FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第248話 絢爛なりし蒸気の果て8

 光己の体の再生がさらに進むと、肉と臓器はほぼ出来上がって体表面に鱗が生えてきた。小さめの青白いもので、蛇っぽい印象を受ける。額の上に生えてきた2本のツノもそれに近い色だった。

 美しいといってもいい形状と色彩だったが、それを見たメリュジーヌがわずかに眉をひそめる。

 

「お兄ちゃん、ちゃんと生きてるだけあって()とは違うんだね……。

 ううん、喜ばないといけないことなのは分かってるけど」

 

 メリュジーヌは妖精國のアルビオンの遺骸が腐って黒いアメーバ状になっていたものから生まれた存在で、着名(ギフト)を外した本来の姿は身体各所が(あざ)のように黒ずんでいるのも、竜の姿が黒いのもそのためだ。なのに光己は生前通りと思われる姿になっているのを見て、羨望と疎外感を感じてしまったのである。

 しかしその時、メリュジーヌの全身に電流のような痺れが走った。

 

「!?」

 

 ついで着名が外れて本来の姿に戻ったかと思うと、翼の黒い覆い(?)がひび割れ、得物のテュケイダイトが小さくなっていく。何が起こっているのか!?

 

「く、苦し……」

「メリュジーヌ!?」

 

 どうやら本人が意図的にやっていることではなく、しかも苦しそうに悶えているのでトネリコが慌てて駆け寄ってまずは診断を始める。バーヴァン・シーとバーゲストも不安げに見守っていた。

 

「これは……クラスチェンジしようとして、いえされようとしてる!?」

 

 トネリコ自身が先ほどやったことだが、メリュジーヌにはそんな能力は……いや他者からの干渉ならそれは関係ない。しかしメリュジーヌがレジストできないほどの力を誰がどこから何のために!?

 

「しかし害をなすものではなさそうです。メリュジーヌ、ここは逆らわずに受け入れなさい。

 下手に止めようとすると、かえって良くない結果になりかねません」

「は、はい!」

 

 メリュジーヌが主君の忠告を素直に聞いて緊張を緩めると、身体にも変化が始まった。

 まずは肌色が良くなり、黒い痣が薄れていく。尻尾は太くなり色が青白くなっていった。ツノも同じ色になり、上方に細長く伸び始める。

 

「これは、もしかして……」

 

 翼の覆いが全部割れて剥がれ落ちると、その内側に蝙蝠風、いやドラゴン的な翼が現れた。青白い皮膜に、蝶の羽にあるような模様が浮かんでいる。

 テュケイダイトはガントレットよりやや大きいくらいのサイズで固定された。服も色が抜けて真っ白になる。

 そうした変貌が全部終わると、体の苦しさもなくなったのかメリュジーヌはふうっと大きく息をついた。

 とりあえず、身体的な不調はなさそうに見える。むしろ健康的になったくらいだ。

 

「メリュジーヌ、一体何が……?」

「いえ、それが僕にもさっぱり……」

 

 主君の問いかけにメリュジーヌは分からないと答えかけたが、変貌が始まったタイミングから考えて思い当たることはある。

 

「もしかして、お兄ちゃんが羨ましいなあって思ったからかな……?」

「なるほど。それだけでクラスチェンジできるわけはありませんが、今はマスターが如意宝珠を出してますからね。無意識に彼と同じようになれるよう願って、それが叶えられたのでしょう。

 自分で願ったことであれば、いくら強くてもレジストできないのは当然ですね」

 

 トネリコはメリュジーヌが何を羨ましく思ったのかは聞かなかったが、謎解きはできたので一安心した。敵の攻撃じゃなくて良かったというわけである。

 

「いえ、ここは愛の奇跡ということにしておくのが美しいですかね。

 では念のため、専門家(ルーラー)に鑑定してもらっておきましょうか」

「いえ、それには及びません。ルーラーになったみたいですから」

「なんと」

 

 メリュジーヌの性格でルーラーとは。強引グマイウェイを地でいくヒドい裁定者になりそうな気がしたが、カルデアではルーラーに裁定権はないので問題は……多分ないだろうとトネリコは達観することにした。

 

「ええと、クラスはもう分かったから宝具を……名前は『虹を架ける、無垢なる鼓動(スプライト・アルビオン)』で、内容はっと。

 翼からミサイルを複数発射して広域攻撃……なんで!?」

 

 そしてメリュジーヌが自分で宝具を看破してみると、光己と同じ姿のドラゴンに変身するのを期待していたのに、何故か妖精の姿のまま汎人類史の21世紀の兵器をぶっ放すものだった。ほわい!?

 生前のアルビオンの妖精態ともいえる姿になれたのは喜ばしいことだが、これでは満足いく結果とは言いがたい。

 なお先ほどの姿は無くなってしまったわけではなく、いつでも選択することができる。宝具も元のままだった。

 つまり同じ宝具が2つあっても仕方ないから違うものになったということだろうか? 1つの霊基で2つのクラスと3つの宝具を選べるのはお兄ちゃんの最愛さいつよサーヴァントに相応しい豪華仕様だけれど。

 

「まあ、半分だけでも叶って良かったと思うべきなのかな?

 角や翼を出しても外皮が黒くならない身体がタダでもらえたんだし」

 

 しかも光己の3対めの翼も、いつの間にか黒い覆いが消えてメリュジーヌと同じ皮膜の翼に変わっていた。つまりお互い相手の姿に合わせたということで、まさしく兄妹愛の発露といえよう。

 

「ありがとうお兄ちゃん! これからもがんばるね」

「……?? よく分からんけど、メリュにとっていいことだったなら良かった」

 

 光己にはメリュジーヌが何を羨んでいて何を喜んでいるのか分からず、しかも軽々に首を突っ込んでいい話題でもなさそうなので回答に困ったのだが、とりあえす無難に思える返事をした。

 

「うん!」

 

 メリュジーヌはその辺には気づかなかったが、お兄ちゃんが喜んでくれたことで満足した。

 そういえばテュフォン戦で手柄を立てて褒めてもらう計画だったが、彼女が味方になった上に危険覚悟でラスボスに大技かます予定となると、痛めつけたのを誇るわけにはいかない。今回は諦める方が良さそうである。

 そこにトネリコがすぐそばまで近寄ってきて、小声でささやいてきた。

 

「メリュジーヌ、今回はお手柄でした。貴女の機転でテュフォンの胸を貫いていなければ、私とマスターはもっと苦戦していたでしょう」

「……!! は、はい!」

 

 まさかこのタイミングできっちり褒めてくれるとは。メリュジーヌは感激のあまり、思わず大きな声を上げて主君がわざわざ小声で述べた配慮を無にするところであった。

 これが多くの争いを収めてきた魔女様の気配り(ちから)というものか!

 

「フフッ。

 それはそうと、その服装はここではちょっと浮いて見えるので変えた方が良いと思いますが」

 

 するとトネリコは今度は普通の声量で、しかし少しだけ控えめな口調で再度のクラスチェンジを提案してきた。

 まあ確かに、この白い水着風の服―――というかこの姿は「夏モードのサーヴァント」のようだから実際に水着なのだが―――はこの陰鬱な霧都にはそぐわないし、地下通路ではミサイルの宝具は使えない。ルーラーはすでに2人もいるから探知や看破も足りているので、今この霊基にこだわる理由はなかった。

 

「はい、ではそのように」

 

 なのでメリュジーヌは抗弁はせず、素直に着名(ギフト)を付けたランサーに戻った。

 またこの話をしている間に光己の鱗がだいぶ生え揃ってグロさがなくなったきたので、そろそろ彼の事情説明に戻れそうである。

 

「…………えっと。アルビオンと融合した所からだと何でそうなったのか分からんよな。

 ということは、ファヴニールの血を飲んだ所から始めなきゃならんのか!?」

 

 かいつまんで話しても相当な長さになるが、まあやむを得まい。

 しかし何も知らない人もいるのだから、先に今現在の状態を簡単にでも話してからの方がいいだろう。

 

「というわけで、ドラコーには1度言ったけどまずは概略から……そう!

 俺は冠位竜(アルビオン)と融合した上で、ルシフェルの天使長と魔王の要素が半分ずつと、熾天使と『赤い竜』の概念、さらに何故か『水界の理想郷(アヴァロン)』の概念も無辜られた、でも人間の心は失わなかった竜人間(ドラゴンマン)なんだ!」

 

 するとティアマトとエフェメロスは光己の予想通り「何ぞそれ」という顔つきになったが、バベッジは頭部から蒸気を噴き出しながら賞賛してくれた。

 

「素晴らしい。それこそ人が人たる由縁(ゆえん)だ」

 

 バベッジは体は肉ならぬ鋼鉄のものとなり、しかも1度は「妄念の有り得ざるサーヴァント」に堕ちながらも、「人々と文明のために」という碩学たる務めを果たすために人の世界に戻って来た身である。それで光己の「人の心を失わなかった」という言葉に共感したのだ。

 では人の心とは何かというとちょっと定義が難しいが、まず自己認識が「人間」であることと、あまり高望みはしないがいくらかの善性を持っていることであろうか。

 

「分かってくれますか。ありがとうございます」

 

 そうした感覚は似た状態にある光己には当然伝わるわけで、竜少年は軽く頭を下げて礼を述べた。

 まあただの中二病でもあるのだが、それは言わなければ分からない。

 

「……これで結論は話しましたので、次は原因と過程、なぜアルビオンと融合なんてトンデモなことになったのかですが……。

 その説明をする前に今の銀河、もといグランドオーダーが始まった時のカルデアの状況を理解する必要があります。少し長くなりますよ」

「銀河!?」

 

 ドラコーはいきなり話のスケールが超巨大になったのでびっくりしたが、どうやら彼のいつもの駄弁だったようである。無駄に驚かせないで欲しいものだが、いちいちツッコミを入れる方が面倒ぽいのでスルーした。

 その後はドラコーもある程度知っているレフの爆破テロから話が始まり、光己が予告したようにかなりの長話の末、天使長形態が獣形態に差し替わったくだりまで聴き終えた。

 

「ふうむ、まさかマスター()最初は素養があるだけの純一般人だったとはな。

 それにしてもファヴニールの血で無敵アーマー、か……確かにあの邪竜とジークフリートが一緒にいたなら思いついてもおかしくないな。むしろやった者が他にいなかったのが不思議なくらいだ」

 

 少なくともドラコーが対面したマスターの中には、無敵アーマーを持った者はいなかった。やはり後任がいない=失敗は許されないというプレッシャーで冒険はできなかったのだろうか。第1特異点の時点でワルキューレのような優秀な魔術系サーヴァントがいるケースは少なそうだし。

 何しろマシュと現地サーヴァントだけで特異点修正を乗り切ってきたと思われる、光己とは違う意味で強者のマスターすら複数いたくらいなのだから。

 

「でもさすがにやり過ぎのような気がする。これからは母がしっかり見張って、無茶させないようにしないと」

「しかしそこまでしたからこそ、今日まで生きて来られたとも言えるのがな……」

 

 ティアマトが母性を刺激されたのか両手を固めてフンスと荒い息をつくと、テュフォンはそれに同意のような反対のような、曰く言い難げな表情で相槌を打った。

 まあ「このマスター」に黙示録の獣と創世神が同行するなら、もはや無理無茶無謀は必要ない……と言い切るのは早計かも知れない。機神たちが支配する異聞帯なんてキワモノが控えているのなら。

 ただそうなると、「あのマスター」がどうやってギリシャ異聞帯を突破したのかとても気になる。トネリコが知っているのなら聞いてみたいところだ。

 

「マスターさんてば波乱万丈ねえ。()()()()()()()()()詳しく聞かせてもらわないと」

「映像記録も見たいところだね」

 

 一方アルクェイドとマーリンはお気楽だった。何も考えてないとか心配してないとかではないだろうから、光己の能力だか運命力だかを信じているのだろう。

 

「―――というわけで、未熟なマスターですがコンゴトモヨロシク」

「貴様が未熟と言うと嫌味になるような気がするが……まあ諸事余に任せておくが良い!」

 

 光己の締めの挨拶にドラコーがそう応じて、竜少年の事情説明は終了した。

 その後は忘れない内にテュフォン・エフェメロスの受肉、そして彼女とバベッジのサインと写真をもらってから改めて最終決戦に向かうのだった。

 なお残ったお菓子はアルトリアズがおやつ、もとい行軍中の兵糧として回収したが、これは完全な余談である。

 

 

 

 

 

 

 光己たちは土遁タクシーで駅前に戻ると、バベッジの先導で地下通路に侵入した。

 敵にとっても通路だからか照明がついていて前が見えるのはいいが、地下に深く潜るごとに魔霧がますます濃くなっていく。ここの1番下の階に魔霧製造機があるのだから当然のことなのだが、そのせいでエネミーが頻繁に出現するのが面倒だった。

 そう、「危険」ではなく「面倒」である。たいして強くもないゾンビやスケルトンばかりなのだから。

 

「しかしこれがこちらの侮りや疲れを誘う策で、突然強いエネミーあるいは罠の類が出て来る可能性はあります。皆さん決して油断しないようにして下さい」

 

 アルトリアは時々お菓子をほおばりつつも、警戒を怠ってはいなかった。

 実際あり得る話で、一同さらに気を引き締めつつ進んでいく。

 そのさなか、ふと光己がトネリコに話しかけた。

 

「そういえばさっき褒美取らせるって言ったけど、何か欲しいものとかある?」

 

 わざわざ改めて望みを聞くあたり、新しいロボットを造ったのは相当な大手柄のようだ。トネリコの方は自分の力だけでというわけではないのであまり自己主張する気はなかったが、せっかくの申し出なので1つお願いしてみることにした。

 

「そうですね、ではもし可能であれば『妖精騎士トトロット』を召喚してもらえればとても嬉しいです」

「へえ、妖精騎士ってまだいたんだ。でも所縁の品でもない限り狙って呼ぶことはできないらしいけど」

「ええ、ですので『可能であれば』と前置きをつけました。

 心の隅に置いておくくらいで十分ですから」

「そっか、じゃあその時は一緒に召喚しよう」

「はい」

 

 呼びたいと思っている当人が同席した方が成功する確率は上がる。光己の提案にトネリコが同意したのは自然な流れといえよう。

 それで2人の話が途切れたところに、エフェメロスが割って入る。

 

「トネリコ、ちょっと聞きたいことがあるのだが今いいか?」

「はい、大丈夫ですよ。どんな話でしょう」

「おまえの異聞帯に来たマスターはギリシャ異聞帯を突破した後で来たのだと思うが、機神が支配する世界をどうやって打ち破ったのか知っているなら聞きたいのだ」

「ああ、それですか」

 

 気持ちは分かる。トネリコは妖精國のことは必要以上に明かさない方針だが、ギリシャ異聞帯のことを語るのは問題なかった。

 

「私も詳しいことは知りませんが、機神たちは一丸ではなくもともと分裂状態で、カルデアに味方した者さえいたらしいですからそれが主因だと思います」

「なるほど、そういうことか。どこの神話にも神同士の諍いはあるからな」

 

 そもそもエフェメロスやテュフォンが生み出されたこと自体が、ギリシャの神々に内訌があった証である。その隙を突かれて敗北したのだろう。

 実に愚かな話だと思うが、神々や人間にとどまらず野生動物にもボス争いや縄張り争いがあるくらいだから生き物全般のサガと解するべきかも知れない。

 ―――この話の間に、光己にはマーリンが話しかけていた。

 

「……それでマスター。キミはカルデアに来る前は素人だったとなると、サーヴァント、より広義には使い魔を使役する技法はまったく学んでいないということになるのかな?」

「んー、そうだなあ。それでも今まで支障なかったし、魔術って学ぶの大変みたいだし」

 

 光己がそう答えると、マーリンは不服そうに肩をすくめた。

 

「それは良くないなあ。確かに魔術の勉強は大変だし時間もかかるけど、それはキミが素人のままならという話だからね!?

 今のキミだったらすぐいろいろ習得できるよ。さっき見て感じたけど、獣形態ならさらに上手くね。

 効率的な魔力供給はもちろん、念話(テレパシー)や感覚共有は使える場面があるんじゃないかな?」

「……感覚共有?」

「そう。魔力供給が上達すればサーヴァントから遠く離れても魔力を届けられる、つまり偵察に行ってもらえるようになるからね。そこで念話だと電話みたいに会話できるだけだけど、感覚共有ならサーヴァントが見てる光景をそのまま、自分の眼で見てるように脳裏に映し出すことができるんだよ」

「へえ……」

 

 それは確かに有用そうだ。いろいろと。

 

「共有できるのは視覚だけ? 触覚や聴覚は?」

「もちろんできるよ。訓練すれば双方向でね」

「へええ……」

 

 それを聞いた光己は思わず鼻の下と口元が緩んでしまった。えっち方面で使うととても幸せになれそうな気がしたので!

 するとマーリンはそれを察したのか、悪戯っぽい笑みを浮かべつつさらに煽ってきた。

 

「興味が湧いてきたようだねえ。

 でも()()()()()()この程度は序の口だよ。経験を積めば、一時的にサーヴァントを憑依させる……つまり疑似サーヴァントみたいな存在になるのも難しくはないと見てる」

「疑似サーヴァントってカーマやⅡ世さんみたいな?

 うーん。面白い技だとは思うけど俺の自我やマスター適性がなくなったりしない?」

 

 カーマには依代の人格が見られないし、依代の人格が残っているエルメロイⅡ世もマスターとして活動するという話は聞いたことがない。疑似サーヴァントになるのはそういうリスクがあるのではないか?と光己が指摘したのはなかなか鋭い指摘といえよう。

 しかしそれは彼に限っては杞憂だった。

 

「キミはサーヴァントより強いから大丈夫だよ。あくまで『みたいな存在』であって、本当にサーヴァントになるわけじゃないしね。

 というかそれくらいで失くなるようなら、とっくの昔に失くなってるんじゃないかな」

「あー、それは確かに」

 

 アルビオンと融合しても残っているものが、サーヴァントが一時的に憑依したくらいでどうにかなったりはしないだろう。納得の根拠であった。

 

「でね、憑依するサーヴァントは1人とは限らないんだ。私が知っているだけでも、1人の依代に神霊を含む3騎が憑依して、しかも人格は依代ベースという例がある」

「それはすごいな。相当強そうだ」

「うん、かなり強いよ。

 でもキミの身体の容量ならもっと大勢収容できるよ。理論上は、ドラコーかティアマトの単独顕現でレイシフトを使わずにキミとサーヴァント全員を特異点に連れて行くとか、30騎分の魔力で『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』をぶっ放すとか、そういう離れ業も可能だね」

 

 もちろん「理論上は」であって、実際に収容できる人数や、その中で能力を行使できる人数は訓練等の要因で変動するわけだが。

 あと現地に連れて行ったサーヴァントが使う魔力をカルデア本部がきっちり補給できるかどうかというのもまた別の問題である。

 

「ただしキミほどの超存在に憑依するのはサーヴァントでもハードル高いから、相応の同調率と相互信頼は必要だよ。つまり現地で知り合ったばかりのサーヴァントは無理ということだね。

 ひとつになるのはそれなりにおつきあいしてから、ってわけさ。フフッ、きっとお風呂の時より気持ちいいんだろうねえ」

 

 マーリンは最後の一言だけは他の人に聞こえないよう小声で言ったが、その1つ前のフレーズが心琴に触れた者もいた。

 

「ほほう、マスターとお突き合いすればひとつになれる、と!? 面白そうな話ではないか。詳しく聞かせるが良い」

「ドラコーさん、字が違うんじゃないですかっ!?」

「何も間違ってはおらんぞ。同調率を上げる、つまり親睦を深めるのに1番手っ取り早い方法ではないか」

「そ、それはそうですがこう、倫理とか風紀とかいうものが。

 ましてそのようなまだ幼いお姿で」

「バビロンの大淫婦に何を言っておるのだ貴様。

 あと余は実年齢はマスターより上だぞ」

「ああっ、そういえばそうでした!

 で、でも先輩の盾兵(シールダー)としてそのような破廉恥やご禁制を見過ごすわけにはいきません!」

「ククッ、貴様はどこの世界でもお堅いなマシュ。自分に正直になってマスターを押し倒した方が幸せになれるぞ!?」

「そ、そんなことは決してっ……!!」

「フフッ、口調に動揺が見られるぞ!?」

「うぐぐ……」

 

 箱入りなマシュでは海千山千のドラコーにはとても敵わないようだった……。

 光己は2人の論戦がどうなるのか大変興味があったが、ふと気づいたことがあってマーリンに向き直る。

 

「でもマーリンさん、憑依って霊がやることだよな。マーリンさんやマシュみたいに生身の肉体持ってるとできないんじゃないか?」

「うん、実は残念ながらそうなんだ。

 でもキミは将来的にはやらかしてくれそうな気がするよ。実際似たようなことをやった人間、いや元人間もいるしね」

「へえー」

 

 そんなことができる者がいるとは世の中広い。先ほどのアルトリアの言葉ではないが、竜種の冠位になったからといって油断は禁物だろう。

 そして彼女の警告の正しさを証明するかのように、ルーラーアルトリアが注進にやって来た。

 

「マスター、サーヴァント反応です。数は7騎。

 バベッジに聞いてみたところ、どうしても接触を避けたいなら地面を掘って行くしかないそうですがどうしますか?」

「7騎」

 

 今までにない大所帯だ。敵か味方か?

 

「うーん。太公望さんが全力出せばやれるかも知れないけど、穴の中歩いてる時に後ろから襲われたら大変だよなあ。こっちから出向く方がマシか」

「そうですね、そもそも敵ではない可能性もありますし」

 

 そういう方針になったので、警戒度をさらに上げつつ早歩きで一本道を進む光己たち。

 やがて前方に扉が見えた。その向こうからは強い魔力のぶつかり合い、つまり戦闘の気配が感じられる。

 どうやら7騎は1つのグループではなく、複数のグループに分かれて敵対しているようだ。

 急いだ方が良さそうだが、いきなり全員で乗り込むのは不用心である。そこでモードレッドとティアマトを先頭に、その後ろにルーラーアルトリアと太公望が続く4人で扉を開けて先に進むことになった。

 

「単純に考えりゃ、どっちかが敵でどっちかが味方になるってことだよな。行くぜ!」

「うん、母の出番が来た」

 

 扉に鍵や罠の類はなくあっさり開き、その先は部屋になっていた。戦闘で壊された家具や調度品がそこかしこに散らばっている。

 室内にいるのは探知した通り7騎で、3対4で戦っているようだ。カルデア勢から見て手前側にいる3騎は揃って光己と同じ現代日本の高校生のような容姿と服装だが、奥側にいる4騎は時代も地域もバラバラのように見える。

 7騎とも扉が開いたことには気づいたようだが、両グループとも目の前の敵と戦うのに忙しいのかちょっかいを出しては来なかった。

 

「ではこの隙に急いで真名看破を、まずは奥の方からいきますか。

 尾が生えている男性はクー・フーリン、バーサーカーです。宝具は『噛み砕く死牙の獣(クリード・コインヘン)』、海獣クリードの外骨格を鎧のように身に纏うことで防御力を高めるというものです。

 赤い外套を着た白髪の男性はエミヤ、アーチャーです。宝具は『無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)』、固有結界を展開し、その中にある無数の武器を投射する攻撃です。

 全身黒ずくめで仮面をかぶった男性は呪腕のハサン、アサシンです。宝具は『妄想心音(ザバーニーヤ)』、悪性の精霊の腕で対象1人を呪殺するものです。

 1騎だけ女性なのがメディア、キャスターです。宝具は『破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)』、特殊な短剣で突き刺して、その対象にかけられている魔術を破戒します」

 

 ルーラーアルトリアはここでいったん切って一息入れたが、この時点で4騎の名前を知っているアルトリアとメドゥーサと小次郎の3人は我が目で確かめようと急いで列の前に移動し始めた。

 

「手前側の3騎は全員疑似サーヴァント、それも人格は依代がベースになっているようです。

 1騎だけ男性なのが衛宮士郎、憑依しているのは千子村正、セイバーです。宝具は『無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)』と『無元の剣製(つむかりむらまさ)』の2つです。前者はエミヤと同じで、後者は究極の一刀を作り出して複数の敵を攻撃するものです。

 赤い上衣と黒いミニスカートの少女が遠坂凛、憑依しているのはイシュタル、ライダーです。宝具は『神峰天廻る明星の虹(アンガルタ・セブンカラーズ)』……えーと、騎乗したスクーターから魔力を放射してダメージを与える、もののようです。

 ブレザー姿の少女は間桐桜、憑依しているのはパールヴァティー、ランサーです。宝具は『恋見てせざるは愛無きなり(トリシューラ・シャクティ)』、槍で雷を呼び出すものです。

 ……おや。偶然なのか必然なのか、7騎で基本7クラスがぴったり埋まっていますね。まるで普通の聖杯戦争のようです」

 

 情報量が多いのでルーラーは早口で一気にまくし立てたが、それが終わる前にメドゥーサは早足が跳躍に変わっていた。

 

「サクラ!? これが連鎖召喚というものですか、今行きます!」

「え、もしかして知り合い!? 味方とは限らないから気をつけて下さいね」

 

 光己はメドゥーサとは契約していないので、直接迷惑をかけられるのでなければあまり行動を掣肘できない。とりあえず、用心だけ促して見送ったのだった。

 

 

 




 唐突に第5次聖杯戦争めいたバトルが始まりましたが、誰が勝っても聖杯は手に入らないのです(酷)。
 SN特異点も書いてみたいのですが、邪馬台国と川中島とハロウィン3部作が予約済みなので難しいところです。

 モルガン(トネリコ)はバーヴァン・シーが来た時点で大勝利なのですが、この後トトロット(ハベトロット)召喚と妖精国救済を果たせば完全勝利ルートになりますw
 人理修復の後イギリスに住むことになったら我が夫がお金持ちなので仕事をする必要はないのですが、もしやるならこのメンツだとウェディングドレスと靴のオーダーメイドの店とか良さそうですね。店内にバゲ子がカフェを併設して、メリュ子が王子様ムーブを活かして店員をやれば若い女性に受けそうな気がします(^^


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