光己たちが穴の外に出てみると、なんと魔神柱が出現して士郎たちと戦っていた。カルデア勢はすでに実物や映像データを見たことがあるからさほど驚かなかったが、モードレッドたち初見組はそりゃもうびっくり仰天である。
「な、何だあの気持ち悪ぃデカブツは。ゾォルケンの姿が見当たらねぇってことは、ヤツが変身したってことか!?」
「そうみたいだな。ローマではレフが変身したし、オケアノスではイアソンが変身させられてたからそれで合ってると思う」
「……ん? 『した』ヤツと『させられた』ヤツがいるのか?」
「うん。どっちも聖杯を体内に取り込んでから変身したから、アングルボダの動力にしてたっていう聖杯はもう取り出し済み……なのかな?」
光己はそんなことを言ったが、アングルボダは今現在も蒸気=魔霧をがしがし排出しているので正確なところは分からない。太公望やマーリンも分からないらしく沈黙している。
ついで戦況を観察するに、まず魔神柱は能力面は前例と同じのようで、その場にとどまったまま根元付近で毒煙や毒液をまき散らして地上で接近されるのを防ぎ、距離を取らさせた敵に火傷を起こす視線で攻撃するという戦闘スタイルだった。
対する士郎たちは、凛の空飛ぶスクーターに凛と士郎が乗ってガンドと弓で攻撃し、メドゥーサが召喚したペガサスに彼女と桜が乗って稲妻を飛ばしている。バゼットは翼がないのに空を飛べる白い馬の背中に座っており、周囲に飛んでいるファンネルめいた球体からビームを射っていた。小次郎とイリヤは飛べないので、いったん退いて様子を見ている。
驚くべきはバベッジで、背中や足裏から高温高圧の蒸気を噴射して空を飛んでいた。バルバトスの上に回って、その蒸気を吹き付けるという形で攻撃している。
妖精國組はバーゲスト以外は空中から遠距離攻撃できるのだが、今はトネリコが治療や援護をしているだけで攻撃に回る様子はなかった。つまり今の所戦況には余裕があるということか。
とりあえず、光己が最も気を惹かれたのはバゼットだった。
「お召し替えしたみたいだけど、素晴らし過ぎるだろあの服!」
一見は上品なロングドレスだが、よく見ると胸部を覆っているのはX字状に交差した薄布の帯だけなのだ。まず素の露出度がかなり高い上に帯が腋の下ではなく腕の外側を通っているので、下手に腕を上げたら布がずれて、どうみてもブラジャーを付けてない乳房が露出してしまうのは避けられない。
腹部はシースルーで、おへそが見える程度の透過度である。まあこれは良し(良い意味で)としよう。
スカートは背面は背中の大きなリボン(?)と重なってがっちり覆っているが、前面は布地が大きくカットされており、正中線の下はこれまた薄い帯が垂れているだけだ。カモシカのような素足が太腿まで見えているというか、もしかしてパンツを穿いてないのではなかろうか。
つまり彼女が着ているのは露出が多いひらひらの薄いドレス1枚と靴だけということに……何たる、何たる! あのようなチラリズム全開の恰好で動き回られたら、煩悩回路が勝手に作動してしまうではないか。責任を取ってカルデアに来て、いろいろサービスしてほしいものである。
しかし彼女は並行世界から女神の依代として来た身でこの世界に縁故はないから勧誘は難しそうだ……なんてことを光己が考えていると、ルーラーアルトリアがそばに来て解説してくれた。
「真名がマナナン神に変わっていますから、彼女はメインを交代することができるのでしょう。それで服も変わったのではないかと。
あの空飛ぶ馬を召喚するために交代したのだと思います」
「なるほど、メインがバゼットさんだとマナナン神の愛馬は呼べないということか」
ただその内容はバゼット/マナナンを勧誘する方法についてではなかったが、お召し替えの謎は解けたので良しとしておいた。
「ま、仮に彼女がその気になってくれてもここから直接カルデア本部に来てもらうのは無理なんだけどさ。でも縁はできたから、次の出会いに期待しよう。
……それはそれとしてどうするかな。現場のトネリコに聞いてみるか」
こういう時のために、彼女にはこの空洞に入る前に通信機を預けてある。トネリコの手が空いた時を見計らって光己が通信機のスイッチを入れると、すぐ返事がかえってきた。
「はい、トネリコです」
「ドーモ、藤宮です。
こちらは今パラケルスス退去させたとこだけど、そっちはどう? 参戦した方がいい?」
「いえ、今のところは大丈夫です。それよりアングルボダは暴走状態になっているそうですので、先にそちらを壊すか聖杯を取り出す方がいいかと」
「ほむ、了解」
何やら容易ならぬ事態のようだ。
どちらの案を採用するかだが、聖杯を安全に取り出すには暴走状態のアングルボダに近づいて壊さないよう分解しなければならないから危険かつ大変そうだ。遠くから破壊する方が無難だろう。
聖杯も壊れるかも知れないが、使いもしないのに厳重保管している物がいくつもあるくらいだから無理して持ち帰る必要はない。そもそも先ほど考察した通り、聖杯は取り出し済みかも知れないし。
光己は通信を切ると、この状況でのアングルボダ破壊に最も適してそうなサーヴァントにその作業を依頼した。
「それじゃ太公望さん、よろしく」
「承知しました。八十四符印、全機起動以下略。落ちろ、『
太公望が宝具を開帳すると大空洞のてっぺん辺りに雲が渦巻き、その中心から大きな柱が落ちて来た。柱の底面がアングルボダの屋根にぶち当たり、耳がつんざけそうな程の衝撃音が響く。
アングルボダは聖杯が仕込んであるだけあって一撃で全壊はしなかったが、無傷では済まず上半分が潰れて高さが半分になっていた。
「よし、もう一発撃てば終わりそうだな」
光己はメディアたちと戦っていた時に「俺は直接見えない場所にいる人にはうまく魔力送れない」と言ったが、逆にすぐそばにいる人には送れる。つまり太公望がもう1度宝具を使うだけの魔力を充填するくらいは
しかしそうする前に、肉柱からかなり泡喰ったような声が飛んできた。
「お、おまえたちどういうつもりだ!? アングルボダには聖杯が組み込んであるのを知らないのか!?」
まあゾォルケンというか魔術師にとって、万能の願望機たる聖杯を壊してしまうなんて愚の骨頂だろうから、光己たちの行動が想像の外だったのは無理もない。
一方光己はこの台詞で聖杯はアングルボダに組み込んだままであることが分かっ……いやアングルボダを壊させないためのブラフということも考えられる。
いずれにせよ、返事はせねばなるまい。
「生憎だったなゾォルケン。俺は願望機や根源よりも、仲間の命の方が大事なんだよ。たとえ
これは決まった! マーリンたちとは結構仲良くなったが、さらなる好感度アップは間違いない。
当の魔神柱とは多少距離が開いているので聞こえていないかも知れないがささいなことだ。
「あれ、ゾォルケンじゃなくてわたしたちに言ってるのよね。マスターさんってやっぱり面白ーい」
「そうだね。いやあ、あんな大声で言われると照れてしまうな」
「ほほぅ、『何だろうと』と来たか。
「うんうん、良い子で母はとても嬉しい」
なお彼がターゲットにしていたアルクェイドとマーリンには面白がられただけで終わり、特に意識していなかったドラコーとティアマトの好感度が上がっていたが、まあ世の中こんなものである。
当人はそれに気づいた様子はなく、というか振り向いて台詞の効果を確かめるのは無粋と間抜けを足して2を掛けるようなものなのでそのまま魔神柱の方を向いて彼の反応を待っていると、何やら体を揺すろうとしたみたいだがそれ以上の動きはなかった。
「……?」
「くっ、動けぬ……王から賜ったこの魔神の体にこのような弱点があったとは!?」
バルバトスは光己が口を動かしたのは見えたが言葉は聞こえなかった。そこで次は行動で示そうとその巨体を以てまだアングルボダに刺さったままの打神鞭を引き抜こうとしたのだが、魔神柱には腕も脚もないので打神鞭を掴むどころかその場を動くことすらできないのだった。
次善策として破壊しようにも、魔神柱の攻撃方法は対生物に偏っているので物理的な破壊は得意ではない。どうしたものか?
するとペガサスが少し近づいてきて、先ほど「おじい」と言いかけた少女が話しかけてきた。
「私の世界の貴方は自分が生きるために人間をやめて蟲になりましたが、貴方は他人の命令で手も足もない怪物になってまでして無関係の人たちを殺そうというんですね。
貴方
「……何だと!?」
彼女の冷たく乾いた表情と声色も気になったが、それより「私の世界の貴方」とは一体? もしかして彼女は並行世界かどこかの出身で、そこの自分の孫だとでもいうのだろうか?
桜は当然ゾォルケンの疑問に気づいたはずだが、答えようとはしなかった。
「これ以上貴方を見ているのはつらいです。終わりにしましょう。
―――『
ただゾォルケンの頭上にバベッジがいるので、槍の先端から直接魔神柱の中央部辺りを狙って渾身の稲妻を発射する。大量の高圧電流がゾォルケンの全身を駆け巡り、肉を灼いて白い煙を上げた。
「決めに行ったわね桜。なら私も! 『
続いて凛も宝具を開帳し、士郎とマナナンも体勢的に宝具は使えないながら全力を出し尽くす勢いで攻撃する。そしてゾォルケンの頭上のバベッジも、時は今と見て蒸気噴射をやめてそのまま自由落下しつつ鉄槌を握り直した。
「悪しき空想が潰える時だ。『
「ぐおぉぉぉっ!」
超重量の一撃で魔神柱の頭部がひしゃげ、そのまま全体が圧し潰されて崩れていく。もはや勝敗は決したが、ゾォルケンはなおも屈しなかった。
「まさか魔神の体が破れるとは……しかしまだ終わりではない。
さあ来たれ、我らが最後の英霊よ。我が悪逆、完成させるに足る……星の開拓者よ!
……汝、狂乱の檻に囚われし者……我はその鎖を手繰る者―――」
当初からの予定通り、魔霧を活性化させる英霊を召喚しようというのだ。しかも狂化させる文言が入っている。
いやそうしなければ、真っ当な心根を持った英霊に人理焼却の手伝いなんてさせられないだろうが。
「……英霊召喚の呪文!? 死ぬ寸前になってなお、服従したままでいるんですね。
私たち相手には負けても諦めないのに」
「それとも悪逆に染まり切っちゃったってことかしら? ホント救いがないわね」
「とにかく奴を止めるんだ!」
桜の心中は察するに余りあるが、詠唱を完了させてはまずい。士郎たちの再度のラッシュでゾォルケンは人間の姿に戻ることなく砕け散り蒸発したが、しかしその直前に詠唱を終えていた。
「汝三大の言霊を纏う七天! 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!
これで、終わる……」
それを最後に、魔神柱もゾォルケンも完全に消滅した。
ゾォルケンは消えたが、呪文の効果は現れていた。アングルボダのそばに紫色の電気の球のようにも見える魔力の塊が出現したかと思うと、盛大に爆発したのだ。
これがサーヴァント召喚の副作用だとしたら、よほど強力な英霊をイレギュラーなやり方で召喚したのであろう。少なくとも光己たちにとっては初めて見るケース、つまりまったくの想像外だったので爆風で全員吹き飛ばされ、何人かは天井から落ちてきた瓦礫の下に埋まっていた。光己が常人のままだったら死んでいたかも知れない。
―――爆風が収まった後そこにいたのは、やはりサーヴァントであった。
身の丈190センチほどもある、堂々たる体躯の壮年の男性だ。SF映画に出て来そうな紫色のぴっちりした服を着て、黒いマントを羽織っている。右腕に機械のガントレットを付けており、その指先からパリパリと小さく放電していた。
1888年どころか2016年よりさらに未来の英霊なのだろうか?
彼がゾォルケン側のサーヴァントであるなら、周囲を捜索して倒れていたり瓦礫に埋まっていたりする敵対者を殺す、もしくは地上に赴いて魔霧の活性化を行うべきなのだが、男性は何故か聞いている者もいないのに自分語りを始めた。
「―――私を、呼んだな。
雷電たるこの身を呼び寄せたものは、何か。天才たるこの身を呼び寄せたものは、何だ?
叫びか。願いか。善か。悪か。なるほど――今こそ、それらの全てが私を呼びつけたという訳か。この私を。天才にして雷電たる、このニコラ・テスラを!」
しかも問われもしないのに真名まで明かしてしまった。
ニコラ・テスラといえば、交流電流や無線通信などさまざまな発明をした優秀な発明家である。天才とか雷電とか自分で連呼しているのも納得の人物だ。SF英霊ではなかったが。
「なかなかに面白い。碩学たちが揃いも揃って私を呼ぶか!
人類に新たな神話をもたらした者! インドラを超え、ゼウスさえも超えるこの私!」
このくだりでは瓦礫に埋まっていたテュフォンがぴくりと眉根をひくつかせたが、彼女にとってゼウスは宿敵なので、むしろ「よく分からんがゼウスざまぁ」とか思っていたりする。
「ならば、良かろう! おまえたちの願いのままに! 天才にして雷電たる我が身は地上へと赴こう!
ハハハ! ハハ―――はははははははははははッ!!」
そしてひとしきり高笑いした後、ようやく仕事をする気になって歩き始めた。具体的に何をすればいいのかすでに知っている様子だが、おそらく召喚の時の術式にでも仕込んであったのだろう。
文字通り無人の野を行くがごとく、悠然とした足取りで空洞の出口へと進むテスラ。しかしその途中、不意に瓦礫の山の1つがぼんっとはじけて中から少年が1人現れた。
「…………やってくれた
「ん?」
ぱっと見では学者でも戦士でもない市井の一般人、のサーヴァントであるように思えた。ずいぶん怒った様子なのは、瓦礫の下から出て来た、つまり
ところでテスラが「一般人のサーヴァント」だと思った少年は実はサーヴァントではなく、しかも両腕両脚がドラゴンのそれで翼と尾まで生やした
「まあ今重要なことではないな。
……やはり我が前に立つか、未来へ手を伸ばす希望の勇者よ」
「それもあるが、俺はともかくマシュたちを瓦礫の下敷きにしたのは許しがたい」
「ほう、君は友誼に厚い男なのだな」
テスラは本来は人類を愛する英霊だけに、仲間想いな若者というのは嫌いではない。瓦礫云々の件は心当たりがなかったが、今訊ねて話の腰を折るのは避けることにした。
そのおかげか、彼の次の言葉は心が沸き立ちさえするものだった。
「といっても
できれば助けたいところなんだが、今は状況的に無理だから
光己的にテスラが行った「電気の実用化」は「火」や「農耕」や「住居」の発明・実用化にも匹敵する人類史上屈指の大偉業なので、敵に対する態度としては普段より丁重であった。
残念ながら今口にした通り、彼を解呪している暇はないが。何しろドラコーによればゾォルケンを倒したらゲーティア出現フラグが立つそうなので、もう余計なことはしていられないのだ。
「ふむ、君はこの雷電と、その発明の価値を正しく理解しているようだな! しかも状況次第では私を本来の姿にすることができると言うのか。
ぜひ頼みたいものだが―――惜しいかな、私は君と戦わねばならん。今の私はそういう風に出来ている。
それに、だ―――せっかくの力ある現界だ。ならば、前々より想った事柄を実行に移そう」
「前々より想った事柄?」
それはもしかして「世界システム」とかいう、フリーエネルギーを無線で世界中に送るという2016年時点ですら夢物語であるアレか? それを今ここで? と光己が軽く首をかしげると、不意にあたりの空気の感じが変わり、チリチリと肌を刺すようなものになった。
放電して魔霧を帯電させているのか?
「曰く、これが魔霧の活性というものだ。サーヴァントの魔力さえ際限なく吸い込もう!
無論、私は例外だ! 接近すれば、活性魔霧は君の魔力も吸収する!
霊核ごと取り込まれることも有り得るだろうが、さて、それでも近付くかね?」
「むう、フリーエネルギーとはむしろ反対」
どうやら光己の想像はハズレだったようだ。
しかし恐れる必要はなかった。
「それはもう。俺には
「……は!?」
予想外の返答に一瞬あっけにとられたテスラに、光己は無事な仲間を探さず1人で彼に立ち向かった理由を説明することにした。
「あと電撃や電波も効かない。貴方が自称したように、たとえインドラやゼウスより上だったとしてもね。
だから1人で出て来たんだよ。ただ完全耐性には穴があるから、貴方の名乗りを聞いてなかったら隠れてたけど」
「…………」
これにはさすがのテスラも目が点になってしまった。雷電も活性魔霧も効かないというのが本当なら、カウンターなんて生易しい代物ではなく嫌がらせレベルである。
なおテスラが首尾よく地上に出たあかつきには正式なカウンターとして坂田金時と玉藻の前が派遣される手筈になっているのだが、無論テスラはそんなことは知らない。
「……いや、この天才には抑止力でさえそれほど恐れをなしているということか? ならば喜ぶべきことかも知れんな。
だがまずは、君の言葉が事実かどうか確かめさせてもらうとしよう。
古の神々よ、眠れ! 今や我々こそが神話を紡ぐ! 『
「させるか!」
電撃無効だからといって、素直に宝具を使わせてやる義理はない。光己はパラケルスス戦の教訓に鑑みて、慣性駆動による突進からのポン・パンチを繰り出した。
このために、わざわざ獣モードになっておいたのである。
一方テスラはゾォルケンの細工で神霊級の魔力量を得ていたが、戦闘技能までは向上していない。なので光己の突進パンチを避けることはできなかったが、大魔力を活かして事前に電磁的な障壁を張ってあったおかげで決定打にはならずに済んだ。
「ぐうっ、まるで電磁加速のごとき急激な加速と停止……やるな少年!」
しかし5メートルほども吹っ飛ばされた上に宝具開帳も中断させられたので、追撃が来るのは必至だ。テスラは牽制のため、宝具ではない通常の電撃を放って足止めを試みた。
通常といっても並みのサーヴァントなら感電して火傷や麻痺といったダメージを受ける強烈なものである。それが確かに当たったのに、まったく効いた様子がないとは。
「なるほど、先ほどの発言はハッタリではなかったのだな」
「もちろん、ハッタリに命かけられるほど軽い立場じゃないんでね。
でもそっちも硬いな。急ぎだから大技使う」
「宝具……ではないのか!?」
大技と宝具は別物だろう。何をする気なのか? 問題は今のところテスラには彼を倒す手段がないことだが。
「うん、あくまで技の部類」
光己がふっと腰を落とし、改めてテスラを見据える―――その眼の結膜(白目)が赤く染まった。
同時に正体不明の禍々しい気配、いや重圧が場に満ちる。
「!?」
その次の瞬間、光己はテスラの真ん前まで到達していた。ついで彼が振り上げた右手の人差し指・中指・薬指がテスラの左腰に突き刺さる。
赤い衝撃波を伴ったその指は神霊級であるはずのテスラの身体を背中まで薄紙のように軽々と引き裂いて、遺言を残す間も与えない「速やか」さで絶命させたのだった。
(光己、ステイ!)
するとテスラが消えるか消えないかの内に、光己の脳内に立香の鋭い声が響いた。
というのもこの技は非常に強力な代わりに副作用があり、意識がある時に使うと邪悪化・狂暴化を起こすので、用が済んだら正気に戻してくれるようあらかじめ依頼してあったのである。
つまりそれほど急いでいたということだ。仲間たちは吹っ飛ばされただけなら命に別状はないだろうが、瓦礫の下敷きになった人を長時間放置しておくのは危険だろうから。ゲーティア出現フラグの件もあるし。
(お……おう、ありがと)
実際光己はちょっとばかり濁流めいた破壊衝動が湧き上がりかけていたが、付き合い17年の美少女幼馴染の声で我に返るとふうーっと大きく息をついて呼吸と気分を鎮めた。
あとはまず姿が見えている人たちから気付けをして、それから手分けして瓦礫に埋まっている人を探すのが順当か。
(そうだね。
でもニコラ・テスラが名乗ってくれてよかったよね。もしあの人が名乗らなかったら素通りさせちゃって、活性魔霧とかいうので何か大変なことやらかされてたもの)
(ああ、評価が業績に見合ってないから承認欲求が強かったのかもな。
それはそうと、強い技には名前が必要だよな。禁千弐百拾八式・八咫烏というのはどうだろう)
(そういうことは私よりジャンヌオルタさんかエリセさんに聞いた方がいいと思うよ)
それでも中二病は発症していたが。
雷電神話が神ならぬ赤い竜に1話もかからず倒されてしまうとは、この海の(ry
まあ主人公がリスペクト示したりリスク取ったりしましたので、中ボスとしての体裁は保てたはず……。
FGOで八咫烏といえば蛍ちゃんですね。遭遇フラグは立ちましたが、この主人公でカルデアに来てもらえるんだろうか(ぉ