FGO ANOTHER TALE   作:風仙

80 / 301
第80話 オルガマリーの傷心

 光己がコフィンを開けて外に出ると、いきなり女の子に抱きつかれた。

 

「旦那さまぁぁぁっ! やっと、やっと帰ってきて下さったのですね。わたくしずっと寂しかったですぅぅぅ!!」

「うわっ!?」

 

 しかも女の子は半泣きで、光己はどうしていいか分からなかった。

 とりあえず軽く抱き返しながら様子を窺うに、どうやら清姫が自分と会えた嬉しさのあまり、つい慎みを忘れて飛びついてきたということらしい。

 ……文字にして述べてみるとすごくしょっているように見えるが、そうとしか解釈できないのだから仕方がない。

 

「んー、ごめんな清姫。仕事が長引いちゃってさ」

「はい……」

 

 髪と背中を撫でながらできるだけ優しい口調でそう謝ると、清姫は別に怒っていたわけではないからか、すぐおとなしくなってくれた。

 とはいえ寂しがらせたのは事実だから、しばらくこのままでいてあげたいところだが、やっぱり仕事は先に済ませておかねばならない。

 

「まだ仕事残ってるから、ちょっと待っててくれるか?」

「……はい」

 

 清姫は実情はどうあれ良き妻であろうとしている身なので、嘘偽りではなく本当に仕事が残っているのだと理解すると、すぐ光己のそばから離れた。

 光己はもう1度彼女の頭を撫でてから、まずはトップに帰還と任務達成の報告をしようとオルガマリーの姿を探したが何故か見当たらない。

 

「……あれ? 所長はどこに?」

 

 するとロマニは気まずげに目をそらしたが、ダ・ヴィンチは何も気にかけずに事情を説明してくれた。

 

「ああ、ついさっきまでここにいたんだけどね。レフ教授、いやレフ・ライノールが裏切者、あるいはスパイだったことにショックを受けて卒倒してしまったんだ」

「えええっ!? だ、大丈夫なんですかそれ」

 

 びっくりした光己が思わず半オクターブほど高い声で聞き返すと、TSもとい万能の天才はまあまあと手を振って彼に落ち着くよう促した。

 

「ああ、もう目は覚ましたから大丈夫だよ。今は私室で休んでるけど、ヒルドについてもらってるしね」

「そうですか、ならいい……いえ良くはないですけどでも、何でまたそこまで?」

 

 部下がこともあろうに、スパイどころか全人類殺害犯の手下だったというのは確かにショックが大きいだろうが、卒倒して寝込むというのはちと大げさではあるまいか。現にロマニやダ・ヴィンチやマシュはしゃんとしているし。

 

「いや、それが所長にとってレフはただの部下じゃなくてねえ」

 

 もともとまだ若くて経験も足りないオルガマリーにとって、カルデアという任務重大な大組織のトップを務めること自体が大変だったのだが、人類滅亡が観測されてからは関係各所からの抗議や圧力なども来るようになった。ストレスがたまってトイレで嘔吐したり、精神安定剤に頼ることもあったくらいである。

 部下に高圧的に接してしまうことが増え、陰口を叩かれたりもしていた。

 そんな中で、オルガマリーの主観では唯一味方で信頼できたのがレフだったのである。親兄弟がいない彼女にとっては父親のような存在ですらあった。

 ―――なおオルガマリーの心痛には実父が非人道的なことをしていたという罪悪感や、マシュに復讐されるかもしれないという恐怖も含まれているのだが、それは今光己に語ることではないので言わなかった。

 

「そうだったんですか……」

 

 レフがオルガマリーにそこまで親身に接した理由は分からないが、そのような関係だったのなら彼女が倒れてしまってもおかしくない。それどころか所長職を続けられるかどうか怪しいレベルである。

 

「しかしレフが魔神柱だったのを見抜けなかったとは、このレオナルド・ダ・ヴィンチ一生の不覚! ちょっと反省しないといけないね」

 

 口調は冗談めかしているが、内心は忸怩たる思いがあるだろう。光己はそう思ったが、口にするのは避けた。

 

「だから、君とマシュがレフをボコってくれたのは痛快だったね。本来なら今回の特異点修正成功を祝って祝賀会の1つでも開くべきところだけど、それは所長が立ち直るまでお預けにしておこう」

「そうですねえ」

 

 トップが心痛で寝込んでいるのにパーティーをするわけにはいかない。彼女が1日も早く快癒してくれるのを願うばかりである。

 

「そういうわけで、一休みしたら慰めに行ってやってくれないかな? 君は魔術師でも科学者でも医者でもない素人の上に新入所員だけど、だからこそ所長が1番気楽に話せる相手だからね」

「俺がですか!? そりゃまあ嫌じゃありませんけど」

 

 そこに医療部門の責任者がいるのにホワイ!?と光己は思ったが、万能の天才が「医者でもない」のを理由の1つに挙げているのだから仕方がない。ロマニも黙っているからその通りなのだろう。

 

「分かりました。それじゃ夕ご飯の後にでも。

 それと次の仕事の時までに、背中と尾骶骨の部分が開閉式になってる礼装お願いします。全体に伸縮性があるとなおいいですね」

 

 今も光己が着ている服は、背中と尻の上の部分に大きな穴が開いていて非常に恥ずかしい。戦闘中ともなればいちいち脱いだり着たりしている暇がないことも多いので、早急な対処が必要だ。

 ローマでは礼装の機能はほとんど使わなかったが、必要になる時もあるだろう。

 

「ああ、それはそうだねえ。分かった、すぐに取りかかろう。

 それと聖杯は預けてくれるかな?」

「あ、はい」

 

 ダ・ヴィンチに聖杯を渡したら光己はここですることはもうないので、仕事の邪魔にならないように退出することにした。

 清姫を初めとしたサーヴァントたちも一緒に部屋から出る。

 

「あ、そういえば清姫たちってずっと管制室に詰めてたの?」

「いえ、いつもは別の仕事をしているのですが、今日は最後の決戦だからということで特別に」

「へえー、たとえばどんなこと?」

「はい、わたくしは花嫁修業を兼ねまして、調理や掃除や洗濯の手伝いを主に。ヒルドさんとオルトリンデさんは、魔術で施設の修繕やドクターの補助をしてらっしゃいますね。

 王様はふんぞり返ってご飯食べてるだけですが」

 

 そこで清姫は皮肉をこめたまなざしでアルトリアオルタをじろーりと睨んでみたが、黒い王様はまったく意に介した様子はなかった。

 まあ元国王にその手の技能や意欲を求める方が……いやブーディカは料理上手だったけれど。

 なお清姫の料理スキルは、家庭料理なら上手に作れるが一流旅館で出すような上等な食事を大量に作るような仕事は、手が回り切らなくて一品作る間に二品ダメにするといった感じである。掃除と洗濯の方はいわゆる専業主婦が何とか務まるかなというレベルだ。

 出自と実年齢を考えればかなりの好成績といえよう。

 

「そっか。清姫もオルトリンデも、一応オルタもお疲れさま。

 もちろんマシュも段蔵もブラダマンテもスルーズもルーラーもXXもアルトリアもカーマも、ずっと手伝ってくれてありがとう。

 俺は個室に帰って一休みするからみんなも休憩……でいいかな?」

 

 光己がそう言って解散を提案すると、清姫がまた抱きついてきた。

 

「ではますたぁ、一緒にお風呂に入りましょう! カルデア大浴場というのができてますので、ぜひご一緒に」

「……! 清姫さんだけに任せるわけにはいきません。私たちも入ります」

 

 清姫の狙いを察したスルーズとオルトリンデがすかさずインターセプトに入る。無論マシュも黙ってはいなかった。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい3人とも。まさか先輩を女風呂に入れるつもりですか?」

「え? え、ええ、そうですね。人間の所員の方に見られたら大騒ぎになるのは分かりますが、そこはそれ。入口に『清掃中』の看板を出しておけば良いのでは」

「それは清姫さんが大嫌いな『嘘』なのでは?」

「ぐはっ!」

 

 欲望に走るあまり、タブー中のタブーを自分で破ってしまった清姫が盛大に吐血する。当然に、光己が女湯に入るのはお流れになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 光己は自室に戻るとまずは軽くシャワーを浴びてから、丸4ヶ月間顔を合わせていなかったオルトリンデと清姫に、ローマでの思い出話などをして旧交を温めた。

 なお顔を合わせていないのはヒルドとアルトリアオルタも同様だが、ヒルドはまだオルガマリーの部屋にいるので後回し、オルタは絆レベルが足りないせいか部屋に来てくれなかった。寂しみ。

 夕食の後は、ダ・ヴィンチに頼まれた通りオルガマリーを慰めに行くことになる。

 夜間に女性用個室が並んでいる区画に行くのだから2人についてきてもらっているが、部屋の中までは来てもらわず先に帰ってもらうつもりだ。

 

「しかしカウンセラーでもないただの高校生には荷が重いよなあ……何を話せばいいのやら」

 

 ロマニはプロなのだからカンペの1枚くらいくれればいいのに、気の利かない話である。

 まあ繰り言を言っていても仕方ないので、観念してドアホンのボタンを押す。

 

「はーい、どちら様?」

 

 するとオルガマリーではなくヒルドの声が聞こえた。まだ寝ているのだろうか?

 光己が名乗るとドアが開いたので、光己は予定通りオルトリンデと清姫には帰ってもらって1人で中に入った。

 

(そういえば女の子の私室に入るのって初めてか?)

 

 なんてことを考える余裕は残念ながらなかった。オルガマリーは起きてはいたが、ベッドにぼうっと座っている彼女は一目で分かるほどに虚脱して、抜け殻みたいだったからだ。

 

「マスター、お仕事成功おめでとう! さっすがあたしたちのマスターだね!」

 

 ヒルドは内線電話か何かで報告を聞いていたのか、光己たちが特異点修正に成功したことを知っていた。ただ空気を読んだのか大きな声では言わず、彼のそばに来て小声で言っただけだった。

 

「ん、どう致しまして。ヒルドも留守番お疲れさま。

 所長はどんな感じ?」

「うん、見た通りだよ」

 

 簡潔にして的を射た評価であった。やはりパンピー高校生では力不足だと光己は思ったが、ヒルドは「じゃ、部屋の外で待ってるね」と軽い口調で言い残して出て行ってしまった。

 女の子の私室で2人きりになったわけだが、甘ったるい雰囲気など微塵もないどころかひたすらに重い。光己が困って立ちすくんでいると、オルガマリーがさすがに気を遣って声をかけてきた。

 

「ロマニかダ・ヴィンチに言われて来たのね。とりあえず座りなさい」

 

 そう言って自分の傍らをぽんぽん叩く。隣に座ってもいいということのようだ。

 光己がおっかなびっくりながらもそうすると、オルガマリーは力なくため息をついた。

 

「貴方がここに来たということは、レフを倒して特異点修正ができたっていうことね。お疲れさま。

 貴方は本当によくやってくれてるわね……それに比べて私は何やってるのかしら」

 

 当人も今の状況に納得しているわけではないようだ。ただ立ち上がる力が湧いてこないのだろう。

 

「……本当、何やってるのかしらね。アニムスフィア家の当主として、カルデアの所長として、人類の未来を守ろうと思ってずっと頑張ってきたけれど……。

 誰も認めてくれなかった。褒めてくれなかった。生まれてからずっと、ただの1度も。

 信頼してた、いえ依存してたレフですら味方じゃなかった」

 

 昏い眼で虚空をぼんやり見つめながら、ぼそぼそつぶやくオルガマリー。光己にはまだかける言葉が見当たらなかった。

 

「親の七光り、実力が足りてない、そう陰口を叩かれたこともあるわ。

 ……そうなんでしょうね、実際人理は燃やされてしまったのだから」

 

 そこでまたオルガマリーは重いため息をついた。

 

「でも…………でも。もし人類の中に私の味方なんて誰1人いないっていうのなら、私は何のために頑張ってきたんだろう……」

「ぶっ!?」

 

 光己は噴き出した。気持ちは分かるが、ちょっと落ち込み方が酷すぎるのではあるまいか、この所長さん。

 

「いやいやいやいや、待って下さいプリーズ。味方ならいるでしょうほらここに」

「…………え? あ、そうね。確かに貴方は味方だった。ごめんなさい」

 

 光己は能力はともかくスキルとメンタルは一般人だが、認めて褒めてくれたし味方なのも事実だ。オルガマリーは素直に非を認めて謝罪した。

 

「分かっていただければいいです。

 でもあれですか。所長ほどの人が褒めてもらったことがないなんて、やっぱ名門って教育厳しくて要求水準高いんですかね」

「……それはあるわね。庶民から見れば羨ましかったり妬ましかったりする点があるのは認めるけど、いいことばかりじゃないわ。

 それより貴方、今『所長ほど』って当たり前のように言ってくれたわね。ありがとう」

 

 おべんちゃらで言ったようには聞こえなかった。彼は竜人になっても素でサーヴァント並みの力を持つようになっても、自分のことを認めてくれているのだ。

 

「そりゃまあ、前にも言いましたけど俺に所長のマネができるとは思えないですからねー。

 パワハラは良くないと思いますけど」

「パワハラ?」

 

 オルガマリーが軽く首をかしげると、光己はぐっと拳を握った。

 

「はい。上司のストレス解消のために部下をいびるとか怒鳴るとか、まして暴力なんて論外ですね。ブラックダメ、絶対」

「……」

 

 どうやらこの少年、初対面の時にひっぱたかれたのをまだ覚えているようだ。

 しかしこれについてはオルガマリーにも言い分はある。

 

「あれは貴方が居眠りしたのが悪いんでしょう。大事な説明会だったんだから」

「確かに居眠りしましたけど、それは霊子ダイブで夢遊状態だったせいですから。十分な休憩を入れない過密スケジュールは悪い文明」

「ぐぬぬ」

 

 光己の主張は妥当で反論の余地がなく、オルガマリーは唸るしかない。

 すると彼は新入所員のくせに調子に乗ってきた。

 

「理想は週20時間労働くらいですかねー。美人で気立てがいい娘が大勢いてくれればなお良し」

「そんな職場があるかあああ!」

 

 オルガマリーは怒りのあまり、名門魔術師たる者の慎みも忘れて咆哮したが、光己は退かなかった。

 

「いやいや、日本の江戸時代の武士は1日3時間労働でしたから。

 農家や商人はそうでもなかったですが」

「1日3時間労働……いいわねえ」

 

 オルガマリーもたくさん働くのが好きなわけではないのか、遠い目をしてほうーっとため息をつく。

 だいぶ元気が出てきたように見えるので、光己はちょっと語ってみることにした。

 

「それはそうと、俺が言うのも何ですけど、所長はもっとゆるくしてもいいと思いますよ」

「ゆるく?」

 

 意味がよく分からなかったので、オルガマリーはまた首をかしげて聞き返した。

 光己は「俺が言うのも何ですけど」と言ったが、オルガマリーは彼が言うことを軽く扱う気はない。認めてくれている人だし、時々バカを言うが地頭はいいように思うから。

 

「所長はさっき『味方はいない』って言いましたけど、敵か味方かって区別ならドクターもダ・ヴィンチちゃんも間違いなく味方ですし、他の所員の方々だって直接ケンカ売ってきたり仕事サボったりするわけじゃないですよね。ならとりあえず味方ってことにしてもいいと思うんですよ」

「…………貴方って要求水準低いのねえ」

 

 オルガマリーはさっき光己が出した言葉を使ってそんな感想を述べた。

 しかしまあ、味方にも程度の差があると考えれば頷ける点はある。

 

「でも一理はあるわね、ありがとう。

 ところで喋り詰めでのど乾いたでしょう。紅茶でも淹れるわ」

 

 オルガマリーはベッドから立って、みずからお湯を沸かしに行った。そのくらいの元気は出たようだ。

 光己もテーブルに移動して待っていると、オルガマリーがお盆の上にケトルとカップとお茶菓子を乗せて戻ってくる。

 それらをテーブルの上に並べて、カップに茶を注いだ。

 

「じゃ、いただきます」

「ええ、どうぞ」

 

 そのまましばらく静かにお茶とお菓子を味わっていたが、やがてオルガマリーがまた沈黙を破った。

 

「ところで貴方、今日はもうすることないんでしょう? 寝るまで一緒にいてくれないかしら」

 

 多少元気が出たといっても、そんなすぐに完全回復はしないわけで。オルガマリーは(彼女の主観では)唯一自分を認めてくれている人にもう少しそばにいて欲しかっただけなのだが、若い男女が2人っきりの場でこの発言が誤解を生まないわけがない。

 

「えっと、それはつまり夜のお誘いですか? 後くされがないなら喜んで!」

「んなわけあるか、このすかぽんたんーーーッ!!」

 

 再び吠えたオルガマリーは、この不埒者の鼻面にオルガマパンチを叩き込んでやろうと思ったが、彼を殴っても拳が痛いだけで効き目はないのでやめておいた。

 それに冷静に考えれば、彼が誤解したのも無理はない。仮に今夜何もなかったとしても、明日の朝に彼が部屋から出るところを他の所員に見られたらアウトである。

 

「……そうね、ここじゃまずいからレクリエーションルームに行きましょう。

 そこで眠たくなるまで遊び倒すのよ」

「え!? ちょ、何で!?」

「これは正式な業務命令です。拒否は認めません」

「パワハラだーーー!」

 

 光己は全力で抗議したがオルガマリーは全面的にスルーして、彼の手をつかんで引っ張っていく。

 ヒルドはそんな2人の少し後ろをついていきながら、クスッとおかしそうに微笑むのだった。

 

 

 

 

 

 

 光己がふと気づいた時、そこはカルデアのレクリエーションルームではなく、昔の日本の街中の路上だった。

 

「!!!!????」

 

 とりあえずぱぱっと左右を見回してみる。建物の造作や通行人の服装から見ると、戦国時代か江戸時代のようだ。

 何事なのだろう、夢でも見ているのか?

 ついで後ろから若い女性の声が聞こえた。

 

「ちょ、ちょっとこれ何よ。まさかまたレイシフトしちゃったの? 管制室にいたわけでもないのに」

「所長!?」

「藤宮!?」

 

 間近でびっくり顔を見合わせる光己とオルガマリー。ただしヒルドの姿はない。

 

「えっと、何なんでしょうこれ。2人で一緒の夢見てるのか、それとも冬木の時みたいに知らない内にレイシフトしてきちゃったんでしょうか」

「……………………多分その両方ね。経緯はまったく分からないけど、私たちは夢を見てる間に精神だけ、どこかの特異点に来てしまったのよ」

「そんなことがあり得るんですか!?」

 

 信じがたい話だ。もっとも当のオルガマリーも根拠があっての発言ではなく、感覚と推測で言っただけなので自信はない。

 なお2人が着ているのは普段の制服である。レクリエーションルームでは私服だったが、夢だけあって多少は融通が利いたようだ。

 

「分からないけど、そうとしか考えられないということね。

 でも1人きりじゃなくてよかった」

 

 もしここが特異点なら、冬木の時のように聖杯戦争が行われている可能性が高い。もし敵対的なサーヴァントに出会ってしまっても、光己がいれば生き残る目はあるのだ。

 

「そうですね。とりあえず情報収集と……お金が欲しいですね」

「お金?」

 

 部下の俗っぽい発言にオルガマリーがちょっと白っぽい目を向けると、当人はむしろ大真面目に持論を主張してきた。

 

「そりゃまあ、ただの夢だったら食事も睡眠もいらないでしょうけど、特異点だったらいりますよね。メシ食ったり宿屋に泊まったりするには代金がいるんですよ!」

「そ、そうね、悪かったわ」

 

 プライベートではあまりお金に困ったことがないオルガマリーには切実さに欠ける話だったが、彼の言うことは正しい。

 しかし情報はともかく、お金はどうやって手に入れるのだろう。

 

「うーん、そうですねえ。まずはここがいつのどこなのか知りたいとこです」

 

 見た感じ街は平和で、冬木やフランスの時のような異常事態にはなっていないようだ。

 街の向こうには低い山があり、その一帯が丸ごと城砦になっている。いわゆる山城というやつだ。

 

「つまりここは城下町ってことですね。ならどっかに手掛かりがあるはず」

 

 通行人に聞く前にちょっとは自分で調べておこう。そう考えた光己はオルガマリーを促して街路を適当に歩いていたが、とある武家屋敷っぽい家の表札に一発満額な文字を見つけた。

 

「長尾、って……もしかして景虎の故郷じゃないかここ!?」

「な、何ですってーーー!?」

 

 2人は思わずしゃっくりめいた驚きの声を上げてしまうのだった。

 

 

 




 さて、主人公とオルガマリーは無事景虎ちゃんに会えるのでしょうか……?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。