では、ゆっくりしていってねー
また落ち着いた奴が目の前に立ちはだかる。
誰だか分からないが、笑顔な部分は少しだけ怖い。そう思っていたら、あっちから名乗ってきた。
「ねぇ、カイ。名前くらいは覚えてるよね?まぁ、隣の方は初対面だから言っとくか……。我はダークネス。死を見る程度の能力。この地で生まれ、この地で育ったものよ。」
カイに取ってはずっと前から知っていることではあったが、技術が発達しているここは良い場所に見えて、実は切ない場所であることは十分理解していた。
ここを支配しているものの名前はそこまで知らされていない。能力を持たないのに知っている者は誰一人いない。闇雲郷は、美しくも謎に道溢れている場所なのである。
色々考えている余裕はないが、ダークネスなんて名前は初めて聞いた。珍しい名前だなって思ったが、敢えて触れはしなかった。どうせ後で知ることになるなんて想像も出来てなかった。
「一瞬で終わらせようかな~。まったり勝負しようかな~。すんごい久々、ってかまともに勝負したことないから楽しんだ方が良いかな?」
そういって、少しだけ距離を取ってから攻撃し始めた。さっきのアユーラの攻撃よりは遅く、なんだか見慣れた感じはしていた。
心の中ではアユーラの方が強いんじゃないのかと思ってしまう。だが、世の中そんなに甘くない。そんな事は大脳の中心で理解していた。
あっちがゆっくりやるなら、嫌でも早く終わらせてやる!そう考え、一気に攻撃する。
「神符 ありきたりの恋心」
一気に敵の心情をを変えようとする。勿論、1発じゃ当たるわけがない。例えそれが野球の球速よりも早いとしても。
敵の攻撃が徐々に激しくなってくる。が、まだアユーラより遅い。意外と余裕なんじゃないかと思ってしまう。
「こっちだって負けてられないんだよ。心符 ファイアウォッチ!」
こんなんじゃ無傷かもしれないが、取り敢えず攻撃してみないと分からない。とはいえ、結果は見てみたらわかるのだが。
カイは恐怖から動けなくなってしまった。自分自身の弱さから足が震えてしまう。弱さ、強さなんてただ一つの感情である。
感情とは、一人一人がもつ心の美しさである。彼女にだって感情は存在する。カイだけでない。瞳や、ダークネスにだって持つ。
ダークネスに弱さは無さそうだ。闇雲郷、夢想郷から見ると闇の世界に住んでいる場所にも優しさだってある。そんなのがなかったら、今頃瞳達は天井からこっそり降り注ぐ矢に刺されていただろう。
逆に言えば、怖さだってある。笑顔でゆっくり倒すと言ってくる者の心の中なんて知りたくもない。
「さぁ、もうめんどくさいから終わらせちゃおうかな。終符 マジカルファイナリスト!」
魔法のように飛び交うなにかが瞳やカイを凝視しているように思える。それが何かは分からない。ただ、見ると鳥肌が立つような感じ。
「発射!」
その声とともに、そのナニカが一定の方向へ動き出す。瞳やカイは一斉に避けだし、一部はこちらも攻撃して消滅させた。しかし、よく見るとダークネスがいない。
不思議に思ったが、ここで瞳があることに気付く。
「逃げろ、カイ!」
大急ぎで6階と5階を繋ぐ階段前までやって来た。そのとき、この建物ごと揺れるような爆発が起きた。
その頃、10階では
「さぁ、ヨムネスよ。いよいよ出番だ。その美しいものを灰に変える力を利用して、あの裏切り者含めて全員消し炭にしなさい。」
「はい。お姉様。」
10階の悪魔も、動き出す。
そんな事を知らずに階段前で操られ続ける2人。操られ続ける。操られたくない。操られないようにしたい。
そんな言葉が、瞳の脳裏をよぎる。
操り人形は、操る人が側にいないと動かない。人形は独立した世界に置いていかれる。つまり、一定距離離れれば、もしかしたら攻撃が当たらないかもしれない。
「よし、これでやるしかない!」
カイにこっそりやることを伝える。ダークネスには聞こえてないようだ。
「瞳、恐ろしい子。その年で恐怖心なんて無いなんて。」
「恐怖に満ち溢れているよ……。でも、自分には夢想郷の仲間、凛。それに、ここで出会った皆の思いだってあるから。恐怖より責任感が表れるのよね。」
そう言いながら、ダークネスから離れる。どこに行ったのか分からないくらい。
ダークネスは探すのをやめて、初期位置に戻る。何かあったら困るからだ。そう思っていた。ダークネスは、自殺行為をしていた。
「一部が、壊れている!?」
さっきナニカを爆発させた衝撃で、丈夫な建物でさえ部分的に破壊してしまったのだ。
その衝撃よりも、ダークネスの方が衝撃をうけ、何も言えなくなっていた。その間、こっそり隠れる2人。何も気付かないダークネス。
「今なら、行ける!心符 グランドウォッチ!」
後ろから、ギリギリの距離を保って攻撃するカイ。それを避けようとするダークネスだが。
「逃げられない!?」
瓦礫に邪魔され動けない。実は、これはこれで瞳が仕組んだ罠である。瞳はこっそり瓦礫の側に誘導したのだ。
カイは目標が消えたら初期位置に戻るということを言われた事がある。もしかしたら、ダークネスもそう言われているのではないかと思い、瞳に伝えたのだ。
初期位置に戻るためのルートは1つ。しかも、そこは瓦礫の山で動きづらくなっている。それを狙ってみたのだ。
「くっ、これは!ぐぬぬぬ。」
動きが鈍くなる。ダークネス自慢のスピードを生かすことが出来なくなってしまった。
「今がチャンス!休符 チェンジハート!」
「くはっ……。」
ダークネスは、暗い瓦礫の中に落ちていった。これでようやく四天王を倒した2人。まぁ、1人はもと四天王なのだが、これで終わりではない。
色々あって、少し疲れた為、その場で休んでいた。
そんな中、10階にも動きがあった。
「カイよ。裏切りやがって。この落とし前、必ずつけてやるからな。」
「お姉様、カイまで消し炭にして良いのですか?」
「ええ、問題ないわ。」
そんなこんなで、妹のヨムネスだけ動き出した。姉は……まだここにいるようだ。
≡≡≡≡≡≡
あれから、20分程たった。そろそろ動かないといけないと考えた2人は、ゆっくり立ち上がり、瓦礫だらけの6階を後にした。ただ、1段1段ゆっくり上っていった。この空間に聞こえるのは、足音だけになった。
7階についた。ここからはカイもどこに階段があるかなんてうろ覚えだ。前と雰囲気が変わってるとまで言い始めた。それでも、ひたすら探さなくてはいけなかった。
「あった……。」
カイの一言を聞き、目の前の階段を見つけると、瞳はホッとした。
なんだか8階から壁の色が違う。それに、匂いも変だった。不気味だと感じながら歩いていると、瞳があるものを見つけた。
「あ、あ、あ、……あれって。」
いきなり見つけてしまった瞳からは汗が止まらなかった。そこに、既に半分理解している瞳にカイがこう伝えた。
「そうだ。この階、処刑場だ。やっと思い出した。私はここで処刑されそうになったんだ。」
カイの嫌な思い出だろう。これ以上なにかを思い出させると危険だと思い、急いで9階への階段を見つけた。9階は、真っ白な世界で、一本道だった。
「あと1階で、ラスボスね。」
「いよいよだな。」
カイも10階にどんなものがいるかは全く覚えてないようだ。
そして、10階に着く。目の前には、大きなドアがある。ここを押せば、いよいよ最後の勝負のようだ。手が震える2人だが、ゆっくりとその扉を押す。キキキキと音がなる。
「ようこそ。闇雲郷の頂点へ。」
また、目の前に誰かが立ちはだかる。 終
unit profile 6 ダークネス
年齢 推定28
能力 死を見る程度の能力
血液型 B
好物 酒