沖田たちがもたらした情報では光己たちは今川側の意図の細部までは読めなかったが、晴信は政治と軍事に加えて魔術的なことも多少は分かるだけあって見事に看破した。
「そうか、そういうことか、分かったぞ。
川中島だ……!」
「え、川中島がどうかしたんですか? 別にあそこただの平地ですけど」
そう言われてもまだ分からなかった謙信が不思議そうに訊ねると、晴信はそのまだるっこしい反応に苛立たしげな顔を見せた。
「違う、あそこは甲斐信濃の龍脈が交わる地『龍穴』だ。
そこにあのデカブツ、遠目でも分かるあれだけの質量と魔力量を落とせば確かにこの地は崩壊するだろう」
つまりそれが先ほど沖田が言った「破壊」ということなのだろうが、では次の「作り直す」とはどういうことなのだろうか?
「副長が言ってましたよ。あいつらの目的はこの特異点に留まらないって」
「ああ、そういえば伊東は『自分たちの時代を作る』とか言ってたが、文字通り国ごと作り替えようって腹か」
それは斎藤と永倉が語ったが、破壊よりは創造の方がずっと難しく手間もかかる。どうやってそれをするつもりなのか?
今川側は聖杯の力を借りてとはいえ戦国時代に一部なりとも現代文明を導入した実績はあるが、崩壊したものを一から立て直すのはそれよりずっと難易度が高いはずだ。
「今のところは憶測だが、奴らのやってきたことを順を追って考えればつじつまは合う」
ところがそれも一応可能なようである。
まず彼らは集めた霊力鉱石を使って、魔力を増幅する城塞をつくった。
しかし目標地点である川中島(光己たちは
軍神が今川の意図を知っていたかどうかは不明だが。
「……って、それは破壊の手順ってだけですよね。そのあと作るのはどうやって?」
「ん? それはまあ、俺たちも軍神もいなくなれば邪魔者はいないからな。聖杯もあることだし、時間をかければどうにでもなるんだろう。
もちろん俺たちには想像もつかんような手管があるのかも知れんが」
「うーん、なるほど」
そこで光己が素朴なツッコミを入れたが、さすがの名将もそれへの回答は持ち合わせていないようだった。
「いずれにせよ、あれは俺たちで止めるしかない。
見たところ、あれは移動はしているがデカいだけあって速度は遅い。川中島に着くまで2日というところか。
とにかく1度甲府に戻り、そこで策を講じるとしよう」
なるほど隠し湯の傍らでは気分が今いち乗り切らない。晴信の提案で、一同は急ぎ甲府に帰ることにしたのだった。
甲府の
「
最初の問題は、相手は空を飛んでいるということだが……」
「そうですね、私のジェットパックは壊れちゃいましたし」
沖田はここに来る時すでにまともに飛べていなかったが、着水の衝撃で完全に飛行不能になってしまったようだ。ミサイルも撃てないらしく、これは手痛いダメージだった。
かといって普通の大筒や鉄砲では弾が届かないし、届いても効くとは思えない。
「ああ、並大抵の手段ではあのデカブツはとても止められんだろう。
乗り込んで連中を仕留めるのが1番手っ取り早いんだが……カルデアのマスター、おまえの軍勢召喚は今使えるか?」
「あー、あれは神属性持ちの大将が軍隊連れてきた時限定ですので、今は無理です。
でも俺が竜モードになれば、ここにいる全員乗せていけますよ。
ただ今川側が俺の軍勢召喚見たのなら、俺たちが空から乗り込むってのは当然想定してますよね。飛び道具持った兵士を大勢待機させてるんじゃないですか?」
「ああ、だから先陣や護衛が欲しいんだ。
謙信、軍神が出してたあの軍勢はどうだ?」
「あれですか……あれはどうやら私には使えないようです。理由は分かりませんが、中身が母上だからできたみたいで。
霊基自体は私の方が強いのですが」
今の謙信は軍神から青岩院の精神を抜いて景虎の精神と霊基を加えたものなので、謙信が言う通り強くはなっているが、代わりに失ったものもあるようだった。
つまり先陣と護衛は用意できないから乗り込むのは厳しいということになるが、それならそれで他に手はある。
「ですので私の大筒で撃ち落とすというのはどうでしょう。川中島が龍穴だというのなら、その魔力を使えば撃ち放題ですし」
「冗談を言ってる場合……いや、冗談とも言えんか」
もし今川側が軍神でも五稜郭は落とせないと思っていたなら、今日まで待たずとっくの昔に作戦決行していたはずだ。そう考えるなら、謙信のこの案は突拍子もないように見えて現実的なものかも知れない。なので晴信も頭から否定はしなかった。
「……そうだな。完全に破壊できればそれでよし、仮にできなくてもいくらか削るくらいはできるだろうから、俺の負担が減って成功率が上がる。謙信にはそれをやってもらうとするか」
「俺の負担が減るってどういうことなんです?」
晴信にも何か手立てがあるのだろうか? 謙信がそれを訊ねると、晴信はこのたびは時間が惜しいからかもったいぶらずにすぐ手の内を明かした。
「攻め込むのは厳しいし撃ち落とせるかどうかは分からない、となれば受け止めるしかないということだ。
連中より先に川中島に陣取り、俺が、いや俺の城が受け止める」
「は? 川中島に武田の城があるなんて聞いたことないんですけど」
「いえ、この晴信は城を顕現させる宝具を持っているんですよ。この城もそうです」
「ええ!? こ、このお城、晴信さんの宝具なんです?」
「そういう事だ。甲斐の地でならば、俺は城を顕現させることができる」
斎藤と沖田の疑問に謙信と晴信がそう答えたが、しかしこの内容では完璧とはいえない。
「んー、でも川中島って甲斐じゃなくて信濃ですよね。いや昨日も出せてたから信濃もOKなんですか……?」
「んん? ま、まあそういうことだな。最終的にはあの辺りは俺の領地になったわけだし」
この未来人の少年、見た感じはのほほんとしてるのに時々無駄に鋭いツッコミを入れてくるので本当に油断できない。晴信は内心でちょっとだけ冷や汗を流したが、表面的には平静を保ちつつ言葉を継ぐ。
「そして、武田の城は絶対の城壁だ。たかだか浮石の1つや2つ、必ず受け止めてみせる」
たかだか浮石といっても仮に五稜郭の大きさが直径2キロ高さ1キロとした場合、その重量は75億トンとかそういう数字だ。それを必ず受け止めると言い切るあたりに、晴信の自負心の強さがうかがえる。
「んな、無茶苦茶な……。
しかし他に手がないならそれに賭けるしかねえか」
とはいえ常識的に考えれば無謀な作戦なのは事実であり、永倉のこの台詞が皆の偽らざる本心であっただろう。
ただここには晴信に輪をかけて常識から遠い男がいた。
「あ、ちょっと待って下さい。あの岩塊って、本当に五稜郭ってことでいいんですか?」
「ん? ああ、伊東の奴はそう言ってたな。といっても函館にある本物を持ってきたわけじゃなくて、連中がつくったものをそう称してるだけだが。
武士の世の墓標っつってたのは単なる情緒か副長への嫌味ってとこだろうが、五芒星を模した形なのを生かした魔術城塞として、魔力を増幅し、聖杯の力を強化する力がある……てな感じだったか」
その問いに斎藤がそう答えると、質問者の非常識少年はニヤソと悪っぽい笑みを浮かべた。
「ほむ、ならばよし!
伊東とやらめ、決め手にそれを選んだ失策を悔やむがいい。
それにしても、悪のボスや参謀が勝利を確信すると慢心して手の内をバラしたがるのはもはや様式美だな」
「!? ず、ずいぶんと自信ありげだがアレを確実に落とす手があるってのか?」
晴信や永倉や沖田、あと杉谷と果心は光己のトンデモ芸をいくつも見ているが、斎藤はまだ全然見ていない。当然思い切り驚いて聞き返すと、少年は今の自身の台詞を意識してかせずかは不明だが懇切に説明してくれた。
「いや、初めて使う
「破片? まあ確かに、あのデカブツから見れば小さな破片でも人間にとっては大岩だからな。人里に落ちたら被害ナシでは済まないから、出さないに越したことはないか……。
しかし上に投げ飛ばすってのは何だ?」
「あー、それはですね。まず業の成り立ちから言いますと、
これを文字通りにやりますと地球の方が消滅しますので、象徴とか比喩とか概念とかそういうものだと思われるんですが、それで逆に俺が星と見なしたものなら好きな方向に投げ飛ばせる逸話再現系の宝具的サムシングになってるんです。
名前は『
「…………!?!?」
しかし当然ながらそれを理解できたのはリリスとメタトロンだけで、日ノ本出身者はみんな半分も分からなかった……。
仕方ないので、リリスが概要だけ解説する。
「要するに、あの岩塊は『宙に浮かぶ星型物体』だからこじつけで星扱いして、地面に落ちて来ないほどの上空までブン投げちゃうってことだよね?」
「うん、そゆこと」
「……んん? それは分ったが、しかしそれだとあんたがその聖典に出て来る竜ってことになるんだが?」
「ええ、出身は未来の日ノ本の一般人なんですが、いろいろあって無辜られまして」
「……??」
斎藤はこれ以上の理解をあきらめた。
しかし今までに分かった範囲内での問題として、五稜郭を空にブン投げたら土方はどうなるのだろうか?
「いくら土方さんでも無事では済まないかと……。
ですので土方さんを助けるのなら、事前に乗り込んで連れ出しておくってことになりますね。
もっとも撃ち落とすのでも受け止めるのでも事情はあまり変わらないと思いますが。
……俺が防衛部隊を倒すことはできますが、その場合威力の調整が難しいので人質ごとやっちゃう可能性が高いです。沖田さんでも壊せない牢屋の中なら無事で済むかも知れませんけれど」
なお防衛部隊がいなければ、五稜郭をお宝扱いして所有権を奪うという手っ取り早い方法があるのだが、その展開は多分あるまい。
もっとも部隊がいても全滅させた後なら奪えるので、天星掃投を使うまでもなく元の場所に戻すなり「蔵」に入れるなりできるかも知れない。いや「蔵」に入れるなら、敵兵の遺体が残っているのは嫌だからその辺は状況次第だ。
五稜郭は大き過ぎて慣性制御では動かせないということも考えられるし、逆に操縦室があって簡単に動かせる……なんて都合のいい話はさすがにないか。
「ふーむ……」
土方は味方の足枷になるくらいなら敵ごと始末されてもいいと考えるだろうが、部下としてはそうはいかない。とはいえ今までの話を聞く限り、五稜郭に乗り込んで救出するのは容易ではなさそうだ。
せめて謙信が来てくれればいいのだが、彼女は川中島に行くそうだし。
いや空飛ぶ竜なら五稜郭よりずっと速いはずだから、土方救出のあと仮に天星掃投とやらが不発でもその後普通に川中島に向かえば間に合うのではないか?
―――という旨の意見を斎藤が述べようとした時不意に部屋の扉が開いて、何度か見たことがあるちびノブとかいう謎生命体が3人ほど中に入ってきた。
「晴ノッブリーダー。透破から急報ノッブ!」
「川中島に続く街道に今川の超大軍が出現! 率いるは4体の敵大将、今川義元との知らせノブ!」
「それぞれ南下して、武田領内に迫りつつありノブ!」
「その数……100万ノッブ!」
すでに敵軍の人数や敵将の名前まで把握しているあたり、武田の忍びも相当に優秀なようだ。
それにしても100万とは。しかも人造義元が2体ではなく4体だったとなると恐るべき難敵である。
「だとしてもやることは変わらん。その4体と今川の軍を蹴散らして、川中島に突っ込むしか俺たちに勝ちの目はない。
ただそのためには、仮に土方を助けに行くとしても謙信は不参加にしてもらわざるを得ん」
何しろ武田の軍はちびノブ込みでも2万人しかいないのだ。謙信の超火力抜きで今川軍を突破するのは難しいだろう。
彼女を先頭にして
またその道中晴信は戦闘に参加しない。五稜郭を受け止める大役を果たすには、晴信は魔力体力気力とも万全にしておくべきなので。
「それでも令呪の後押しも欲しいところだな。おまえがこちらに来ないなら、代わりにまた冠を貸してもらいたい」
「ほむ……」
晴信の要望は使命の重大さと難易度を考えれば順当といえよう。
光己自身は天星掃投を提案はしたが特定の作戦に執着してはいないので、皆の総意が五稜郭に乗り込むのは避けて川中島に全力を投入すべきというものならそれはそれで構わない。
しかし土方関係者の3人はどうだろうか?
「沖田さんたちはどう思う? ちなみに沖田さんのジェットパック、多分すぐ
ジェットパックといっても物質でつくられた機械ではなく、サーヴァントの霊基の一部だからエーテル製なので、水晶宮で普通に「治せる」はずだ。
光己が参考意見としてそれを述べると、沖田はこれまでの共闘の積み重ねからか、
「え、本当ですか? 藤宮さんは会うたびに成長しててすごいですね! よく分かりませんでしたが新しい技まで会得したみたいですし。
……それはそれとして、ジェットパックが直るなら土方さん助けに行きたいのは山々ですが、今までの話ですと難しそうですね」
沖田も斎藤と同じく謙信が来てくれるならいけるのではないかと思っていたが、情勢の変化でそれができなくなったのでかなり弱気になっていた。
何せついさっき、今魔川兵なしの人造義元2体に撤退に追い込まれたばかりなので。
「というか藤宮さん、こともなげに『ここにいる全員乗せていけますよ』って言ってましたけど大丈夫なんですか?
今魔川兵はともかく、人造義元だって4体で全部じゃなくてもっといて留守番してるかも知れませんよ」
「ん? ああ、軍神と戦うのを避けてたレベルで、しかも竜殺し属性持ってないんだから問題ないよ。
俺は獣モードでも軍神の刀……宝具開帳じゃない普通の攻撃だけど無傷で防げたから」
「ほんとですか、やっぱりすごいですね!
すると五稜郭に上陸するまでは大丈夫……問題はその後ですか」
牢屋までの道筋は知っているから行けるが、人造義元がいなくて今魔川兵だけだったとしても1万人とか10万人とか留守番してたら
何とかして全滅させたら、後は牢屋本体より周囲の設備を壊せば何とかなると思うが。
「うーん。永倉さんと斎藤さんはどう思います?」
「儂に言われてもな……。
今川の意図を挫くって観点なら、五稜郭を上杉の大将始め全員で削れるだけ削った上で武田の大将が受け止めるってのが1番確実なんだろうが」
「そうすると破片が飛び散って近辺の人里に被害が出たり、受け止めた時の衝撃で副長が死ぬ……かも知れん、って話ですかね。簡単にまとめれば」
危険度の観点で見るなら、五稜郭に乗り込むのはいうまでもなく危険度極大だが、地上戦全振りにしても五稜郭を受け止めた後100万の敵に囲まれて袋叩きになる公算が高い。
「……って、晴信さんの作戦ヤバくないですか!?」
「それはそうだが、まずは五稜郭を止めなきゃ後先がねえから間違いじゃあねえんだな……」
その点光己案なら土方救出の成否にかかわらず、天星掃投が成功すれば時間制限がなくなるから2万対100万で敵中突破した後その場に居座るなんて死番より酷い戦はしなくて済む。
ところで肝心の成功率はどれくらいなのだろう? 斎藤がそれを訊ねると、かなり希望が持てる返事がかえってきた。
「そうですね。デカブツといっても本物の天の星と比べれば億兆分の1ですから、十中八九成功すると思いますよ。
状況によっては、ブン投げるまでもなく元の場所に戻せるかも知れませんし」
「おお、それならそっちの方が良さそうだな」
そんなわけで新選組の3人が光己案に票を投じると、さらに追随者が現れた。
「あ、マスターがそっち行くならアテシも行くよ。当然だよね」
当人はまだ意向を表明していないのだが、心情的には行きたがっていると見てその後押しをしたのだろう。実際光己の返事はその点には触れず、リリス自身の身の安全を論じていた。
「おお? んー、気持ちは嬉しいしリリスは飛べるけど大丈夫? 迎撃の飛び道具が山ほど飛んでくるかも知れないけど」
実際リリスは格闘系技能を持っていないので光己の危惧は妥当だったが、当人は実にあっけらかんとしていた。
「へーきへーき。マスターが竜モードならアテシはスペック爆上げだし、違法無法脱法スキルも使い放題、もう存在自体が違法なサーヴァントになるからね」
「それは頼もしいな。でもそこまで法律無視してたら保護観察のおじさんとかに怒られない?」
「あー、それも大丈夫。その時はマスターにかばってもらうから」
「自分の違法のツケをマスターに払わせようとは何という邪悪……。
もしかして俺はこの女を倒すために生まれて来たのだろうか」
「え、マスターはアテシを押し倒すために生まれて来たって? きゃー困っちゃうー」
「……夫婦漫才は軍議が終わってからにしてもらえるか?」
「「すいませーん」」
司会殿はかなり怒っておいでなので、光己とリリスは正座してへこへこ頭を下げた。
ところでこれはただの人間が魔王とその妻(という伝承がある者)に同時に謝罪させたという偉業なのだが、それに気がついた者は誰もいなかったりする……。
「あ、ちょっと待って下さい。今リリスさん『スペック爆上げ』って言いましたけどどういうことなんです?」
沖田は付き合いが長い上役の命がかかっているからか、夫婦漫才も聞き逃さずにいたようだ。実際この話の詳細によっては土方救出が相当やりやすくなる。
「んー? それは文字通り、サーヴァントはマスター次第ってことよ。魔力供給と要石効果がマジで桁違いすぎるから。
とはいえあまり遠くまでは届かないから、そばにいる人だけになるけど」
リリスはここまでは普段通りの口調で述べたが、ここで一息置いて別人のように厳粛な表情になった。
「―――でもアレは
「…………!!
そうか、分かった」
リリスは理由は言わなかったが、光己はいくつか推測することはできた。
アルビオンは境界を開くとか何とか言われているから、閉じてる上に歪んだ空間に長居すると悪影響が出るのだろう。今はルシフェルパワーも乗っているし。
でなければ、ルシフェルが人間の営みに直接影響を与えすぎるのは「神」の不興を買うとかそんなところか。こちらもメタトロンが来ているから説得力はある。
「なるほど、それならいけそうですね!
沖田さんは水着霊基だと労咳も治りますし、がんばっちゃいますよ!」
沖田は竜の問題には深入りせず、土方救出に参加する旨だけを語った。その辺りは新選組が首を突っ込む話じゃなさそうなので。
光己はまだ五稜郭に行くとは言っていないが、この流れならそう判断していいだろう。晴信も止めてはいないし。
すると何故か蛍も立候補してきた。
「……じゃあ私もそちらで。この際だから長期契約で」
「んん? 何でまた急に」
長期というのは仮契約ではなく本契約で、カルデアに来るという意味だろう。光己がちょっとびっくりして訊ねると、蛍はまだ頭の中で整理しきれていないのか訥々とした口調で話し始めた。
「……雑賀は誰の味方でもなく、雇われれば誰の味方でもするし、大人も子供も関係なく殺す。
そういう風にやってきたけど、それは間違いだった。
傭兵だから雇われたら雇い主の敵を殺すのは当然だけど、それなら雇い主は選ばなきゃいけない。今川みたいなのに雇われちゃいけない。
私の雑賀がどんなものか、まだ結論は出ていないけど、それだけははっきりしてる」
沖田から孫市の件の真相を聞いた後、ずっと考えていたのだろう。しかしまだ年若い少女だし、すぐ結論が出るというわけではないようだ。
「でも貴方なら、人間性も戦う目的も安心。だから答えが出るまで一緒に戦わせてほしい。
もちろん、答えが出た後も契約を継続することは大いにあり得る。
……ごはんも美味しそうだし」
「分かった、そういうことなら」
なるほど答えが出る前に決着がついて現世から退去になったら未練が残り過ぎるというものだ。ごはんについても気持ちは分かる。光己は快く了承し、蛍との本契約を行った。
次は新選組3人との契約になるが、こちらは永倉と斎藤は本契約までするほど親しくはなく、そうなると沖田も1人だけやるわけにはいかないので3人とも仮契約にとどまった。
これで配置としては川中島に晴信・謙信・刑部姫・杉谷・果心、五稜郭に光己・リリス・メタトロン(ルーラーは分散させるべきなので)・蛍・沖田・永倉・斎藤となる。人数バランスにやや難があるが、人間関係等の事情を考えればやむを得ないところだろう。
「――――――よし、話は決まったな。
では出陣だ! 敵は海道一の弓取り、今川義元……を名乗る連中だ!」
そして晴信が音頭を取って、一同は決戦の場に向かうのだった。
この小説は余計なところだけ原作よりリアルですので、2万対100万は絶望的な戦闘だと解釈されてます。人造義元も4体と決まったわけじゃないですし。
あと原作ではこの辺りで森長可・蘭丸X・マシュが参加しましたが、ここではレムレムなので不参加です。
天星掃投はビーストカーマ戦でお披露目する予定だったのですが、五稜郭が使用条件にぴったりだったので前倒しで公開となりました。実際に使うかどうかはまだ未定です。
ではまた次回に。