FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第6話 サーヴァント撮影会

 ヒルドによれば、アーサー王はある山の麓の大きな洞窟の奥にこもっているらしい。またその入り口近くで何ゆえかアーチャーが門番をしているという。

 しかし、これはうまく動けば1人ずつ別々に戦えるというわけで、2人一緒にいるよりは喜ばしいことだった。

 ここから洞窟までは一般人基準だとかなり歩くが、レイシフト装置の修理を待つ時間も兼ねるから大した問題ではない。

 道中の本屋で手に入れた地図を見て現在地を確認しつつ、電器屋で調達したデジカメで街の様子を撮影しながら慎重に歩を進めるカルデア一行。むろん窃盗だが、人類の存亡がかかっているのだからやむを得ない、とこういう時だけ都合よく大義名分を持ち出していた。

 そこでふと、あまり被害を受けていない小さな公園を見かけた。

 

「それじゃ所長、約束の撮影会をしましょう!」

「本当にやるつもりなの? ……まあいいけど」

 

 オルガマリーはあきれた顔をしたが、声色に険はなかった。

 光己は新入りの素人のくせに時々抗弁してくるが、オルガマリーを感情的に嫌っている様子はない。それに好意的に解釈するなら、おバカな言動も彼自身の助平根性だけではなく、オルガマリーとマシュの気分転換を彼なりに考えてのことではないかとも思えるのだ。

 それはそれとして、オルガマリーも魔術師とはいえ年頃の女の子だから、こうしたことに興味が全くないわけではないし。

 サーヴァントたちも特に異議は出さなかった。光己は昨日巻き込まれたばかりの一般人しかも未成年という話だから、リリィたちの時代に例えれば、農家の子がある日いきなり訓練もなしに戦場に駆り出されたようなものである。錯乱したり逃げ出したりする様子がないどころか、ちゃんとした指示を出してくれるのだから十分合格点というもので、多少のお遊びで気分が晴れるなら文句はなかった。

 それにこの仕事が終わったらおそらくお別れになるのだから、記念になるものを欲しがってくれるのはちょっと嬉しいというのもある。

 

「じゃあまずは所長からですね! 審査員ですが飛び入り参加という設定で」

「だからなんで聖杯戦争がミスコンになるのよ……」

 

 と言いつつ、体裁上とはいえ自分を最初に呼んでもらえたことにちょっとだけまんざらでもない表情を浮かべるオルガマリー。光己に乞われるがまま、立木の傍らにしゃなりと立った。

 彼女の服は光己やロマニが着ているカルデアの制服とは違って、黒とオレンジを主体にした高校の制服のようなデザインである。脚には茶色っぽいストッキングを穿いていた。

 

「じゃあまずは普通に、笑顔でー!」

「この状況で笑えって、すごいこと言うわね……」

 

 オルガマリーはあきれていたが、光己はわりとノリノリだった。

 女の子の写真を撮るのは初めてだが、超抜級コスプレ(?)美少女、それも歴史上の英雄たちの独占撮影会なんてこの先の人生でまたあるとは思えない。それにアーサー王と戦うことになったらこちらが殺されてしまうことだってありえるわけで、それなら最後にちょっとくらい良い事があってはじけてもいいんじゃないかと思うのだ。

 

「いやあ、所長は絶対笑顔の方が可愛いですから! さあ笑って笑って、ポーズとって!」

「も、もう仕方ないわねえ」

 

 もとより劣等感と承認願望が強いオルガマリーだけに、容姿だけのこととはいえ手放しで褒められるとつい頬が緩んでしまう。彼女にとって光己やマシュたちは立場や性格や年齢の関係で比較的肩肘張らなくていい相手なので尚更だった。

 それでつい気分が乗ってきて、ファッション雑誌で見たポーズをとってあげたりしていたのだが……。

 

「いいよいいよ! それじゃ次はスカートの左右の端を指でつまんでちょっと持ち上げながら、軽くかがんで会釈するポーズなんてしてみようか」

「…………なんでトップがそんな媚びたことしなきゃならないのよ!」

 

 はっと我に返ったらすごく恥ずかしくなってきたので、不埒な部下を軽く小突いておしまいにしたのだが、しかし本当に久しぶりに「楽しい」と思えたのは確かなのだった。

 

 

 

 

 

 

「それじゃ次はマシュ、やってくれる? まずは鎧外した格好から」

「は、はい」

 

 マシュは人物写真の被写体になるなんてのはかなり恥ずかしいのだが、敬愛する先輩のたっての頼みとあって顔を真っ赤にしながらも承知した。

 ただ彼女が鎧を外した下のインナーはブラダマンテの服と似たような感じの厚手のレオタードにしか見えないのに、それはあまり気にしていないようである。なぜか胸元にくり抜きがあって大きなバストの谷間が見えたり、お腹も同様で可愛いおへそを出しており、股間のVカットもけっこう角度がきわどいのだが。

 

(実にけしからん……あれじゃ見た男があのでっかいマシュマロをマシュマシュしたくなるのは確実だろ。お尻もぷりぷりしてるし。デザインした奴GJ!)

 

 などと光己は内心でそれこそけしからんことを考えつつ、態度は平静を装って写真を撮っていく。最初は単に立ってるだけとか片手を腰に当てるだけとかごくおとなしいものだったが、そのうち木に両手をついてお尻を後ろに突き出すとか、脚を開いて地面に膝をついて両手を頭の後ろに組んでちょっとのけぞるとか、だんだん過激なポーズになってきた。

 

「うん、いいよマシュ! 恥ずかしがってるのがまた可愛い」

「も、もう先輩ったら」

「……ってアナタいい加減にしときなさい! どう考えても記念写真の域超えてるわよこれ」

「いやこのポーズはV〇的に考えてOKのはず!」

「いいからやめなさい!」

 

 マシュは恥ずかしがりつつも先輩の煽りに乗って彼の言うなりのポーズをとっていたのだが、やがてみかねたオルガマリーが止めに入ったためお開きとなった。

 ただ、マシュは特に激しい動きをしたわけでもないのに、顔が赤いだけでなくちょっと息が荒かったが、理由は不明である。

 

「所長は人の心がわからない……」

「わかってるから止めたんだけど?」

 

 実に残当な言い分であった。

 それでマシュの番は終わってしまったので、次はリリィである。普段は純真そのものの少女だが、武装して剣を構え表情を引き締めると、さすがに未来の騎士王だけあって凛々しさを感じさせる。

 光己も今のリリィにはあまりハレンチな要求はできず、普通に剣を中段に構えたところとか横に振り抜いたところとか、無難なポーズにとどまっていた。

 

「じゃあ次は武器外して、カワイイとこいってみようか!」

 

 しかしリリィが武装解除して普段の清純派に戻ると多少大胆になった。公園の外ではまだ街が燃えているのだが、慣れてきたのか、あるいは気にしないようにしているだけか。

 

「は、はい」

 

 リリィは写真撮影なんて当然初めてなので「カワイイとこ」なんて言われてちょっと当惑したが、それでもオルガマリーとマシュがしていたポーズを参考にして、片手を腰にもう片方の手を側頭部に当ててみたり、上体を90度近く曲げてから彼の方を見て微笑んでみたりといろいろ試行錯誤してみる。

 なおリリィのドレスは胸元がかなり開いている上に肩紐がないので上体を曲げるとバストの谷間がバッチリ見えてしまうのだが、光己は注意したりせず狙い撃ちで激写していた。後で見られた時のことなんて考えていないのだ。

 

(てかこの感じだとブラジャーもつけてないな。まあ時代的に当然だけど激しい運動したら胸が痛く……いやサーヴァントなら大丈夫か)

 

 それでも一応彼女たちへの配慮はあるようだ……。

 

「よし、映せる枚数に限りもあるしこんなとこか。ありがとなリリィ。

 それじゃ次、ブラダマンテもやってくれる?」

「はい!」

 

 少女騎士は写真撮影会でも元気いっぱいでノリがよかった。思春期男子としてはとても喜ばしい。何しろ彼女は美人でスタイル抜群の上、戦闘服と普段着の区別なくレオタード姿という素晴らしいサービスの良さなのだ。

 

「ええと、リリィ様たちがやっていたようにすればいいんですよね?」

「うん、それでお願い」

 

 ということでブラダマンテの写真をパシャパシャと撮っていく光己。彼女はどこもかしこも良いが1番の売りはやはり臀部だと思われるので、他の3人より後ろ姿比率多めである。

 そういえば彼女のレオタードは青白赤でとてもカラフルだが、もしかしてフランスの国旗を意識し……いやあれはフランス革命がどうこうという話を聞いたことがあるから偶然か。

 とにかくいろんなポーズを取ってもらって、中には脚を90度くらい開いてもらったところをローアングルで撮ったものもあるのでこれはもう家宝になりそうな勢いだった。すっかりご機嫌で、この後に控えている命がけの戦いのことなど完全に忘却している模様である。

 あとブラダマンテは武装しても鎧はなく、右手に短い槍、左手の甲に星型の盾がつくだけだった。この盾を光らせて目眩ませをして隙をつくったところに短槍で刺すのが彼女の得意技だそうで、光己はティン〇ーとロー〇ンの基本的戦法を思い出したが、彼女の槍はビームを出せるし、盾も回転して星の先端で敵を切り裂くこともできるそうで、さすが聖騎士ともなるとえぐい武器持ってるなあというのが彼の素直な感想だった。

 

「……うん、これだけ撮れば十分かな。お疲れ様。

 ヒルドもやってくれる?」

 

 ヒルドは光己のサーヴァントではないので、頼み方がちょっと丁重であった。

 しかし当人は何も気にした様子はなく、あっさり彼の希望を聞き入れてくれた。

 

「うん、いいよ。ブラダマンテたちのマネすればいいんだよね?」

「うん」

 

 ヒルドもまた1から10まで良いが、最推しはやはり下腹部から太腿にかけてだろう。

 しかもショールを外した下の服は胸元がかなり大きく開いていて、大きな丸いふくらみの谷間がしっかり見えている。その上ノースリーブで背中も大きく露出しているというサービスの良さなのだ。

 このあざといデザインは勧誘する勇士に対する色仕掛けに違いない。さすがオーディンは最高神だけあって男心が分かっている!

 

「でもヴァルハラって夜は歓待してもらえるけど昼間は死ぬような、っていうか本当に死んでは生き返ってまた戦うっていうルナティックな訓練するんだよな。いくらヒルドたちが可愛いからって、来る人そんなにいるの?」

「あははは、確かにこの時代の人には厳しいかもね。でもあたしたちが生きてた頃の北欧は生活が苦しかったし、ヴァルハラに来るのは戦士として名誉なことだとされてたから、勧誘するのに苦労はなかったよ」

「なるほど、あの辺寒いだろうしなあ」

 

 などと雑談をまじえて気分をほぐしながら撮影を進める光己。ヒルドも脚を開くと股間がかなり刺激的な絵面になるので実に目の保養と気分高揚になった。

 しかしあまり時間をかけると待たせているオルガマリーたちに悪いので、光己はそろそろお開きにすることにした。

 

「うん、このくらいかな。マジで気分転換できたしいい記念品になった。みんな本当にありがとな。

 それじゃずいぶん待たせちゃったし、そろそろ行こうか」

「はい。でも先輩、どんな写真を撮ったのか興味がありますので見せていただけませんか?」

「はうっ!?」

 

 光己は思い切り困惑した。何しろ本能的欲求に忠実に撮影したので、女性には見せられないブツもかなりあるのだ。

 

「いや、これは俺の記念の品だから人に見せるようなものじゃ」

「……怪しいわね。マシュ、取り上げて確認しなさい」

「はい、所長!」

 

 オルガマリーが素早く光己を後ろから羽交い絞めにして、彼が背中に当たった意外に豊かな胸のやわらかな感触に一瞬気が取られた隙にマシュがカメラを奪い取る。その当人はまったく意識していないが見事な連携プレイにより、彼が隠そうとしたことは白日の下にさらされた。

 

「せ、先輩えっちです、ハレンチです、ご禁制ですーーー!」

 

 こうして写真のデータは全て破棄され、光己は絶望のあまり地面にうずくまってしばらく悶絶したのだった。

 




 あけましておめでとうございます。まさか本当に撮影会を書いてしまうとは自分でも思っていませんでした(ぇ
 福袋はえっちゃんでした。スカディ様かマーリン狙いだったのですが、実はこれでアルトリアズが全員そろったのでこの作品はアルトリアズ総出演にしろというお告げなのかも<ナイナイ

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