FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第38話 開拓クエスト1

 さて。探索に向かうアルトリアたちと道具作成担当のヒルドたちを送り出したら、光己とマシュと清姫はテントに戻って家の設計図を描く仕事である。

 

「どのくらいの広さにするべきかな? 全員寝れるくらいってのはやっぱり広すぎかな」

「そうですわね。わたくしの知る限りでは、庶民の方の家の幅はせいぜい5メートルくらいでした。

 あまり大きいと作るのが難しそうですし、長い木材も入用になりますから、まずは小さめでよいのでは?」

「そうだな、そうしようか」

 

 なにぶん初チャレンジなのだし、ここは実物を見たことがある清姫の言う通りにするのが賢明だろう。まずは6人用を1軒建ててみて、その結果次第で次を考えればよい。

 

「じゃあさっそく図面描こうか」

 

 完成図だけでは不親切だから、最初の穴を掘った図と支柱や梁を建てた図、最後に茅葺きして完成した図、ぐらいに分ければ良いだろうか。

 

「といっても俺も本で見ただけだからなあ。細かい所は清姫頼むな」

「はい。ますたぁとの愛の巣ですから、心をこめて描かせていただきます!」

「……」

 

 この思考のぶっとび振りさえなければ良い娘なのだが。光己はとても残念に思った。

 3人で何度かの試行錯誤の末どうにか描き上げると、それを持って、外の空気を吸うのを兼ねていったんテントの外に出る。

 そこではヒルドとオルトリンデが依頼通り工具をつくっていた。

 

「あ、マスターの方は終わったの? じゃあこっちも一休みしようかな」

「うん、お疲れさま。どのくらいできた?」

「斧とスコップとナイフ、2つずつできたよ。鋸は難しそうだから後で」

「へえ、さわってみていい?」

「うん」

 

 斧とスコップは両手持ちサイズの大きめのもので、光己が持ちあげてみるとずっしりした重みが手にかかった。削った石を木の棒に埋め込んだだけの簡素なものだが、いかにも頑丈そうに見えるのは、強化の魔術がかかっているからか。

 

「おー、これなら使えそうだな。じゃあ午後は穴掘りか」

「へえー、なんかそれっぽくなってきたね」

 

 ヒルドは昨日言った通り、石器時代体験ツアーを楽しんでいるようだ。オルトリンデも顔にはあまり出さないが、少なくとも退屈ではなさそうに見える。

 しばらくすると探索組も戻って来た。先頭の段蔵が駆け寄ってきて挨拶してくる。

 

「マスター、ただいま戻りました」

「ああ、みんなお疲れさま。どうだった? ケガした人はいない?」

「はい。魔物が何体か現れましたが、強くはありませんでしたので皆大丈夫です。

 ただ、ここは人の手が入っていない原生林のようで、下草を刈って道をつくるのも大変でしたから、マスターが来るのは難しいかと存じまする」

「そっか、じゃあ足手まといになるのは嫌だから、拠点で働くことにするかな。

 でも、もし黒幕が出てくるようならそっちにいくから」

 

 これは、カルデア式ではサーヴァントはマスターからあまり遠く離れると、魔力供給が弱くなって戦闘力が落ちるからである。厳しい戦いであればあるほど、一般人らしく後ろに隠れてるわけにはいかないのだ。

 ただ、この制約はマスターの能力次第で緩和されるらしいので、竜の姿になれば別かも知れない。

 ちなみにジャングルにはマラリアなどの病気をうつす蚊がいるが、サーヴァントは病気にならないし、光己は礼装を着ていれば防ぐことができる。

 

「はい、ありがとうございます。ですがくれぐれもお気をつけて」

「ん、ありがと。でも強い敵は現れなかったってことは、ルーラーの感知範囲にもいなかったってこと?」

 

 するとルーラーアルトリア当人が前に出てきてみずから答えた。

 

「はい。ルーラーのサーヴァント感知能力は半径10キロメートルという広いものですが、それでも何も感じられませんでした。

 今回はまだここの近辺しか歩いていないので断言はできませんが、もしかしたら黒幕はサーヴァントではないのかも知れません」

「サーヴァントではない?」

 

 そんなことがあり得るのだろうか。冬木にもフランスにも聖杯を持ったサーヴァントがいたのだが。

 

「はい、微少な特異点なら聖杯がなくても発生しますから。

 サーヴァントではなくてサーヴァントと同格以上の存在としては、間違って地上に落ちてきた神霊あるいは幻想種か、あと可能性は低いですが異星からの来訪者(フォーリナー)、もしくは人類悪(ビースト)といったところですね」

 

 フォーリナーとはつまり侵略宇宙人で、ビーストとは人類の獣性が生み出した人類を滅ぼす災厄のことらしい。どちらも地上に完全に顕現した場合、並みのサーヴァントではとても打倒できない存在である。

 

「マジか……まあこんな小さな島に引きこもってるんだから、そうたいした奴じゃない……と思いたいけど」

 

 光己がさすがに恐くなって怖気を振るうと、今度はヒロインXXがどーんと前に出てきた。

 

「ご心配なく! もしフォーリナーやビーストが出てきたら、私が追い払ってみせますので!

 もし私がカウンターとして呼ばれたのだとしたら、きっとそのためなのでしょうし」

 

 見るからに自信満々に、手に持った槍をぶんぶん回して見せるXX。実に頼もしげである。

 

「まあマスターくんの言う通り、悪のフォーリナーやビーストが何もせず引きこもってるということはないでしょうから、ここの黒幕がガチの危険人物ということはないと思いますよ」

「そっか、それならいいんだけど……って、ブラダマンテその担いでるの何? 牛!?」

 

 誰も気にかけていないので光己もすぐ気づかなかったが、よく見れば彼女は成牛のような動物を肩に担いでいるではないか。

 

「いくらサーヴァントでも重いだろ!? 早く下ろして」

「いえ、そこまで大仰にしてもらうほどのことじゃないですよ。でもせっかくのお言葉ですから下ろしますね」

 

 そう答えたブラダマンテは本当に軽々と牛?を地面に下ろしたが、その時ズシーン!と重そうな音が響いたので、体重は500キロくらいあるかも知れない。

 

「意外と素早かったんですけど、アルトリア様とメイドオルタ様が執拗に追いかけて倒したんですよ! さすがはアーサー王様です」

 

 相変わらずアーサー王を尊敬しているようである。

 それはともかく、こんな立派な牛なら数百万円は……じゃなかったお肉も数百キロになるだろう。この人数でも1週間は……いや待て。

 

「そうなると、冷凍するなり干し肉にするなりしないと腐っちゃうな。それに食べられない部分捨てる場所も作らんといかんし。これは家建てるより、冷凍庫と物干し場とゴミ捨て場が先になるか。あとトイレも」

 

 石器時代体験ツアーも、ガチのリアルだといろいろやる事が多いようだ。サーヴァントの剛力とさすルーンがあるだけまだマシだったが、もしこれが一般人だけだったら詰んでいたところである。光己はちょっと冷たい汗を流した。

 

「ああ、そういえばマスターとマシュさんはトイレがいるんでしたね。

 それにマスターはお風呂が好きでしたし、作るもの本当にいっぱいありますね!」

 

 それでもブラダマンテは屈託なく笑っている。彼女も今の状況を楽しんでくれているようだ。いや、光己の内心を察して励ましてくれたのだろうか。

 

「それからヤシの実とかパパイヤとかバナナとか芋とか、あと食べられる野草が色々ありましたので集めてきましたよ!

 私たちでは何が食べられて何が食べられないのか分からないので、ダンゾウにはお世話になりました」

 

 そう言いながら、大きな袋いっぱいの食べ物をかざして見せたのはアルトリアだ。本当に楽しみそうな顔をしている。

 ジャングルというのは、必ずしも人間にとって「豊かな」自然ではないのだが、今回は人数が少ない上に知識と技術と腕力があったのが幸いであった。

 

「でももういい時間だから、先にお昼ご飯にしよう。午後は牛の解体と冷凍庫とか作るってことで」

「分かりました!」

 

 そんなわけで昼食になったが、その途中でちょっと不満げな顔をする者が現れた。

 

「バーベキューもいいが、毎回これでは飽きてくるな」

 

 メイドさんである。職業のわりに態度や発言に遠慮がなかった。

 しかし今回の主張は無理もないものだ。光己はリーダーらしく、できる限りおごそかな口調をつくって解決策を披露した。

 

「うーん、それは確かに……仕方ない、次のテクノロジー『陶器』の研究に着手するとしよう」

「陶器?」

「いや正確には『土器』なんだけどね。粘土と砂で鍋とか壺とか作るんだ。

 これができたら煮炊きができるようになるし、塩も作れる」

 

 その上食料の保存もしやすくなるし、良いことずくめだ。

 作り方はまず材料の粘土と砂をしっかり混ぜながらこねて、それで底板をつくったら、その縁に太い紐状にした粘土を重ねて形をつくる。

 出来上がったらしばらく陰干しして乾燥させ、最後に強火で焼き上げて完成だ。

 ただし、こねや乾燥が足りないと割れてしまうので要注意である。

 

「ホントは1ヶ月くらい干すらしいんだけど、そこまでしてられないからさすルーンでお願いできない?」

「うーん、難しいなあ。乾かすこと自体はできるけど、その後焼いた時に割れないって保証は無理だよ」

 

 さすルーンにも限界はあるようだ。まあやむを得ないことで、光己は失望しなかった。

 

「別に1回で成功させなくてもいいよ。昔の人だって何度も試行錯誤したんだろうし」

 

 そもそも彼自身本とネットでの知識だけで実際に作ったことがないのに、他人に高望みできるわけがないのだから。

 

「あ、失敗してもいいんだ。ならOKだよ」

 

 ヒルドたちもそういうことなら変に気負うこともない。軽い口調で頷いた。

 昼食後は予定通り開拓クエストである。

 まずは物干し場だが、これは何本か木を切ってきて四隅に支柱を立て、屋根と梁の骨組みをつる草で縛って固定する。屋根板は骨組みの上に草を編んで並べたもので、空を飛べる者がいたので作業は楽だった。

 床の一部は冷凍庫で、穴を掘って氷を敷き詰めて蓋をするようになっている。

 トイレとゴミ捨て場は臭いが届かないよう、ちょっと遠くに穴を掘り周りを木で囲った。風呂場は逆の方に、これも穴を掘って木で囲ってある。どれも簡易なつくりだが、まあやむを得ないだろう。

 

「つくりは簡単といっても、さすがサーヴァントは作業速いなあ」

「さて、これで当座の施設はできましたね。ではさっそく土器とやらを作りましょう!」

 

 アルトリアズは特に意欲的だったが、こうした動機があったようだ。

 一部は牛の解体に行ったが、残る9人は土器製作である。

 

「うぬぬ、何だか硬くなってきたな……けっこう腕力要る」

「ふふふ、見て下さいマスターこの造形美を! キャメロットの城壁を模してつくった大鍋です」

「……すごいけどちょっと不便そうだね」

 

 初挑戦だけに光己はちょっと苦戦していたが、サーヴァントたちは造形に凝る余裕すらあるようだ。

 もっとも光己とヒルドが予告したように、焼き締めている間に見事9個とも爆発四散してしまったのだが。

 

「ああ、私のキャメロットが粉々に……何と不吉な」

「……次は簡単なのから試そうね」

 

 アルトリアは「九」の字になってうなだれていたが、光己にも慰めの言葉はあまり思い浮かばなかった。

 まあそれはそれとして2回目に入ったのだが、乾燥と焼き締めをしている間は、ワルキューレズと清姫以外は手すきになる。

 

「先輩、この時間に家を建ててはいかがでしょうか。

 お疲れでしたら先輩は監督だけしていただければいいですし」

「そうだな、とりあえず穴だけでも掘っておこうか」

 

 マシュの合理的な提案に、光己はちょっと考えたあと首を縦に振った。

 とりあえずと言っても、直径5メートル深さ70センチの大穴ともなると、古代人たちには相当な作業量だっただろうが、百人力のサーヴァントたちは重機めいた掘削力でがしがしと穴を開けていく。

 

「…………すごいな。俺なんてにぎやかしにもなってない」

「いえいえ、先輩はいて下さることに意味があるのですから気にしないで下さい!」

「そうですね。マスターが一緒にやってくれてると、モチベーションが違いますから!」

 

 人間とサーヴァントを比べるのは無意味と知りつつも光己がちょっと肩を落とすと、そばにいたマシュとブラダマンテが間違いなく本気で言っていると分かる超まっすぐな表情と言葉で励ましてくれた。

 

「…………ん、ありがとな。これからも頼む」

 

 光己も本心からそう答えた。

 

 …………。

 

 ……。

 

 そして日が暮れる頃には、穴どころか骨組みまで作り終えていた。この分なら明日には完成するだろう。

 土器の方は何回かのチャレンジの末、調理に使うための大鍋が1つだけだが出来ている。

 

「それじゃ今日の開拓はこの辺にして、夕ご飯にしよう。約束通り、煮込み寄せ鍋だ」

 

 まあ作業の合間に浜辺で採った海藻を出汁にして、肉や芋や野草や貝を放り込んだだけなのだが。

 それでも1日慣れない労働をした後の、皆と団欒しながらの食事はとても美味しかったのだった。

 




 原作めいて家を建てたり食料を採集したりしてますが、ややリアル寄りになってます。
 そして黒幕とやらはいつ登場するのか(ぉ
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