ルーラーアルトリアの太腿を撫でていたネロの手がだんだん上がって、ついにお尻にまで達した。湯浴み着のボトムスはタオルを巻いているだけでパンツを穿いていないので、じかにお尻の肉に触れることになる。
「んんッ……ぁ……はぁ……ん!?」
ルーラーは部屋がほどよく暖かいのとネロのマッサージの巧みさで気持ち良くてぽやーっとしていたが、さすがにここではっと気づいた。
「あの、陛下……そこはお尻ですので、その辺で」
「ん!? あ、ああ、そうだな!」
ネロはもちろん承知していたが、いかにも何も意識してなかったという顔をつくって手を離した。歌劇が好きなだけに、その手の演技力は高いのである。
ルーラーは素直に信じて、特に追及などはしなかった。
「では背中に進むとするか!」
「は、はい」
ネロはルーラーの体をまたいで、彼女の太腿の脇に膝をついた。
まずは腰から、ぬるぬるとオイルを塗っていく。もちろんツボ攻撃も忘れない。
「うーむ、ルーラーは背中も綺麗よな! 肉のつき方も肌のつやも実にいい!
実にあ……げふんげふん、マッサージのしがいがある」
ネロは何か怪しいことを言いかけたがルーラーは聞き咎める様子もなく、「あ……」とか「ん……」とかとろーんとした顔で甘い息をつくばかりだ。
やがてネロの手が上衣の裾に届いた。
「ルーラーよ、裾をたくし上げたいから少し体を持ち上げてくれるのか?」
「…………あ、は、はい」
ルーラーが椅子の座面に肘をついて上半身を持ち上げると、ネロはその下に湯浴み着の裾を通して首の辺りまでたくし上げた。
その拍子にルーラーのLLサイズおっぱいがぶるんと揺れる。
(うおお……)
そしてルーラーが腕の力を抜くと、おっぱいはまた下に降りて座面に押しつけられた。
たわんだ横乳が上からも見えてしまう。
(うーむ。余もスタイルには自信があるが、こんな立派な胸は初めてだ!)
今後とも仲良くしたいものである。いろんな意味で。
というわけで、ネロはますます情熱的にルーラーの背中を撫でまわ、いやオイルを塗りマッサージした。
やがて首すじに達して、指先でうなじをつついてやるとくすぐったそうに身じろぎした。
すっかり夢心地のようである。
(ううむ、こういう反応は可愛いな! いい、実にいい!)
頃は良しだろう。体の背面を塗り終えたということで
ネロはなるべく自然な口調でそれを頼んだ。
「ではルーラーよ、次は仰向けになってもらえるか?」
「………………そうですね」
「んん?」
その返事はあまり夢心地っぽくなく、落ち着いた、いや低くこもった感じに聞こえた。
さっきたくし上げた裾をちゃんと下ろしてから仰向けになって、さらに上半身をネロのすぐ前まで起こした。
「んんんっ? いや、そこまで起こさなくてよいのだが……」
ネロが当惑しながらそう言ってみると、ルーラーはにっこり微笑んでネロの手首を掴んだ。
「いえ、陛下に塗ってもらってばかりでは恐れ多いですのでお返しをしませんと。
ええ、
「なぬ!?」
もしかして気持ちよくさせて少しずつ大胆にいろんなことしていこうという目論みがバレたのか!? ネロは真っ青になったが、しかしローマ皇帝たる者この程度で敗北を認めるわけにはいかない。
「いやいや、まだ前を塗っていないではないか。遠慮することはないのだぞ?」
「なるほど、陛下は攻めるのは好きでも受けるのは慣れてなさそうですね。では練習させてさしあげます」
「え!?」
一瞬でネロはルーラーに組み敷かれてしまった。
お腹の上にまたがったルーラーが、オイルで濡れた手をわきわきさせている。
「あ、あの、怒っておるのか!? なら謝るが……」
「いえいえ、怒るだなんて。純粋にお返しをしたいだけですよ」
「う、嘘だ! そ、そうだミツキ! ミツキはおらぬか。余を助けるのだ!」
「マスターならいませんよ。目と耳の毒だということで、マシュさんたちが連れていきました」
「そ、そんな……あ゛ーーーっ!?」
「…………ふーん、これがインガオホーってやつですか。せっかくですから最後まで見学させてもらいましょうかね」
ネロが反撃をくらって身悶えるのを、カーマは愉悦の表情で眺めていた。
一方光己たちはいたって和やかに、サーヴァント4人がマスターの前後左右からオイルを塗っていた。
正面にいるのは景虎なのだが、真ん前にある彼の胸板には青白い紋様が光っていてとても目立つ。
(あの龍にも同じ紋様がありましたね。まるで龍を下から見たような図柄……)
景虎は指先で紋様をそっとなぞってみたが、光っているだけで特に変わった感触はなかった。ビームを出したりはしなさそうだ。
(やはりこの方は龍……私と反対なのですね)
景虎は精神面は普通の人間とかけ離れていることを自覚しているが、肉体的には現在はともかく、生前は強いといってもあくまで人間の枠内のものだった。
しかし光己は精神面は神仏でも妖怪でもなく武士ですらない一般民間人だが、肉体的には人型ですらない幻想生物だ。まさに景虎と逆の存在であり、彼が来ることが予定されていたからこそ自分がはぐれサーヴァントとして召喚されたのではないかとすら思える。
だって龍なら人間が多少枠から外れていたところでどんぐりの背比べだろうから、自分を恐れることも崇めることもないだろうから。事実普通に接してくれたどころかお互いに深く知り合った今でもこうして親しくしてくれている。
―――普通の人間が普通の人間にするように。
サーヴァント=超人同士とは違う、常人同士のような関わり方を。
「……ところでマスター」
「ん、なに?」
「マスターは、人と人がかかわるのにお互い理解しあうことは必要だと思いますか?」
景虎がそう訊ねると、光己はすぐ答えが思い浮かばなかったのか、しばらくしてから口を開いた。
「そりゃまあ、相手のこと知らなきゃ、どんな話題が好きでどんな話題が地雷かも分からんからなあ。そのために社交辞令とか天気の話があるんだし。
聖人とかコミュEXだったら何とかなるかも知れんけど、凡人じゃそうはいかないよな。
といって完全に理解しあうのも無理だから、程度の問題じゃないか?」
「ふーむ、なるほど」
彼の回答は特に変哲もないものだったが、そのぶん一理はあった。
誰しも不用意に触れられたくない聖域があるというのは分かるし、御仏ならぬ衆生の身では寒日に身を寄せ合うヤマアラシのごとく互いに試行錯誤して適度な距離を探るしかあるまい。いや景虎自身と光己は特殊例として。
「まあ私とマスターはすでに比翼連理といえるほどに分かり合っていますから、問題はまったくないのですが!」
景虎は自慢げに胸を張ったが、するとなぜか光己は不服そうな顔をした。
「それはそうだけど、でも
「それはまあ、私そういう人情の繊細な機微にはとんと疎くて。むしろ
景虎は正直にそう答えたが、マスターは納得してくれなかった。
「嘘だッ! 俺は知ってるぞ。景虎は和歌が上手で、しかも源氏物語とか愛読してたってなあ! 人情の機微に疎いわけがないッッ!!」
「なんと、そこまでご存知でいて下さったとは。でもそれは都の方々とのお付き合いと、それこそ機微の『勉強』だったことをマスターは『分かって』いるのでは?」
「おのれおのれおのれーーーっ!」
どうやら彼は本当に分かっていての発言だったらしく、すぐ矛を引っ込めたが、心底残念そうである。しかしそういう「人間的な」会話は景虎にはとても楽しかった。
「ふふ、マスターは面白い方ですね。
それに皆さん良い方ばかりで居心地がいいです」
しかも、景虎は今は国主ではない上に、ネロと騎士王
そういえばカーマ=マーラといえば第六天魔王のことだが、あのうつけもサーヴァントになっていたりするのだろうか?
「それもこれもマスターのおかげですね。本当にありがとうございます」
「んん? ああ、こちらこそ。これからもよろしくな」
「はい」
「…………むー」
光己と景虎は実に息ぴったりで、ヒロインXXは(私も早く2人の世界を体験して追いつかないと!)とあせっていたがここでちょっとした問題点に気がついた。
「2人の世界っていうのは私の表現でしたけど、5人で入れるものなんでしょうか?」
あの現象はマスターがサーヴァントの生前を夢で見るとか、逆にサーヴァントの精神世界にマスターの意識が迷い込むとかいったことに類似したものだと思うが、いずれも1対1で起こる現象だ。1対4あるいは5人の世界でも発生するものなのだろうか?
その辺をマスターに訊ねてみると、少年も首をひねった。
「んー、そうだなあ。俺とみんなはそれぞれ魔力パスでつながってるけど、サーヴァント同士は直接のつながりはないからなあ。
1対1でしか起こらないとすると、つまりよりサービスしてくれた人に起こる可能性が高いな。たとえばおっぱいでオイル塗ってくれるとか」
「もう、マスターくんってば気分緩ませすぎですよ!」
お風呂でリラックスするのはいいが、セクハラ発言は控えめにしてほしいと思う。
「ああ、ごめんごめん。でもあれって起こそうとして起きることじゃなさそうだし、あまりがっつかない方がいいんじゃないかな」
「んー、そうですね」
XXは機嫌を直すとオイルを塗る作業に戻った。もちろん手でである。
「でもマスターくん、無人島の頃より筋肉ついてますね。ハードなトレーニングしてるんですから、当然といえば当然ですが」
「まあなー。あれだけやって成果なかったら泣くレベルだよな」
「フフッ、そうですね。長い付き合いになるサーヴァントとしては嬉しいです」
いかにマスターの能力がサーヴァントのスペックに直結するとはいえ、普通の聖杯戦争はたいてい短期決戦だから、マスターは鍛えるよりコンディションを万全に保つことに留意した方がよほどマシである。しかし、今回はここメディオラヌムから次の目的地のマッシリアに行くだけでも3週間かかるという長期戦で、しかもマスターは
―――なお彼が竜モードになった場合は要石としても魔力タンクとしても空前絶後で、もう誰にも負ける気がしないのだが、あくまで奥の手なので通常戦力としてはカウントしないことになっている。
「というわけで、先輩としてご褒美をあげましょう!」
XXはそう言うと、ついっと身を乗り出して光己の頬に唇をつけた。
小さく柔らかい、でもとても刺激的な感触が少年を驚かせる。
「おおっ!?」
「えっへん、これはまだ誰もしたことないですよね! 見直しましたか? これが年上の実力です!」
「……おおぅ、確かに初めてだな。やはりXXはマイソウルフレン、いやソウルエルダーフレンドか」
「えぇえぇ、そうでしょうとも!」
自慢げにふんすとドヤ顔を見せるXXはむしろ年下っぽい感じだったが、せっかくご褒美をくれたのだから光己は無粋にツッコミを入れるのはやめておいた。
マシュとブラダマンテはびっくりしたようだが、残念ながら追随してくれる様子はない。
やがてタオルを巻いた部分以外を塗り終わると、4人とも終了宣言をしてしまった。さすがにそこは塗れないようだ。
「まあ仕方ないか。でも俺はマシュたちの湯浴み着の下も塗れるぞ!
……いや冗談だって。背中だけってことでどう?」
台詞の途中でマシュの眼が白っぽくなったので、光己は声量も落として大幅に妥協した案を出した。
「………………はい、それならまあ」
マシュはちょっと悩んだ末、彼の希望を飲むことにした。まあ確かに、塗った以上は塗ってもらうのが筋ではあろうし。
しかしその前に光己はオイル(と汚れ)を落としておくべきだろう。
「そだな、じゃあついでだからこれもお願いしておこうか」
「はい」
オイル(と汚れ)を落とすのはネロが説明した通り
一応この時代でも石鹸があることはあるのだが、高級品なので無料の備品としては置かれていないのだった。
ていねいに垢を落としてくれるマシュたちの献身ぶりに、光己は改めて感動と感謝の念が沸き上がったが、これは多分お返ししない方が喜ぶだろう……。
その後はシャワーを浴びて身を清め、特にこれから彼女たちの素肌に触れることになる両手の平は念入りに洗ったら、いよいよお待ちかねのオイル塗る方のイベントだ!
「せ、先輩からすごい魔力の昂ぶりを感じます!」
「ふっふふ、当然だろ? さて、1番手はマシュだな!」
「は、はい」
マシュはちょっと怖くなったが、1度承知してしまったからには仕方ない。マシュは椅子に腰を下ろし、光己はその後ろの床にタオルを敷いて膝立ちになった。
「……しかしやっぱり湯浴み着ジャマだな」
マシュが寝ていればたくし上げることもできるが、座っていては面倒だ。上衣は脱いでもらうしかないだろう。
光己がそう言うと、確かにその通りなのでマシュは顔を真っ赤にしながら頷いた。
「そ、そうですね。でも見ないで下さいね?」
「あ、ああ、そこまでしないって」
光己は大奥を作るという野望を持っているが、最低限の節度も持っているつもりだ。相手が本当に嫌がる、もしくは心の準備ができていないことをする気はない。
「はい、それでは……」
マシュは覚悟を決めると、上衣の裾を持ってそろそろとたくし上げ始めた。
脱ぎ終わるとそれを両手でかかえて胸を隠す。その可憐さといじらしさは、光己が狼になるのをこらえるのに苦労するほどだった。
汗ばんだ白い背中が眩しい。
「じゃ、塗るね」
「は、はい」
光己がまずは上からということでうなじをついっと指でなぞると、マシュは「ひゃんっ!」と声を上げて身を震わせた。
「せ、先輩、くすぐらないで下さい」
「いや、ちょっと触れてみただけだけど……」
「じゃ、じゃあなるべくそっと」
「んー、わかった」
マシュはけっこう敏感なようだ。塗っているのが自分だから、であれば嬉しいのだが。
お姫様のご希望通り、できるだけゆっくりやさしく塗っていく。女の子の肌はつややかできめ細かくて、触れているだけでもどきどきした。
「んっ……ふ……ぁ」
時々マシュが小さな喘ぎ声をあげるのでますます胸の鼓動が高まるのだが、とにかく我慢する。
Hぽいさわり方もしたいのだが、マシュにするのはよろしくないだろう。
やがて腰、湯浴み着の下衣のすぐ上まで来て光己は手を止めた。
「んー、残念ながら終わったよマシュ」
「は、はい、ありがとうございました」
マシュは顔を赤らめたまま、ぱたぱたと逃げて行った。やっぱり可愛い。
そのあと背中のオイルを自分で落とすのは難しいのに気づいてブラダマンテに頼んだので、光己の次のターゲットはヒロインXXになる。
「じゃあXX、いい?」
「は、はい。先輩ですからこのくらい余裕ですよ!?」
虚勢を張っているのが見え見えなのだが、ここは当人の気概を尊重すべきだろう。光己は気づかないフリをして、XXが上衣を脱ぐのを(残念ながら後ろから)見守った。
XXが上衣を脱ぎ終わり、マシュと同じようにそれで胸を隠す。
年上を称するだけあって、後ろ姿もむっちりしてエロスを感じる。腕に圧された乳房がたわんで少し見えているさまなどもうたまらない。
しかしそれを触ることは
(まずはおとなしくして様子を見るか……)
そう判断して、マシュの時と同じようにうなじからそろーっと塗っていく光己。
するとXXはびくっと震えた。
「ひゃ!? い、今なにかぞくぞくってしたんですけどマスターくん何か変なことしませんでした?」
「いや、してないよ。うなじに指が当たっただけだろ?」
「それはそうなんですがー」
XXも敏感なようだ。今回は自称年上が相手だから、少し果敢に攻めてみたい。
オイルを塗るというより手と指全面で愛撫するかのように彼女の肌の感触を味わう。
(おぉぅ、マシュとはまた違った感触……女の子って繊細なんだなぁ)
「んんっ……マスターくん……」
XXは時々切なげな吐息をつくが、嫌がってはいないようだ。
肩甲骨から腋の辺り、背中下へと手を動かしていく光己。
「マスターくんの手、あったかくてやさしいですね……はぁっ……」
「それはよかった、XXも綺麗だよ」
「マスターくん……」
XXは暖かい部屋でリラックスしているのか、それとも言葉通りの感想を抱いてくれているのか、だいぶ緊張が抜けてきたようだ。男子として欣快の至りである。
(あー、そういえばあの現象起こらないな)
今なら1対1だしXXはリラックスしているのだが、光己の方が緊張してるからだろうか。
「んっ……ぁ、はふぅ……」
でもこれは仕方ないと思う。光己がリラックスできないのは、特に敏感なところに指が当たるのか時々XXが甘い息をついたり身じろぎしたりするせいでもあるのだし。
やがて光己は腰まで塗り終わってしまった。かなり沢山のオイルを。
「んー、楽しい時間は終わるのが早いなあ……そうだ、せっかくだから腕も塗らせてくれない?」
XXはマシュほどは恥ずかしがってなかったと見て、ちょっと攻めに出る光己。XXは目をしばたたいてびっくりしたような顔をしたが、やはり嫌ではなかったらしく首を縦に振った。
「はい、いいですよ……」
よろしい、ならばさらなる塗油だ!
せっかくのオイル塗りイベントですので2話に分けてみました(ぉ
それにしても景虎ちゃん強い。