FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第285話 海道覇皇ヨシモト6

 沖田とリリスが永倉たちの所に戻って光己とのやり取りを報告すると、3人はマスターが今度は如意宝珠なんて神話級アイテムを持ち出してきたことに驚いたがその辺はもう今更のこととして、今後の方針を改めて確認した。

 

「つまり儂らは土方を牢屋から出したら、天使の嬢ちゃんの案内で雑賀の嬢ちゃんとも合流して人造義元を3人とも倒す。そうしたら儂と土方と沖田と斎藤だけマスターの所に行って晴信の大将の所に送ってもらう、って流れでいいのか?」

「んー、まあ順当なとこじゃないか? このデカブツもカルデアってとこなら使い道あるんだろうし」

 

 霊力鉱石その他の資材はもちろん、浮遊や魔力増幅や障壁、それに人造義元や今魔川兵をつくる技術は応用が利きそうだし、何なら伊東たちがやろうとしたように城塞自体を上空から墜落させて質量兵器にすることだってできる。

 今川軍を討つことだけ考えるなら、カルデアのマスターは五稜郭なぞ「天星掃投(スターズ・ドロー・スルー)」とやらでさっさと始末してなるべく早く武田軍に合流するべきだし、新選組としても今回は敵の数が多いからその方が助かるのだが、彼の方は先の仕事のことも考えたいだろうからやむを得まい。

 

「そだねー、ひょっとしたら埋蔵金とか隠してあるかも知れないし。

 城のどこかに隠し通路があって、その終点の隠し部屋に千両箱が山積みになってるとかさ。ワクワクしない?」

 

 リリスがこの手の知識をどこから得たのかは本当に不明である。

 

「埋蔵金? うーん、普通に表に出してる金蔵や資材倉庫ならあるかも知れんな」

「んー、それじゃロマンがないんだよね」

 

 ……しかし現実ってやつはいつもながら渋かった。

 

「まあその辺はその辺として、話が決まったなら早いとこ行きましょうや」

「はーい」

 

 新選組としては資材も技術も埋蔵金も関係ないし、いつまでもここにいても仕方がない。早急な出立を提案すると、リリスも素直に同意した。

 土方の救出は先ほどの手順通りで成功し、魔力の手当てとやらができてるかどうかは分からないが五稜郭が落ちる気配はなかった。

 

「どうやら問題なさそうだな。じゃあ次に行くか」

 

 まず蛍と合流してから改めてサーヴァント探知をすると、幸いにも人造義元は固まっておらず別々の場所にいたので各個撃破が可能だった。

 ただ彼らの周囲には今魔川兵が大勢いるので、地上に降りるのは避けて上空から空対地攻撃で仕留めることにする。

 

「魔力使い放題はそろそろおひらきみたいですので、気前よく大盤振る舞いでいきますよ! 光子ミサイル、斉射100連!」

「じゃあ私も。これとこれとこれとこれとこれとこれとこれ、全部!!」

「みんなノッてるねえ、仕方ないから私もやるかあ。そ~れ」

 

 リリスは土方と永倉と斎藤を空輸する仕事があるのでお休みしているが、沖田と蛍とメタトロンの3人だけでも火力は明らかに過剰だった。特にメタトロンの水流や虹型光線は敵の動きを阻害したり視界を塞いだりする効果もあって、人造義元はせっかくの弓術を満足に使えない。

 

「…………しかし何だな、うーん」

 

 その圧倒的優勢の中で、永倉はなぜか妙に浮かない顔をしていた。

 土方が気づいて理由を訊ねる。

 

「永倉、何か不審なことでもあるのか?」

「いや、そうじゃねえ。敵とはいえ、ああして飛び道具で一方的に叩かれてるのを見てると、鳥羽伏見で薩長の鉄砲に手も足も出なかったのを思い出してな。

 今川も鉄砲隊をつくったらしいし」

「…………」

 

 土方にとっても鳥羽伏見の戦いはあまり愉快でない記憶だ。

 敵方が鉄砲隊をつくったと聞いては尚更である。

 

「……そうだな。正史の武田も鉄砲を持ってはいたが、大した数じゃなかった。

 今川の鉄砲隊の数によっちゃあ、また撃たれる側になるかも知れん……が、あの3人がいるなら大丈夫じゃねえか?」

 

 とはいえこちらの飛び道具部隊も強力だから恐れることはないと考えたが、ここでも現実は渋かった。

 

「いや、さっきちょうど沖田が言ったが魔力使い放題はここでの(いくさ)が終わるまででな。武田軍に戻ったら普段通りだから、あんな派手なバラ撒きはできなくなるんだ」

「……? どういうわけだ?」

「さっきカルデアってとこのマスターと契約したんだが、こいつがとにかく(すげ)え奴でな。今は普段よりずっと強くなってる上に魔力供給が本当に無制限なんだよ。

 でもワケあって、ずっとそれを続けることはできねえんだ」

「カルデアのマスターだと?

 確かにただの魔術師じゃなかったが、そこまで凄かったか? まあ会えば分かるか」

 

 実は土方は光己と会ったことがあり竜モードも見ているのだが、それは体長25メートルのまがいものの幼生だった頃のことである。なので永倉が言うほどの者だとは思えなかったが、戦の最中なので長話は自重した。

 そして人造義元が力尽きて退去し、残る2人も同様に退去したら新選組のここでの仕事は終わりである。

 

「おっと、その前に晴信の大将に報告しとかんとな」

 

 永倉が通話キーを押すと、数秒ほどの呼び出し音の後晴信の声が聞こえた。

 

「晴信だ。永倉か?」

「ああ、今大丈夫か?」

「問題ない。報告してくれ」

 

 おそろしく無駄話の少ない前置きの後、永倉は無駄なく結論を報告した。

 

「今の所すべて順調だ。五稜郭は停止させたし、土方も無事救出した。

 マスターと雑賀の嬢ちゃんと天使と悪魔の嬢ちゃんは、マスターが五稜郭を接収したいからしばらく残るそうだが、儂らはすぐそちらに帰してくれるそうだ」

「五稜郭を停止させただと? それは確かか」

 

 晴信にとって最も喜ばしい話のはずだが、それだけに確報であることを望むようだ。

 

「ああ、間違いねえ。床の感覚が動いてた時と違うし、空飛べる奴にも確かめてもらったからな」

「そうか、それなら確実だな。ご苦労だった」

 

 そしてそれを確信できて、ふうーーっと長い安堵の息をついた。

 これでもまだ必勝とはいかないが、戦がだいぶしやすくなる。

 

「で、すぐ帰すというのは行く時乗った車でか? 運転ができるのは雑賀だけだと思ったが」

「いや、方法はよく分からんが一瞬で着くらしい。

 それでどこに行けばいい? 大将の車の中ってわけにもいかんと思うが」

「んんっ!? そ、そうだな」

 

 永倉にとっては光己より晴信の方が付き合いが長いが、如意宝珠という単語を出さない程度の配慮はしてくれているようだ。

 晴信の方は毎度のようにかまされる想像外に目を白黒させてしまったが、光己の提案自体はありがたいものなのですぐ頭を落ち着けて真面目に考え始めた。

 

「……じゃあ須玉ICに送ってもらってくれ。そこから中央道を北上すれば、武田軍の最後尾に着くはずだ。俺の車もその近辺にいる。

 しかしカルデアのマスターと他3人は五稜郭を接収するため遅れるか……まあ仕方ないか」

 

 現在武田軍は戦況自体は昼間よりさらに優勢、というのも今魔川兵は夜戦用の装備は松明くらいしか持っていないのに対して、ちびノブは車のライトをハイビームにすれば敵兵を視認しつつその眩しさで彼らの目をそらさせるという一石二鳥の装備を持っているからだ。

 しかし謙信が危惧した通り敵兵の遺体を道路の外に運び出すのはかなりの作業量で、進軍ペースは遅めである。もっともこれは五稜郭を停止させたことで問題ではなくなったが。

 なのでまあ、光己たちもすぐ来てくれる方がありがたいのは当然だが、彼らにも彼らの事情があるのだから手柄を立てた者に強くは言うまいという考えなのだった。

 何しろこの時代は戦で勝ったら近辺で略奪狼藉するのが普通であり、こちらが劣勢で一刻も早い救援が必要だというならともかく、そうではないのに戦利品を放棄しろと言うなら別の対価を求められかねないので。

 それにしても五稜郭にある財貨を奪うとかではなく、五稜郭自体を接収するとはえらいことを考えるものだ。あんなデカブツが入るとは、あの虹色の波紋の向こうはどうなっているのだろうか。

 

「……まあ、俺には関係ないことか。

 報告はこれだけか?」

「ああ、今回はこれで終わりだ。

 マスターに報告したらすぐ出向く」

「分かった」

 

 報告が終わると、永倉は残留組3人の顔をそれぞれ流し見てからリリスに通信機を差し出し……かけて、やはりやめにした。

 

「今はまだ持ってた方がいいか。こちらでも使う用事ができるかも知れんからな」

「そうだね、アテシも1個預かってるし」

 

 ―――ということで、新選組の用事は本当に終わりである。

 

「それじゃしばしのお別れですね。また後で会いましょう!」

 

 そう言って飛び立った沖田は右手で土方の襟を、左手で永倉の襟を掴み、右足に斎藤をしがみつかせるというかなりヘビーな体勢だったが、今はアルビオンパワーが乗っているので平気な顔をしていた。

 須玉ICに着く、つまり光己のそばを離れたらパワーは切れるが、4人とも一流の剣士だから地面に落ちても受け身くらいは取れるだろうから問題はあるまい……。

 なお土方が光己に会った時に「し、しばらく会わんうちに大きくなったな」などと親戚の子供と久しぶりに会った時のような驚き方をしたりしたが、この辺りも特に問題ではなく、4人は如意宝珠の力で武田軍のもとに帰ったのだった。

 

 

 

「残敵掃討……窮鼠猫を噛むという言葉もあるから、気を抜かずにいこう」

 

 蛍は生前に自分が属していた組織が滅びた経験があるからか、もはや強敵はいないと分かっていても油断はしなかった。

 

「おー、蛍は真面目だねえ」

「えー、おつらいー」

 

 その注意にリリスはいいとしてメタトロンは通常運転だったが、それこそ通常運転だから仕方なかった……。

 

「……ところで今魔川兵が全滅したかどうかってどうやって確かめるの?」

「あれ、聞いてなかった? マスターは竜モードか獣モードなら魔力感知スキルをまた使えるようになったんだって。

 アテシってばほんと貢献度高いよねー」

「そんなこと言ってたかな? まあいいか」

 

 なおこの魔力感知スキルはファヴニールが持っていたものと同じだが、ファヴニール経由ではなく魔王の翼の権能である。それでリリスも自慢げなことを言ったのだ。

 他にも熟練度(スキルレベル)さえ上がれば、いわゆる闇系や呪術系の魔術でできそうなことはたいていやれるようになり、天使長の翼は逆に光系や僧侶系を会得していく。

 ―――そういうわけで残敵確認の問題は解決したが、光己は念話の類は使えないし、竜モードだと体格の関係で通信機も使えないので、時々聞きに行かなければならないのがちょっと手間だった。

 

「いやまあ、こいつら殺しても殺しても減ってる感じがしないことの方がよほど手間なんだけどさ。ほんと何人いるんだか」

「1万や2万じゃないのは確か。下手したら朝までかかるかも」

「だるすぎー」

 

 それで結局本丸の中全部と地上全域で掃討活動するハメになり、本当に朝までかかって(精神的に)とても疲れたが、副次的な成果はあった。斎藤たちとの話に出た、金蔵や資材倉庫や工場を発見することができたのだ。

 その他蛍たちにはよく分からない技術が使われていそうな部屋もあり、カルデア技術開発部や魔術系のサーヴァントが見たら小躍りして喜びそうである。

 

「金蔵にあったお金だけでもすごい大金だった。これは私たちへの追加報酬も期待できる。

 この特異点じゃもう使う暇なさそうだけど」

「しかもここのお金は他の特異点じゃ使えないという罠」

「がーん」

 

 現実は本当にお渋かった……。

 

「まあマスターはいろんなお宝持ってるから、お金が入り用な時はそっちで何とかしてくれるっしょ。……って、噂をしたらやってきた」

 

 どうやら今魔川兵はきっちり全滅したらしく、雲の上から巨大なドラゴンがすいーっと流れるような自然な動きで降りて来る。あの巨体で紙飛行機めいた軽い動きをしているのがいっそ不自然に見えるくらいだ。

 

「3人ともお疲れさま。あとは俺がやるから休んでて」

「はーい」

 

 リリスたちが彼の作業の邪魔にならないよう脇に下がると、光己は五稜郭の天面をざっと一瞥(いちべつ)してから如意宝珠(大)を取り出した。そして何事か念じると、そこにあった今魔川兵の遺体が一斉に消えてなくなる。

 

「……!? 何やったの?」

「ああ、ここじゃなくて下の山に埋葬……現代風にいうと樹木葬してもらったんだよ。

 俺的には今魔川兵は倒すしかない敵だけど、改造兵にされて戦わされた被害者でもあるからそのくらいはね。

 ここに置いたまま『蔵』に入れたくないっていう事情もあるけどさ」

「あー、なるほどね」

 

 マスターってそういう優しさあるよねー、とリリスは思ったが口にはしなかった。

 

「あとはまあ、手を合わせて冥福を祈るくらいはしとこうか」

 

 光己がそう言って両手を合わせ頭を下げたので、同じ文化圏の蛍はもちろんリリスとメタトロンも同じように手を合わせた。

 それが済んだら、本題の五稜郭奪取である。

 

「まずは手で持って所有権を奪う……よし成功。

 次は建物が壊れてるとこ直して……っと、こういうデカブツには自爆装置が仕込まれてるってのが定番だな。撤去してもらおう……って、これはなかったか。よかった」

 

 これで事前の準備は終わったので光己が波紋を出して五稜郭を収納しようとすると、なぜかリリスが待ったをかけてきた。

 

「あ、マスターストップ。それしまう前に写真撮っといた方がいいんじゃない?

 で、その後はあそこに見える富士山をバックにアテシとツーショットの写真も撮ろう」

「おお、なるほど」

 

 なるほど五稜郭は大き過ぎてカルデア本部では出して見せられないから、写真がある方が説明しやすい。いい提案だった。

 ただ竜モードでは人間用のカメラなんて小さくて使えないので、リリスに代わりに撮ってもらったが。

 それが済んだら五稜郭を「蔵」に入れて、光己が獣モード……だと翼が邪魔で富士山が映らないので人間モードになって、蛍に藕糸歩雲履(ぐうしほうんり)(と鎖子黄金甲(さしおうごんこう))を返してもらって飛べるようにしてからリリス希望のツーショット写真である。

 なお蛍はメタトロンが抱えているので問題はない。

 

「しかし富士山をバックにとは、リリスはなかなか日本情緒に詳しいな」

「まあねー。あ、もうちょっとくっついて」

 

 そこでリリスがなぜか不自然なほど光己に身体を寄せてきたが、思春期少年的には喜ばしいことなのでスルーした。

 そして写真を撮り終わったら、光己たちも武田軍に帰還である。

 

「それじゃえーと、どうやって帰ろうか。蛍さん運転大丈夫? 疲れてない?」

「それは大丈夫。でもその前に、武田晴信に連絡して相談した方がいい」

「おー、そうだったな。忘れるとこだった」

 

 さっそく光己が晴信に連絡を取ってみると、武田軍は時間制限がなくなった上に新選組4人が来たので戦況的にはさらに有利になったくらいで問題はないが、謙信が魔力供給が足りなくてこのままだと近いうちに戦えなくなるからなるべく早く戻ってほしいとのことだった。

 

「ああ、そういう問題がありましたか。それじゃそのように」

 

 そんなわけで、光己たちはある意味予定通りに車を置き捨てて空中飛行で帰ることになったのだった。

 

 

 




 本当に五稜郭を没収してしまいました。
 本文で書いたように使い道はあるのですが、カルデア本部では出せないという問題もあります。
 ではまた次回に。


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