FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第291話 魔甲斐大戦カワナカジマ3

 所変わって謙信が率いている武田別動隊では、彼女の指揮の巧みさと敵兵を貫通する連射型ビームの殺傷力の高さにより始終優勢を保っていた。

 さらにはルーラースキルで敵将2人の居場所=敵司令部の場所が分かるので、刑部姫に折り紙製爆撃機で攻撃してもらってその機能を少しずつ削いでいる。その成果は時が経つほど顕著になり、今川軍の長蛇隊は謙信隊の機動戦にだんだんついて来られなくなっていた。

 

「この調子でいけば勝てますね!

 しかし鉄砲隊やら魔獣やら身体を金属にした兵士やらがちっとも出てきませんが、こちらには配属されていないのでしょうか?」

 

 東海道覇王や北海道覇王の軍にも居なかったし、そういう特殊な兵科は本隊が一括で運用しているのかも知れない。特に鉄砲は数を揃えてこそ有効な兵器だから、むやみに分散させないのは賢明な判断である。

 

「でもそれだと別動隊(こちら)は楽になりますが、その分本隊がきつくなりますね。

 早めに決着をつけて合流するなり何なりしませんと」

 

 ならばそろそろ、今まで秘匿していた大筒の出番だろうか。

 これで武田側に軍神、正確には軍神の力を引き継いだ者がいることが今川側にバレてしまうが、氏真たちの位置は捕捉しているから逃走されても追跡できる。問題はない。

 

「では大筒、いや毘天の宝塔のご開帳といきましょう!

 遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ。これが毘沙門天の真の力です!」

 

 謙信の左右に彼女の背丈の3倍以上も長い金色の槍のような形状のものが出現し、真後ろにも赤い輪が姿を見せた。得物も槍は引っ込めて、代わりに塩留めの太刀と都牟刈村正の二刀流というまさに真の力、フル装備である。

 今川軍には軍神との戦いに参加したことがある者もおり、あの恐ろしい武器がまた敵の得物として現れたことに恐怖の叫びを上げた。

 

「な、ちょ、あれってもしかして軍神の大筒じゃねえか!?

 軍神は連中にやられたって聞いたのに、何で()()が持ってるんだ!?」

「それはもちろん、もともと私の物だったからですよ。

 でもまずは試射ですね。魔力充填5%……10%。発射!」

 

 謙信はその今魔川兵の声が聞こえたのか律義に回答しつつ、何一つためらわずにその超破壊兵器を使用した。

 標的はもちろん、今も位置を捕捉している西海道覇王と南海道覇王の2人である。そちらに向けられた宝塔の先端から青白い火線が放たれ、着弾すると大きな爆炎が広がった。

 1500人くらいは吹っ飛ばしただろうか。充填率10%でこの威力なら、100%を連射すれば本当に五稜郭を落とすことも可能だったかも知れない。全部壊さなくても、浮遊機構さえ壊せばいいのだから。

 

「む、兵士を盾にして耐えましたか。無傷では済まないでしょうが。

 しかしこれは射程も威力も素晴らしいですね。誘導はできませんから、遠くの目標に正確に当てるのは難しいのが玉に瑕です」

 

 なので氏真たち3人は今は攻撃できないが、人造義元2人は余裕で狙える。しかもマスターからの魔力供給が潤沢なので、ビームを絶やさずに主砲に充填することができた。

 

「ではもう1発、今度はもう少し強めに!

 ……充填15%、発射!」

 

 文字通り先ほどより1.5倍のエネルギー量を持った砲撃が人造義元2人を襲う。2人は今回も兵士の後ろに回りつつ地面に伏せたので直撃だけは免れたものの、爆風と熱波は避けられず吹き飛ばされ火傷も負ってしまった。

 しかも司令部の人員がまた大幅に減らされ、指揮機能がかなり落ちている。

 

「うぬぬ、あの距離からこれほどの攻撃を2度続けて撃ってくるとは何者だ!?」

「先ほどの赤い光球といい、カルデアと武田はずいぶん隠し玉を用意していたようだな……」

 

 2人の位置からは謙信がいる場所は分かっても顔までは見えないようだ。

 そこに前線から伝令が走ってきて、驚くべき(しら)せをもたらす。

 

「覇王様がた! 敵の()()()()は軍神が持っていた大筒を奪っていた模様!

 今撃たれた火線はそれによるものであります!」

「何だと!?」

 

 言われてみれば、「長尾景虎」が「軍神」の装備を奪って使うのは十分考えられることだ。

 しかし景虎には軍神ほどの魔力はないはずなのにこれほどの威力とは……それとも大筒の方が特別製なのだろうか。

 

「いや、考える前に本隊にも報せねば。

 その方、本隊の総司令部に行って今の話を伝えよ。

 ……1人では途中で横死(おうし)する恐れがあるな。その方たち、この者の供をせよ」

 

 西海道覇王がすぐさまその伝令と近習の兵士数人にこの件を氏真たちに報告するよう命じたのは、彼の指揮官としての真っ当な見識を示すものといえよう。

 伝令たちが去っていくのを見届けると、義元2人は改めて作戦会議を始めた。

 

「景虎が余たちを正確に狙い撃てるのなら、逃げ隠れするのは無意味か。

 それとも奴の魔力が尽きるのを待つか? このくらいの威力なら、いくらかは耐えられよう」

「……ふむ。奴がこの地のはぐれであろうとカルデアのマスターが連れて来た者であろうと、あんな砲撃を短時間に何発も撃てるほどの魔力量はあるまいからな。

 ここの龍穴の魔力を引き出せていれば別だが、そのような気配は見られぬ」

「では今少し様子を見るとしようか」

「うむ」

 

 この判断もいたって常識的なものだったが、それこそカルデアのマスターの正体を知らないがゆえの不幸であった。しかも東海道覇王や北海道覇王は早い段階で斃れていたので伝令を送れておらず、ここには「謙信無双」の話さえ届いていないのである。

 何発も撃てないはずの火線が次から次に、しかもだんだん威力を上げながら飛んでくる。

 2人とも人間であればもう動けなくなっているほどの怪我と火傷を負い、息も絶え絶えの有り様だった。

 

「ぐうっ、こ、こんなバカな……!?」

「分からぬが、かくなる上は突撃して刺し違えるしかなかろうな」

 

 2人は中央道では撤退したが、このたびは特攻を選んだ。「義元」ではあっても本物ではない人造だからか、自分の命については無頓着なところがあるのかも知れない。

 

「うむ、しかしこのことを本隊に伝える者が残っておらぬとは……判断を誤ったか」

 

 もはや司令部は壊滅し、2人の周りに生存者は1人も残っていないのだ。伝令も物見も護衛も誰1人。

 いや遠くには無事な部隊がいるが、そこにたどり着けるとも思えない。

 

「口惜しくはあるが致し方なし……では征くか」

「うむ」

 

 護衛もいないので、2人はまさに2人だけで謙信がいる敵司令部に最後の力で突進を始めた。死ぬつもりではあるが、多少距離を開けて大筒1発で2人とも吹っ飛ばされたりしない程度の配慮はしている。

 謙信は当然それに気づいたが、なぜか大筒を向ける様子がない。

 

「いやあ、本当に手柄を譲ってもらえるとは嬉しいねえ。影武者どころかつくりものとはいえ、実力も迫力も十分な奴らだからな。

 任せとけ、今度はきっちり仕留めて見せるぜ」

 

 代わりに杉谷が種子島銃を向けていた。中央道の時は効き目はあっても斃すところまではいかなかったが、今回こそは狙撃手の本懐を果たす所存である。

 しかもその直前に刑部姫の折り紙戦車で脛を撃ってもらって、そちらに気をそらせた上でという入念さだ。

 

「ぬうっ!? 怪しげな小技を」

「よっしゃ今だ! そぉら喰らいな、『二つ玉にて撃ちて候(ふたつたまにてうちてそうろう)』!!」

 

 狙うは先日斃せなかった南海道覇王の眉間である。まだ治り切っておらず生々しい傷痕が残っているそこに当てれば、ただでさえケガだらけなのだから確実に討てるだろう。

 2個の弾丸が吸い込まれるようにその小さな傷跡に飛んでいき、見事な正確さで命中した。

 

「ぐうっ!? こ、これは先日の……おのれ」

 

 南海道覇王は自分が何をされたのかは悟ったが、それについて何か述べる前に力尽きて退去した。

 

 

 

 一方西海道覇王の前には果心居士が立ちはだかっていた。こちらは刑部姫の援護を受けるまでもなく、自分で大量の刃物を投げつける。

 その凶器の群れを義元が刀を振るって払いのけ、さらに両肩の独楽(コマ)から炎を飛ばして反撃までできたのは彼の健在ぶりを見せつけるものだったが、果心も名の知れた達人だけにぱっと横に跳んで(かわ)した。

 

「おのれ、脱走兵がまたしても余の道を阻むか」

「兵にモ将を選ぶ権利があル。アナタがそレを知らナいだけ。

 では此処にてお覚悟召されよ。『絡繰外法・獅子奮迅(からくりげほう・ししふんじん)』!!」

 

 これはまず自らの下半身を黒い大蜘蛛に変えた後、その蜘蛛から糸を吐き出すかのように赤いミサイルを何発も発射して包囲殲滅し、それでなお生き残った敵には蜘蛛の前脚の巨大な刃で左右から斬りつけて両断するというなかなかに殺意の高い宝具である。

 さらにミサイルには本当に蜘蛛の糸めいた丈夫で粘着質の糸がついており、対象に絡みつけて拘束する作用もあった。

 義元はミサイルには耐えたもののダメージは大きく、それに続く斬撃で胴を割られてついに斃れた……が、蜘蛛の糸に縛られつつも最後の力で刀を投げつけて果心の肩を貫通する重傷を与えたのは、正史の桶狭間の戦いで毛利新介の指を噛み切った故事に並ぶ壮烈な最期といえよう。

 

「…………御首級(みしるし)、頂戴」

 

 果心もそれに敬意を表したのか、小さく頭を下げて義元が退去するのを見送ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 合戦開始から4時間が過ぎた。武田軍は機動戦を選んだので体力の消耗が大きく、光己と契約しているサーヴァント以外の者は疲労の色が濃くなり始めていた。

 そのため軍全体としては徐々に速度を落としており、混戦にまではされていないが今川軍を引き離すことができない。つまり無差別広域攻撃技は使いづらいし、サーヴァントではない一般兵同士がぶつかり合う場面が増えれば犠牲も増える。戦況はだんだん劣勢になりつつあった。

 

「長尾景虎が軍神の大筒を撃ってきたと聞いた時はさすがに驚きましたが、この状況ではそうそう使えないでしょう。まさに文字通り、宝の持ち腐れというやつですね」

「うむ。南海道と西海道は討たれたが残兵はおおむね収容できたし、こちらに有利になってきたようだ。

 今こそ好機ぞ。ひたすら前進し攻め続けよ!」

「はっ!」

 

 今川側もそれに気づいて、兵士の犠牲や疲労をいとわずさらなる強攻に出る。

 いまだ数の上では桁違いに不利な武田軍にとって実に嫌な展開だったが、上杉謙信ほどの名将ともなれば打開の策が出てこないわけはない。

 

「ええ、長蛇の残兵を収容した手際は確かに見事でしたが、それは武田別動隊(わたしたち)をフリーにしたということでもありますからね。

 今からそれを後悔させてあげましょう」

 

 そう言いながら戦場をざっと見回して、水晶の城の周りに敵歩兵が群がっているのとその近くで敵鉄砲隊が謎生物に襲われて混乱しているのを見つけると、ただちにそこに急行した。

 

「あれはマスターの竜宮城と、空飛ぶ鮫とやらの軍勢ですね。ちょうどいいです!」

 

 空飛ぶ鮫は数的には今魔川鉄砲隊の100分の1しかいないので、戦況は有利でも倒し切るには時間がかかっていたのだが、謙信隊が参戦すれば統制を失った鉄砲隊など物の数ではない。あっという間に蹴散らして光己&リリスと合流した。

 

「おお、来てくれたか。敵が多くて手間取ってたんだ。ありがとう」

「どう致しまして! では晴信には申し訳ないのですが、しばらくこちらに加わっていただけますか?

 アレをやっていただければすぐ戦況をひっくり返せると思いますので!」

「あー、アレか。確かに」

「?」

 

 アレと言われてもリリスには何のことか分からなかったが、指揮車の上に乗り込み光己が白い翼から眩い光を放ち出すとすぐ理解できた。

 

「おおぅ、これはまた……クセになるからあまりやらないようにしてるのも当然だねえ」

 

 精神的にはとても高揚して戦意マシマシだし、身体的にも超強くなっているのがはっきり分かる。これほどのものだとは思わなかったが、リリスが()()()()()のは「まがいものかつ幼生のアルビオンの熾天使の翼」だった頃の効力であって、今は「本物かつ成竜のアルビオンの天使長の翼」なのだからむしろ当然の感想といえよう。

 まして大奥入りしている謙信の最高にハイ!っぷりとパワーアップぶりはもはや別人レベルであった。

 

「あははははははは!! ちょ、これ本当に何なんです!? マスターすごすぎじゃありません?

 こうなったら毘沙門天無双またやっちゃいますよ!? YEAHHHHHH!!」

 

 当然貫通ビームの威力と連射速度も倍増しており、彼女が予告したように戦況を単騎で盛り返していく。

 しかも光己が出している光は謙信とリリス2人に対してだけなので、彼の消耗も少ない。

 

「……とはいえ、2人だけ支援するのもえこひいきに思われるかな」

 

 幸いにも、増えた権能の中により多数を支援できるものがあった。別動隊の人数は当初より減っているので、何とか全員にかけられそうだ。

 

「―――光の天使よ 立ち上がりし勇者たちに祝福を 悪しき闇を阻む聖なる盾 邪悪を退ける正義の力を与え給えーー!!」

 

 すると別動隊の将兵全員に白い光が降り注ぎ、文字通り天使の加護を与えた。

 これはいわゆる「祝福(ブレス)」と呼ばれるもので、どんな効果を与えるかはある程度自由に設定できるが、このたびは詠唱の内容が示すように防御力と攻撃力を上げる作用だ。また固定値は正義という言葉もあるので、被術者の能力や術者への感情は抜きにして、誰が受けても同じ効果になるようにしてある。

 なお光の天使とはいうまでもなく「光を掲げる者(ルシフェル)」のことであり、「竜咆斬(ドラグ・ブレイズ)」を使った時と同じく自分の力を借りる文言を唱えることで出力を上げていた。

 ただその分、一時的な術とはいえ4千人にかけるには大量の魔力が必要だったが、今回はそのフォローもできている。魔力を持つ者多数の激しい戦いでこの戦場には多量の魔力がたゆたっており、魔王の翼でそれを吸収しているのだ。

 

「んん? 他者を強くする術のようだが……あまり大したことないな」

「何かすごく強くなった気がするノブ!? さすが御大将ノブー!!」

「……いや、非力な者ほど強い効果が出る術なのか? 確かにそれもアリか」

 

 正確には、効き目が固定値ということは相対的な強者ほど恩恵が小さく感じられ、弱者ほど大きく感じられるということで、土方にとっては小技でもちびノブたちにとっては大技だったというわけである。

 ともかくこれで軍全体の底上げもされたので、謙信隊はぐいっと加速して今川軍を攻撃しつつ背後に回った。そのおかげで晴信隊にかかる圧力も緩和されたので、こちらも逆襲に移る。

 ―――そしてついに、武田軍は今川軍を挟み撃ちする形でその総司令部に突入したのだった。

 

 

 




 今回の主人公の呪文の元ネタは「バスタード」の「祝福」ですが、祈る対象が違うので改変されております。
 原作奏章Ⅳでメタトロンが「私の祝福舐めんなよ」と言う場面がありますが、ルシフェルなら(少なくとも光属性では)もっといろいろできるはず。
 ではまた次回に。感想、評価お待ちしてます。


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