FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第251話 偽聖杯大戦2

 アルトリアの初撃はエミヤが防いだが、メディアとしては追加召喚で魔力を消費したので回復するまでは敵とは距離を取りたい。エミヤたちを促して、元空き部屋に移動して3騎と合流した。

 その直後に、モードレッドが部屋に飛び込んで来る。これで7対7で向かい合う構図になった。

 

「父上! 赤のセイバーとして先陣切りに来たぜ」

「え、貴方まさか『聖杯大戦』の参加者だったんですか?」

 

 ここでアルトリアが、モードレッドが「赤のセイバー」を称したのは単にメディアの術式に乗っかってのことではなく、実際の聖杯大戦に参加していたからではないかと推測できたのは「直感」のおかげか血のつながりがあるからか。いずれにせよ、モードレッドは自分の言葉の意味を父上が正しく理解してくれたことで闘志がさらに上がった。

 

「ああ、さすが父上分かってるな!

 てか黒の連中が2人もいるとは、本当に聖杯大戦を模したんだな」

 

 黒のランサー・ヴラドと黒のライダー・アストルフォである。セイバーと思われる金髪の男性は知らない顔だが、さすがに大魔術師の術式も百発百中とはいかないのだろう。

 しかしこれで魔霧に召喚されたはぐれサーヴァントに聖杯大戦参加者がずいぶん多かった理由が分かった。術式を本格起動はさせずとも、存在するだけで外の魔霧に影響を与えていたというわけだ。

 

「あ、そういえば黒のランサーとはスコットランドヤードでも会ってたな。あの時はお互い頭に血が上ってたからかそういう話にならなかったけど。

 いやあの時はバーサーカークラスだったっけ? まあどっちでもやる事は同じか」

 

 敗れて退去したのにまた召喚されるとは気の毒な話だが、こちらも息子認定とブリテンの安寧がかかっている。モードレッドに手加減の意向はなかった。

 ヴラドやアストルフォは悪党ではないから、気絶させて室外に放り出せばトネリコたちが解呪して味方にできるかも知れないが、集団戦の中で重傷を負わせずに気絶だけさせられるほどの実力差はない。全力で倒すしかないのだった。

 それで7対7なら誰と戦うべきか? ヴラドと再戦するか、それともセイバー同士の一騎打ちとしゃれこむか? モードレッドがちょっと迷っている間に、敵セイバーはいかにも不満げな面持ちで苦情を述べていた。

 

「何だここは? 何で俺がこんな辛気臭い地下室で、しかもセイバーなんぞで召喚されるんだ。別に聖杯戦争なぞしたくもないが、どうせ呼ぶなら大海原でライダーとして召喚するべきだろう」

 

 どうやら場所とクラスに納得しかねている模様である。どこの誰なのだろう?

 

「ぎゃーっ、メ、メディア!? おま、おまえ……何で俺なんぞ召喚したんだ。もっと役に立つ奴が大勢いるだろう、ってまさかフィギュアにするつもりか!? それだけは勘弁してくれ!!」

 

 ついでメディアの顔を見た直後に錯乱して意味不明なことをわめき始めたところを見るに、術式ではなく縁召喚でやって来た者のようだ。

 男性は心の底から嫌がり恐れているようだが、メディアにとっても望まざる召喚だったらしく不機嫌そうに言い返す。

 

「呼びたくて呼んだんじゃないわよ。本来なら『黒のセイバー』ネーデルラントの竜殺しが現れるはずだったんだから」

「つまり事故ってことか。まあ人間誰でもミスはするからな。

 しかし竜殺しって、聖杯戦争じゃなくてドラゴン退治でもするつもりなのか?」

 

 なお男性はまったく意識していないが、アルトリアとモードレッド(と室外にいる何人か)には竜属性があるので、ドラゴン退治というのはあながち的外れではなかったりする。

 

「まあどうでもいい。事故だってんなら俺は部屋の隅でおとなしくしてるから、おまえは召喚をやり直し……いや召喚の間護衛するくらいは元夫としての責務か?」

 

 男性いや元夫氏の言い分は事故の被害者としては好意的なものだったが、残念ながらメディアにはそれを受け入れられない事情があった。

 

「ええと。気持ちは嬉しいけど、今は7騎制限があって貴方がいる間は追加召喚はできないのよね。

 だからさくっと自害してくれないかしら?」

「するかボケェェェ!!!」

 

 元夫氏が咆哮したのは当然といえよう……。

 メディアもさすがに怯んだが、それでも要望の根拠らしきものを述べた。

 

「しょ、しょうがないじゃない。貴方弱いくせにしぶといから、普通に戦わせたら戦果は挙げないのに自分は生き残る枠潰しなんだもの」

「リーダーとして理想的なリソース配分だろう。だからライダーで呼べとさっきも言ったんだ。

 あ、理想とリソースをかけたシャレじゃないからな」

「誰もそんなこと考えてないわよ。でも困ったわねえ」

 

 なおこのやりとりの間、モードレッドたちは戦いを始めずに2人の会話を拝聴していた。神話で有名な悲劇の夫婦が図らずも再会したのだから、どんな話をするのか大変興味があったのだ。

 

「契約切っても即座に退去になるわけじゃないし……いえ、その後で魔力を使い切れば退去になるわね。

 というわけで、魔力が尽き果てるまで宝具連発してきなさい」

「鬼かおまえは!?」

 

 元夫氏は再び怒りの声を上げたが、今度はあんまり効かなかった。契約を切られてもギアスは残っていたので逆らえず、宝具を使うためいったん彼女から離れる。

 なお士郎と凛と桜も契約を切られているので退去関係の事情は同じなのだが、その辺に気づいたアルトリアの仲介でこっそり光己と契約したのでもう問題はない。しかし元夫を召喚しただけで戦闘中断から離反者の現界継続にまでつながってしまうとは、痛恨のミスとはこういう事をいうのであろう……。

 とはいえ悪い事ばかりでもない。元夫氏が宝具を使うと、なんと光己たちも1度遭遇したヘラクレスが出現したのだ。

 

「おお、こんな状況でもおまえだけは来てくれるのか。やはりおまえは真の友だな!」

 

 元夫氏―――イアソンの宝具「天上引き裂きし煌々の船(アストラプスィテ・アルゴー)」は生前アルゴー号で共に冒険した仲間たちが一斉攻撃を仕掛けてくれるというものなのだが、現れる人数はその時のイアソンの立ち位置が正しければ正しいほど多くなり、逆に明らかに悪役だったりすると誰も来なくなってしまう。このたびはイアソン自身の意向ではない上に、やらせたメディアも何だか悪役ぽいのでイアソンは参加者ゼロでも仕方ないと思っていたが、それでもヘラクレスだけは来てくれたので感動したのだ。

 これにはメディアもにっこりである。

 

「ヘラクレスを呼べたのなら結果オーライね!

 ヘラクレス、貴方にとっても連中はあの時戦った仇敵でしょう。やっておしまいなさい!」

「………………。

 ■■■■■■■■■ーーーーッ!!」

 

 ヘラクレスはメディアには返事もしなかったが、来たからには戦う意志はあるようで雄叫びを上げてカルデア勢に襲いかかった。

 なしくずしに戦闘再開となったが、カルデア側でヘラクレスと腕力で渡り合えるのはアルトリアだけである。とっさに前に出て、振り下ろされた斧剣を風王結界で受け止めた。

 

「むう、相変わらずのパワーですね」

 

 受けた感じでは、冬木の時と同じくらいのように思えた。

 アルトリアの方はあの時より強いので、その分やりやすくなっている。それでも難敵中の難敵ではあるが、メディアとイアソンの会話によればあまり長時間は現界していられないようだから、12回殺す必要はなさそうだ。

 室内で15騎が入り乱れて戦う混戦は初めてだし、ここは守勢に徹してしばらく様子を見るべきか。アルトリアがそう考えて剣を構え直した時、今度は天草が部屋に入って来た。

 

「うわ、何か凄そうな方がいますね。

 では取り急ぎ真名看破を。その斧剣の巨漢はヘラクレス、宝具は『十二の試練(ゴッドハンド)』、命のストックが11個あるというものです。

 彼の後ろにいる金髪の男性はイアソン、宝具は『天上引き裂きし煌々の船(アストラプスィテ・アルゴー)』、ヘラクレスがいるのがそれみたいですね。なるほど、宝具による一時的な召喚()7騎制限の例外というわけですか」

 

 メディア側にサーヴァントが8騎いたのはそういう仕組みだったようだ。

 謎が解けたところで、天草が看破を続行する。そのためにこの部屋に来たようなものなのだから。

 

「槍を持った壮年男性はヴラド三世、宝具は『血塗れ王鬼(カズィクル・ベイ)』、体内で生成した『杭』を射出するというものです。

 桃色の髪の少年はアストルフォ、宝具はまず1つめが『この世ならざる幻馬(ヒポグリフ)』、鷲と馬の合成獣に乗って突撃します。

 2つめが『恐慌呼び起こせし魔笛(ラ・ブラック・ルナ)』、魔音を発生させる音波兵器です。

 3つめが『破却宣言(キャッサー・デ・ロジェスティラ)』、あらゆる魔術を打破する手段が書いてある本です。

 4つめが『触れれば転倒!(トラップ・オブ・アルガリア)』、槍の穂先で触れたサーヴァントの膝から下を霊体化させて転倒させます」

 

 アストルフォは宝具を4つも持っているので大変だったが、これで最低限の役目は果たせた。後は敵の今後の追加召喚に備えて、死なないように立ち回っていればいい。

 なので天草は敵に狙われないよう後ろに下がったが、逆にメディア側は彼を放置してはおけない。

 

「ちょ、ちょっと貴方どうやって入ってきたのよ。しかもあっさり真名と宝具を見破るなんて」

「ええ、実は私聖杯大戦でサーヴァントの身でありながらマスターと監督役を兼任してまして。つまり7騎制限に引っかからない関係者だからじゃないかと。

 聖杯大戦を模したのはいいですが、余計な所まで模し過ぎたようですね」

 

 模する度合いが高ければそれだけ暗示や障壁の強度が増すが、代わりにセキュリティホールが発生してしまったのだった。とはいえメディアは自身で聖杯大戦を経験したわけではないから、迂闊と責めるのは酷であろうと天草は思っている。

 

「確かにね……。

 でもサーヴァントがマスターと監督役を兼任したって何? いくら何でも無理があると思うんだけど」

「ええ、それはもう聞くも涙語るも涙の苦労は多々ありましたとも。

 最終的には実らずに終わってしまいましたが」

「……そうらしいわね。

 で、ヘラクレスたちの真名を看破できたのは?」

「深い理由はありませんよ。ルーラークラスの特権です」

 

 アルトリアとヘラクレスが戦っているのをよそに、天草は親切にメディアの質問に答えていた。

 答える義理はないのだが、ヘイトを稼がないためか、あるいは自分が何か聞きたくなった時に答えてもらいやすくするためだと思われる。

 

「ルーラー……知識としてはもらってたけど、本当に存在したのね。

 貴方は中立の裁定者にはとても見えないけど」

「はっはっは、よく言われますよ」

 

 メディアの天草評は的確かつ辛辣なものだったが、それに露骨に韜晦(とうかい)した笑顔で返すあたりがまさにこういう評価を受ける理由であった……。

 そこにジャンヌとジャンヌオルタが現れる。

 

「え、何!? 聖杯大戦の関係者ってこんなに現界してたの?」

「貴女がここの首魁ですね。私は聖杯大戦で裁定役を務めた縁で入って来られた者です」

「その贋作よ。短い付き合いになるでしょうけど、せいぜいよろしく」

 

 ジャンヌは自分が部屋に入れた理由は語ったが、真名まで明かすほどお人好しではなかった。一方オルタは自分から贋作であることを明かすあたり、出生の事情は完全に吹っ切れているようである。

 

「え、またルーラー……!? というか贋作?

 まあ入れてしまったものは仕方ないわ。皆、戦闘再開よ」

 

 作戦としては、まずメディア自身は魔霧を使って自分の魔力回復と手下たちへの魔力供給をする仕事があるので戦闘には参加しない。イアソンはメディアの護衛とヘラクレスの現界維持が役目だから、彼も後方で控えとなる。

 なおメディアとしてはイアソンがヘラクレスを呼べるのなら契約し直しても良かったが、それはさすがに人の心案件なので、彼が魔力を使い果たして退去になったら、礼の言葉くらいは述べながら見送るつもりだ。

 ハサンは接近戦より短刀投擲の方が有用なので遊撃である。

 残る5騎は前衛格闘タイプだが、連携とかはお任せだ。メディアは武術は修めていないので、初見の武闘派同士がうまく連携できる指示なんて想像もつかないので。

 その武闘派たちは、まずエミヤは当然のように士郎に襲いかかって一騎打ち再開となり、クー・フーリンは桜とメドゥーサの2人と戦っている。ヘラクレスはアルトリアと小次郎が迎え撃っていた。

 凛は引き続きガンドによる支援である。魔力をタダで潤沢に供給してもらえるようになったので、上機嫌で乱射していた。

 なおエミヤとクー・フーリンとヘラクレスに連携と呼べるような動きはない。初見がどうとかより、連携しようと思うほどの仲間意識がないので。

 ヴラドとアストルフォはモードレッドと天草とジャンヌズが相手だ。こちらは戦力的に不利なのもあって、そこそこ助け合う形になっている。

 故意か偶然か、冬木組と聖杯大戦組に分かれる形になっていた。

 

「ええと、確か監督役でマスターの暗躍ルーラーと裁定役の色ボケルーラーだったっけ? 仲悪いと思ってたけどなんで一緒にいるの?」

 

 その激戦の最中、聖杯大戦組の1人アストルフォが目の前の4人の内2人に素朴な疑問と見せた悪口をぶつけていた。

 いやアストルフォは理性が蒸発しているから、悪口ではなく純粋に思ったことをそのまま口に出しただけかも知れないが。しかしそれならなおのこと、ジャンヌはスルーするわけにはいかない。

 

「色ボケは貴方でしょう! あとこの監督役と仲が悪かったのは事実ですが、彼がここにいるのを知ったのはこの部屋に入った時なのです」

「ええ、でも今は手を取り合えると思いますよ。

 私の願いには問題があることが判明しまして現在()()中ですが、人理修復には賛同していますから」

「え、本当に!?」

 

 天地が引っ繰り返ってもあの願いを諦めそうにない天草がまさか。ジャンヌは驚愕したが、よく考えれば「停止」は一時的にストップするというだけで「取りやめる」という意味ではない。それなら「問題」の内容によっては合理的な判断ともなり得るわけで、ジャンヌはむしろ安心した。

 

「……そうでしたか。詳しい事情……を聞く暇があるかどうかは分かりませんが、貴方が味方なら大変心強いですね」

「ええ、私もそう思いますよ」

 

 敵対したら厄介な者ほど、味方になれば頼もしい。2人の偽らざる心境だったが、アストルフォにとっては喜ばしくない展開である。

 

「うわー。物語でよくある、敵だった者同士が意気投合する流れだー。

 ところで人理修復って何?」

「簡単に言えば、巨悪から人類を守るための戦いということですよ。

 そして残念ながら、今の貴方はその巨悪の家来です」

「がーん!」

 

 素直で正義派のアストルフォは自分が悪の手先なのだと知らされてショックを受けていたが、ヴラドも人理とか巨悪とかいう仰々しい単語を頭から否定はしなかった。

 

「……監督役は策士ゆえ言うことを鵜呑みにはしがたいが、裁定役が同じ意見だというなら事実なのであろう。

 しかし今の余は黒のランサー、そちらにつくことはできぬ」

「そうなんだよねー。ボクも正義の味方してみたいんだけど」

 

 ヴラドとアストルフォにかけられた暗示はこういう具合に作用しているようだ。

 天草にギアスと暗示をどうにかしようという意図があったかどうかは不明だが、神代の魔女がかけた術がそう簡単に破れるはずもない。決着は剣と魔術でつけるしかなさそうであった。

 

 

 

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