FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第295話 報告会8

 浮遊要塞とかいう謎ワードに興味を持った者は他にもいたが、説明は報告会の中でということになり一同は談話室に向かった。

 時刻はちょうど6時である。報告会の後で所内案内もするとだいぶ遅くなるので、それは明日にして今日は部屋割りだけしておくことになった。

 その後(如意宝珠で出した)お茶菓子を配りつつ皆が適当に座ったら報告会開始……したいところだったが、メタトロンが光己の脚の間に座った上に彼の胸板にもたれたあげく、お菓子を口に運んでもらうという極限のだらけっぷりを披露したので、さすがにドラコーが眉をしかめて難癖をつける。

 

「マスターよ。その娘は余と貴様とリリスを見張りに来たと思ったのだが本当にそうなのか?」

「そうですそうです! 新入りの分際で旦那様にもたれてあーんしてでお菓子を食べさせてもらうなんてうらやまけしからん過ぎます。今すぐわたくしに代わって下さい!」

「いや、今は真面目な話をしておるのだから色ボケするのは後にしてくれ」

 

 清姫が恋愛脳なのはいつものこととして、ドラコー視点では光己が自分に続いてリリスまで招き寄せるという危険人物コレクターぶりを発揮しては「神」も放置できずまずは見張りを派遣した―――というのは大変納得できる流れなのだが、その見張りがこのていたらくでは何の役にも立つまい。これは一体どうしたことか?

 この見解は先ほどのジャンヌと同じでいたって順当なものだったが、光己は違う考えも持っていた。

 

「うん、それはそう。

 でもいきなり強面の人送り込んだらカドが立つし、本当に内ゲバ起きる可能性もあるだろ? まして俺たちは重大な仕事してる最中だから、まずは波風立たせないよう武力と積極性を控えめにしてくれたんじゃないかっていう見方もあると思うんだ」

「ふむ……それは確かにそうか。メタトロンほどの大物なら、弱体化していても居るだけで効果はあるからな」

 

 ドラコーもそこは否定しなかった。

 

「いやメタトロンが来たのが神の差し金だっていう物的な証拠はないんだけど、状況としては出来過ぎた話なんだよな。

 大天使が依代に聖女を選ぶのは確かに順当なんだけど、数多いる聖人聖女の中でピンポイントにお姉ちゃんを選んだのは偶然とは思えん。ましてやドラコーが来た直後にリリスと一緒に来るというタイミングの良さじゃな」

「なるほど、依代が知人なら拒みにくくなるからな。

 逆に依代から選ぶならジャンヌだとミカエルの方が縁がある上に武力も知名度も上なのに、わざわざ別の者が来たとなるとルシフェルがいるのを知っていて意図的に避けたとしか考えられん」

「うん、それもある。

 さらに言うなら、俺とドラコーとリリスがそろってるとキリスト教系の英霊に不信や反感を抱かれるかも知れないけど、メタトロンがいればその辺だいぶ軽減されそうだし」

「なるほど、確かによく出来た話だな……」

 

 光己の考察にドラコーは深く頷いた。

 仮にメタトロンが来たのが本当に神の差し金だったとしても、とりあえずこちらに悪意はなさそうで一安心でもある。

 

「しかしこやつが来たのが偶然ではなく本当に『神』の差し金だったなら、貴様の野望も安易には実行できぬな」

 

 「貴様の野望」とは、光己が新宇宙の神になるというあの件である。何しろルシフェルが天から墜とされた理由そのものなのだから、現宇宙の神に知られたら見逃してもらえる保証はない。

 

「そう、それなんだよな。

 地球と人理を救うためとはいえ、どこまで斟酌(しんしゃく)してくれることやら。

 それこそメタトロンなら多少は知ってると思うんだけど、この様子じゃ聞くのは無理そうだし」

 

 他にもメタトロンには聞きたいことはいろいろあるのだ。

 筆頭は人類悪案件についてである。「万命帰神」なんてネーミング自体がもうアレだし。

 もしこの「神」という言葉が新宇宙の神を指すものなら、光己がそれになることはすでに自分の中で予定済みという恐ろしい事態である。そうではなく現宇宙の神を指すものなら、このスキルはかつてルシフェルが人類を神や世界や隣人から離れさせ個々に独立した存在にした行為の逆になるわけで、皮肉というか劇的というか。

 それでもし人類が現宇宙の神に帰ったらどうなるかというと、聖書には「神が人と共に住み、人の目から涙を全て拭って下さる。死もなく、悲しみも、叫びも、痛みもない」といった風に書いてある。天草の理想はこれであろう。

 そういえば天草とは知恵の樹の実についての話をしたが、あの事件はもしかしたら神の仕込みあるいは黙認の上のことだったのではないかとも思う。だってアダムとイブが無垢なままずっと2人きりでいたら、変化も進歩もないから異聞帯化は必至なので。

 ……といったことも怠惰を持ってないメタトロンなら知っていると思うのだが、難しいものだった。

 

「うまくいかないもんだねー」

「何故貴様が言う」

 

 完全に他人事口調のメタトロンにドラコーが軽くツッコミを入れたが、効き目はまったくなかった……。

 そして話が一区切りついたところで、オルガマリーがぽんと軽く手を叩く。

 

「じゃ、そろそろ報告始めてくれるかしら?」

「あ、はい。分かりました。

 ……えーと。今回の特異点は日本の戦国時代にところどころ現代の要素が混じった感じの所だったんですが、そのせいか日本の戦国時代か現代の要素がある、あとは新選組のサーヴァントしかいなかったんですよね。

 さっきメタトロンが『特異点に入れる適性があるのはこの姿だけだった』って言ってましたけど、そういう制限があったのかも知れません」

「ふむ、そういう特異点もあるのか……ならやはり今後もサーヴァントを増やす必要はありそうだね」

 

 光己がまず前置きを述べると、ダ・ヴィンチがそんな感想を口にした。

 人数が多ければ、その分入場条件をクリアできる者も増えるのだから当然ではある。増やすことによる負担や問題もあるが、それは致し方ない。

 

「はい、その辺はよろしくお願いします。

 ―――それであのあと部屋に帰って昼寝して、ふと気づいたら現代日本の山の中の高速道路のSA(サービスエリア)のような場所にいたんですよね。

 今までの経験ですぐレムレムだと気づけたのはいいんですが、1人きりだったのでちょっとあせりました」

 

 これまでの事例では誰かが一緒にいたのでかなり心細く思ったのだが、幸い本当に1人きりではなかった。

 光己の視線を受けた謙信が、迎え入れ側のエリアから加入側のエリアに移動する。

 

「はい、皆様が勘違いしないよう今までこちらにいましたが、実は私も現地に行っていたのです!

 マスターご自身が予想してなかったことですから事前に誘われたとかではないのですが、私も気がついたらそのSAの中にいまして。そこで合流したというわけですね。

 ……そうそう。これまでは長尾景虎と名乗っていましたが、現地で上杉謙信と改名しましたのでこれからはそう呼んで下さい」

「え、そうだったんですか」

「そういえば服が違いますし、魔力もかなり増えてますね」

 

 謙信の発言に対する反応はおおむねこんな感じだったが、清姫だけはやはり恋愛脳だった。

 

「……つまり上杉さんは特異点で旦那様と2人旅をなさったということですか!?」

「はい! といっても現地での初日だけですが」

「そうですか……1日だけとはいえなんと羨ましい。

 それでその、下世話な話ではありますが、夜はどこで寝泊まりされたのですか?」

「SAの中に旅籠(はたご)がありましたので、そこに。

 幸いマスターがお持ちの砂金を売店で換金できましたので、お金には困らずに済みました」

「旅籠……それはつまり、上杉さんは旦那様と『お楽しみでしたね』をなさったと!?」

 

 謙信の返事に清姫のテンションは昂る一方である。

 

「プライバシーがありますので詳細は伏せますが、それはもう素敵な一夜でしたね!

 なぜか私の義が限界突破してしまったくらいには」

「な、何ですとぉぉぉ!?」

 

 そして次の自慢げな煽るような回答で、清姫は理性が蒸発して光己に飛びかかった。

 

「だ、旦那様! わたくしとも、わたくしともぜひ!!

 わたくしとも旅籠で素敵な一夜をぉぉぉ!!」

「ちょ!? 清姫、みんなの前なんだから落ち着いて。機会があったらするから」

「よろしい、ならば今からわたくしの部屋で!」

「機会があったらって言ったでしょ!?」

 

「…………!?!?」

 

 唐突な乱痴気騒ぎに新入りのテスラは目が点であった。

 ここは素直に人に聞こうと、隣のダ・ヴィンチに事情を訊ねる。

 

「あれは一体どういうことなんだ!?」

「ああ、あれかい? ここじゃいつものことだよ」

 

 ダ・ヴィンチの方は見慣れた光景なので気楽な感じで答えた。

 

「彼はなかなかモテる男でね。彼の方もカワイイ女の子が好きな方だから、今は二股や三股どころじゃなくて10股くらいなのかな?

 彼の出身国では合法らしいよ」

 

 日本では重婚は禁止されているが、婚姻届を出さない単なる自由恋愛であるなら、複数と同時に交際すること自体は違法ではないのだ。社会の目や周囲からの扱いは別として。

 なおそれとは別にカルデアには独自の規則があるのだが、光己に対しては一般人を拉致してきて人理修復という大仕事をやらせているのに、金銭や地位や名誉といった報酬は出せない、あるいは当人にとって価値がない上に仕事が終わった後も故郷に帰してやれないという劣悪待遇なので、風紀を乱さない程度の「自由恋愛」くらいは大目に見ようというスタンスなのだった。

 

「それに英霊の恋路を邪魔したりしたら馬に蹴られるじゃ済まないからね!

 いやあ怖い怖い」

「なるほど、それなら仕方ないな……」

 

 確かにそれは怖い。合法と言われれば是非はないし、テスラは不用意に他人の恋愛事情に首を突っ込まないことにした。

 ……その間にドラコーが清姫を光己から引っぺがして元の席に連れ戻し、報告会が再開される。

 

「それじゃ続き話しますね。

 2人でSAを見て回ったところそこは信濃国、現在の長野県であることが判明したんですが、その時は大したことは分からなくて。

 その後さっき謙信が言いましたけど旅籠に泊まって、刑部姫さんとはそこで偶然出会ったんです」

「その時はただ知り合っただけですぐ別れたんだけど、翌朝蛍ッチのキッチンカーのそばで再会して奢ってもらえることになったんだよね」

 

 刑部姫の台詞は体面を保つためか微妙に経緯を省いていたが、大した問題ではあるまい。

 光己も特にツッコミは入れず、そのまま話を続けた。

 

「何せ立て看板に『SAI☆KA』なんて書いてありましたからね。

 これは何か知ってると思ってアプローチしたんです」

 

 実際蛍はいろいろ知っていたからこれは正解といえよう。

 その後今魔川兵の人狩り部隊がSAに入ってきたり、そこに新選組の永倉新八が現れて彼らにケンカを売ったり、さらには今魔川側のサーヴァントまで出現してこちらを襲ってきたのはまったくの想像外だったが。

 

「現地2日目の朝に特異点ボスの正体が判明して、しかもその配下と遭遇するなんてかなり進行速いわね。

 でもその前に現地サーヴァントとも会えていて良かった」

 

 オルガマリー自身がかつて行った戦国時代の特異点とはずいぶん様相が違う。時代と場所が同じでも展開は同じにならないようだ。

 

「あー、そうですねえ。あの時は毎回こちらが準備整えてから攻め込んでましたけど、今回は敵、というか状況がどんどんやってきて1週間足らずで終わりましたから」

「あの広さで? 本当に速かったのね」

 

 特異点の面積が広いほど修正に日数がかかる印象があったが、必ずしもそうだと言い切れないようである。

 まあそれはそれとしてそろそろ本題に戻りましょうか、とオルガマリーが思った時なぜか段蔵が手を挙げた。

 

「あら、何か気になることでもあった?」

「はい。戦国時代の特異点で他の同行者もいたのに行きそこねたのは大変申し訳なく思っておりますが、それとは別に今の話に出た今魔川側のサーヴァントのことが少々。

 銀髪の女性の方の名前は分かりませんでしたでしょうか?」

「ああ、知っててスルーしたんじゃないなら気にしなくていいよ。

 それで銀髪の女性か。実はこの人この時点では敵だけど後で味方になって、その時に果心居士って名乗ってたよ。有名人だな」

「なんと、果心居士様が!?」

 

 段蔵は光己の寛大さに感謝しつつ、それ以上に果心の名前に驚いた。

 何しろ彼女こそ自分を造った者なのだ。

 

「……そうでしたか。実は果心居士様はワタシを造って下さったお方なのです。

 後で味方になったのでしたら、ワタシが行っていればカルデアにお招きできたかも知れませぬのに残念です……」

 

 段蔵は己のふがいなさにがくりとうな垂れた。

 重用してくれるマスターがたった2人で戦地に駆り出されたのに手伝いに行けなかったばかりか、そのせいで敬愛する製造主と再会できる機会を逃してしまったとは。

 光己の方も驚いた。何と言って慰めていいものだろうか。

 

「……そうだったのか。知らなかったこととはいえ申し訳ない。

 もしまた彼女に会えたら誘うから」

「いえそんな! マスターに非はありませぬ。どうか頭を上げて下さい。

 すべてはお供できなかったワタシの失態ですから」

 

 とはいえコミュ力人並みの光己にそう都合よく相手の気持ちに寄り添うような台詞を思いつけるはずもなく、仕方ないので率直に頭を下げて謝った。

 もっとも段蔵の方は光己が悪いなんてまったく思っていなかったので、。謝られて逆に居心地悪くなってしまい彼の倍くらい平身低頭していたが……。

 

「……そっか、じゃあこれで手打ちってことでいいかな」

「はい! ではどうぞ続きをお話しになって下さいませ」

 

 なので謝り合って皆の時間を潰すのは程々にしておいて、話を戻すことにした。

 

「……ん。

 それで果心居士ともう1人、杉谷善住坊って人も俺が『恐怖の兜(エーギスヒャールム)』を出したら退却しまして。その時蛍さんもこちらの味方になってくれて、あとは残敵掃討だけになっていったんケリがついたんです」

「貴方ほんといろんな物持ってるのね……でもそれそんなに怖い物なの?」

「……私が1秒でも早く引っ込めてほしいと思った程度には怖い。永倉新八は平気を装ってたけど、あれは内心の動揺を隠すためのものだった」

「そ、そうなんだ」

 

 オルガマリーは光己の口調が軽いからか、「恐怖の兜」の効き目に疑問を抱いたようだが、傭兵集団の頭領という武闘派に体験談を語られては二の句は継げなかった。

 

「でもそんな凄い物持ってるなら何で今まで使わなかったの?」

「効き目は強いんですが、敵味方の区別がないので使える状況が限られてるんです」

「そ、そうなんだ」

 

 そして次の疑問も(もっと)もかつアレな理由で納得させられ、オルガマリーは芸がないことに先ほどと同じ言葉を返してしまったのだった。

 

 

 




 メタトロンの設定ってここのカルデアにいろいろ刺さるんですよねぇ。
 果心居士がいたのに段蔵が行けなかったのは本人的に痛恨の極みなのですが、果心を出した時点では味方にする予定ではなかったのです(^^;
 ではまた次回に。感想、評価お待ちしております。


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