「手首は大丈夫か?」
「気づいてたのか」
一度目からのお祓いから一週間ちょっと
またお祓いがあったんだ
そこで俺は樹の幹を刀で打ってしまい、手首を痛めてしまったんだ
「振り方が悪いからそうなるのだ。斬るのに技術は必要なくても、前後の動きに関してはご主人が何とかするしかない」
「叢雨丸がもっと何でもスパスパ斬れれば、こんなことにならないのに」
あの時、朝武さんの服を斬ったのは、あくまで霊的な影響があるからだ
現実の物に対しては、そこまで切れ味がよくない
「……もしかしてナマクラなのか?」
「違いますぅー、ナマクラじゃないですぅー、叢雨丸の責任にしないで下さーい」
まあ技術のない俺が、スパスパ斬れる物を振り回しちゃ危ないだろうから、その方がいいかもしれないけど
「でも、最初は岩に刺さってただろ?」
「アレは物理的に刺さっていたのとは違う、なにより叢雨丸はこの世ならざるモノを斬るための神刀!現世の切れ味など関係ないのだ!」
「"神刀"っていうより"妖刀"にしか思えないけどな」
「ななっ失礼な!どこが"妖刀"だというのだ!」
「持ち主になったら、変なのに取り憑かれちゃったしなぁ……」
「吾輩は妖怪でも、ましてや幽霊でもない!そのような言い方は誠に遺憾である!」
「じゃあ"幼刀"っていうのはどうだろう?あ、"幼刀"ってピッタリじゃない?」
「屈辱っ!屈辱だぞ、ご主人!」
だってゴリっとしてたしなぁ……
「今、とても不快なことを考えたであろう」
「………」
「目をそらした〜、それに"幼刀"などと久遠の耳に入ってみろ、ご主人、ただじゃすまされないぞ」
「なんで久遠なんだ?」
「久遠は吾輩のことを大切に想ってくれておるからな、それに久遠が怒ったらとんでもなく怖いぞ〜?」
あの時の笑顔を思い出す……
あれからでもわかる、久遠は本気で怒るとめっちゃ怖いやつだ……
うん、久遠の前では幼刀と言わないようにしておこう
言ったら多分殺される
──────────────────────
初めてのお祓いから一週間ちょっとで二度目のお祓いがあった
その結果はスムーズに物事がすすみ、誰も怪我せず無事に終われたんだ
ただ、将臣が刀の振り方がなってないのが不味いんだよな
この先何か考えないと
「おい久遠」
「何?」
「朝からこっちのこと手伝ったり、朝飯やら作るのはいいけどさ、今日から学院だろ?」
「……何故今言う?」
「もうまずい時間だから。学院生活が始まったこっちのことはいいのに」
「それを先に言えよ!本当にまずい!いってきます!」
始業式初日から遅刻なんて洒落になんねぇぞ!?
もう全力は全力で学院まで走らないと!
鵜茅学院
俺が通ってる学院でこの穂織唯一の学院だ
元は武道館で剣術道場が使っていたけど徐々に門下生が減り、今では改装し学院となってるわけだ
ちなみに学年のクラスは一つで、全学年合わせても百人もいない
つまり顔ぶれがずっと同じなんだ
「はぁ……はぁ……着いたぁ……」
「ギリギリだな久遠、また朝の手伝いか?」
「ああ、廉太郎……おはよう」
中条先生はまだ来てない
よし!ギリギリセーフ!
「操真君、おはようございます」
「おはようございます。ギリギリでしたね」
「はぁ……おはようございます。巫女姫様、常陸さん。あれ?将臣は?」
「有地さんは職員室に行ってますよ」
「転校したからいろいろと確認とかあるということですかね、わかりました」
その後すぐに先生と将臣が来た
転校生ということで挨拶をし、次に始業式があった
話だけだから眠くなるし始業式とかって嫌なんだよなぁ
そんな式もあっという間に終わるものだけど
「なんだ将臣、帰らな……そうか、なんか呼ばれてるんだっけ」
「そうなんだよ」
「先生の用件に心当たりはありますか?」
「いやー、全然。転入に関する手続きとかかな?」
「ん?まだ終わってないのか?そういうのって意外に量が多いんだな」
俺は生まれた時からこの街だからな
転校なんてしたことないからそんな書類やら手続きとかしたことない
まっ、ここは気長に待つべきか
「すみません、遅くなりました」
「待たせてしまったようで、申し訳ない」
みづはさん?
もしかして用件って、あの時の怪我の確認とか穢れのことかな?
駒川みづはさん
この街で数少ない医者の一人
前に将臣が山から転がり落ちて怪我をした時に見てくれたのもみづはさんだ
「初めまして、有地将臣君。私は駒川みづは、この街で開業医を営んでる者だ」
「有地さんが山で怪我をしたときに診察してくれたのが、みづはさんです」
「みづはさんはこの学院の嘱託医でもあるんです」
「そうだったんですか、その節はお世話になりました」
確かに巫女姫様はみづはさんを呼んだって言ってたっけ
でもあの時は想像以上に疲労があったからな
うん、仕方ない仕方ない
中条先生は教室を後にする
「みづはさんは、挨拶のためにわざわざこちらに?」
「芳乃様の確認にもね。叢雨丸を抜いたことによる影響は、何かあったりしますか?」
「特には。私自身は、いつもと何も変わりありません」
「良かった、安心しましたよ。それと操真君、君に何かあったりは?」
「俺ですか?いつも通りですけどどうしてですか?」
「君も触れなかったとはいえ祟り神と戦ったのだろう」
「あー、何にも言ってませんでしたっけ。でも都牟刈村を持ってれば穢れは自然と落ちるのでなんの心配もいりません」
あれは叢雨丸よりも強力で負の力を断ち切るからな
担い手である俺は穢れとかそういうのを一切受け付けなくなったんだ
「そうかい、それならばいいんだ。でも何かあったら言うように」
「もちろんですよ、ところで将臣になんの用で?」
「丁度学院に用事があってね。ついでと言ってはなんだけど、有地君の様子を見ておこうと思って」
「俺に確認してたし穢れのことですか」
「それもあるし、頭を打っていたからね。あくまで念のためだよ。それじゃあ有地君、保健室まで一緒に来てくれるかな?」
「はい」
「そんじゃあもう用はないし帰るかな。ムラサメ、将臣のことは頼んだぞ」
「うむ、吾輩がついておるからな。心配はいらんぞ」
「それにしても都牟刈村は凄いんですね。穢れを落とせるなんて」
「叢雨丸よりも強い神力を待ってますからね。時を超えるほどの想いを込めて作っただけのことはありますよ」
本来はムラサメの病気を治すためにと病気を消すために作ったものだからな
こういう効果があるとは思ってもなかったさ
「智之様は凄いお方ですね、普通何百年と想い続けられる人なんていないと思いますよ」
「鍛治だけにしか頭になかった人なので、そんな人に唯一構ってくれたのがあの子だけだったんですよ」
「今のお二人の関係を見ているとわかります」
「………」
「茉子?どうしたの?」
「いえ、ムラサメ様のことをお話する操真君は活き活きしてるな〜と思いまして」
え!?俺そんなだった!?
あんまり意識せずにしてたけど……うわぁ、なんか恥ずかしい!
「そ、そんなことはないですから!あ!俺はこっちの方なので!失礼します!」
「あは、逃げられてしまいましたか」
あの後ダッシュで家に帰っちゃったけど……
はぁー……また変なところ見せちまった……
これでまたからかわれそうな気がするな
ま、なっちまったものは仕方ない、切り替えよう
俺は都牟刈村に意識を集中する
さぁ、声を聞かせてくれ
──汝、我に何を求める
「俺は強くなりたい、だから教えてくれ。お前のことを」
──我の生まれた意味を知ってるか
「ムラサメが流行り病にかかって、その時に病魔でも怨恨でも断ち切れる刀を作ると約束したから」
──左様、それが我の力となる
「相手を想う気持ちってことか」
──今の我は創造者の魂にのみ反応しておる。汝の魂にも反応すればより強く力を得れるだろう
「わかった、それがこの都牟刈村の力を強力に出来るんだな」
集中を切り、意識を戻す
神の力を宿してるためか昔の刀なのか話し方が古風だよな
それにしても想いの力……
今は智之様にしか反応してないって言ったけど、一体どうすればいいんだ?
「何してるんだ?」
「今都牟刈村と話してたんだ。神力の増加の仕方を聴けたんだけど……」
「その顔は自分に何が足りないのか分かってねぇ顔だな。なら公民館行くぞ。久々に手合わせするか」
「そっか、考えるより実戦だよな」
想いがなんなのかわかるかもしれない
それに父さんの強さの秘訣も
公民館について、俺と父さんは竹刀を構える
都牟刈村より軽いからなんか違和感を感じる
「手合わせする前に聞きたいんだけど」
「何だ?」
「父さんは誰かを想って強くなったとかってある?想いの力が神力に繋がるって都牟刈村が言ってたんだけど」
「なんだ、そんな簡単なことか。そりゃお前、千早のことに決まってるだろ」
「母さん?」
千早は俺の母さんの名前だ
穂織の外に出て学校の先生として働いてる
なんで外に行ったかと言うと、この街以外にもいろいろと見たいからって言ってた
「ああ、俺は何にも大切な物はなかったんだけど千早と出会ってから全てが変わったからな。だから好きな人のために強くなるって決めたんだ」
「それが父さんの強くなった理由……」
「おら、そろそろ始めっぞ!」
父さんが竹刀を構える
俺とは違い一撃ごとに力を乗せてくる戦法だ
これは剣道じゃない、手合わせだからお互いの型で思いっきり打ち合う
「はぁっ!」
「っらぁ!」
振り下ろされる一撃を受け止めるが、めちゃくちゃ手が痺れる!
祟り神何かよりももっと強く見える……!
「はぁっ、はぁっ、クソっ!」
「おら、もっとかかってこいよ」
打ち合ってから三十分以上はやり合ってる
お互い本気でやり合ってるっていうのに父さんはなんで息が切れてないんだよ!
「うぉぉ!」
「ふんっ!」
「ちっ!」
どこから攻めても防がれる
……もう一度考えてみるんだ
何が強さの源になるのかを
敵は目の前にいるが、待ってくれてる今しか出来ないんだ
目を閉じて思い浮かべろ
俺が何を守りたいのかを!
『久遠!』『智之!』
「これが、俺の力だぁ!」
「ほう……」
だけど、その一撃も弾き飛ばされてしまった
これでもダメってなるともう何にも……
「さっきの一撃は良かった。何を思い浮かべた」
「……ムラサメ」
「それは智之様がいるからって訳じゃないよな?」
「……ああ、智之様と俺の名前を呼んでるのが思い浮かんだ……」
「……くくっ、あーはっはっは!!結局は俺らの一族はみんな同じってことだな!」
みんな同じ?
ってことはお祖父ちゃんも曾お祖父ちゃんも御先祖様もみんな好きな子のために強くなったってことなのか!?
「腹減ったな、今日は外で食べてくか!」
「さすがに俺も父さんも今日はご飯作る気力ないだろ」
「おう!そういうことだ!久遠は何食べたいんだ?」
「すぐには決まらねーよ、少しは考えさせてくれ」
これで少しは強くなったのかな
それにしても智之様と同じで俺はムラサメのことが……
いや!考えるのはやめだ!そういう気持ちは全部終わってからだ!
もう少しで新年になりますがこれからもなるべく早いペースで書いていくつもりです
今年もあとわずかですがお付き合いお願いします