五百年の約束   作:シバヤ

1 / 23
はじめまして、シバヤと申します
お楽しみ頂けたらと思います


第1話

「なんで──がこんな目に……儂がなっていれば!」

「そう言うな──。──はいつ死ぬかわからぬ。それに皆が救われるなら──ごほんっ、けほっ」

「もういい、喋るんじゃねぇ!余計辛くなるだけだ……儂が、絶対に作り上げてみせる!病魔だろうが怨念だろうが、全てを断ち切ることが出来る刀を! 」

「きっと──ならできる、病気がなく、皆が笑えるようにしてくれ。──との約束だ」

「ああ、約束だ!何代にわたるかわからねぇが絶対に!……なぁ、その、──も役目を終えて、儂も生まれ変わってたら……その時は儂と────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「またあの夢か……」

 

一人の男が一人の女の子に約束をしているところを夢で見る

お互い名前を言ってるけどそこは聞こえないし、最後に何かを言いかけて目覚めてしまう

言葉遣い、周りの景色、服装、他にもいろんなところを見た結果かなり昔というのはわかった

けれどなんでそんな夢を俺は見ているんだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の名は操真(そうま)久遠(くおん)

穂織(ほおり)の街にある鍛冶屋操真の一人息子で高校生

操真家は古くから伝わり約五百年以上は続いている伝統ある家でこの街でもそれなりに有名なんだ

それに鍛冶屋と言っても少し前の代から陶芸やガラスの製造、金属加工なんかいろいろと始めているんだけどな

最初は刀や武具だけだったんだけど戦がなくなり、農具と移ったりしたけどそれでも収入が足りないからという理由でいろんなものを作ることになったらしい

 

「おう久遠、起きたか」

「父さん、おはよう」

 

操真(そうま)(かなめ)、俺の父親で鍛冶屋操真のただ一人の職人

俺は見習いで修行中だからまだ数えられないんだ

腕は本物で街の誰もが評判をよく言うほど

ちなみに剣の腕も本物だ

ご先祖さま曰く最高の武器を作るためには、最高の強さを持っていなければならない

と言ってたらしく、操真家は代々強さも磨いている

 

母は先生で街の外で働いていて、祖母と祖父は二人で今旅行しているためいない

だから今は父さんと二人で暮らしている

 

「朝の手伝いはいいから朝ごはん頼むなー」

「わかった、いつも通りでいいよな?」

「おう、任せる」

 

いつもは朝は手伝わなくてもいいぐらい依頼が少ないんだけど、今の時期はかなり忙しいから俺も手伝ってた

それは明日この街で春祭りが行われるからだ

 

春祭り、それは戦国時代の戦が始まりで、甲冑武者や馬に跨り街中を練り歩き、最後に建実神社で祈祷をするんだ

他にも巫女姫様が舞を奉納したり、御神刀である叢雨丸の担い手を探すアーサー王伝説に似たイベントなんかもあったり海外からの観光客に人気があったり

叢雨丸っていうのは穂織の土地神から授かった神刀のことだ。それで昔妖怪を斬り、穂織を救ったとかなんとか

 

それでうちがその祭りで使う甲冑や道具を作ったりするからこの時期はとても大変でね

それがやっと終わってこの後運びに行ったりしなきゃいけない

っと、いろいろ思ってるうちにご飯ができたか

 

「父さーん、ご飯できたぞー」

「これが終わったら向かうー」

「そう言って次の作業に入っていつまでも来なかった時があっただろ!先にご飯食べろ!」

 

この人は根っからの仕事人で一度作業入ると止めない限りいつまでも仕事してるからな……

 

「「いたたぎまーす」」

「それじゃあこの後は頼むな」

「わかったけど、父さんは?」

「オレは寝る!徹夜で疲れてるからな!」

「威張っていうんじゃねーよ……」

 

でもほとんどこの人一人でやったからなぁ

そこは口出しできないか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、報告するってなると玄十郎さんにだよな

でも祭りってこともあるし先に建実神社に行って次に志那都荘に回るか

 

「……ん?」

 

なんだ?なにか空中を浮かんでいるように見えるけど……って女の子!?

もしかして幽霊か!?

……まて、俺はあの子をどこかで見たことがある気がする……

それにとても懐かしい気も……

 

「あれ、ちょっと目を離したらいなくなった。でも知らないはずなのに知っている気が、いや、絶対に知っている」

 

ともかく、これは仕事を終えてから考えないとな

はやく建実神社に向かわないと!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む?何か懐かしい気配を感じたが……気のせいか」

 

うむ、そうじゃな。五百年も経っておるから生きているわけないか

それにしてもあやつのことを思い出すなんてのう

操真の者は元気にしておるのは知っておるが

 

「だいたいあやつはいつも約束は守っておったのにこんな時はいつまでたっても約束を果たしに来ないなんて意地悪なのじゃ!……って吾輩は何を期待しておるのか。生まれ変わりなんて人には無理な話だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり神社の方にいたのか!

回り道しなくて正解だったな

 

「玄十郎さん!」

「おお、久遠君か」

 

穂織でも有名な旅館、志那都荘(しなつそう)の大旦那さんの鞍馬(くらま)玄十郎(げんじゅうろう)さん

今回の春祭りの実行委員長であり、依頼主でもある

還暦を過ぎてるって言うのにまだまだ若々しく、全く衰えが感じない

 

「君が来たということは品物が出来たということかな?」

「はい、それで報告しに来ました。あとは品物を運ぶだけです」

「そうか、あとはこちらでやっておこう。要くんと君だけでは大変すぎるからな」

「それは俺もやりますよ。製作作業は父さんがほとんどやりましたので」

「うむ、よろしく頼むな」

 

俺の仕事とといえば傷がないか、不具合がないか、そういうチェックがほとんど

修行中の身では補佐が精一杯だ

 

甲冑はそれなりに重い

それを俺一人でいくつも運ぶってなると……無理だ

例え父さんがいてもそれなりに時間かかるからな

 

「おや、操真君じゃありませんか」

「あ、常陸さん。常陸さんもお手伝いで?」

「はい。芳乃様は明日に向けて舞の練習をなされてるので、ワタシはこちらのお手伝いに」

 

俺の同級生のひとりで朝武(ともたけ)家に仕えている常陸(ひたち)茉子(まこ)さん

常陸家は忍者とかなんかって聞いたことあるんだけど本当なのか?

ちなみに芳乃様と言うのは朝武家の一人娘で建実神社の巫女、朝武(ともたけ)芳乃(よしの)様のことだ

穂織の人は親しみを込めて巫女姫様という

もちろん俺もそう呼んでる

 

「そうなのですか。俺は前日までが仕事だけど、巫女姫様は当日が本番だからな」

「そういえば甲冑も全て操真君の家でのお手製のものでしたね。それはお疲れ様でした」

「俺は見習いで何もしてませんよ。全部父さんがやりましたから」

「それでも操真君もお手伝いなされてますよね」

「そりゃあまぁそうですけど……」

「あは、本当いつも素直じゃないですね」

「お、俺はこういう性格なんです」

 

常陸さんは少し苦手なんだよな

なんというか、口で勝てないしいつの間にか弱み握られてそうで

別に仲が悪いって訳じゃないし、こう勝負で絶対に勝てない相手ってだけだ

 

「お、俺そろそろ行かないと!仕事がまだ残ってるし!」

「あっ、これは逃げましたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荷物も運び終わり、今日の仕事は無事達成

後は明日の祭りを満喫するだけだ

時刻は五時ちょい過ぎだから田心屋(たごりや)にでも行くか。こっからすぐ近くだし

 

俺も父さんも甘党で、田心屋に行けばパフェをお持ち帰りしないと本気で怒られる

お互いそれくらい甘いものが好きなんだ

 

「こんにちはー」

「いらっしゃいませ!あっ、操真先輩!」

「こんにちは、小春ちゃん」

 

田心屋でちょうど出迎えてくれたのは、玄十郎さんの孫の小春ちゃん

兄の廉太郎とは友達で小春ちゃんとも長い付き合いになっている

まぁこの街が小さいから付き合いが長くなるのは当然ってこともあるけど

 

「お好きなお席にどうぞ!」

「ありがとう、今日はプリンと和紅茶を頼めるかな?それとお持ち帰り用のパフェを一つ」

「お持ち帰りはおじさんの?」

「そうだよ。田心屋に行くと何故か毎回バレるからね。最初は何度か本気で怒られて……」

「あはは、おじさんらしいね。少々お待ちください」

 

ここのパフェも美味しいけどプリンもいい

わらび餅なんてわらび粉から作ったこだわりの逸品だからな

何度来ても飽きることは無い

 

少ししてきたプリンを食べながら考えていた

あの女の子のこと

あれは……そうだ、夢で出てきた女の子と同じ顔だった

何故数百年前の子がここにいたんだ?

浮いていたし幽霊……いや、まだ死んではいない……はず

何故かわからないけどそういうのがわかる

でも考えたって何もわからん

それに長居する訳にはいかないしそろそろお暇しますか

 

「いつもありがとね、くーちゃん」

「芦花さん、その呼び方はやめてくれ」

 

俺を女の子みたいな呼び方で呼ぶのはこの店の店主、馬庭(まにわ)芦花(ろか)さん

面倒見がいいお姉さんなんだけど、名前が久遠だからくーちゃんと言ってからかってくる

 

「だってくーちゃんは顔もちょっと女の子っぽく中性的じゃない。だからくーちゃんでも問題ないと思って」

「俺はちゃんとした男だ。今は慣れたけど、昔はそれでよくからかわれてたんだよ」

「ゴメンゴメン、でも昔からそう呼んでるから名前の方が呼びにくくて」

「はぁ……全く。それじゃごちそうさま、また来るよ」

「ありがとうございました。おじさんにもよろしくね」

 

名前も久遠ってちょっと女の子っぽいし顔も母親似ということもあってよくからかわれてたんだよな

いじめじゃなかったんだけど、昔っからどうも納得がいってなかったのはあった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

「おう、おかえり……田心屋に行ったな?お土産は?」

「ちゃんとあるよ、これ」

「ありがとな!夕ご飯の後のデザートだなー」

 

こういう所は子供っぽいんだよな

仕事になるとひたむきにまじめになるくせに

それより、聞くことがあったんだった

 

「なぁ父さん」

「ん?なんだ?」

「この街に幽霊とか七不思議とかあったりする?」

「なんだそりゃ、なんか変なものでも見たのか」

「変なものというか……女の子を見たけど浮いてたんだ。それに夢で見たけど何百年前の人だと思ったんだけど」

「お前……見えたのか?」

「その女の子のこと?見たけど」

「そうか……刀の声も聞こえるし、やっぱりお前がか……」

「なんだよ、わかるように説明してくれよ」

 

なんか自分だけ分かってるような言い方して気になるじゃん

それに見えたからなんだって言うんだ?

いくら聞いても答えてくれねーし

ただ一言「近いうちに全部わかる」ってどういうことだよ……

 

けれど俺はその時思ってもいなかった

春祭りで叢雨丸を引き抜いた青年が現れてから、五百年前と今、運命が動き出すなんてな




わかると思いますが最初の夢の部分の──は名前ですが、もちろんいずれわかるようになります

更新は不定期になりますが最後まで書けていけたらいいなと思っています
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。