五百年の約束   作:シバヤ

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第12話

今日は遅刻せずに学院に着きそうだな

トレーニングして、家に戻ってから父さんの仕事を見て、朝ごはんを食べてとしてたらギリギリになることが多いからな

というか技量を盗み見るのに時間がかかりすぎてるんだが

でも今日は携帯のアラームをかけたからその時間で行動できたから少し余裕が出来たんだ

というかなんで初めからこうしなかったんだよ俺は

ん?前に馴染みがある四人が何やら話してるぞ

 

「おはようございます。みんなして何を話してるんです?」

「おお、ちょうど良いときに来おったな久遠。この欠片から何か聞けんか?」

「欠片?」

「これなんだけど」

 

そう言って将臣が持ってる欠片を見せてもらった

目をつぶり欠片に意識を向ける

……ダメだ、小さすぎるのか声というよりノイズにしか聞けない

でもこの感覚……そうだ、将臣とレナさんに少し似てる気が……?

 

「‪操真君‬、何かわかりましたか?」

「すみません、こう小さすぎるとノイズにしか聞こえなくて……でも将臣の持ってる気配に似ているものを感じたんですよね」

「それってさっきムラサメ様も仰ってましたね」

「そうなのか?」

「うむ、それにお祓いをした後に拾ったらしくてな。何か祟り神が関係しておるかもしれんと思って、駒川の者に預けるのが良いと話しておったのだ」

 

駒川……確かみづはさんの家は元は陰陽師だったなんて昔の資料に載ってたのを見たことがある

それに今は穢れや呪詛にも調べてるんだっけ

 

「それで、今からみづはさんの所に行くのか?」

「ああ、呪詛に関係があるとしたら一刻も早く動いておきたいからな」

「そうか、なら俺もついていく。俺も気になるしな」

「わかった。それじゃあ行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは確かに気になるね……ちょっといい?」

 

みづはさんが欠片を指でつまみ、光に透かしながら様々な角度から観察をする

こうしてみると、なんの変化もないただの欠片にしか見えないが……もうちょっと大きければ何かしら聞き取れたかもしれないが

 

「見た目は……水晶のように見えるね。特に変わった点は見当たらないけど。この欠片に対して、有地君は何か感じたりする?」

「感じるって言うほどじゃないんですが……気になります」

「具体的には?」

「ずっと眺めていたくなるような感じがして、手元に置いておきたい気分になります」

「芳乃様と常陸さん、それに操真君は?」

「ワタシは……なにも。小さいですけど綺麗だと思います。そんな感想ぐらいしか……」

「私も特には……」

「詳しいことはよくわかりませんが、将臣と似た気配を感じました。ただその欠片が小さいせいか微々たるものでなんとも……」

 

こいつが完成されたものなら声も聞けるだろうし、将臣との関わりがあるかわかるんだけどな

でも欠片ってことはほかにも落ちてるってことだろ?

お祓いの時に見つけた……山にほかにあるかもしれないってことは少し調べる価値はあるな

 

「そうか……実際に触れてみても、何も変わらない?」

「俺はさっき試してみましたが何も起きませんでした」

 

みづはさんは常陸さんに欠片を渡し、受け取った常陸さんは手の平で転がすように確認してみるが、不思議そうな表情が変わることはなかった

 

「残念ながら、やはりなにも。芳乃様は如何ですか?」

「えーっと……」

 

巫女姫様が、常陸さんの手の平の上に乗った欠片に手を伸ばし、指で掴んだ瞬間──

 

「んきゃっ」

「よ、芳乃様!?どうされました!?」

「なにかありましたか!?」

「い、いえ、すみません。ちょっとビリっとしただけです」

「静電気……でしょうか?ワタシの方は、特に何も感じませんでしたが……」

 

今のはどこかで……

そうか!レナさんと握手をした時もこんな感じだった!

でも材料が足りなすぎる……何かを判断することはまだできない

巫女姫様も次は普通に摘むことができてる

あれは一回だけなのか……?

 

「祟り神の影響を受けた欠片ならば、耳が生えるやもと思ったが……反応なしか」

「祟り神とは関係がないんでしょうか?」

「もしくは、反応しない程度の弱い関係だった、という可能性だな」

「意思があれば木とかでも声が聞けるんだがな、ノイズにしか聞こえないということはその考えもあるだろう」

「……もしかしてムラサメ様?なんて仰ってる?」

 

そういやムラサメは普通の人には見えないんだっけ

 

「耳が生えないので、祟り神とは関係ないか、反応しない程度の物か、どっちかだろうって」

「そう……本当に何もありませんか?どんな些細なことでも構いません。調べるのはこれからです。気のせいかも、なんて気にせず、何でも言っておいて欲しいんですが」

「そうですね、強いてあげるのなら……なんだか安心できるかもしれません。安堵……というと大げさになるので、そこまでではないんですが……」

「安心……」

「ワタシの方は、本当に何も感じません。芳乃様の気持ちは、有地さんが感じたものと……少し似ているかもしれませんね」

「俺は先ほども言った通りです。それがもう少し大きければ何か違うかもしれませんが」

「とにかくこれは、私の方で預からせてもらって構わないね?」

「もちろん。そのために持ってきたんですから」

 

一番知識があるみづはさんに預けるのが今はいいだろう

それによって俺たちではわからなかったこともわかるかもしれない

 

「ただ……申し訳ないが、すぐには結論は出ないだろうね。医者の仕事を放り出すわけにはいかない。少し調べる時間が欲しい」

「はい、それはもちろんです」

「それじゃあ、まずは普通の鉱石かどうかも調べて……。拾ったとき、落ちていたのはこれだけ?他には気になるものはなかった?」

「え?あー……どうでしょう?なんとなく拾っただけですから……」

「場所は覚えてる?」

「大まかには。でも、細かい場所となるとちょっと……、何かきになることが?」

「これと同様の物が他にもあるのか?あるなら沢山?これが欠片なら、欠け落ちた元がある?疑問は色々とある。せめてその付近だけでも調べてみた方がいいかと思ってね」

 

場所となると俺もあまりは覚えてないな

なんにしろ田舎の山だ、似てる箇所もあるし

 

「恐らくですが、これは元があると思います。この欠片が一つしかなく、完成されてるものなら声が聞けるはずです。しかしそれがノイズで聞き取れないってことはこれが何かの一部ってことが考えられます。ですが他の欠片がどこにあるかまだはわからないし、この欠片が落ちてた場所も細かいところまでは……」

「ワタシ、覚えてますよ。この前祓った場所ですよね?今から調べてきましょうか?」

「いや、場所さえ教えてもらえれば、折を見て私が──」

「吾輩が行こう」

「ムラサメ様がですか?」

「……?」

「アレだけ小さな欠片だ。場所を特定して見つけるのは、容易ではあるまい。だが吾輩なら、微弱とはいえ、気配を感じることができる」

「待てよ、お前一人にそんなことさせられねーよ。俺も行く」

「心配してくれるのはありがたいが、吾輩は祟り神には狙われん」

「それは、そうだけど……」

 

昔みたいにこいつにばっかり押し付けることしかできないのか……?

俺は……何もできないのかよ……

 

「久遠、それは違うぞ」

「……え?」

「今も昔も、吾輩が適任だと思ってるから言ってるのだ。久遠には久遠が出来ることをすれば良い」

「ムラサメ……」

「だから、吾輩に任せよ」

「……ああ、わかった。でも俺も放課後手伝う。夜にならない時間までなら俺も、何かできるから」

「やれやれ、一度言い出したら止まらぬからな。危ないことはするでないぞ」

 

そう言ってムラサメの姿が消える

 

「……ムラサメ様が何か意見を?」

「いえ、欠片の件で山に向かったところです」

「ワタシの代わりに、調べてきてくださるということで」

「そ、そうなんだ……?全然見えないから。四人とも幽霊と話してるみたいだったよ。ちょっと怖かったよ」

 

ムラサメが見えてない人から見るとそうだよなぁ

俺も街で話す時には気をつけないと

 

「でもムラサメ様が調べてくれるのはありがたい。お言葉に甘えさせてもらおう。私も、資料の洗い直しに専念できるしね」

「……資料……」

「とにかく、この欠片は私が調べておく。そろそろ診療所を開けないと。学生は学生の本文を果たしなさい。もう授業が始まってる時間だよ」

「はい。わかりました」

「いろいろと、お願いします」

「それでは、失礼します」

 

俺たちが出ようとしても、将臣は動こうとしてない

 

「有地さん?」

「ゴメン。先に行っててくれないかな?ちょっと、駒川さんに用事があって。気にしないで。すぐに俺も行くから」

「そうですか……わかりました」

 

俺、巫女姫様、常陸さんはそのまま診療所を出た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

診療所を出てそのまま学院に向かうかと思ったら将臣を待つことに

しかも巫女姫様が言ったんだ

どうやらこの二人は随分と仲が良くなったようだな

それはいい事なんだけど……今は、頭の中でムラサメのことを考えてしまう

クソッ、どうして(おれ)じゃなく、あいつにばっかり何かを押し付けなければならないんだ?

 

「あんまり自分を追い込んではダメですよ?」

「巫女姫様……もしかして顔に出てました?」

「はい、それはもう。先程ムラサメ様が気づかれたのも顔に出てたからですよ」

 

結構表情は出さない方なんだけどな……

こうも心配されるなんて、俺らしくねぇ

 

「でもムラサメ様だって任せてと仰ってたではありませんか。操真君が一番に信じなければいけないんじゃないですか?」

「そう……ですよね。一番付き合いが長い俺が信じてやらないといけないですよね」

「その通りですよ。あっ、有地さんが戻ってきたみたいです」

 

最近の俺はダメダメだな、気がたるんでるというか……

こっからでいい、気を引き締め直さないとな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学院に着き、あっという間に時間はすぎ気がつけばもう昼時

さて、弁当を食べようと思ったとき

 

「あー!しまったー!」

 

と廉太郎が一人騒いでいた

どうせ弁当でも忘れたんだろう

購買にでも行こうと教室を出た時、小春ちゃんとぶつかりそうになった

手には弁当がある

うん、優しい妹だな

 

「そういや、俺もあんな風に弁当を貰ったことがあったっけな」

 

昔のことだ、俺のためにムラサメがわざわざ弁当を鍛冶場まで持ってきてくれたんだっけ

こんな小さなことで思い出すなんてな

 

「クオンも一緒に食べませんか?みんなで食べた方が楽しくて美味しいですよー!」

 

思い出にふけっていると、レナさんが声をかけてきた

周りには巫女姫様、常陸さん、将臣、それに廉太郎と小春ちゃんの兄妹までいる

 

「お誘いは嬉しいですが、いいんですか?」

「もちろんですよ!」

 

他のみんなを見ても、嫌な顔はされてない

こういうのは、とても嬉しいものだ

 

「なら、お言葉に甘えさせていただきます」

 

こう、大勢でご飯を食べるなんて久しぶりだな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はむはむ……んふっ。日本のお弁当は、やっぱり凄い美味しいですね」

「外国のお弁当って、どんな感じなんですか?」

「サンドウィッチやパスタ……カットした野菜や丸ごとのフルーツだったり……あまり彩り豊かとは言えないようなものばかりで、つまらないです」

「そういえば、日本のお弁当を見ると海外の方は驚くという話を聞いたことがあります」

 

女子のみんなが和気あいあいと喋ってるのを聞きつつ、俺は黙々と食べていた

コミュ障……って言うわけじゃないんだけど、昼はあまり人と喋らないで食べてたからな

こういう時どう話せばいいかわからないのだ

 

「クオンのお弁当はクオンの手作りですか?」

「え?ああ、俺のは一応そうですよ。といっても昨日の残り物とか入れて手間は掛けてませんがね」

「クオンは自分で料理をされるのですか?凄いのでありますよ!」

「そんなことは、うちでは父さんと交代で作ってるんです。だから特別上手いとか趣味とかそういう訳じゃないんですよ」

「要さんって料理なさるんですか?それは意外ですね」

「みんなも知っての通り、うちの父さんは大雑把だから、料理もそうなるんですよ」

「それは……わかる気がしますね」

 

元は母さんが外の方に働きに行くってことになったから、話し合って二人で家事をすることになったんだけど、料理がちょっと出来てこう話せるなんてな

複雑だけど、今のうちの環境に感謝しなきゃ

 

その後は、俺もおかずを交換させてもらった

やっぱりシゲさんの料理は美味いな、プロの味は全然違う

それに常陸さんの料理もとっても美味かったな

隣で将臣と廉太郎がゲスい話をしていたのは置いておくとしよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はここまで。それでは皆さん、気をつけて帰ってくださいね」

 

先生の挨拶も終わり、みんな教室から出ていく

 

「さて、山に向かわないと」

 

日没までって時間は限られてる、急いで向かわないと!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走って山まで来たから、まだ時間はある

さて、ムラサメを探さないと

 

「……あっち、かな」

 

昔の感覚と、直感を頼りに山の中に入っていく

そんなしないところで、彼女を見つけた

 

「本当に来おったとはな」

「行くって言ったからな。それで、何か手掛かりは見つかったか?」

「いや、今のところは残念ながらな」

 

やっぱりムラサメでも探すのは難しいか

気配が微弱すぎるからな

 

「そうだ久遠、のいずでも構わんから聞くことは出来んか?」

「確かに何か聞こえれば欠片があることやその方角がわかったりするな。やってみる」

 

目を閉じ、声を聞くのに集中する

その瞬間──

 

「ぐっ、ぐわぁぁぁ!!」

「久遠!?どうしたのだ!?」

 

──人間など、人間などどうなってもよいではありませんか!

──姉君がそこまでするなど、私はっ!私にはもう、理解できません……

 

なんだ……誰かの声が、思いが一気に伝わってくる

 

──姉君をそのようなことに使うなッ!私を生贄に、姉君を憑依にして、呪詛を施そうというのか

──姉君がどれほどの思いで、貴様らを守ってきたと思っておるのだ!

 

姉君って誰のことだ……?憑依って何のことだ……?

 

──たった数百年で、姉君から受けた大恩を忘れ果て……我らにこれほどの仕打ちをするとはッ

──もはや許し難いッ!!決して、決して許してなるものかッ!!!

 

この声は祟り神ってことか?

それに大恩を忘れた……それが原因でこいつが祟り神になってしまったということなのか?

 

──貴方もいつか誰かを好きになったら、きっとわかるわ

 

いまの、とても優しい声なのは一体──

 

「久遠!しっかりするのだ、久遠!」

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

 

さっきまでの声は聞こえない……

 

「お、俺は……どうなっていたんだ……?」

「急に苦しみ出して、気が確かではなかったのだぞ……もう大丈夫なのか?」

「ああ、なんとか……」

 

呼吸が乱れてる……、汗も大量にかいてやがる

精神は無事でも、肉体は危なかったらしい

 

「祟り神の……声を聞いたんだ」

「それは本当か!?」

「恐らくな……姉君、憑依、呪詛、大恩……一体何を示してるんだ?」

「すまぬ、吾輩も呪詛について詳しくはわからないのだ」

「そうか……ぐっ……」

 

頭が痛む……

一気に情報が流れてきて処理しきれてないんだ

 

「久遠よ、今日はもう帰った方が良い。情報が手に入るのはいいが、それで久遠が倒れてしまっては……」

「ああ、すまない。だからそんな顔すんな」

 

目尻に涙を溜め、不安な顔になってるムラサメの頭を撫でてやる

 

「悪いけど今日は帰らせてもらうわ。これくらいなら一日休めば大丈夫なはず」

「うむ、こちらの方は吾輩に任せよ」

「ああ、頼んだぜ」

 

少し足取りが重いけど、その体で家に帰る

回復したら少しでも歴史書でさっきの言葉に繋がるものを探してみないと

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