あてもない旅をして数日、持ってきた食糧もなくなろうとしていた。途中、喧嘩をしている者もいたが、色々ありながら歩いていたら、やっとの事で神社を見つけた。
鳥居を潜り抜け、目の前を見ると、赤い服を来た人間が掃除をしていた。1人で掃ききるのは少し大変そうな大きさだった。
どうしてここまで綺麗にしようとするかは、このときはまだ分からなかった。ただ、後でその重要さが分かるようになるのだ。
「敵対感持ってるようには見えないわね。」
こっちが近付くと、彼女はそう呟いたらしい。なんだか恐ろしい力を持っているように思える。
「手伝って欲しいのね、なんとなく分かるわ。それも、随分遠くから来たみたいね。」
思わず、相手の心を読む能力があるのかと思ってしまったが、それはまた別の人物。彼女はただ勘で言っているだけだった。
皆何も言えなくなる。こちらを攻撃してくるのではないかと考えてしまった。まず、初対面で軽々しく話すなんて殆ど無いからだ。
ただ、霊夢は霊夢らしい反応を見せてきた。それも、何かを試してくるような話し方だった。
その答えも、どこかで見たようなものだった。
「最近、どこかで大喧嘩が起こってるそうなのよ。それを止めることが出来る力があるなら、手伝ってあげるわよ。」
「大喧嘩?あっ……、見たかも。」
瞳が海馬から記憶を取り戻した。筈だが、霊夢がそう簡単な質問をするはずがない。めんどくさくないことなら自分で片付けられるからだ。
では、何が難しいのか。人数が多いわけではなく、大名行列みたいになってるわけでもない。霊夢が入れないのには、その喧嘩の内容にあった。
この喧嘩は数日前のある新聞で、博麗神社vs守矢神社、オススメはどっちだ~!という記事が書かれていた事から始まったようだ。実際に皆で新聞を読んだ。
あまりにもデタラメが多いような気がしたが、まぁそこには触れないでおこうとした。
ただ、これを出されても、守矢神社って何ぞや?って思ってしまう。霊夢に聞いてみたものの、それも自分で見つけるのって言われた。
何だか話していると疲れるな~って思い、すぐに探しにいった。いや、途中で見つけた喧嘩が勃発していた所へ行けば良いのだと考えた。
それから数十分、あてもなく歩いた時とは違い、少しは道が分かるから楽になった。しかし、喧嘩している者はだれもいない。
近くの人に聞いてみると……。
「そういえば、昨日はちょうどこの辺りをうろちょろしてたなー。やっぱり博麗神社の方が楽勝だよ。」
「では、その喧嘩はどこに?」
「ここから200メートル守矢神社、あっちの方角に進んだかなー?そろそろ守矢が崩れそうなんだ。」
そう言われたので、言われた通り守矢神社方面に進んでいった。50メートル、100メートル、150メートルと進むごとに、何やら声が聞こえてくるようになった。
それから、200メートル程進んだ辺りに、喧嘩をしている大きな群れがあった。中には傷を負ってまで戦うもの、既に倒れてしまったものもいた。
博麗神社からここまで来るまでの時間だけで場所を移動させていく。つまり、とても見つけにくいのだ。それが1つめの難しいところだった。
では、2つめはなんなのかというと、とても簡単である。そう、この喧嘩を止めることだった。
現在博麗神社側には10人程、守矢神社側には3人程人がいる。明らかに守矢神社が劣勢でこうボーッとしている間にも場所は変わっていく。
この喧嘩を止めるなんて無理だ。心のなかで皆がそう思った。だって、話しかける隙さえ見せないほどハイレベルな戦いなのだから。
どんな手段を使っても何とかして自分の意見を押し通すとはまさしくこの事なのだろう。
いよいよ、勇気を振り絞って瞳が話しかける。
「あのー、武力はよくな……」
「邪魔よ、これ以上話したらこのナイフで両足切り落とすわよ。」
予想していたとはいえ、これほどまでにきつく言われるなんて思いもしなかった。
実はここに霊夢が加わっていたのだが、その時博麗神社が襲われて、芝生がごちゃごちゃになっていた。ということを周りで見ている人から聞いた。
どうしようもないまま、守矢神社手前まで迫ってしまった。こんな建物、闇雲郷にはない。それどころか、その場所にはこんな感じに大きな神社はないのだ。
賑わっていても、自分達で何とかする。そういう意思があったらしい。
なんか、このまま見届けてたら博麗神社が勝ってウハウハ状態になって許してくれるんじゃないかとか思ってしまった。
結局3時間後には守矢神社まで着いた。目の前には東風谷早苗というものが立っていた。しかし、たくさんの者に四方八方囲まれていて、勝負は一瞬だった。
そう、誰もが思っていた。彼女は一気に逆転した。というか、無理やりさせた。
彼女は奇跡を起こすという世界一使えそうな能力を持っていて、それで何とか対処したのだ。こんな能力あったらなと誰もが思うのだが、こればかりは仕方がないことなのだ。
このままだと霊夢は自分達の助けを承諾してくれない。戦うしかないのだ。
そのまま、早苗の前に行き、自分の名前を言い、早苗に襲いかかる。
「どこの誰かはわからないけど、貴方たちを倒すほど時間はないです。今立ち去れば、見逃してあげますが……って、まぁ立ち去りませんよね。」
早苗も霊夢ほど直感が当たるわけではないが、ある程度の相手の動きは予測していた。ここに来る時点で、喧嘩を止めに来たことを。
「ならば全力で止めるのみ!心符 ファイアウォッチ!」
相手の色が緑だから、なんとなく炎技でいけば効果は抜群だ!急所に当たった!東風谷早苗は倒れた。とか出てくれるかなと思った。
ところがどっこい、当たっていたように見えたが、早苗は無傷だったのだ。
ギリギリで避けられたのだろうと思っていたが、早苗の立ち位置はさっきと全く一緒。動いたようには見えない。
もしかしたら、炎に強くなる特訓をしてきたのかもしれないと思い、即座にカイが連続攻撃を浴びせた。
「心符 ゴーストウォッチ!これで動けなくなってしまえ!」
この攻撃も当たったようにも見えた。しかし、何故か早苗は無傷だ。
「奇跡を使うまでもありませんね~。秘術 グレイソーマタージ!」
瞳はこの攻撃を避けてから作戦をたてようとした。しかし、攻撃を避けることすら出来なかった。信じられないほど早い攻撃で、たまたま上に避けたヨムネス以外倒されてしまった。
攻撃を見て怯んでしまったヨムネスは、逃げるしかなかった。
「うわぁぁぁぁーー!!」
そう叫びながら、仲間を見捨てて走り出した。
「待っ……て、ヨムネ、ス。」
キルネスの掠れた声は、ヨムネスには届かなかった。
「さぁ、私の勝ちですね、襲った来た理由を洗いざらい教えてください。」
瞳が、闇雲郷からここに来たこと、幻想郷に来た理由まで、すべて話した。
「まぁ、一つ命令です。新聞のせいで喧嘩が起こっているので、敵の霊夢を潰してきてください。そうしないと、喧嘩が収まらないので。」
今の言葉は、みんなの心の奥深くに刺さった。もう、何もかもおしまいだ。いっそのこと、全てを捨ててやるなんて思った。でも、他の解決口は1つだけあった。
それから、寺子屋付近にて……。
「さぁー!今日も新聞配ってまーす!」
「射命丸 文、デタラメ新聞を作りやがって……、覚悟!」
「あやや!?ちょまっがぁ!」
自分達が新聞を作った本人を裁くことにより、その後は喧嘩ではなく、復讐へと変わっていった。
それから、博麗神社に着いて、霊夢にこのことを話した。
「分かったわ。手伝って上げる。」
いよいよ、戻って勝負の時、桜を咲かすため、自分の居場所を元通りにするため、別の目的の皆が一つの方向に歩き出した。 終
次回、最終話
「僕らの思い」
2月25日公開。お楽しみに!