なるべく早めに更新していけるよう頑張ります
では、本編をどうぞ
祟り神との戦いも終わり、ゆっくり寝れる……なんてことはない
たとえいつもの日常に戻ろうが朝はトレーニングの日々だ
「今日ぐらいはもう少し寝てもいいんじゃねぇか?祟り神のことも終わったし今日は学院だってあるんだしよ」
「『最高の武器を作るには最高の強さを持っていなければならない』。ご先祖様の教えだろ?それにいずれ父さんを超えなきゃいけないんだし」
まだ先の話だが俺はこの家の跡を継ぐことになるけど、その時には父さんよりも強くなければならない
だからその時がいつ来てもいいように自分を磨いていなきゃな
「そういうわけだから、行ってきます」
最近は公民館にて玄十郎さんに面倒見てもらってるからかトレーニングしにこっちに来るんだよな
今までは将臣もいたけど祟り神の件は片付いたしもう来ないはず……
「……将臣?」
「おはよう久遠」
「祟り神と戦うことはなくなったのにまだ特訓やるのか?」
「なんか身体を鍛えるのも楽しくなってきてさ」
身体を鍛えるのが楽しい……か
俺はただ当然のように鍛えてたからその気持ちはわからない
けれどこう一緒にトレーニングすんのは楽しいと思ってる
「というかそれで玄十郎さんは感極まってるのか?」
「そうなんだよな……」
「おお、久遠君。すまないな、将臣が本気になってくれて嬉しくてな」
「いえ、俺のことはお気になさらず」
身内のことだから何か前向きになって嬉しいんだろう
こればっかりは家族じゃないとわからない問題か
「久遠君、君にも本当に感謝している」
「俺は……ただ約束を果たすためにこの件に足を踏み入れただけです。だから感謝されるようなことではないですよ」
五百年以上続いている約束のため……そのために俺は戦った
もちろん巫女姫様たちの力になれたのは喜ばしいことでもあるけど
「それでも、ワシは感謝している。ありがとう」
「い、いえ。そんな……そ、それよりそろそろトレーニングしましょう!時間だって限られてますし」
「そうだな、では将臣、久遠君。準備はできてるか?」
「「はいっ!」」
「たまには朝から手合わせをしてみるか!」
玄十郎さんと手合わせか
確かに長い間やったことは無かったな
昔と比べどこまで力がついたか調べるいい機会だ
「えっと、手心を加えてくれても──」
「いいですよ。是非お願いします」
「久遠!?お前何を言って!」
「ではまずは将臣、お前の成長をワシに実感させてくれ!」
「あ、いや、祖父ちゃん、まずは久遠からでも──」
「きえぇぇぇぇぇ!」
「ひぃぃぃぃぃぃっ!?」
「いやー、いい汗かいた」
久しぶりに玄十郎さんと手合わせしたけどやっぱりこの人はかなり強い
でもその分本気を出せるもんだから戦ってて楽しく、気持ちもよかった
言っとくが負けてはいないからな。俺も操真の家の者、簡単に負けてはいけないんだよ
「剣の腕に関しては相変わらず強いのう、久遠は」
「あれ、ムラサメ?いつから見てたんだ?」
「ご主人が打ちのめされてる所からだな」
「ああ、そうか……」
ちょうど悪いタイミングで来ちゃったってことか
かっこ悪いとこ見られたのはドンマイだな
というか俺は玄十郎さん相手に勝ててよかった
……好きになった女の子の前で情けない姿晒す訳にはいかねえだろ
「ところで将臣、鍛錬を続けるという事は、ここに残ることに決めたのか?」
「考えたんだけど……少なくとも卒業するまではいようかなって。転校までしたんだ。今さら焦って戻らなきゃいけない理由もないから」
「そうか」
「じゃあまだ当分はいられるんだな。これからもよろしく頼むぜ」
「で、巫女姫様との結婚の件はどうするつもりか、決めているのか?」
「……あっ」
将臣のやつ、忘れていたな
でもそれも仕方が無いかもな
だって祟り神と戦えるようになってからは呪いを解くまで一直線に進んでたって感じだったし
それに婚約は当の本人たちでしかどうしようもないからな
俺が首を突っ込むことではない
「今日明日中に決めろとは言わぬが……ケジメだけはきっちりつけるようにな」
「……うん」
婚約……結婚かぁ……
俺はどうすればいいんだろうな
「そうして、院を警固する西面武士が新たに創設されたわけですね。北面武士は白河上皇の時、寺社に対抗して創設されたもの。西面武士は後鳥羽上皇の時、倒幕するために創設されたもの、ということになります」
歴史の授業は面白いんだが、その時代どのご先祖様がいたのかってのが気になって逆に集中できないな
その授業も終わり、これから昼の時間だ
「久遠、飯食おうぜ」
「ああ。将臣もこっち来るだろ?」
「……」
「将臣?」
「……」
何か考えてるのか?
こっちの声が一切聞こえなくなってる
「おーい」
「……うーむ」
「おいってば」
「なんだよ?授業中は静かにしろよ」
「周りを見てみろ。授業は終わってるぞ」
「え?」
将臣は周囲を見渡す
どうやら本当に授業が終わってることに気がついてなかったようだな
「どうしたんだよ?授業でわからないところがあった……とかじゃないよな?」
「ちょっとボーっとしてた」
「朝からトレーニングのし過ぎじゃないのか?」
「そういうのじゃないよ。ちょっと考え事をな」
俺と廉太郎は将臣の近くの席に座り、机をくっつけ弁当を広げる
残り物で作ってるが、いつも通りそこそこ美味そうな弁当には仕上がってるな
「もしかして、何か悩んでる?よろしい。何か悩みがあるならば、俺が相談に乗ってやろうではないか」
「あ、遠慮します」
「俺もできる範囲でなら相談に乗ってやるから、話したくなったら話してみてくれ」
「ありがとう。久遠なら頼れるよ」
「なんで俺と久遠で態度が違うんだよ!」
「だってなぁ……」
「自分がやってきたことを見つめ直してみろ」
玄十郎さんの孫とは思えないほどこいつはなにかと色々やってきてる
そりゃ将臣から頼りにはされないさ、良い奴ではあるんだけどな
「とにかくその気になったら言ってくれ。俺は話なら聞いてやるから」
「その時は頼むよ」
「久遠は真面目すぎなんだって。そういや将臣のそれ、確か常陸さんが作ってるんだよな?っていうか巫女姫様の分も」
「ああ」
「巫女姫様って料理できない人?」
「どうかな……できないって言うほどの経験もないんじゃないかな?全部常陸さんがやっちゃうから」
なるほど、それはわかる気がする
最初は俺も経験がなく、料理なんて出来なかった
けれど数をこなしていけばそれなりに作れるようにはなったんだ
「不器用は不器用かもしれないけど……教えればできそうな気もする。裁縫は得意みたいだったから、少なくとも家事は全部壊滅的ってことはないだろう」
「ふーん、意外だな、それこそ常陸さんがやりそうなものなのに」
「何でもかんでもやらせると悪いって思ったんじゃないのか?それは本人に聞かないとわからないけどな」
全部任せっきりなんて俺はゴメンだ
だから今こうして、当番制で何かしらやらないといけないことになってるのはありがたいんだ
「むぐむぐ……ん?」
「どうした?」
「いや、別に……何でもない」
将臣は弁当のおかずを食べて今何か反応したよな
食べて反応ってことはだいたい味が違うとか
でも常陸さんがそんなミスはしないはずだから……巫女姫様がこっちを見ている
なるほど、だいたいは察したぞ
「なんだ?」
「……さあな」
「それぐらいわかってやれよ」
「何のことだ?」
「近いうちに答えがわかるさ」
何せ同じ家に今は住んでるんだからな
常陸さんが隠し通しててもきっといずれバレるだろう
授業が終わり、学院を出ると家に帰り、着物に着替える
俺はそのまま山の中に入っていった
そして川の付近、涼し気な寝っ転がれる所で寝ている
「……これからどうすればいいんだろうな」
祟り神は祓え、呪いは消えたはずだ
だから次はムラサメを人に戻さなければいけないんだが……肝心のその方法がわからない
昔の書物を漁れば方法が見つかるかもしれないが、まだまだ時間がかかりそうだな
「いつの間にか日が暮れそうだな、帰るか」
もう夜になっても祟り神が出ないとはいえ、暗い中の山道は危ないものだ
少しでも陽の光があるうちに帰った方がいいだろう
「こんなところで何をしておるのだ?」
「ムラサメか。昔っからのちょっとした癖だよ」
「癖?……ああ!悩み詰まった時に一人になるあれか!」
今のように悩み詰まった時、1人になる場所に来て状況を整理したりするのが癖なんだ
これは智之様もしていたそうで、そこも共通しているらしい
「それで?悩みはどうなのだ?」
「まだなんとも、少しばかり時間がいるな。ところで1人か?将臣はまだ修行してんのか?」
「いや、今は芳乃と2人でおる」
「巫女姫様と?……ああ、そういうことか」
きっとあの昼の弁当のことを含め、いろいろ話すことがあるんだろう
ということは、この子は空気を読んで離れたってことか
「2人でいるってことは鉢合わせしないように道を選ばないと」
「ふむ、それなら吾輩もついて行こう」
「将臣たちの邪魔になっちまうからな」
このままいい関係になれば正式な婚約者になるんじゃないかな
それならそれで俺はいいと思う
「……なあ、ムラサメ」
「どうしたのだ?」
「祟り神は祓うことができ、朝武家の呪いも解けたと思う……だけど俺はまだやることがある。そのために……時々でいい、こうして俺の隣にいてくれないか?」
「……やはり久遠も、智之と同じで吾輩がいなければ寂しいのだな!ずっとは無理だがこの穂織におるのだ。会いたい時には会いに来ても構わぬぞ」
「ああ、ありがとう」
会いに来ても構わない、その返答が聞けただけでもものすごく嬉しいと思ったんだ
そして、より一層約束を果たさなければならなくなった
この約束は、次の代なんかに回さず俺が果たしてやる