五百年の約束   作:シバヤ

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第17話

あれから2日経った

将臣は未だ寝てて、巫女姫様と常陸さんは看病のために学院に来てなかった

俺の予想ではもうじき目が覚める思うが、あいつの中に神力が感じられた

体に影響がなくとも、魂に影響が出てしまったら目が覚めない可能性がある

……俺が不甲斐ないばかりに……いや、俺なら目覚めさせる術はある。だからこれっきりにするんだ。大事な友達を傷つかせないためにも

 

「あっ、クオン〜!先程お見舞いに行きますってヨシノに連絡をしたでありますよ」

「ありがとうございます。将臣が目覚めてたらいいんですけど」

「それにしてもいつものクオンに戻りましたね。あの日の夜のクオンは本当に辛そうでしたけど、次の日は少し明るくなってて、今ではちゃんと元どおりになっててよかったであります」

「アハハ、ご心配をおかけしました」

「確かクオンが帰る時、ムラサメちゃんが後を追いかけて行きましたけど、その時に元気になるようなきっかけがあったのですか?」

「あの日の夜……ムラサメと……」

 

あの時の様子を思い浮かべる

確かムラサメから過去の話、思い出を聞いてて──

 

『もう少しだけこうしてていいか?今まで感じれなかった分、お前の温もりを感じてたい』

『吾輩も、もう少しでよいからこうしていたい』

 

「なっ、なんにも!なんにもありませんでした!」

「そ、そうでありますか?それにしてもさっきより顔が赤くなってる気がしますが──」

「大丈夫です!問題ありませんので!それより廉太郎と小春ちゃんを呼んで早く行きましょう!」

 

自分でも顔が赤くなったのがよくわかるから照れ隠しをしてしまった

それにしてもなんだこの感じは?

智之様がムラサメのことが好きだからそれに影響してドキドキしてるかのか?

それとも俺自身が……ダメだ、よくわかんねぇ

今は神社に向かうとするか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神社についた時、境内みムラサメがいるのが見えた

廉太郎と小春ちゃんがいてレナさんに見えないようにしてるからかな。いつもより薄く見えるからきっと姿を消してる状態なんだろうけど、俺には見える

俺の視線に気がついたのか、ムラサメはこっちを見たらニコッと笑顔を見せてくれた

なんだろう、それが可愛らしく見えた

 

「何突っ立ってんだ?」

「あっ、いや、何でもない」

 

変に思われるからな

廉太郎と小春ちゃんの前では見えてないようにしてないと

 

「ヨシノー。来たでありますよー」

 

レナさんが玄関前で巫女姫様の名前を言う

そしたらすぐに玄関が開いた

 

「みなさん、来てくれてありがとうございます。どうぞ上がってください」

『お邪魔します』

 

どうやら今、将臣は部屋で横になってるらしい

将臣の部屋に向かう途中に常陸さんにも声をかけた

あの時気を失っていたもんな……

 

「常陸さん。怪我の具合は──」

「あは、見ての通り大丈夫ですよ」

「……嘘ですね。予想ですがみづはさんになるべく安静にとか言われたんじゃないですか?」

「なぜお分かりに……」

「動きが普段より悪く見えます。本当に微妙にですので気づく人はあまりいないと思いますけどね」

「さすが操真君ですね。それだけでわかっちゃうなんて」

「これでも武術も身につけてますので。俺はまず将臣のところに行きますので怪我が治るまではあまり動いちゃダメですよ?巫女姫様、もし常陸さんが無理をして動こうならご報告を。俺が止めますので」

「わかりました。お願いしますね」

「よ、芳乃様まで……」

 

常陸さんは巫女姫様のこととなると動くだろうし、家事全般もやってる

少なくとも監視が必要だし、その巫女姫様が注意すれば何もしなくなるはず

さて、まず最初の目的の将臣の部屋に辿りいた

 

「お兄ちゃん、起きてる?」

「入るぞー。おっ、なんだちゃんと起きてるじゃないか」

「お兄ちゃん、無理しなくていいんだよ?寝てなくて大丈夫?」

「いや、本当に大丈夫だから」

「マサオミ……よかった、ちゃんと起きたのですね……」

「心配かけてゴメン、レナさん」

「元気そうだな、それは良かった」

「ああ、いろいろとありがとな」

 

内容は言わないが、言いたいことは伝わって来た

ちゃんと起きてるし、すっかり元気そうで本当に良かったよ

 

「にしても、お前こっち来てから怪我してばっかりだな。まさか怪我を治すための診療所で、怪我をするとはな」

「倒れた本棚の下敷きになったって聞いたけど……」

 

流石に祟り神のことを言うわけにはいかない

だからこういう風に誤魔化してるわけだ

もちろんレナさんには大体のことは説明した

将臣はこっちの意図を理解してくれたのか、運悪く巻き込まれたと言ってくれた

さて、お見舞いといったら何かお見舞いの品を渡すだろう

レナさんはプリン、小春ちゃんはビワ、廉太郎は……茶色い紙袋に何かを入れてあるものを渡してた

なんか嫌な笑みを浮かべてるからどうせろくなもんじゃないんだろう

 

「これは俺から」

「ありがとう。これは……勾玉?」

「そうだ。水晶で作ったんだ。効果は心身の浄化、まあわかりやすく言うと幸運を呼び寄せたり、邪気祓いの効能があるパワーストーンだな。首飾りにするかストラップにしたりするかは将臣が自由にしてくれ」

「久遠が作ったのか?やっぱりすごいな」

「そうでもない。むしろ俺はこれぐらいしか出来ることがないからな」

 

物作りは幼い頃からやっているから、これぐらいしか誇れるものがない

ちなみに勾玉は石の種類によって効能が違うんだ

翡翠は平和と象徴。琥珀は困難を克服するとか様々だな

 

「巫女姫様と一緒に暮らすなんて幸運に恵まれたから、その分の不幸が回ってきてプラマイ0になったんじゃないか?」

「廉兄、変な事言わないの」

「でも久遠のお守りがあるからこれからはましになるだろ」

「そうだといいんだけどな。あ、お茶も出さずに」

「お前はじっとしとけ。怪我人はおとなしくしてるのが仕事なんだ」

 

常陸さんといい将臣といい、どうして怪我人はこうも動こうとするんだ

俺は医者じゃないから強くは言えないが、怪我の治りが遅まる方が迷惑になると思うしな

 

「そうですよ、マサオミ。わたしがお茶を淹れてきましょう」

「さすがにそこまでしなくても」

「今日ぐらいは、わたしに頼って欲しいのでありますよ」

「というか……今さらだけど、レナちゃんはここにいて大丈夫なの?いつもは旅館の仕事があるからって、授業が終わったらすぐに帰ってるじゃん?」

「ヘーキですよ。むしろ今日は大旦那さんに言われていますので」

「お祖父ちゃんに?」

「マサオミやマコが怪我をして色々大変でしょうから、今日は家事のお手伝いをするように、と。ということで、何かあればお任せですよ」

「そうなんだ。それで、久遠も大丈夫なんだよな?」

「ああ。むしろ家に帰って修行した方が怒られる」

 

『修行ならいくらでもできる!友達の見舞いに行く方が今は優先しろ!』って言われるからな

なんだかんだで学院生活を大切にしろって言ってくれる人なんだし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「家事のお手伝い、ですか?」

「はい。わたしの今日のお仕事なのです。是非、手伝わせて下さい、お願い致します」

「レナさんと同じく、俺も今日は手伝わせて下さい。」

 

いろいろと考えたけど、朝武には今家事をする人がいない

巫女姫様も安晴様も家事はできないし、家事ができる常陸さんと将臣は怪我で動かすわけにはいかないしな

それにムラサメは物に触れられないからいくら健康といっても何もすることができない

なら俺たちが手伝った方がいい、そう思ったんだ

 

「お客様にそんなことをしていただくわけにはいきません」

「ですが、普段はマコが家事全般をしていると聞きました。そんなマコが怪我をして大変でありましょう?例えば御飯など」

「それは……」

「料理ぐらいでしたら大丈夫ですよ」

「ダメ。なるべく安静にするように言われてるんだから。それに操真君にも言われたでしょ」

 

おお、早速効果ありか

巫女姫様から言ってくだされば常陸さんは無理を言わない

 

「では、わたしが」

「ですが……迷惑をかけるわけにはいきません。今日は私が頑張ります」

「ヨシノは料理ができるのでありますか?」

「基本ぐらいは知っていますとも」

「では巫女姫。料理の『さしすせそ』は言えますか?」

 

砂糖・塩・酢・醤油・味噌

言葉だけわかるって人も多いが、これは調味料を入れる順番だ

砂糖が一番材料に染み込みやすく、塩とか醤油を加えてからだと甘味がつきにくいんだっけ

 

「もっ、もちろん知っていますよ。砂糖・塩・お酢・せ、せ……背脂……?と、ソース?」

「……味付けが濃そうだなぁ」

「『せ』と『そ』は醤油と、ソースだよ」

「お醤油とお味噌」

「あれ?そうだったっけ?」

「小春ちゃんが正解だ」

 

大方予想通りの結果だった

 

「……確かに、正直に言いますとあまり経験はありません。でも、こんな時ぐらい……役に立ちたい……」

「んー!ヨシノは可愛らしい人ですね!ではその気持ちを汲んで、手慣れた人と一緒に作ると良さそうですね」

「俺も一応簡単な物なら作れるけど」

「怪我人の将臣に作らせるわけにはいかないだろ。その手をあまり動かそうとするな」

 

もしそれで悪化したり、もしくは痛みなど急に来てまた怪我したりしたらいつまでたっても同じことの繰り返しになる

 

「しゃーない。ここはいっちょ俺が一肌脱ぎますか」

「お前料理できるの?」

「もちろんよ。今時料理ぐらいできなきゃ女にモテないからな。だよな、久遠」

「一緒にするな。俺は家で家事が当番制になったからできるようになっただけだ」

 

別に女の子にモテたいとかそんな気持ちは一切ない

それに所詮普通の味だ。面白げも何もない

 

「廉兄なんて、旅館の手伝いでお客さんの前に出せないから、厨房に回されてただけでしょう」

「そういうことか」

「何にしろ、基本はシゲさんに仕込まれてるってことだ」

 

シゲさんは志那都荘の板長さん

そのシゲさんに基本を仕込まれてるってことは俺よりも料理できるってことだろ

……なんかちょっと悔しい

 

「私だってお姉ちゃんのところで働くようになってから、料理の練習だってしてるもん。昔よりは、少しぐらいは力になれるよ」

「ほー。じゃあその実力を見せてもらおうか」

「いいよ、それぐらい。あ、でも……やっぱりご迷惑でしょうか?」

「芳乃様、意固地になり過ぎるのも失礼になると思いますが」

「……わかりました。ありがたく、お言葉に甘えさせていただきます」

「はい」

「よし、頑張りますか」

「だけど、あまり多すぎると邪魔になったりするかもしれないな」

「ではわたしは別のお手伝いをしましょう」

 

別の手伝いか……

境内の掃除でもして、その間に安晴様に休むなりしてもらえば効率にも繋がったりするかもな

 

「別って?」

「もちろん、マサオミの寝床のサービスですよ〜。わたし、こう見えても床上手なのですよ、ふっふっふっ」

「床ッ!?」

「上手ッ!?」

「あら……まぁ……」

「……ッッ」

「それだけは女将にも褒められるぐらいですよ」

「女将にも褒められる!?」

「……はぁ……」

 

レナさんのことだ。絶対意味を知らないか間違えて言ってるんだろう

それだからみんな驚いて……いや、常陸さんだけニヤニヤしてる

と、まあ勘違いしただろう

 

「やっぱ海外はすげーんだなー」

「絶対意味違うと思うからな」

「ずっと寝ていたのなら、お布団を干してシーツも変えた方がよいですよね?気持ちよく眠れるように整えますので、お任せください。自信あります」

「あ、ああ……」

「なんだ、床上手ってそういうことか」

「だから言っただろ。意味違うって」

 

だがこの間違い方はとんでもなく危ない

多分ここ以外では言ってなさそうだが、もし他のことも変な意味に聞こえる言い方になってたら大変だな

 

「さ、さあ、そろそろ夕食の準備を始めましょう」

「はい、そうですね」

「もしよろしければ、みなさんも一緒に夕食を食べていきませんか?」

「それなら是非、お言葉に甘えさせていただきます」

 

せっかくのお誘いなんだ。理由がなければ断る必要もない

父さんには後で言って自分で用意するよう言っておくか

俺と同じでレナさんは食べていくことに、もう家で準備されてるだろうということで準備廉太郎と小春ちゃんは断ることになった

さてと、掃除でも何でも始めるとしますか

 

「久遠、少しいいか?話したいことがあるんだ」

「ああ。多分俺が聞きたいことだろうと思うしな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外に出て、家から少し離れた場所に移動する

俺だけではなくレナさんも一緒に呼ばれた

あの日、診療所にいたからな。無関係とはいかなくなったんだろ

 

「話とは……わざわざこんなところでしなければいけないんですか?」

「他の誰かに聞かれたくない話なんだ」

「おー……それはもしや、あのモンスターのことでありますか?確か……タタミ神……」

「祟り神です」

「おお、そうでありました。大変失礼致しました」

「あの日のこと。説明は聞いてるんだね?」

「はい、久遠からお聞きしました。決して他言は致しませんのでご安心ください」

 

大体のことを簡単に説明しておいた

何も知らないよりも多少でも知識があった方がこちらがなぜ隠すかの意味も伝わって、他の人に話さないようにできるからな

 

「危険なことに巻き込んでしまって……本当にゴメン」

「ヘーキですよ。別にイタズラに巻き込まれたわけでもなし、事故です飼い犬に噛まれた程度のことです。気にしていません」

「それ、すごい皮肉に聞こえるんだけど」

「わたしは、マコやマサオミの元気な顔が見られて嬉しいですよ」

 

野良犬のいいまちがえだな

それでも、嬉しいって気持ちは嘘偽りなく感じられる

 

「さて、そろそろ本題に入ってもらっていいか?」

「わかった。じゃあ説明する前に……ムラサメちゃん」

 

将臣が名前を呼ぶと、すぅーっと姿を表す

 

「あわっ!?いたのですか、ビックリしました」

「廉太郎と小春がいる前で呼びかけられるとよくないのでな。姿を消しておったのだ。久遠には見えていたようだがな」

「な、なるほど」

「ああ。若干透明っぽくなってたが姿は見えていた」

「いくつか確証もないことも多いけど、聞いてほしんだ」

「……はい」

「ああ」

 

将臣から判明したことを説明してもらった

まず、診療所に現れた祟り神はあの場から生まれたもの

将臣が山で拾ったあの欠片から出てきたと

みづはさんからは、呪詛で怨みの力を使役する場合、怨みを宿す憑代を用いることがある。おそらくだが、欠片は呪詛に用いられた欠片だと

……やはり仮説はあってたようだな

それに山で聞いた声は、途中から怨みが込められていた

 

そして、欠片同士を近づけさせると一つになる

みづはさんに渡した欠片と、あの夜将臣が倒れた日に将臣が手にしていた欠片を近づけさせたらそうなったらしい

そこから憑代は一つになること。それが憑代の願いと考えに行き着いた

呪いが解けるかどうかはわからないが、一つにすることが今の足止めをくらってる状況を変えれるものになる

憑代を一つにし、手厚く祀りあげ、犬神の魂を慰撫して鎮めることができれば何か変わるかもしれない。ムラサメの考えだ

……犬、神?

智之様が書き記した書物の神の一人ってその犬神のことじゃないのか?

また詳しく調べる必要があるな

とにかく、欠片を集めて憑代を一つにする。これが当面の方針に決まったってことだな

 

「……事情は把握いたしました。とにかく、そのために不思議な石が必要ということですね。そして、わたしもその石に関係があると」

「俺たちはそう考えてる。心当たりはないかな?こういう欠片なんだけど」

「…………」

「心当たりがあるのですね」

「少々お待ち下さい」

 

カバンから小物入れの箱を取り出す

箱の中には、透明ながらも中に白い靄のようなものがある石の欠片

確信できる。同じものだ

 

「おそらく、コレではないかと」

「……そうだったのか」

「何か気づいたことでもあるのか?」

「初めてレナさんにあった時、普通の人からは違う何かを感じたんだ。多分それがこの欠片だったんだろう」

「吾輩も初めて見たときに妙な気配を感じたが、久遠も感じておったのか」

 

ようやくあの時のことがわかった

欠片を持っているかないかで何か別のものを感じ取れたんだ

 

「でも初めてあった時から持ってるってことになるよな。レナさん、コレはどこで?」

「コレはわたしの家に代々受け継がれてきた物なのです」

「受け継がれた……って、例のご先祖から?」

「はい。わたしはお祖父ちゃんから譲ってもらいました。子供の頃からずっと持っていまして、日本に来るときにもお守り代わりに持ってきたのです。お祖父ちゃんは、もう……日本には、来られませんので……」

「レナさん……」

 

その声から、懐かしい。けど悲しくも感じた

それだけ、あの欠片が大切なものだったんだな

受け継がれたということか、相当な思い出だって詰まってるだろう

でも……俺には、俺たちには欠片を集めなければならないんだ

 

「……レナさんにとって大切な物なのに、こんなことを言うのは不躾で、とても失礼だと思う。それでも……どうかお願いします。その欠片を譲ってください」

「俺たちには、成さねばならないことがあるんです……!だから……どうか……」

 

俺と将臣は背筋を伸ばし、頭を下げる

俺の家に伝わる約束を果たすためだけじゃない

朝武家にかかってる呪いを解き、ムラサメを人に戻し、誰もが昔から解放されなければならないんだ

 

「…………」

「お祖父さんとの大切な思い出が詰まってることはわかってるつもりだ。だけど……どうか、お願いします」

「頭ならいくらだって下げます」

「頭を上げて下さい、マサオミ、クオン。構いませんよ」

「条件があるなら何でもしますから」

「おー!何でもしていただけるのですか?それはとてもいいことを聞きましたね」

「俺ができることなら何でも」

 

元より俺の家系は様々なことに手を尽くしてきたんだ

俺ができることなんてたかが知れてるが、それで呪いを解くために一歩進めるなら安いもんだ

 

「……あ、あれ?い、いいの?本当に?」

「大事な物であろう?そんな簡単に決めてしまってよいのか?」

「構いません。だってマサオミやヨシノ、クオンには必要なのでしょう?」

「だ、だって……お祖父さんの形見なんだよね?」

「……え?」

「え?」

「……ん?」

 

この反応……もしかして

 

「お祖父ちゃんは生きておりますが」

「で、でもさっき、もう日本には来れないって」

「元気ではあるのですが、もう高齢ですので膝や腰を悪くして。旅行は少し難しいだけですよ」

「将臣、さっきまでの会話を思い出してみろ。雰囲気だけでそう思っただけで亡くなったとは一言も言ってないぞ」

「…………本当だ」

 

欠片のことに必死になりすぎて勘違いしてしまうとは

よく冷静やらクールなんて言われたことがあるが、本当はこの通り何かに対して集中しすぎてまう

 

「形見ではありませんので、ご安心下さい。心配してくれるのはありがたく思いますが、そう念押ししないで下さい。思わず考えが変わってしまいそうです」

「……すまぬな」

 

ムラサメの言葉に、優しい笑みを浮かべたままゆっくりと首を振る

 

「確かにこれは大切な物です。このような事情でなければ頼まれても譲らなかったと思います。ですがマサオミとクオンは、日本でできた最初の友人です。あの時、マサオミやクオン、マコに案内されて嬉しったです。それにヨシノもいい人で、学院で一緒にお弁当を食べるのも楽しいです。」

「レナさん……」

「毎日がすごく充実していて、満喫しています。みんな大切な友人です」

「…………」

「おー!それからムラサメちゃんも、大切な友人の1人です友人のためであれば、むしろ譲らないと怒られてしまいますよ。それにですね、一つに戻ることが欠片の意思なのでしたら、そうすることが一番いいと思います。ご先祖様も、それを望んでいると信じております。ですので、気にせず受け取ってください」

 

友人のため

それだけで大切にしていた物を譲る決意をした

それは誰にでもできるはずがないからレナさんの行動はとてもすごいことだと思う

きっとご先祖様も誇らしいと思う

 

「ありがとう……レナさん……」

「とはいえ、タダで差し上げるわけではありませんよ」

「何か条件があるのか?」

 

さっきまでの頭を下げてる間に一つだけ反応してた部分があった

それだろうな

 

「……先程の発言ですね」

「はい。お譲りすれば“何でも”してくれるのですよね」

「……うっ……」

「できる範囲ででしたら構いません。何でも言ってください」

「…………お、男に二言はない!」

「おお!ではわたし、日本の伝統芸能が見たいです」

「伝統芸能?歌舞伎?能?」

「ハラキリー♪」

「さすがにそれは……」

 

昔と違って今なら斬ってもまだ生存出来るであろう

でもさすがに痛い所の話じゃないし、昔の人と違って根性もあるわけじゃないしな……

 

「あははー。冗談ですよー本当のお願いはですね……わたしとこれからも友達でいて下さい」

「…………」

「おおっと!わたしは軽い女ではありませんので、ただの友達ではいけません。親友でなければいけませんよ?それが、お譲りする条件です。さあ、どうしますか、マサオミ、クオン?」

「…………」

 

ニヤリと笑うレナさん

俺も苦笑いしてしまい、将臣と顔を合わせる

お互い、答えなくてもわかってるって顔をした

 

「……わかった。その条件、呑むよ」

「はい!ありがとうごさいます」

「ありがとうございます。そして、これからもよろしくお願いしますね」

「はい、よろしくお願い致します。マサオミ、クオン」

 

レナさんから将臣に欠片が移る

欠片が祟り神を生み出したのに、なぜレナさんが持っていても現れなかったのか

それはお守りとして大事にしていたから魂を慰撫してた。だから祟り神が生まれることはなかった

ムラサメの姿が見えるのは、子供の頃から欠片をそばに置いていたから、霊的な並に敏感になってるためだとムラサメが言う

いずれムラサメの姿が見えなくなるかもしれない……だからこの子は人に戻してやるんだ

 

欠片を受け取った将臣が持ってる欠片に近づけさせた

そしたら欠片が勝手に震えだし、眩い光を放った

すると先ほどよりも大きくなって、一つになっていた

 

「こうして欠片が一つになったのか……」

「おー……本当に、一つになりましたね。少しはマサオミとヨシノの役に立てたみたいでよかったです」

「少しどころじゃない。本当に助かったよ、ありがとう、レナさん」

「いえいえ。約束は守ってくださいね」

 

約束……

今もそれを果たすために頑張ったるんだ

他に約束しようと、その全ては果たさないとな

 

「それにしても、友達がまた1人できてよかったな」

「う、うむ。だが……クシャクシャとするでない!」

「あははっ、そう言うな」

 

クシャクシャと頭を撫でる

これは本当に小さい頃に、智之様が元気づけたり、慰めたりするときにやってたやつだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女の子4人がお風呂に入っていて、その楽しそうな声が聞こえる

 

「なんか楽しそうだな」

「覗くんじゃないぞ」

「しないって!それに下手に忍び寄っても常陸さんに気付かれるのがオチだろ」

「それもそうだな」

 

もしも覗きなんて外道な行為をして見つかったら、クナイなんかが四方から飛んできそうだ

 

「そういや久遠、欠片が集まって少し大きくなったけど何か聞こえたりしないか?」

「……貸してくれ」

 

将臣から欠片を受け取る

なんか熱を持ってるように感じられる

俺はその欠片に意識を向け、集中する

 

「……ダメだ、ノイズが聞こえるだけだ」

「そうか……」

「だけどそのノイズが大きくなってたってことはもっと大きくすれば聞こえるってことはわかった」

「これからの目標はハッキリしたんだ。とにかく今は、一つでも多く欠片を集めよう!」

 

何も無く、ガムシャラにやるよりも明確に目標があった方が人は効率よくなれる

少なくとも、今いる人達はそうだからな

 

「そういえば、女の子達は入浴中で俺と久遠の二人しかいないしちょうどいいや。もう1つ気になることがあるんだ」

「ん?なんだ?」

「久遠ってさ……ムラサメちゃんのことが好きなのか?」

「!?げほっげほっ……何を聞くんだお前!」

「久遠はご先祖様の生まれ変わりでムラサメちゃんと幼馴染だってことは聞いた。でも今の久遠はご先祖様じゃなく久遠なんだろ?なのになんか幼馴染とは違う感じがして」

「……それはそうだが」

 

確かに魂は一つになった。少し口が荒っぽくなったりするのはその影響だ

だが性格や人格は俺、操真久遠そのものだ

それに智之様の感情も全て俺に引き継がれたとかそういうのはないはず

だが確かに、俺はムラサメと話してると楽しく感じるし、笑顔も可愛く思ってしまった

 

「俺は、人を好きになったことが、恋をしたことが無いんだ。女の子とはあまり関わりがなく、幼い頃から鍛冶の修行ばっかりしていたからな」

「いかにも鍛冶屋の跡継ぎって感じがする。何かムラサメちゃんを意識するようなことはないのか?」

「そう、だな。……笑顔が可愛いと思ったり、一緒にいるのが楽しかったりとか」

「それってやっぱりそうなんじゃない?」

 

父さんと戦って都牟刈村の力の秘訣に気がついたときは、守るべき大切な人だからと思ってたけど……智之様ではなく、俺自身がムラサメのことを……好きになっていたのか?




ムラサメちゃんのフィギュア予約開始しましたねー
もちろん開始日に予約しました!w
(延期しなければ)6月発売なので楽しみです…!
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