五百年の約束   作:シバヤ

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第11話

月曜日、今日は学院で少し変わったことがある

そう、レナさんが転入してきたんだ

 

「レナ・リヒテナウアーと申します。気軽にレナって呼んで下さい。子供の頃から日本に憧れていました。夢が叶ってとても嬉しいです。いたらぬところも多々ありましょうが、よろしくお願い致します」

 

初めて会ったときから思ってたんだけど本当に日本語上手だな

ちょっとおかしい所を言ってたこともあったけど、それだけ勉強したんだろう

 

「フフッ」

 

おっ、目が合ったら嬉しそうに笑った

それから小さく手を振ってきたからこっちも振り返してあげた

 

「リヒテナウアーさんは、旅館で働きながら留学をしているそうです。困っていることがあれば、ちゃんと力を貸してあげてくださいね」

「よろしくお願い致します!」

「ここの生活はどう?」

「日本の部屋はタタリが素晴らしく、お世話になる宿にはオンネンも湧いていて、とても素敵で楽しいです」

 

祟りに怨念……畳に温泉か

こりゃ別の意味合いになって酷い訳になってるな

 

「けど、まさか留学生が働く時代になるとはなぁ……」

「これからそういう人も増えるんじゃねーの?外国からの客も増える一方だしよ」

「あ、うちも英語に堪能な人を雇うとか話してたわ、そういえば」

 

今考えると、うちはそういうの無いなぁ

弟子は取らず、引き継ぐのは決まって身内のみ

もちろん継ぐかどうかは本人の意思でいいってことになるけど俺も含め代々断った人はいないって話らしいし

英語に関しては……父さんが気合いで乗り越えてるんだっけ

母さんがいれば翻訳出来るんだけど

 

それにしても、レナさんの性格からか周りとすぐに馴染めそうだな

これならなんの心配もいらないか

 

「はい、質問はそこまで。何か気になることがある場合は、休憩時間にして下さい」

「はーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休憩時間になると、レナさんは常陸さんに駆け寄った

常陸さんのそばには当然巫女姫さまがいて、その三人を囲うように女子たちが集まる

……なんか、将臣が転入してきた時とは違うな

 

「どうした、将臣。レナさんが羨ましいのか?」

「なんでそう思うんだよ」

「だってお前の時と違って、賑やかじゃねーか」

「それは言わないでくれ……俺もそう思ってたんだから」

 

ま、男子と女子とじゃ違うからな

仕方ないもんは仕方ない

 

「ひゃっ!?」「きゃぃっ!?」

 

なんだ?今巫女姫様とレナさんが握手をしようとしたら、何か強いものを感じたんだが……

でもそれも一瞬だけだったが、なんだったんだ?

でもそのあとは普通に握手を交わしたし、静電気か何かか……?

 

「でも、やっぱり外国の人は違うよね……特に凸凹とか」

 

確かに、外国の人なのか、スタイルがいいよな

昔から今の記憶を辿ってもそんなスタイル持ってた人なんて日本にはいないし

と言っても俺や智之様が穂織から出てないから女性をあまり見ないってのもあるが

 

「……おい将臣、視線が釘付けになってるぞ」

「はっ!?そ、そんなことないぞ!?」

「図星だろ、それにお前ペッタンよりもプルンプルンの方が好きだもんな」

「はぁ!?お前何を!てかムラサメちゃんから聞いたな!」

「さぁ?なんの事かな?」

 

そう言ってたのは事実だし今もじっくり見てたんだからそういうことだろ

でもムラサメはチッパイやら新しく言われてまた怒りそうだな

賑やかな女の子のやり取りを聞きつつ、将臣と話してると廉太郎が近づいてきた

 

「……なーんか楽しそうだなぁ。お前、祖父ちゃんに言われてあの子を案内したんだよな?」

「そうだな」

「俺も流れでいたけどな」

「なんで久遠もそこにいたんだよ!?……いいなー。俺が案内したかったなー……祖父ちゃん、なんで俺にいってくれなかったんだ?もし案内させてくれたら、今頃は……」

「お前がそうやって、いつも女の子の尻ばっかり追いかけてるからだってさ。旅館の宿泊客にまで手を出したんだって?かなり怒ってたぞ」

 

あー、そりゃ頼まないわな

というか宿泊客にまで手を出すとか……

なぜ学習をしないんだ……?

 

「あ、やっぱその件、まだ持ち出されてる?」

「この先もずっと忘れてはもらえないと思うぞ?」

「かわいそうだな……お前が悪いけど」

「マジかー……」

「まあ、レナさんならすぐに、友達として普通に仲良くなれると思うぞ?」

「そうだといいんだけどなぁ……」

 

廉太郎は何かとやらかしてるからな

最近来たばっかりの将臣は知らないんだろう

廉太郎がレナさんに視線を向けると、案の定周囲から冷たい視線が返された

 

「やだー、鞍馬君が見てる」

「きっとレナちゃんのこと狙ってるのよ。気を付けて、鞍馬君は女誑しの遊び人だから」

「オンナタラシ?なんですか?」

 

早速、レナさんに変な情報が渡ってしまったな

廉太郎ドンマイ、俺からはそれしか言えん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業が始まり、さっきまでの喧騒はなくなって静かなものだ

正直この静かな空間が心地よくてつい眠くなる

そういや、今は日本史の授業だがレナさんはわかるもんなのか?

いや、むしろ興味を持つものかもな……

 

「おぉー、ふむふむ」

 

なんだ、やっぱりこういうことに興味あるのか

日本に憧れてたんだし、日本についていろいろ調べたいよな、俺も刀とかについてよく調べたし

 

「有地君」

「………」

「有地将臣君?」

「はっ、はいっ」

「調子が悪いんですか?」

「いえ、そういうわけではありません」

「でしたら、授業に集中するように」

「はい、すみません」

 

将臣が注意されるとはな

これも玄十郎さんとの特訓によっての疲れが来てるのかもな

そんなこと考えてるが、俺も正直眠い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、やっと終わったー」

 

すっげー眠いし、ご飯食べたあとなんて本当に辛いからな

でもそれを乗り切ったあとの開放感はたまらない

 

「それではみなさん、オタッシャデー」

 

そっか、まだまだ学ぶことが多いんだな

それでレナさんは急いで帰り支度をしてたわけだ

俺はというとすっごくゆっくり帰り支度をしている

田心屋には行ったばかりだから今日は本を読むか剣の鍛錬か……今祟り神に近いものを感じたぞ!

でも確認するには……そうだ、巫女姫様だ!

耳が生えてればわかるはず!

 

「教室には……いないか」

 

もう帰ってしまったのか?

ならとりあえず今夜山に入ってみるか

祟り神が出てもあの強さなら俺なら勝てるし都牟刈村の力も前よりは増幅してるはず

油断さえしてなければ負けることは無い

と思ってたら、ちょうど巫女姫様が教室に入ってきた

 

「巫女姫様」

「操真君、どうかしましたか?」

「小声で申し訳ありませんが、それが生えてるということは今夜ですか?」

「そういえば……今まで指摘されてませんでしたが、操真君もムラサメと話せますし、見えてたんですね」

「ええ、一応ですが」

「さっきのことなのですが今夜お祓いがあります」

「いつもの時間に向かえばよろしいですね?」

「はい、お願いします」

「わかりました、ならこれで失礼します。また後ほど」

 

何度目かになるお祓い

最初は反対されてたけど、今となっては俺もついて行くことになっている

さて、帰ったら準備しなければな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、俺は巫女姫様たちと共に山の中に入っていた

準備は万全で、いつ都牟刈村を抜けてもいいように周囲に気配を巡らせてる

こう緊張感がある中だというのに……

 

「……ひょわ!?なにか音がしたぁっ!?」

 

これだもんな

子供の頃、とある夜に怖がって俺にしがみついていた頃を思い出す

 

「何を笑っておるのだ!」

「いや、昔のことを思い出してな。あれはいつだったか……怖くて俺にしがみ──」

「何を言っておるのだー!」

「それってムラサメちゃんと久遠の昔話か?気になるな」

「そうか?なら今度話してやろうか」

「恥ずかしいから話すでない!」

 

さっきの緊張感ぶち壊しだな

今回は俺が原因かもしれなかったけどな

 

「祟り神はまだ来そうにないかな?」

「よ、よし、歌でも歌うか!」

「かごめかごめは止めてくれ」

「とおりゃんせ、とおりゃんせ〜、こ〜こはど〜このほそみちじゃ〜」

「なんでそんな昔の歌なんだ?」

「だって吾輩そういう歌しか知らぬのだぁ〜〜〜!」

「怖いなら、叢雨丸に宿っておくか?それなら少しはマシになるだろ?」

「なんと……っ、ご主人……天才であったか」

 

それでいいのかよ……

なんともあっさりした解決方法だな

 

「いや、そんな大層なことは言ってないと思うが……臨戦態勢は整えておいた方がすぐに動けるからな」

「よし。ではしよう、今しよう、すぐしよう」

 

将臣が叢雨丸を抜くとムラサメの姿が消え、叢雨丸にオーラが宿る

そしてすの直ぐに、藪をかき分ける音がした

……近づいてきているな

 

「この音は……来ましたね」

「わかってる。有地さん、操真君、気を引き締めて下さい」

「うん、わかってる」

「俺はいつでも戦えます」

 

都牟刈村を鞘に収め腰にさしたまま、右手は柄を握れるようにする

 

「決して油断はしないように、お願いしますね」

「………」

 

心を落ち着け、いつでも動けるように

けれど今回は、少しだけ確かめたいことがある

たった少しの期間だけれど将臣がどれだけ強くなったかだ

将臣がそれだけの力を手にすれば、連携をとりこれからのお祓いがより早く済み、怪我人も出る前に終わらせれるだろう

 

祟り神が現れ、そいつが将臣に飛びかかる

 

「有地さん!?」

「──逃げてッ!」

 

巫女姫様と常陸さんが叫ぶが、将臣は動かない

思考が停止してやがるのかと思ったが、それは違ったようだ

触手とすれ違うようにして前に飛んだ

玄十郎さんに打ち込まれたのが身体に染み付いて反応したんだな

そのまま勢いを殺さずに、斬りかかる

 

「いやああぁぁぁぁぁぁッ!」

 

ふむ、この成長ぶりなら今後ももっと成長してそうだな

さすが玄十郎さんの特訓だ、レベルが違う

 

『ちゃんと祓えておるから安心しろ。見事だったぞ』

「ああ、ちゃんと身体に叩き込まれてるようだな」

「そ、そうか………………よしっ」

 

成果を実感できて喜んでるようだな

強くなることに喜ぶのは当然だ、俺だってそうだった

 

「さて、戻るとするか……ん?なんだ?」

 

今一瞬声が聞こえたような……でも小さすぎるし、ノイズのようなものだった

でももう聞こえないし、気にすることでもないか

 

「有地さん」

「え?あ、はい、なんでしょう?」

「本当に大丈夫なんですか?どこか怪我は?」

「大丈夫だよ、どこも怪我はしてない」

「それならいいんですが……何してるんですか、もう!あんな風に先走るなんて!」

 

巫女姫様は少し心配し過ぎな気がするが、俺が口を出すことではないか

 

「久遠、今さっき一歩も動いていなかったが、ご主人を試しておったな?」

「その通りだ、でも本当に危なかったらちゃんと俺が斬ってたさ」

「それはわかっておるが……まだ久遠のようにとはいかんのだぞ?」

「わかってるって。でもあの成長ぶりなら文句はない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山を降りた後、少しだけ巫女姫様の家に上がっていた

お祓いをした後の一息みたいなもんだ

 

「お疲れ様でした」

「おつかれ様。それじゃあ俺はもう休むよ」

「ご主人、寝る前にちゃんと湯浴みをして、穢れを洗い流すのだぞ」

「わかってるよ。あの……申し訳ないんだけど」

「構いません、先にお風呂を使っていただいて」

「ありがとう。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ。ふぁ……あああ〜〜……」

「やれやれ、湯殿の中で居眠りせぬように、見せておいてやるか」

 

……なに?ムラサメと一緒だと?

俺も一緒に風呂に入ったことなんてなかったのに……って何を考えてるんだ俺は

 

「それでは芳乃様、ワタシも失礼いたします」

「俺もここで失礼します」

「……あーやーしーい」

「はい?」

「あやしい……というと?」

「茉子の物わかりがよすぎる。それに……二人で怪しい会話までして、まるで通じあってるみたいだった。それに操真君はなんか全部わかってるような顔してたし。なにか私に秘密にしているのことがあるように見えたもん」

 

なんか喋り方が子どもっぽいな

これが巫女姫様の素の姿ってことかな

 

「あは……やはり嫉妬(ジェラシー)ですねぇ?気になっているんですねぇ?」

 

この喋り方に背中がゾクッとする

だって俺がいつもいじられてる時の喋り方にそっくりだったからな……

 

「だからそういうのじゃないってば!違う、違うけど……気にはなる。有地さんのことで何か知ってるんでしょう?」

「いえ、本当に知りませんよ。ですが、操真君はご存知なのでしょう?」

「やはり常陸さんにはバレてましたか。その通りですよ」

「それってどんなことですか?」

「俺の口からは言っては行けない気がするので、知りたいのならば明日早起きをしてみてください」

「……早起き?」

 

言っちゃあ行けない気はするけど、見ちゃあダメって言われてないからな

それにそろそろ知ってもらってもいいだろう

 

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