鉄華団の遊撃隊長が鎮守府に着任しました   作:鶴(鳳凰)

41 / 41
最近腰と首と肩が痛い

あ、なんか久しぶりにUA見に行ったら10万こえてました。すごいな。


幕間:鈴谷スマホ欲しいんですけど! / 山城の不幸談義


 

鈴谷スマホ欲しいんですけど!

 


 

 

「スマホ欲しい」

「は?」

 

 唐突にそうつぶやいたのは最近重巡洋艦から航巡洋艦へ変わった鈴谷。

 本当に何の脈絡のなかったので、相部屋の利根も思わず聞き返してしまう。

 

「なんじゃ、その『すまほ』? とかいうのは」

「あれ? もしかして利根ちゃん……スマホ知らない……?」

「な、なにおう!? ──も、もちろん知っておるぞ? あれじゃろ? あの~あれじゃ!」

 

 眉間に手を当て、数秒考えるような仕草をした後、立ち上がり口を開ける。

 そして鈴谷の方を指さして大声で言う。

 

「まっきーの持ってるちょこの親戚か何かじゃろ!! つまりはそう! 洋菓子じゃ!!」

 

 

「…………」

 

 数秒の沈黙。

 俗にいう『しらけた』というやつだ。

 自分の失態に気付いたようで、利根の顔がだんだんと紅くなっていく。

 

「…………はッ」

「笑うなぁ! なにを笑っとんじゃあ貴様ぁ!」

 

 それが鈴谷の嘲笑と共に爆発する。

 地団駄を踏む利根。

 顔は茹でたタコのように真っ赤になってしまっている。

 

 

「あははは! ゴメンゴメン! いやー……まさか知らなかったとはねぇ……ふふっ」

「ぐぬぬ……貴様覚えとけよ? ──で、菓子でないなら何なんじゃ? その、すまほとやらは」

 

 落ち着いたようで、座布団に腰を下ろし、ちゃぶ台の上に用意してあった煎餅を食べ始める。

 

「んとねー、あれだよあれ。明石さんとか秋雲ちゃん、あと、大淀さんに団長さんもたまにいじってるタブレットあるじゃん? これくらいの……」

 

 胸の前で大きめの四角を手で作る。

 それを見て利根も理解したような顔をする。

 

「あー、あの光る板じゃな? アレが欲しいのか?」

「そうそう。もうちっとちっちゃいやつだけどねー」

「ほーん」

 

 そんなことどーでもいい、みたいな返事をし、さらにもう一枚の煎餅を食べ始める。

 

「ぶ~……。──あ、ちょっと行ってくる」

「いってら~」

 

 部屋を出て、急ぎ目に廊下を歩いていく鈴谷。

 コツコツコツ、と早めのペースで靴のなる音が聞こえ、だんだんと遠くなっていく。

 

 

 

「──ん? あやつどこへ行ったんじゃ?」

 

 

 


 

「あ、いたいた。提督ぅ~!」

 

 探し求めていた人物(三日月)を見つけ、駆け寄る。

 

「ちーっす」

 

 かなり型崩れしているが、一応敬礼とも取れる挨拶をする。

 普通ならば注意されるであろう行為だが、三日月本人はなんとも思っていないので問題はない。

 そのせいか、他の鎮守府よりも砕けた挨拶をする娘が多いとの事。(マクギリス調べ)

 

「鈴谷? どうしたの?」

 

 昼飯はまだ先だよ。と三日月も返す。

 

「提督! スマホ欲しい! 買っていい!?」

「スマホ? 何それ」

 

 三日月も利根と同じような反応をする。

 

「あれだよあれ! 秋雲ちゃんとか団長さんとかが使ってるタブレット! あれよりちっちゃいやつ!」

「へぇー。いいよ。買っても。お金の管理は大淀に任せてあるから」

「提督も一緒にいこーよ!」

 

 三日月の横に行き、腕を絡ませながら言う。

 鈴谷のが三日月の腕に押し付けられているが、気にする様子はない。

 

 三日月は少し考える。畑の手入れは終わってるし、最近は深海棲艦のしの字もない。

 なら、鈴谷に付き合って街に行くのもいいか。と。

 

「わかった。じゃあ準備してくるから待ってて」

「提督の分も買うんだからちゃんとお金準備してねー!」

「ん。了解」

 

 と言って去っていく三日月。

 その後ろ姿を見ながら鈴谷は一人、呟いた。

 

「──これってデートじゃん」

 

 


 

 

「あー……うん。そうくるか」

 

 待ち合わせしていた場所に来た鈴谷が目撃したのは、いつもの上着を着た三日月と、白を基調としたジャケットに、ズボンもこれまた白いものを着用しているマクギリスの姿だった。

 

「まぁ、そうだよね」

「? ──チョコも街に用事があるんだって。ちょうど良いから連れてきた」

「私は一人で行こうとおもっていたのだが、彼が車で行くと言うのに免許証を持ってないというのでね。運転手を買って出たのさ」

 

 いつものような爽やかな笑顔で自分がここにいる理由を説明していく。

 

「はえぇー…………って提督免許持ってないの!?」

「うん」

 

 それがなに? というかのように返事を返す三日月。

 流石の鈴谷も驚きを隠せなかったようで、口が半開きになっている。

 

「じゃあ今まで無免許!?」

「運転くらい出来る。モビルワーカーとたいして変わんないし」

「──いや、かなり違うのだが…………」

 

 マクギリスもやれやれ、と首を横に振っている。

 

「というわけで、彼の代わりに車を出すことになった。といっても車は鎮守府での移動に使用しているものを借りるのだがな。それに、私には私の用事があるので、君たちの邪魔はしないとも」

 

 そう言って鈴谷の方を見やるマクギリス。

 何のことやらと目を逸らす様子を見てフッ……と笑う。

 

「では、行こうか」

「ん」

「しゅっぱーつ!」

 

 一行は車に乗り込み、街へ向かう。

 

 


 

 30分ほど車に揺られ、鈴谷の目的であるスマホショップに着く。

 車は駐車場に停めマクギリスも自分の目的のために、三日月たちとは反対の方へと歩を進めていった。

 

 ショップに入ってからは早かった。

 鈴谷は欲しい物は決まっていたようで、購入までの流れもスムーズだった。

 家族割が適応されるらしいので三日月も同時にスマホを購入し、現在はマクギリスの合流を二人で待っている。

 

 鈴谷が巧みにスマホを操作するのを見て、三日月も上着のポケットからスマホを取り出す。

 

「すごいんだね。このスマホってやつ」

「今の時代これがあれば何でもできるしねー。ほらこれなんてすごいよ提督!」

 

 三日月もスマホを出し、ぎこちない操作で画面を開く。

 

「へぇ…………。すごいな、鈴谷。何でも知ってる」

「そんなことないよ~! すごいのはコレなんだって!」

 

 自分のスマホを見つめる。

 自分だけのスマホを持てたことが相当うれしいのだろう、顔が緩みきっている。

 

「その様子だと、無事に入手できたようだな」

「あ、チョコ」

「おかえり~。……なにその大荷物」

 

 大きな袋を両手に持つマクギリス。

 中身を窺う三日月と鈴谷。

 

「…………」

「…………」

 

 まず左手にもっている袋。

 右手の袋よりも小さいその袋の中にはハーブやオリーブの種など、家庭菜園用の種や苗が入っていた。

 

「君に触発されてね。私も家庭菜園を営んでみようかと思ったのだが、肝心の種がなかったので買いに来たのだ」

「ふーん。じゃ、こっちは?」

 

 反対側。右手に持っている袋を指す。

 先ほどの袋より大きく、さらには中身がパンパンに詰まっているようにも見える。

 

「これか? これは____」

 

 中に詰まっていたのは、大量の──

 

 

「バエルだ」

 

 

 1/144から1/100、通常カラーから限定クリアカラーまで、様々なバエルのプラモデルが詰まっていた。

 

「…………」

「うわぁ……」

 

 顔をしかめる三日月とドン引きする鈴谷。

 

「駆逐艦の娘たちと約束したのでな。ただ、全部同じバエルだと面白みがないだろう? だから数種類のバエルを購入した。限定版はなかなか見つからなくてな……あちこち探し回ったものだ……」

「別にいいけど、無理やり押し付けたりしないでね」

「分かっているとも。その辺は弁えている」

「ならいいよ。じゃ、帰ろう。鎮守府()に」

 


 

「──うぇへへ」

 

 鎮守府に戻ってからというもの、蕩けきった表情(かお)で買ってもらったスマホを見ている鈴谷。

 数秒ごとに我に返ってはすぐ蕩けた顔に戻ってを繰り返すこと3時間。

 一作業を終えた利根は、自分が作業を始めた時と同じ場所で同じような顔でスマホを眺めている鈴谷に若干引いていた。

 

「流石にやばいの……なんじゃあの顔」

「うぇひひ」

「怖いのぉ……やっぱ光る板よりも菓子のほうがええの。さて、一休みしてまっきーにちょこをせびりに行くとするかの」

 

 手に持っていた工具を置き、マクギリスの元へ向かう利根。長い時間集中して取り組んでいたため甘いものが食べたくなったのだろう。

 今日も鎮守府は平和である。

 


 

 

 

 


 

山城の不幸談義

 


 

 

 彼女は度々『不幸』という言葉を口に出す。それは艦娘となる前身である、戦艦山城の時の様々な記憶を彼女について回っているから──というのも一つの要因だろう。

 

「はぁ……不幸だわ」

 

 昼だというのに窓際で黄昏ている山城。本日の秘書艦であった彼女が唐突につぶやいたその言葉に、三日月は仕事の休憩にデーツを食べていた手を止めた。

 

「何が不幸なの?」

 

 彼女の方へ顔を向け、先ほどつぶやいていた『不幸』という言葉の意味を問いかける。それに対して山城は特に意味はない、というかのように首を横に振った。

 

「──口癖みたいなものです」

「そ。じゃあ今は不幸じゃないの?」

「まぁ、そうですね……間宮さんの甘味が目の前で売切れたり、砲撃が私のもとに集中することは多いですが、そのくらいです」

「大丈夫?」

「はい。──強いて言うならお姉さまがいないことですかね」

「今は戦力足りてるから」

「わかってますよぅ……」

 

 拗ねたように頬を膨らませながら窓の外へと視線を向ける山城。二羽のカモメが羽ばたいていく様子を遠目でいていると、水平線の遥か先で不規則に飛行する白い何かが見えた。

 

「あれは……」

「どうかした?」

「いえ、マクギリスさんの方は仕事が終わったようです」

「そ。じゃあこっちもやらなきゃ」

 

 派手にぐるぐるとバレルロールをしているバエルから目を離し、三日月は仕事に戻る。

 数分ほど無言で作業していると、ふとある事が山城の頭に浮かんだ。

 

 三日月にとっての不幸って何だろう?

 

 一度気になってしまうとなかなか仕事が進まない。

 三日月の方を窺うと、まだつたない字だが、読むことはできる字で書類に自分の名を書き込んでいた。

 作業の邪魔をしてまで聞くようなことではないので、あとに回そうかと思っていた。

 しかし、三日月の方が山城の視線に気づいたようで、書類へ書き込む手を止めて山城に声をかける。

 

「どうしたの?」

「あぁいえ──特には……」

 

 急に声をかけられて言葉を濁すが、いい機会なのでさっき思ったことをそのまま三日月に問いかけた。

 

「提督。提督にとって不幸ってなんですか?」

「不幸?」

「はい」

 

 ペンを置き、少し考える三日月。

 以前はそんなこと考えたこともなかった。

 考える暇がなかった、というのもあるが、大切な仲間──家族と過ごした日々は、たとえ他人からは不幸に見えたとしても、三日月にとって──彼らにとっては、確かに幸せな日々だったのだ。

 

「そうだな……仲間が死んだり……とか?」

 

 あるいは、守り切れなかった自分の無力さだろうか。

 

「確かに不幸ですけど……そういう暗い話はやめません?」

「でも、ほかに思いつかないな……オルガや山城、みんなと一緒にいられるだけで俺はいいから」

「提督……」

 

 目頭が熱くなる。三日月・オーガスが着任する以前は、日頃からぞんざいな扱いを受け、入渠するたびに『欠陥戦艦』だの『入渠ドックが実家』だのと言われ続けてきたため、「一緒にいられるだけでいい」と言われたことがただただ嬉しいかった。

 

「て゛い゛と゛く゛……私゛、がんばりま゛すね゛!」

「え、なんで泣いてんの?」

 

 突然泣き出した山城にオロオロしていると、オルガが雑にドアを開けて入ってきた。

 

「よぉミカァ。仕事進んでっか?……って、なんで山城サンは泣いてんだ?」

「い゛え゛、なん゛でもありません……。提督! 私、頑張りますから!」

 

 山城は顔を拭き、やる気をあらわにして部屋を飛び出していく。

 泣いていたかと思えば、突然頑張ると言い出してどこかへ行ってしまった山城に、オルガは困惑していた。

 

「どうしちまったんだ?」

「さっき不幸について話してた。オルガは?」

「俺か? そりゃあお前やみんなを失っちまうことだろ」

 

 オルガが三日月の前にこぶしを突き出す。

 三日月もこぶしを合わせながら答えた。

 

「だよね」

 

 その後、執務の手伝いを途中で投げ出したことに気が付いた山城が艤装を装備したまま執務室に戻ってきたのはまた別の話。




クロブになってから盾でるの遅くなった気がする。しない?

▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。