FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第298話 報告会11

 光己は五稜郭のことを皆に説明したが、実際に攻略するのは今少し先である。

 幸い五稜郭はあまりにも大きいからか移動速度は遅く、透破(すっぱ)が情報をもたらすのを待つくらいの時間は十分あった。

 それによるとやはり五稜郭は川中島の方に向かっており、到着するのは2日(48時間という意味ではない)後だろうと思われた。しかも今川側は武田側が川中島に来て五稜郭を落とさせない手立てを取るのを防ぐため、総勢100万もの大軍を4人の人造義元に率いさせて信濃国北方から甲斐国に攻め込ませてきたのである。

 

「100万人? ちょっと多すぎない!?」

 

 桁違いの数字に驚いたオルガマリーが裏返った声を上げる。

 前回行った時は軍隊の規模はせいぜい1万か2万だったし、正史でもそうだった。これはさすがに誤報とか偽兵(ぎへい)の計(兵士の数を多く見せかけること)の類ではあるまいか。

 

「いや、それが本当にそれくらいいたんですよ。

 駿河遠江三河信濃の若い男性は全員徴兵されてたかも知れませんね」

「むちゃくちゃするわねえ……」

 

 人道的な問題はもちろん、まともに後先のことを考えた政策とは思えない。杉谷と果心が逃げ出したのも分かる。

 後先といえばあんな大きな岩塊が数十キロの高さから落ちるのはもはや小惑星衝突も同然なわけで、特異点は魔術的以前に物理的に崩壊するだろう。主謀者である今川側サーヴァントも近くにいたら衝撃波やら何やらで死ぬだろうし、破滅願望でもあったのだろうか?

 

「……それはそれとして、武田軍は何人くらいいたの?」

「人間の兵士と先ほど話したちびノブ合わせて2万人ぐらいでした」

「勝ち目なくない?」

「普通はそうですね」

 

 人類史に寡兵が大軍を破った例は多々あれど、50倍差を覆したケースは光己も知らない。

 まして2日以内に甲府から川中島に到達し、しかも今川軍が甲斐国に侵入して暴虐を働くのを防ぐため大将はもちろん兵士も全滅させねばならないという超絶難易度である。

 

「……どうしろと?

 もしかしてアルビオンブレスでケリつけたとか?」

 

 オルガマリーはもう真っ当な勝ち筋を思いつけず半ばヤケになっていたが、これを責めるのは酷というものだろう……。

 

「そうしたい気持ちはありましたが、あれも手加減ミスると小惑星衝突並みになりますので……。

 他の手段もありましたし」

「あったの? それはまたすごいわね」

 

 小惑星衝突に匹敵する衝撃を防げるとは、誰のどんな宝具なのだろう?

 オルガマリーはがぜん興味が湧いてきた。

 

「ええ、事前に謙信の大筒でできる限り削った上で、最後に晴信公の城の宝具で受け止めるという案でした」

「へえ……?」

 

 なので光己がまず概要を話し、その後で詳しい説明もしたが、それが終わった時にはオルガマリーはかなり懐疑的になっていた。

 

「理屈は分かったけど、さすがにあのサイズは無理があるんじゃない? 仮にできたとして、その後囲まれて袋叩きでしょ」

「はい、ですのでそれは最後の手段にして、そもそも五稜郭を川中島に来させないことにしたんです」

「そうね、それができるなら2日っていう締め切りもなくなるわけだし。

 ああ、それで五稜郭を手に入れることができたのね」

 

 しかし次の案を聞くと、オルガマリーの表情は一転して明るくなった。

 五稜郭がいくら空高くにいようと、光己が竜モードになれば味方サーヴァントを何人でも送り込むことができる。その間は地上組の戦力が減ってしまうが、どう考えても締め切りがなくなるメリットの方が大きい。

 その上浮遊要塞が手に入るのだから尚更だ。

 

「はい。ただし敵兵がいる間は奪えませんので全滅させる必要がありましたが……。

 あ、そうそう。沖田ちゃん、さっき沖田さんが後で大活躍するって言ったけど、この時の戦いで役に立ってくれたんだ」

 

 光己は五稜郭攻略戦の時に沖田がどんな活躍をしたか自分で見たわけではないが、後で話は聞いている。そうしたことを関係者に伝えるのもマスター、いや現地に行った者の務めであろう。

 

「そうか、それはよかった。

 私もがんばらないとな」

 

 それを聞いた沖田オルタが片割れ(?)がちゃんと役に立ったことを喜びつつ、自分もそれに負けまいと新たな決意を表明する。その姿は彼女の素直さと真面目さを如実に表していて大変微笑ましかったが、いつもながら仕草が見た目年齢より幼い感じがしてちょっと心配にもなってしまう。

 

「うん、期待してるよ」

 

 しかしそんなことを口にするのも何なので、光己はこの場は無難な相槌にとどめて話を先に進めた。

 

「それでまず土方さんを救出して、次に人造義元を全員倒したら、後は残敵掃討だけですので新選組の皆さんは如意宝珠(大)で晴信公の所に戻ってもらったという流れです」

「ああ、そういえば貴方そんな道具持ってたわね」

 

 使用に条件や制限があるとはいえ、恐ろしく便利なアイテムだ。

 しかも聖杯と違って、漠然とした願いでも依頼者の意を汲んで適切かつ無害な叶え方をしてくれる親切設計なのが大変好ましい。

 もっともカルデアで所蔵している聖杯はみんな単なる魔力リソースなのだけれど。

 

「……で、掃討が終わった後で今魔川兵の遺体は地上の山に埋葬しましたし、施設の破損も直しましたので、調査研究に支障はありませんからそちら関係の皆様はご安心下さい」

「ホント便利ね……」

 

 ただしダ・ヴィンチがさっき言った「カルデア本部の修繕」や、「根源に到達したい」「贅沢するためのお金が欲しい」といったものは「煩悩や依存心や怠け心を助長する」に引っかかって不可という厳しい面もあるそうだ。しかも「不可でもダメ元なんだから、何でも頼むだけ頼んでみればいいのでは?」というような悪質依頼者は出禁にして真っ当な依頼でも叶えなくするというモンスターカスタマー対策までされているというのだから東洋の神秘も侮れない。

 

「でも魔力感知スキルがなかったら今魔川兵を()()見つけるのは苦労しただろうからなあ。ちょうど必要な時に復帰したこのタイミングの良さはやはり『神』の助けか、それともガイアとアラヤの加護か? 後で感謝のお祈りでもしておくか」

「ええ、主に感謝するのは良いことですよ!」

「わたしは何もしてないけど、祈りじゃなくておやつなら歓迎よ」

 

 光己が自身の力や運に驕らない謙虚な姿勢を示すと、聖女(ジャンヌ)地球の触覚(アルクェイド)がそんなことを言ったが、沖田オルタは特に反応しなかった。「抑止の守護者」はそういう方面には関与していないようだ。

 

「うん、それじゃブリュンスタッドさんにもまた後で」

 

 光己は「後で感謝のお祈り」と言ったのだからアルクェイドにおやつを渡すのも後にしても理屈としてはおかしくないが、あえてそうした理由は語らなかった。

 アルクェイドは小さく首をかしげたが、わざわざ訊ねるほどのことでもないらしく何も言わなかったので議題は次に進んだ。

 

「……そんなわけで朝方に掃討が終わって、あとさっき話した後始末して写真も撮ってから、要塞を『蔵』に収納して作戦完了というわけです」

「意外と手間かかったのね……って、朝までかかったということは留守番部隊は結構大勢いたのかしら?」

「そうですね。人造義元が4人と今魔川の刀兵と僧兵が10万人、あと鉄砲隊が5千人くらいって話でした」

「ずいぶんいたのね!?

 いえ割合的には1割だけだけど、要塞が墜落したら多分衝撃で死ぬのに……そっか、貴方の眷族が空飛んでるの見たから、それが来るのを見越してたってわけか」

 

 オルガマリーは留守番部隊の人数を聞くと目を丸くして驚いたが、今川側がそうした理由をすぐ自分で推測できたあたり、現場組とのやり取りで軍略的な思考法も身についてきたのだろう。これにはロマニとエルメロイⅡ世もにっこりである。

 

「あ、でもさっきの話だと貴方は今川軍相手には眷族出せないのよね。サーヴァント……リリスとメタトロンと雑賀蛍の3人だけで10万5千人『全滅』させたってこと?

 それなら時間かかったのも分かるけど」

「そうですね、3人ともよく頑張ってくれたと思います」

「……どう致しまして。

 雑賀としては報酬と信頼に応えただけだけど」

 

 蛍は澄ました顔をしているが、「信頼」という一語をまた出したのは「自分はお金さえ貰えれば誰にでも味方する者ではない」というスタンスを改めて表明したものであり、彼女の光己への「信頼」を示すものでもある。1度語ったことだし皆の前だから詳細に話すのは憚られたが、彼の職場に来たのを機に今一度述べておこうと思ったのだ。

 

「……うん」

 

 光己は蛍が言いたいことはおおむね察せたが、よくあることに彼の語彙力ではうまい返事を思いつけなかったので短く頷くだけにとどめたが、多分間違った返事ではないだろう。

 

「……で、五稜郭を『蔵』に入れたらすぐ晴信公たちの所に戻ったんですけど、そしたら今川軍が二手に分かれたからこちらも別動隊をつくると言われまして」

「敵が分かれたなら各個撃破……はちょっと、いえかなり無理かしらね」

「そうですね。締め切りはなくなりましたけど、守るものはありますから」

 

 東側の軍が甲府に着く前に西側の軍を破った上で引き返して迎え撃つ、というのができればいいのだが、それは人数の差と戦場の狭さを考えると難しい。まして今川軍は無理に武田軍を破る必要はなく、守勢に徹して時間稼ぎに走ってもいいのだから。

 となれば甲斐の領主としては、多少不利になるのは承知の上で軍を分けざるを得ないのだった。状況によっては生前のアルトリアがしたような非情の決断を迫られることはあり得るが、今はまだそこまで追い詰められていないので。

 

「……なるほど。マスターもその晴信という大将も、難しい判断をしたのですね。お察しします」

 

 今回はしみじみした口調でそう言ったアルトリアは、光己より晴信の方に強く共感したようだ。国が貧しい上に強敵に攻められて苦労してきた彼の姿に自分の生前が重なったのだろう。

 もっとも晴信は出で立ちも言動もアルトリアとは似ても似つかぬ武闘派インテリヤクザなのだが、光己は彼女の心情を(おもんぱか)ってそれは口にしなかった。

 

「別動隊のメンツは俺と謙信と刑部姫さん、あと新選組から土方さんと沖田さん、それにちびノブが5千人だったかな。これで人造義元率いる今魔川兵15万人×2相手になるべく被害を出さずに全滅させるって、今考えてみるとすごい無茶振りだったよな」

「常識的に考えれば、ですがね! マスターと私が一緒にいれば話はまったく別ですとも!」

「うん、ホントにそうだったよね……」

 

 光己のまさに常識的な回想に謙信がふんすと胸を張って存在をアピールし、刑部姫がしんみりした顔でそれに同意する。

 刑部姫も日本の妖怪としては上澄みの部類だが、あの時の謙信の強さは埒外のものだったようだ。

 

「そんなに?」

 

 興味を抱いたオルガマリーが水を向けると、刑部姫はこっくり頷いた。

 

「といっても毘沙門天サマ自身の力だけじゃなくて、さっきマーちゃんが言ったお宝を4つフルセットで借りた上でのことだけどね」

 

 刑部姫が光己が例のお宝にあまり触れてほしくなさそうなのを承知の上でこんな前置きを入れたのは、戦闘に関することで隠し事はよろしくないと判断したのか、それとも清姫がいるから嘘判定が入るのを恐れたのか、あるいはこの両方かも知れない。

 

「え、4つフルセット……?」

 

 変わったお宝もあるものね、とオルガマリーが意外そうに目をぱちくりさせる。ゲーム好きなエルメロイⅡ世は(竜の爪や鱗を使った剣と鎧と盾と兜のセットということか? いやその程度ではマスターは「特にスペシャル」とまでは言うまい。だとするともしかして()()か? いやまさかな?)なんて推測をめぐらせていたが、実はその「まさか」が正解だったりする。

 

「うん。あの時の毘沙門天サマってばマジ毘沙門天。魔力をまとって大きなボールみたいになったと思ったら、物のたとえじゃなくて本当に退くことを『知らない』今魔川兵の群れに1人で突っ込んでばったばったとなぎ倒してね。大将の人造義元も軽く斃して余裕で戻って来ちゃったという」

「後で晴信公が『こちらはそんな三国志みたいな真似はできん』なんて言ってましたけど、そういえば謙信って関羽に似てるよな。一騎打ちも指揮も強くて義理堅くて武器が長物で名馬持ってて、あと神属性もあるし」

 

 刑部姫の述懐に光己がそんな感想を述べると、謙信がまたドヤ顔で割り込んだ。

 

「マスター、かの関聖帝君に似ていると評されるのは大変光栄ですが、1番大事なことが抜けてますよ。『主君とは身内的な鉄の絆で結ばれている』が最初に来るべきではないでしょうか!」

「おお、それは確かに。俺としたことがうかつだったな」

 

 光己が調子を合わせてぽんと手を打つと、それを見たメリュジーヌが反射的に尻を浮かせかけたが、すぐ力が抜けた様子で座り直した。メリュジーヌにとって「主君」と「身内=兄」は別の人物なので、今の話には乗れないのに気づいたのである。

 なので光己たちはそれに気づかず、話は先に進んだ。

 

「……その後2人めの人造義元斃したのも毘沙門天サマの単騎突撃だしね。そういえば武田の大将さんが『ぶっちゃけ戦力的にはおまえと謙信だけで十分のような気がする』って言ってたけど、さすが有名な大名だけあって判断が正確って感じ?」

「まあ、あれをセットで貸してもらったからにはそのくらいしないと逆に武門の恥になりますからね」

 

 実際この戦いでの謙信の武功はとても大きいのだが、当人はそれを誇る気はないようだ。

 なお晴信たちサイドでは人造義元2人は五稜郭が来ないのに気づいて川中島に先行してしまったので、そこでの最終決戦はカルデア&武田全軍1万6千人VS今川本軍&人造義元軍2隊合わせて推定35~40万人という形になったのだった。

 

 

 




 報告会書いてると、本編書いてる時には気づかなかったことに気づくこともありますね。今回の如意宝珠にカスハラ対策が必要な件とか。
 ではまた次回に。感想、評価お待ちしております。


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