ元のつもりだったし、仕方ないな」

 

 どうやら聖者になる気もなれる自信もないようだ。まあ正しい自己認識であろう……。

 

「悪いな、そういう規格だからさ。

 それじゃテュフォン、次の行き先は地下通路だから人間の姿になってくれるか? 俺はまだやる事があるからこのままだけど」

「ああ、バベッジの件だな。分かった」

 

 するとテュフォンは躊躇することもなく人間の姿になってくれた。光己はそれを眺めながら、(どうにかうまくいったか。今回も疲れたー!!)と心の中で大きく息をついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 次の仕事はバベッジの解呪だ。やる事が、やる事が多い……!

 そういえば並行世界のマスター(たち?)は話を聞く限り能力的には一般人に毛の生えたようなものらしいのだが、彼(女)(たち)はこんな風に自分で敵と戦ったり治療したりはしない分暇があるのだろうか。それとも非力な分危険でつらい思いをしているのだろうか。お金や食料などの問題もあるし、やはり苦労の方が多いのだろうか?

 

「まあ他人事なんだけどさ。それじゃ太公望さん、お願いできる?」

「はい、承りました」

 

 いつもの土遁タクシーならすぐである。太公望はアルクェイドを護衛役として連れて行ったが、光己が竜モードになったことでこの2人とアルトリアズ3人が一時的に強くなったからバベッジを取り押さえながら連行してくるのは至って容易なことだった。

 そして太公望にもう一往復してもらって全員揃うまでの間に光己はバベッジの様子を観察してみたが、かなりボコボコになっているのに暴れるのをやめようとしない。聖杯パワーを使った支配は相当に強力なようだ。

 

「それじゃ解呪……解呪……解呪!」

 

 それだけに如意宝珠をもってしても一発完了とはいかなかったが、何度でも挑戦できるのだから問題はない。少しずつでも支配の効力を弱めていけばいつかは成功するのだ。

 

「さらに解呪解呪解呪……解呪ぅぅぅ! ……おお、これはやったか!?」

 

 その後十数回にも及ぶリトライの末、ついに光己は確かな手応えを感じた。

 ところがその直後にバベッジが糸の切れた操り人形のようにがくっと倒れ伏して動かなくなったのでびっくりしてしまう。

 

「おおっ!? まさかの解呪失敗!?」

「いや、全力以上の力を出し続けさせられてた反動だよ。要するに人間でいう筋肉痛さ。

 ただし早めに治して魔力も供給しないと退去になっちゃうけどね。あ、解呪は成功だから安心して治していいよ」

 

 そこでマーリンが解説してくれたのはいいが、そのお気楽な口調に反して内容は一刻を争う深刻なものだった。

 

「何ですと!?

 いや俺のヘマじゃなかったのはいいけどさ!」

 

 などと小市民的なことを呟きつつ、言われた通り急ぎで治療と魔力供給を行う光己。そのかいあって、バベッジは身体の不調を感じさせないしっかりした所作で起き上がると光己に礼の言葉を述べた。

 

「どうやら貴様が聖杯の(くびき)から解放してくれた上に体まで直してくれたようだな。感謝する。

 我はチャールズ・バベッジ。貴様たちには魔霧計画の首魁の1人『B』として知られて()()者だ」

「あー、どう致しまして。カルデアのマスターの藤宮光己です」

 

 光己はバベッジが骸骨竜を見てもさほど驚いた様子を見せなかったことに逆に驚きつつ、とりあえず挨拶を返した。

 ついで特異点修正チームのリーダーとしての本題に入る。

 

「それで、バベッジさんは魔霧計画から抜けたということでいいんですか?」

 

 光己がその必須の質問を口にすると、バベッジはそれが意志あるいは感情の表現方法なのか頭部から蒸気を噴き出しながら答えてきた。

 

「然り。我は我が世界を夢見てしまったがために妄念の有り得ざるサーヴァントと化したが、友の娘の言葉で碩学たる務めを思い出したのだ。我らは人々と文明のためにこそ在るはずだ、と。

 我が夢を叶えなかった世界であっても、隣人(きさま)たちの世界を終わらせようとは思わない」

「―――」

 

 どうやらバベッジはフランの説得で改心したということのようだ。

 喜ばしいことではあるが―――この話だとバベッジは最初から洗脳されていたのではなく、自分の夢を叶えなかった世界を終わらせる、もしくは改変するつもりがあって、それで魔霧計画に加わっていたということにならないか? それではゲーティアと同類ということに……。

 まあ改心したのなら問題はないのだし、今更突っ込みを入れても誰も幸せにならないのは明らかなので、光己はここはスルーすることにした。

 

「それは良かった。よろしくお願いしますね」

「こちらこそよろしく頼む。

 では罪滅ぼしと言っては何だが、我が知っていることは全て明かそう」

 

 そんなわけでバベッジが語ってくれたところによれば、まず魔霧計画の首魁は彼とキャスターのパラケルスス、そして人間の魔術師のマキリ・ゾォルケンの3人で、その拠点は地下鉄(アンダーグラウンド)のさらにずっと奥深くということだった。

 この辺りはすでに知っていたことだが、拠点への正規のルートを道案内してもらえると考えれば無駄ではないだろう。

 あとその拠点にバベッジが造った「巨大蒸気機関アングルボダ」という施設があり、聖杯はその動力源として設置されているそうだ。

 

「ほむ、つまりそれを壊せば魔霧の新規発生は止まるのか……」

 

 魔霧の発生が止まれば特異点修正の日数制限がなくなる、というか聖杯を奪取すれば任務終了なのだから、たとえばゾォルケンが留守で拠点にいなかったとしても追う必要がなくなる。苦労してバベッジを助けた甲斐がある、大変に良い情報であった。

 

「でも疲れたから一休みしたいところだな。その間に俺の胴体を……如意宝珠でも一瞬では治せないけど、ペースを上げることはできるし」

「テュフォンは強敵でしたからね……」

 

 トネリコは光己とともにテュフォンと戦っただけに理解があった。他のメンバーも、魔霧を止める方法があるなら疲れていて当然のマスターを急かして今すぐ出発したいと思う理由は特にない。

 こうして光己の希望は反対者なしで承認されたが、光己は自分の都合で皆を待たせるからには対価を払うべきだと考えた。

 

「うん、でもただ待ってるだけじゃみんな退屈だろうからおやつでも……いや魔霧のただ中じゃ落ち着かないか。じゃあまた水晶宮出せばいっぺんで済むな」

 

 ちなみに水晶宮(竜宮城)で出せる料理は「アジアで海に面した国」の「魚介類を使わないもの」限定だが、光己が知らないものでも出せるのでレパートリーは多い。今回は小休憩なので、各種高級和菓子を提供することにした。

 

(和菓子といえば、和三盆を山盛りで用意したらフランスで会った……えーと、ヒロインXオルタだったっけ。触媒召喚で来てくれないものかな)

 

 何しろミニスカセーラー服や体操服&スパッツというとてもワンダフルな服が正式な衣装の美少女という逸材なのだ。ぜひまた会いたいものである。

 

「そんなささやかな夢を抱きつつ、『水底より招き蕩う常世の城(パレスオブドラゴン)』!!」

 

 光己が宝具の真名を詠唱すると、前回と同じく水晶の城と美しい花園が現れた。空気も浄められ、楽園のような暖かく澄んだ雰囲気が漂う。

 

「おお!? こんな宝具まで持っているとは、我がマスターは実に多芸だな」

「うん、確かにこれは綺麗。すごい」

「ええ、出してくれる食事も大変美味ですよ」

 

 ドラコーとティアマトが感嘆の声を上げ、アルトリアズはおやつへの期待に胸ならぬお腹を高鳴らせるのだった。

 

 

 




 今年の投稿はこれが最後になります。
 皆様良いお年を!m(_ _)m


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。