FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第52話 お風呂イベント・暴君編

 まずは汗をかくという話だが、ここにはこの人数が運動できるだけの場所はない。必然的に発汗室(ラコニクム)に赴くことになる。

 ネロは先頭に立って室内に入ると、右にルーラーアルトリア、左にヒロインXX、そして椅子の前の床にタオルを敷いてアルトリアを座らせた。

 傍目には女王様が3人を侍らせているようにしか見えない。

 

「皇帝特権だ、許すがよい!」

 

 ネロはアルトリアズがお気に入りなのだった。

 皇帝にとって血縁者というのは信頼できる味方になることもあれば、皇位簒奪(さんだつ)をもくろむ敵になることもある厄介な存在である。しかし3人は知り合って以来、権力や財貨を欲しがる様子をまったく見せない稀有な人物なのだ。

 食事にはうるさいが、このくらいの欲望はあった方がかえって信用できるというものだ。

 なお1番のご贔屓はルーラーで、貴婦人的な風格と美貌に加えておっぱいが大きいのもポイント高かった。それに母親と対立した末に殺してしまったネロは、包容力山盛りな彼女のそばにいると心が安らぐのだった。

 

「仕方ないですねえ」

 

 アルトリアズは苦笑しつつも、ネロのご希望通りにしていた。

 彼女はわがままな所はあるが無邪気で嫌味がないし、3人は元王様だけにネロが背負っているものの重さが分かるので、たまの休みの時くらい多少のことは大目に見てあげようと思っているのだ。

 

(しかし湯浴み着を着てと言われた時は少し残念だったが、見えぬというのも逆にそそるものがあるな! 新しい発見だ)

 

 もっともネロは内心ではこんなことも考えていたりしたが。

 

「ところでミツキたちはこういった場所は初めてであろう? 暑かったら無理せず外で休むのだぞ」

 

 その一方、光己たちには細やかな配慮も見せていた。彼らは異国人だからローマ帝国への思い入れは期待できない上に、与えた総督の地位は今はまだ空手形なので、ぞんざいには扱えないのだ。

 

「はい、ありがとうございます!

 確かに暑いですけど、何だか身も心も温かくなって緩みますねー!」

 

 元気よく答えたブラダマンテは光己の隣に座って、肩と腕を触れ合わせたりしている。マスターと隣人愛的に2人の世界という現象にはとても興味を持ったので試しているのだが、今の所起こる気配はなかった。反対側のマシュも同様である。

 何しろこの現象、感情面だけでなく実益もありそうなのだ。

 

(当人は気づいてるかどうか分かりませんが、景虎さん強くなってるように見えるんですよね)

 

 おそらくマスターとの同調率が上がって魔力が増大したのだろう。同調率は普通はマスターのそばにいたり一緒に戦ったりすることで少しずつ上がっていくのだが、短時間でも2人の世界に入るほど深い交流をしたのなら一気に上がってもおかしくはない。

 マシュたちが気にするのも当然だったが、すでに体験した景虎は彼女の隣で余裕そうにしていた。

 

(……まさかこんな大昔の異国で風呂に入れるとは、サーヴァントというのも悪くありませんね。ご飯もお酒も美味しいですし、面倒なことしなくていいですし。

 何より龍になった現人神のマスターに出会うなんて驚きです)

 

 生前のことをいろいろ思い出したりして、ちょっとセンチな気分でふうーっと息をつく。

 そのさらに隣ではスルーズがカーマの相手をしていた。

 

「カーマさんは暑いのは大丈夫ですか?」

「それはもう、インド出身ですからね。むしろ貴女の方が気になりますが」

 

 なるほどスルーズは北欧出身であり、暑さに弱いのは彼女の方と考えるのが普通であろう……。

 

「いえ、私も戦乙女ですからこの程度は」

 

 実はちょっと頭がぼうっとしてきているが、スルーズは見栄を張った。

 仮にも大神オーディンの娘として、ただの人間より先にリタイアするわけにはいかない。それに今は光己が思春期男子モードなので、その対象外の人がぼっちにならないようフォローすべきという意図があったし。

 

「……ふうん、まあ、いいですけど」

 

 カーマはどう解釈したのか、深くは追及しなかった。

 光己の方は左右から女の子にくっつかれてご満悦で、さらには彼女たちがほんのり汗ばんで艶っぽくなってきたのでドッキドキである。

 

(うーん、やっぱみんなキレイだよなぁ……海で水着の時とは違った雰囲気の色っぽさだ)

 

 ところでこういう状況では、若く健康な男性ならタオルで隠された辺りにとある生理現象が起きることがよくあるが、今はどこからか白い光がそそいでおり、見えなくなっていた。

 

「―――ふむ、みな汗をかいてきたようだな。ではそろそろ出るとしようか」

(よし、耐え切りました!)

 

 やがて頃はよしと見たネロが終了宣言を出すと、スルーズは内心でガッツポーズを決めながら、しかしさあらぬ体を装ってドアを開けた。相対的に涼しい外の空気に懐かしささえ感じつつ、ふーっと大きく息をつく。

 

「それで、次はどうするんですか?」

「うむ、微温浴室(テピダリウム)に戻るぞ。オイルと肌かき器(ストリジル)、それにタオルもあるはずだ」

 

 街のテルマエではそういうものは来客自身が持ってくるか、あるいはオイル塗布と肌かきを仕事にしている者がいるのだが、ここは市役所の付属施設なので共用の備品があるだろうという意味である。

 というわけでテピダリウムの中を探してみると、部屋の一角にシャワーと洗い場、それに水飲み場が設置されていて、その脇に備品一式も置いてあった。ここで体に塗ったオイルと汚れを落としたり、ストリジルやタオルを洗ったりするのだろう。

 

「しかしシャワーまであるとは……」

「…………」

 

 試しに水栓をひねってみると、本当にお湯が出てきた。光己は感嘆の思いが深まる一方で、景虎はもう言葉もない。

 ちなみに光己は今、右手は初サウナでちょっとのぼせて足元がおぼつかないブラダマンテの体をささえるため腰を抱いて、左手はこちらもほわーっとしているマシュの右手を握っているが、例の現象はまだ起きていない様子である。

 

「へえー、これで垢を落とすんですか」

 

 カーマはストリジルをつまんで物珍しげに眺め回していた。愛に倦んだヒネクレ者でものぐさダウナーな彼女だが、外見年齢相応の好奇心旺盛なところもあるのだ。

 

「ま、私は仮にも女神ですから垢なんて出ませんけど?」

「私も戦乙女、というかサーヴァントですから出ませんが、ネロ陛下の手前そういうことは小声で話して下さいね」

「仕方ないですねー」

 

 いつも通りやる気を感じられない返事だが、ネロも光己たちもよくしてくれるので積極的に迷惑をかける気はないカーマなのだった。

 そしてそのネロは早々と備品一式を抱えこんで、アルトリアズを手近な長椅子に連れ込んでいた。

 

「先ほどは我が儘を言ったな。詫びとして余みずからオイルを塗ってやろう!

 まずはルーラーから、そこの長椅子にタオルを敷いて横になるがよい」

「……それは光栄ですね」

 

 確かに皇帝陛下じきじきに手塗りしてもらえるというのは、(同性なら)名誉なことといえるだろう。ルーラーアルトリアは特に疑問を持たず、その豊満な肢体を長椅子に横たえた。

 

「ちなみに余はマッサージの心得もあってな。気持ちいい上に疲れも取れるぞ!」

 

 ただし半分は(ぴー)だがな!というのは口には出さない心の中での声である。

 なおさっきの「我が儘」はこの「詫び」を3人に遠慮させず自然に通すための布石も兼ねていたのだが、当然それも伏せている。マジ暴君!

 うつぶせに寝たルーラーの、まずは右足の裏にオイルを垂らしてまぶしつつ、トリガーポイント(いわゆるツボとほぼ同位置)を押して刺激していくネロ。

 サーヴァントは魔力さえあれば肉体的な疲労というのは無いのだが、暖かくて緩んでいる所に巧く撫でられたりほぐされたり、さらには魔力流の経路の結節点への刺激も加わると、本当に気持ち良くなってくる。

 

「んっ……確かに気持ちいいですね」

「そうかそうか。うむ、さすがは余だな!

 それにしてもルーラーは綺麗な肌をしているな。スタイルもいいし、余のそっくりさんだけのことはある!」

「は、はあ、ありがとうございます」

 

 ネロはルーラーを褒めてくれたようだが、ルーラーはどう答えていいか分からなかったので、とりあえずお礼を言った。

 その間にもネロの手はだんだんと上に進み、左下腿を終えて右上腿に進んでいく。

 肉づきのいいむっちりした太腿にオイルがまぶされて、てらてら光っているのが実に艶っぽい。

 

「んッ……ふ……ぁ」

 

 しばらくするとルーラーの顔が赤らみ、妙な声が出てきた。何かを我慢しているようにも見える。

 しかしネロはそれに気づいているのかいないのか、さあらぬ体でオイルを塗る手をさらに上にあげていく。やがて腰に巻いた薄布の下にもぐり込んだ。

 

「あっ……ン」

「…………??」

 

 くぐもった吐息をつくルーラーはまるでHしてるみたいな雰囲気になってきた。しかしネロは普通にマッサージしているようにしか見えないので、XXとアルトリアは首をかしげつつも黙って見守るしかない。

 しかしネロの手はそろそろお尻に届いているがいいのだろうか……?

 ちなみに光己たちもこの場にいて皆ドキドキしながらガン見していたが、マシュがふと我に返った。

 

「せ、先輩には目と耳の毒です! あちらに行きましょう」

 

 ネロへの対処はXXとアルトリアが判断することとして、光己にこのまま見させておくべきではない。そう判断したマシュは彼の手を掴んで連れ去ろうとしたが、当然光己は抵抗した。

 

「俺はマスターだぜ? ノーとしか言わない男さ!!」

「では私が先輩にオイル塗りますから」

 

 毎回抑圧するばかりではさすがに嫌われるかも知れない。それに「2人の世界」にも未練はあるので妥協案を提示すると、思春期モード少年はわりとあっさり乗ってきた。

 

「イエス!!」

「ではあちらに」

 

 交渉が成立してほっと安堵したマシュが、光己をネロとルーラーの姿が見えなくなる所まで引っ張っていく。するとブラダマンテとXXと景虎もついてきた。

 アルトリアはネロとルーラーの見張りとして残るようで、カーマもこちらを見ていたいらしく動かない。なのでスルーズも残っている。

 マシュは良さげな長椅子を見つけると光己に横になってもらおうとしたが、するとブラダマンテとXXが割り込んできた。

 

「私もやります!」

「もちろん私も!」

 

 そのためについて来たのだから当然の立候補である。景虎もやる気のようだ。

 

(おぉ、みんなアレに興味持ってくれてるのかな)

 

 性愛ではないとはいえ、より親しくなりたいと思ってくれているだけでも大変嬉しいことである。しかしうつ伏せでは彼女たちの姿が見えないし、向き合っていないと現象が発生する可能性も下がりそうだ。

 

「だからお互い座ってやるのがいいと思うんだけど」

「なるほど、確かにそうですね」

 

 ただお互い湯浴み着で彼のすぐ真ん前に出る度胸があるのは景虎だけなので、正面席は決まりである。右がマシュで左がブラダマンテ、後ろにXXという配置になった。

 

「しかしこんなカワイイ娘たち4人がかりでオイル塗ってもらえるなんて、マスターやっててよかったなあ」

 

 光己は戦争中の古代の外国人の軍隊と一緒の行軍という、常人ならわりとストレスたまりそうな日々のことなどすっかり忘れたように上機嫌であった。人理修復の旅でストレス耐性が上がったのか、もともと単純な性格なだけかは不明である。

 

「いえいえ、マスターだからじゃなくてマスターくんだからしてるんですよ。誤解しないで下さいね!」

「はい、私もそうです!」

「おお、そっか、ごめんごめん」

 

 その上こんな好意あふれることまで言ってもらえて感無量だった。このお礼は塗ってもらった後で思い切り返すとしよう!

 

「じゃ、塗りますね」

 

 景虎は床にタオルを敷いて彼のすぐ手前に膝立ちになると、手にオイルをまぶしてまずは上の方、首すじから塗り始める。さわさわした指の動きがくすぐったい。

 

「しかしこの長尾景虎にサーヴァントどころか侍女の真似事をさせるとは……その方、まさに天をも恐れぬ不埒者よな」

「ふえっ!? お、俺が頼んだんじゃないのに!?」

「あはははははは! なーんてね、戯言です。許しにゃさい!」

「!?」

 

 突然景虎が不穏なことを言い出したかと思ったら、冗談だったようだ。

 光己は(所長といい、俺って女の子と仲良くなるとからかわれやすい気質なのか?)と一瞬思ったが、今はそんなことよりマスターとしてのケジメをつけねばならない。

 

「いーや、絶許だー!」

 

 景虎の背中に両手を回してぎゅっと抱きしめる。景虎は特に抗いもせず彼の腕の中に収まった。

 現象なしでも、体がふれ合うと幸せを感じる。

 

「んー、景虎……」

「マスター……」

 

 景虎も同じように感じてくれているようだ。

 それとは別に彼女の素肌の感触も大変気持ち良かったが、しかしその至福は左右の2人に腕を引っぺがされたことで終了してしまった。

 

「もうマスターってば景虎さんばっかり!」

「あ、ああ、ごめん。じゃあ塗るのよろしく」

「はいっ!」

 

 おかんむりになったブラダマンテに光己が謝ると、少女はいたっておおらかにすぐ許してくれた。左手で光己の左手を持ち、右手でそろそろと塗り始める。

 光己がせっかくなので彼女の手を軽く握ると、少女はぼっと頬を赤らめた。

 

「マ、マスター」

 

 その恥ずかしがり方がまた初々しくて実に可愛い。ついでにマシュの手も握ると、こちらも恥ずかしそうにうつむいて目をそらした。

 景虎が塗るのを再開し、XXもそれに続く。

 さて、光己とネロの幸せはどこまで続くのか……!?

 

 

 




 同調率が上がると魔力が増大するというのはワルキューレのマテリアルにあるのですが、小説的にはこんな感じかなと考えました。もっともこのSSにはレベルの概念はありませんのでふわっとですが(^^;


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