FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第79話 仇討ち

 レフは肉体的には傷ついていなかったが、精神的には絶え間なく気が狂いそうな苦痛に襲われていた。攻撃力も低下してしまっている。

 

「おのれぇっ、使い魔の分際でこの私によくも……誰だ、誰がこんな……!?」

 

 レフは赤い目玉をぎょろぎょろ回して不埒な加害者を特定しようと探し回ったが、犯人を見つけ出すことはできなかった。光己はちょうど今、スルーズに認識阻害の魔術をかけてもらって見た目をごまかしたところだし、レフ自身が「素人の子供にこんなことができるわけがない」とハナから決めつけていたので。さすが節穴の名をほしいままにする男だけのことはあった。

 

「……ふむ。奴の肉体に損傷はないようだが、攻撃は明らかに鈍っているな。サーヴァントでもないのに『魔神柱』をここまで苦しめるとは大したものだ」

 

 その様子を観察したエルメロイⅡ世が感嘆の声を上げる。

 ただその代償として、光己は光を放出するのに手一杯で作戦を考える余裕がないようなので、Ⅱ世は代わりに自分が策を出すことにした。

 

「騎士王よ。窓を割って換気口にすれば、貴女の風王結界でこの煙を排出できるのではないか?」

「なるほど、それは名案ですね」

 

 ただそのためにはマシュが張った「誉れ堅き雪花の壁(シールドエフェクト)」から出なければならない。これはある程度形を変えられる透明な壁をつくるというもので、つまり壁の中から外に攻撃することはできないからだ。

 なので光己の翼の光は、エフェクトに小さな穴を開けてそこから翼の端を出して放射するという手順を踏んでいる。アルトリアの場合も多少は黒煙を浴びてしまうことになるが、ついさっきブーディカと荊軻が体を張ったばかりである。躊躇はなかった。

 円柱型に展開されたエフェクトの上に立って聖剣を構えるアルトリア。すると床の上を洪水のように流れている黒煙がはねてスカートにかかった。

 

「……! これは腐食性ガスのようなものですか」

 

 煙を浴びた部分が黒ずんで溶けていっている。鎧でも大量に浴びたら穴が開きそうだし、防具を付けていない頭部に浴びたらかなり痛そうだ。

 しかし壁や床は溶けていないので、生物や魔術的な物品のみに有効な呪詛的なものと見るのがより正確か。

 

「とはいえ重量はほとんどない様子。これなら吹き飛ばすのに難はない!」

 

 剣の周りに渦巻いていた風が広がり、竜巻と化してエフェクトの周りの煙を吹き飛ばしていく。当然レフはそれに気づいて妨害を試みた。

 

「どこの木っ端英霊かは知らんが小癪な!」

 

 アルトリア・ペンドラゴンといえばトップサーヴァントの一角なのだが、レフの評価だからあまり真に受けるべきではないだろう……。

 それはともかく、レフはうっとうしい小娘に大量の黒煙をぶつけて飲み込んでしまおうとしたが、アルトリアは風を集めてその攻撃を流し切った。ついでⅡ世の提言通り、風弾で窓ガラスを割って換気口をつくる。

 

「よし、これで煙を外に出せますね!

 しかしこの魔神柱、ですか。手足がないのが相当不利になってますね」

 

 もし魔神柱に腕や脚があって動けたなら、その巨体で敵を押し潰すこともできるし敵の攻撃を避けることもできるのだが、あの形状ではまったく動けないから逃げる敵は追えないし、回避力もゼロである。自然発生した生物ではなく、魔術でつくられた使い魔か式神の類だと思われるが、作成者はどんなコンセプトでこの醜い肉柱を設計したのだろうか。

 

「まあそのおかげでこちらは助かるわけですが。せぁぁぁぁーーッ!!」

 

 あとはアルトリアが風を操って床付近の煙が濃い空気を窓の外に吹き飛ばせば、代わりに別の窓からきれいな空気が入ってくる。レフが弱体化して煙を出すペースが落ちているおかげで換気はどんどん進み、室内の煙濃度は目に見える速さで下がっていった。

 それを見極めると、他の飛び道具持ちサーヴァントたちもエフェクトの上に上がっていった。ルーラーアルトリア・ヒロインXX・ブラダマンテ・スルーズ・段蔵・カーマ・パールヴァティー・頼光・エルメロイⅡ世といった面々である。

 

「うーん、最後の決戦だというのに出る幕がねえってのはつらいぜ……」

「大丈夫、俺を隠してくれてるのは十分な手柄だから!」

「そりゃまあそうだけどよ……」

 

 金時はマスターがレフの視界に入るのを防ぐという重要な役目を負っていたが、ゴールデン的にはあまり面白い役割ではないようだ。

 しかし彼には飛び道具がなく、腐食性ガスをまき散らす巨大な肉柱相手に素手で殴りかかるのはいかにも無茶なので、残念ながら留守番は当然であった……。

 荊軻も残っているが、こちらは大仕事をやり遂げたので実に満足そうな面持ちである。

 

「A級サーヴァントがこれだけ揃うと壮観だな。では藤宮、いやマスターと呼んでおくか。彼の援護が続いている内にあの肉柱をへし折るんだ」

「はい!」

 

 Ⅱ世が音頭を取って、ルーラーたちが一斉に射撃を始める。サーヴァント9騎によるビームや矢弾、果ては稲妻や火炎といった多彩な攻撃が肉柱を襲った。

 

(…………)

 

 光己はその光景をぼんやり眺めていたが、ふと良いことに気がついた。

 

(もしかしてすごい絶景じゃないかこれ!?)

 

 光己の位置からだと、エフェクトの上に立っている女性陣を、ほぼ真下からの超ローアングルで凝視することができるのだ。アルトリアがロングスカートなのに長ズボンを穿いているのは残念だったが、ルーラーやスルーズの太腿チラリズムと、XX・ブラダマンテ・段蔵のお尻と太腿と股間クロッチは実に素晴らしい。布地が食い込んでいるさまなど最高である。

 

「……青少年の自然な欲求を否定する気はないけど、女神様にバレたらまずいでは済まないんじゃないかな?」

 

 しかしすぐ荊軻に注意されたので、光己は取りやめざるを得なかった。何故かネロもしょんぼりしているが理由は不明である。

 一方エフェクトの上ではサーヴァントたちが真面目に戦っていた。

 

「ぐおおおおっ! 使い魔風情がぁぁぁっ!」

「で、魔術式が人間や使い魔より偉いという価値観はどこから出てきたんだ?」

 

 レフの悲鳴混じりの罵倒に淡々とした口調でツッコミを入れつつ、割と容赦なく扇からビームを撃ってお返しをするⅡ世。

 

「まさか外見じゃないですよねー。それとも能力ですか? 暴力しか取り柄がなさそうなのに。

 ひょっとして性格がいいつもりですか? 愛とか理解とか美味しいごはんって言葉すら知らなさそうに見えますけど?

 ……ところでよく考えたら、もう魅了スキル隠す必要ないんですよね。うふふ」

 

 その尻馬に乗って軽口を叩いたカーマが、これでネロたちとお別れなら、もう体面を取り繕わなくていいことに気づいて邪悪な笑みを浮かべる。()()()()()の手下を魅了するとか、なかなか面白そうな試みではないか。

 

「それじゃいってみましょうか。『愛もてかれるは恋無きなり(カーマ・サンモーハナ)』!!」

 

 カーマが10体ほどにも分身し、それぞれが同じフォームで一斉に花の矢を放つ。

 レフは避けようがなく、すべての矢が命中した。すると鋭い痛みと同時に、不思議な感覚が湧き上がってくる。

 敵であるはずの少女に対して激しい執着心が湧いてきたのだ。これは一体……?

 

「ころさないで……すてないで……わたしを……って、仮にも御柱であるこの私に何を言わせるのだサーヴァントのくせにィィィ! しょ、『焼却式 フラウロス』ゥゥゥ!!」

 

 何か致命的な台詞を吐きそうになった寸前で我に返り、激昂のあまりカーマ1人を狙って宝具を繰り出すレフ。最初に撃ったそれより威力はだいぶ低かったが、範囲を絞っていたおかげで竜巻の壁を突破できて怨敵を火だるまにした。

 

「あ、あづぅぅぅぅぅぅ!?」

「カーマさん!?」

 

 今度はカーマが悲鳴を上げ、エフェクトの上を転がって火を消そうとする。それはあまり効果がなかったが、ブラダマンテの魔術無効化の指輪で消すことができた。

 

「うう、ひどい目に遭いました……やっぱり恋慕の矢なんて使うものじゃないですね」

「カーマ、大丈夫か!?」

 

 よろめきながらも立ち上がろうとするカーマに光己がそう声をかけると、少女はまだ体に力が入らない様子ながらも笑みを浮かべた。

 

「ええ、このくらい大したこと……ありますけど、平気ですよー」

「そっか、くれぐれも無理するなよ」

 

 カーマは全身にひどい火傷を負っていたが、光己は退却しろとは言わなかった。

 彼女がそれを望んでいないことが分かったから。何しろ今はレフが不用意に宝具を使った直後で総攻撃のチャンスなのだ。

 

「じゃあこれでお返しするといいよ。令呪をもって命じる、フルパワーでぶちかませ!」

「わー、さすが私のマスターです」

 

 光己が令呪にこめられている魔力を解放すると、カーマの火傷があっという間に治っていった。しかも魔力も回復している。

 といってもさすがに宝具を今すぐもう1回という気にはなれず、とりあえず機会を窺うカーマ。

 

「それなら私が。『終末幻想・少女降臨(ラグナロク・リーヴスラシル)』!!」

 

 するとスルーズが立候補して宝具を開帳した。7人の戦乙女が7本の槍を投擲し、正しき生命ならざる存在を否定する結界を作り上げる。

 当然ながら「正しき」の対極に位置する魔神柱は大ダメージを受け、肉が煙を上げて溶けていった。しかし図体が大きいだけあって、まだ斃れる様子はない。

 

「では私も! 『恋見てせざるは愛無きなり(トリシューラ・シャクティ)』!!」

 

 パールヴァティーはまだ魔力を充填しきれていなかったが、今は拙速を選ぶべきと判断して追い打ちをかけた。強烈な電撃が肉柱の全身を内側から焼き焦がしていく。

 体の表面もずぶずぶと液化して崩れ落ち始めたところを見るに、そろそろ限界が近いようだ。

 

「ば、馬鹿なぁぁぁ……たかが英霊ごときに、我ら御柱が退けられるというのか!?」

「そうですよ。これがとどめです」

 

 自身が体験している現実を認め切れず呻くレフの真上にカーマが現れる。大きな金剛杵を両手に持って振り上げた。

 

「マスターのリクエスト通り、フルパワーで! ブチかましますッ!!」

 

 そして全力全開の一撃を叩きつけると、ついに肉柱は体を維持できなくなって、泥で作った塔のように潰れ落ちたのだった。

 

 

 

 

 

 

 それでもレフはまだ生きていて、しぶとくも人間の姿で魔神柱の残骸から這い出してきた。右腕と左脚がちぎれており、胴体にも大きな傷がいくつかあって今にも息絶えそうだが、まだ諦めてはいないようである。

 

「おのれ……だがこのままでは済まさん。貴様たちもここで死ぬのだ」

 

 レフがこんなことを言えるのは、彼の左手にまだ聖杯があるからだった。この身体はもう保たないが、サーヴァントを1騎召喚するくらいのことはできる。

 

「そう、ローマの終焉に相応しいサーヴァンがふうっ!?」

 

 しかしその準備が整う前に、容赦ない衝撃が後頭部を強打したため中断させられた。

 

「おおっと、そいつはさせねェぜ!?」

 

 しかもそいつはレフの左手をねじり上げて聖杯を分捕ってしまった。光己の最初の指示を忠実に遂行したのである。

 

「き、貴様ァァァ!」

「ま、後は主役に譲るのが王道ってモンだよな」

 

 レフは顔を真っ赤にして怒りの声を上げたが、その犯人の金時はどこ吹く風といった顔で彼から離れていった。間違って聖杯を取り返されないようにという意図もある。

 その「主役」がレフの後ろから頭をがちっと掴んだ。

 

(な、何だこの気配? まるで本物の悪魔のような)

 

 魔神柱は魔術式だから正真正銘の悪魔というわけではないが、レフが今感じている気配はまさにその悪魔のようだった。そんなサーヴァントがこの場にいただろうか?

 

(それに魔力を吸われて……!?)

 

 サーヴァントがたまにやる魂喰いだと思われたが、仮にも魔神柱にそれをやって平気そうにしているとは一体……?

 謎のサーヴァント(?)がレフの体を持ち上げて立たせる。その正面に誰かが駆け寄ってきた。

 

「レフ教授、いえ、レフ・ライノール! カルデアの皆さんの仇です!」

「マシュ!?」

 

 彼女には珍しい、怒りの表情をはっきり浮かべている。盾をかざして突っ込んできた。

 その意図は明らかだ。

 

「シールド・チャァァーーーージ!!!」

「ぐほぉ!」

 

 盾ごと体当たりしてぶん殴る攻撃である。後ろから謎のサーヴァント(?)が頭と背中を押さえているので、レフは吹っ飛んで衝撃をやわらげることができず、全部ダメージになってしまった。

 しかもマシュはそのまま盾をレフの体に押しつけ続けている。その体勢で、レフの後ろの何者かが口を開いた。

 

「まあ何だ。悪魔をブチ殺すのに1番いい方法って、悪魔の力で死ぬまでブッ飛ばすことだよな」

 

 口調はのんびりしているが、その奥には言葉通りの感情がこもっていた。レフの頭を掴んでいる手に力が増す。

 いうまでもなく、悪魔の翼の力を行使した光己である。「人の魂を買おうとする者」という世間一般での認識により、吸収(ドレイン)スキルが超強化されて魔/闇属性のエネルギーとの親和性も上がったのだった。

 魔神柱の魔力を吸ったせいか肌が黒ずんでいるが、特に不調はないどころかパワーが増しているようだ。

 

「おまえさっき『聖杯を相応しい愚者に与え、その顛末を見物する愉しみ』って言ったよな。そんなことのために何万人もの人たちがひどい目に遭った」

 

 カルデアの人たちのことはマシュが言及したから処置済みとして、ネロを初めとしたローマの人々の分がまだ残っている。きっちり落とし前をつけさせないと気が済まない。

 

「というわけで……てめーのつけは聖杯だけじゃ払えねーぜッ!」

 

 微妙にアレな宣告をしつつ、光己がレフの後頭部をぶん殴る。レフの鼻がマシュの盾に押しつけられてぐにゃっとひしゃげた。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァーッ!!」

 

 どこぞの不良高校生のような掛け声を上げながら、両拳でひたすらレフを殴り続ける光己。目標は今回の内戦での死亡者数、概算で2万発だ。

 

「いやさすがに2万発は無理か。

 まあいいや、あとは地獄で紅い閻魔様にでも裁かれやがれぇぇぇーーーっ!」

 

 光己が最後に渾身の力をこめて殴りつけると、レフはついに力尽きて消滅した。

 

 

 

 

 

 

「……敵性反応、消滅しました。戦闘終了です。

 先輩、お疲れさまでした」

 

 レフが完全に消滅したのを確認すると、マシュはふうっと肩の力を抜いて、盾の縁を床に置いた。

 光己も角と翼と尻尾を引っ込める。すると肌の色も元に戻っていった。

 

「ああ、マシュもお疲れさま。仇討ちしたわけだけど気分はどう?」

 

 どうやらマシュがレフを殴ったのは光己の提案だったようである。

 マシュはしばらく沈黙して言葉を探していたが、やがて訥々とした口調で答えた。

 

「……そう、ですね。仇討ちとか復讐とか、私の性にはあまり合わないみたいでしたから、死亡した皆さんの代弁をするつもりでやりましたけど……ちょっとすっきりしたというか、胸のつかえが取れたというか、そんな感じです」

「そっか。俺も自分で殴る必要はなかったけど、人間理屈だけじゃないからなー」

 

 光己はレフを殴る時も、顔を見られないようにずっと彼の後ろにいたのだが、それほど能力を隠しておきたいなら、最後までマシュと金時の後ろに引っ込んでいれば良かった。しかしレフが人類やサーヴァントたちを言いたい放題に罵っているのを聞いている内に、1発は我が拳で殴ってやらないと収まらなくなったのである。

 

「でも最後のマスターとしてはあんまり良くないことだろうから、今後は控えるべきかなあ。率先垂範的なことはもう十分だろうし」

「そうですね。私としては先輩は私の後ろにいてほしいです」

「んー、やっぱりそっか」

 

 光己とマシュがそんなことを話していると、金時がついっと2人の前に現れた。

 

「オレは2人ともよくやったと思うぜ。毎回やることじゃねぇってのも合ってるがな。

 ほれ、今回の戦利品だ」

「おお、サンキュー。あの時は1歩でも遅れてたら何かヤバいサーヴァント呼ばれてたみたいだからなあ、やはりゴールデンは頼れる男だった!」

 

 光己がそう言って金時が差し出した聖杯を押し頂くと、金時は豪快に笑った。

 

「なぁに、オレも最後の決戦で何もしなかったなんて、恥ずかしいことにならずに済んで良かったってモンよ。

 ……って、もう体が薄れてきたじゃねえか。特異点修正ってのは気が早ぇんだな」

 

 金時の体が足元から消え始めている。勝利の余韻にひたる時間くらいくれてもいいのに、誰がやっているのか知らないがせっかちなことだった。

 カルデア勢が急いで光己のもとに駆け寄り、ネロも目を白黒させながら近づいてきた。

 

「な、何事だこれは!? まるで先ほど消えた神祖やブーディカと同じような……やはりそなたたちもそうだったのか」

 

 ネロはどうやら、カルデア一行がサーヴァントであることに薄々気づいていたようだ。今まで確認せずにいたのは、自軍の将軍たちがみんな外国人どころか人間ですらないという事実を突きつけられるのが怖かったからだろう。

 

「……はい。今まで騙しててすみませんでした」

 

 お互い得になるからとはいえ、身分詐称していたことは事実だ。光己は最低限の礼儀としてそう謝ったが、今のネロにとってそんなことはささいな問題だった。

 

「いや、そのおかげで余はとても心強かったし、楽しかった。そう、楽しかったのだ。

 だから咎める気などない、むしろ礼を言わせてくれ」

「はい、俺も楽しかったです。

 俺たちはこれで帰りますが、でも陛下のことは忘れません」

「そうか、そう言ってくれるか。なら笑顔で見送らねばな!」

 

 ネロは仲間たちが突然みんないなくなるというショックと喪失感でかなり取り乱した様子だったが、光己の言葉で気を取り直したようだった。

 その様子を見た金時と頼光が別れの言葉を告げる。

 

「そうそう、勝ったんだからしんみりしてちゃいけねえ。明るく別れようじゃねえか!

 それじゃあな、皇帝陛下、大将、嬢ちゃん。縁があったらまた会おうぜ」

「お世話になりました。またいつかお会いしましょう」

 

 2人の姿が薄れて消えると、次は荊軻とエルメロイⅡ世が前に出た。

 

「皇帝を4人も討てたとは、今回の現界は実に素晴らしかった。感謝の言葉もないな。

 また会える日が来ることを祈っているよ」

「結果良ければすべて良しというところか。そちらの運が良ければまた会おう」

 

 荊軻は心底満足そうだったが、Ⅱ世はカルデアに呼ばれたら頭痛&胃痛案件になるのを確信しているのか、ちょっと腰が引け気味であった……。

 

「短い間でしたが、お世話になりました。お元気で」

 

 最後にパールヴァティーがそう言って退去すると、カルデアから通信が入った。

 

《君たちも帰還が始まる! 1ヶ所に固まってくれ》

「は、はい!」

 

 カルデア本部で機器を操作しているロマニからだった。実際光己やマシュたちも姿が薄れ始めている。

 ネロは最後の言葉を述べるため、すっと姿勢を整えた。

 

「……おそらくそなたたちは、またここで起こったような事件を解決しにゆくのだろうな。

 苦難もあるかもしれぬが、しかし神祖が言ったように世界(ローマ)は永遠だ。ゆえに、そなたたちの道行きには必ずやローマの助けがあるはずだ。

 だから、別れは言わぬぞ。礼だけを言おう。

 ―――ありがとう。そなたたちの働きに、全霊の感謝と薔薇を捧げる、とな!」

 

 そしてまさに大輪の薔薇のように眩しく笑って、手を大きく振りながら光己たちが去っていくのを見送ったのだった。

 

 

 

 ―――永続狂気帝国セプテム 定礎復元。

 

 

 




 アルテラは欠場です。主人公とマシュつまりカルデア側でレフのとどめを刺すという展開にしたかったので。その割にネタギャグに走ってますが、シリアスになりすぎたくなかったということでひとつ。


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