では、ゆっくりしていってねー!
「ようこそ、最終決戦の部屋へ。」
そう言ったキルネス。なんか皆が久々に勝負するから楽しみとか言っているが、勝負とは楽しいものなのか。
瞳が出した結論は、互いの正義をぶつけ合い、負けた方は心を捨て去らなくてはならない残酷なもの。である。
これがどんなに恐ろしいことか、自分の自由を捨てなくてはいけない辛さは計り知れない。ただ、自由を捨てたくない互いが命を燃やしていく。儚く虚しいものだ。
そんなことを考えているうちに、さっきまで瀕死状態だったヨムネスの体はちょっとは回復し、キルネスは力をまして来た。
能力を持つもの、常に己の真理を突き通すべし
カイと勝負しているときに思い出した言葉である。また、戦いの中で邪魔な一文を思い出してしまった。
ただ、一つ疑問に思った。あの本に書かれていることは上だけではなかった。
各郷が1つにまとまるとき、赤い天使が開く
「赤い、天使か。」
それを聞いたカイが、慌ててその先を言われまいと止めてきた。赤い天使が何を意味しているかは分からないが、取り敢えず倒してから考えようとした。
しかし、ここでキルネスがこの建物がぶっ壊れる、まさしくダークネスが起こした行動よりもとんでもない技を出してきた。
「死符 ヤミヨのウタゲ」
キルネスの謎行為。実はキルネスはたくさんの能力を持っていると言われているが、彼女は全ての物を操る程度の能力があるという。
キルネスには謎が多く、昔の彼女は暗いものだった。何故この建物を、この世界を作ったかなんて、闇雲郷に住んでいる人達は誰も知らない。ましてや、彼女が人間抹殺計画を考えているだなんて。
阻止すべき事なんてたくさんあるのに、こういう事態になると大変になる。
そう思っていると、いつの間にかどこか別の世界に飛ばされていた。
「ここはヤミウタという悪夢の空間よ。あなたはここで永遠に動けなくなるの。」
キルネスが訳の分からないことを言ってきた。いつの間にか、瞳の姿は無くなっていた。
「瞳?」
また、一人になってしまった。一人とは、切ないものだ。ただ退屈に溺れる寂しい時。
色々思ってしまったが、そんな楽しいかもしれない妄想は打ち止め、全身から激しい痛みを感じるようになった。
すぐに気付いた瞳。キルネスが一瞬で攻撃したのだ。しかも、さっきのヨムネスの何倍もの早さで。
「ううっ。ぐふっ。早く……逃げなきゃ。」
すると、キルネスが今一番聞きたいことを先に言ってきた。そう、カイについてだ。もちろん、いい話では無かったのだが。
「そういえば、今カイがどうなっているか知りたい?」
「え?」
「カイは拘束しちゃったよ。このまま私の目の前にいるおバカさんを殺して死より恐ろしい地獄のお仕置きタイムに突入させちゃうから。」
瞳にはわかる、この感じ。このままだと、痛みに耐え続け、表裏一体である生と死をさまよいまくった挙げ句、もう戻れないところまで来てしまうんだと。
死ぬまで足掻き続ける。生きるため、そんなのは嫌なことなんて誰もが分かっている筈だった。
でも、そう思っているうちに、また体に激痛が走る。もう、止められない。これまでキルネスがキルしてきた者の数は半端じゃない。そんな事に慣れている彼女にとって、瞳をキルするのは容易に思えた。
「こっちを舐めるのも大概にしてよね。白符 デリートスペル!」
目の前の悪夢の空間が明るくなった。瞳は間一髪の所で技を消したのだ。さっきまで余裕そうだったキルネスの目も僅かな時間だが揺らいだ。
生けるもの、夢を持つ。瞳の夢は、世界を平和にすること。こんなところでやられるわけにはいかない。攻撃はできなくても良い。ただ、相手の能力を知り尽くしたい。
そうしてすべてを知った後、反撃の機会を狙う。そうすることで勝率が上がることは、キルネスとは別の方向で慣れている彼女にとって容易な事だ。
「だったら、もう一回!」
「待ちな。」
そういって現れたのは、気絶中のヨムネスを地面に置いて立ち上がったカイだった。さっきまで拘束したと言っていたが、どうやらヨムネスに任せっぱなしにしたようだ。
「そのくらいの動きなら、ずっと修行してなかったでしょ。」
「う、うるさいうるさいうるさい!私は、ここの支配者なのだ!」
そうして、キルネスがおかしな行動に出ようとしたときだった。どこかから謎の声が聞こえた。不気味で、聞けば聞くほど鳥肌が立つような声だった。
キルネスも何が起こっているのか分からなくなってしまったようだ。
それよりも、この部屋にもおかしな所はあった。今まで、すべての部屋を通っていった2人。ここが一番奥の部屋。気付いただろうか。
そこでヨムネスが起きてしまった。彼女はもう、戦う気力を失ってしまった。
キルネスも戦いどころじゃなくなった。
そのときだった。何者かがやって来て、一瞬で皆を倒してしまった。瞳やカイ、下で疲れて休んでいた四天王も含め、皆が意識を失った。
≡≡≡≡≡≡
それから、6時間が過ぎただろうか。キルネスだけがゆっくり起きた。今なら、数時間前までの望み通り、瞳を殺すことなんて軽くランニングするより簡単なことだった。
でも、瞳の事を起こした。みんな、瀕死の重症だった。起きてもめまいが続くもの、体が重くて立ち上がれない者、足に大怪我を負った者。
あの謎の存在を倒さなければ、またやられてしまう。全員困り果ててしまった。
そんなとき、謎の存在が現れる前、瞳が気になっていたことを聞いてみた。
「そうだ、凛は。」
「そんな人来てないなー。」
確かに、この事件の発端となった手紙にはここだと書いてあった。
もう、助けられそうになかった。諦めかけてしまった。ただ、瞳はここまで来て素直に諦めるわけがない。すると、カイがさっきまで言葉にすることさえ拒否していたあの単語を言った。
「赤い悪魔、来てしまったのか。」
「え?」
≡≡≡≡≡≡
闇雲郷は、一度滅亡の危機に陥ったことがある。事の始まりは見知らぬ誰かがやって来たことにある。
その誰かこそ、赤い悪魔である。証言によると、町中で赤くて怪しい服を着ていたからそう名付けられたらしい。
その人物がここを支配すると言った。チーム闇の闇雲郷はあっという間に全滅させられた。彼はこう言っていたらしい。
「こんなザコい場所なんて、支配する価値もねぇ。霊夢とかいうやつは、お前らの何千倍も強かった。」
そういって去ってしまった。いや、むしろ去っていってくれた。
しばらく意識を失い、次の日、周りを見ると建物は殆ど焼け、もう動かない人で満ちていた。生き残ったのは、たまたま地下で働いていた人か、かくれんぼでバレなさそうな所にいた人だけだった。
皆、足が震えて動けなかった。
皆、寂しくて、辛くて、何も言えなかった。
皆、同じ思いだった。
そんな中、キルネスはいつか倒してやると誓った。しかし、そんなこと容易じゃない。地獄のような修行が始まり、ついには彼女が立てなくなってしまった。無理をし過ぎたのだ。
これ以上強くなれないと医師に宣告された。ショックで死にたいとさえ思った。
それから、毎日あの赤い悪魔を恨み続けた。
≡≡≡≡≡≡
「だから、あの赤い悪魔を倒してください!」
キルネスが泣きながら手伝って欲しいと言った。承認せざるを得ないというか、承認するつもりだった。
「でも、どうすれば。」
カイが悩む。ただ、やるべき事の答えは近くにあった。
「北だ。北に進むんだ。」
皆がきょとんとした。ただ、やるしかなかった。
「取り敢えず、北へ行くよ!赤い悪魔を倒しに!」
また冒険は振り出しに戻る。ことなんてないのだから。 終
unit profile 8 キルネス
年齢 121
能力 すべての物を操る程度の能力
血液型 A
好物 人間の血