ヤミヤミの実で宵闇の妖怪   作:にゃもし。

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19話 悪意

 

 

 テーブルの上に十数枚の写真が乱雑に散らばっている。ルーミアが“月”で撮ったものだ。

 

 月面にいた異様な風体の宇宙海賊と彼らが使っている機械や乗り物。その残骸。次いで月の遺跡内部を写したもの。最後には二枚の壁画。……と、それで全部であり、ルーミアが月で出会った機械仕掛けの小さな兵士が写っているものは一切無い。彼女が意図的に隠しているようだ。

 

 

「この壁画に描かれている人物の羽って、スカイピアの人たちと一緒よね。空島の人たちは月の末裔ってことかしら? 壁画を見るかぎり、彼らは何かしらの理由があって月から降りたみたいだけど……」

 

 

 壁画が写っている写真をまじまじと見つめるロビン。思案に耽っているのか、アゴに手を当てた姿勢で立ち止まっている。

 

 

「俺としてはこの珍妙な格好をした連中が使っている道具に興味があるんだが、残骸とかはねぇのか? 写真だけでも、えらく高度な技術が使われているのがビンビン伝わってくるぜ。こいつらの技術をものにできれば、船を作るときに組み込みてぇんだが……」

 

 

 技術屋として気になるのか、フランキーとアイスバーグが宇宙海賊が使っていた機械や残骸等を熱心に見ていた。途中、自分が言った「船」という言葉で思い出したのか、フランキーはその場にいた麦わらの一味を相手に「船を作らせてくれ」と頼み込み、彼らは……というより船長であるルフィが快く承諾、その後、建物を出ようと扉をくぐるときにルーミアは声をかけた。

 

 

「うちの『ラフィット』と『オーガー』があなたたちをボコったことはもういいのか?」

 

 

 ……と、それに対してフランキーはこう応えた。

 

 

「先にケンカをふっかけたのは俺たちだ。無様に負けたうえにぐちぐち言うようなカッコ悪いマネができるかってんだ」

 

 

 そう捲し立てるように言うと、双子の姉妹を連れて早足で建物を出ていく。喧しい音を立てながら遠ざかっていく彼らの後ろ姿を眺めた後、今度はゾロがルーミアに対して尋ねた。

 

 

「──んで、今回は何を企んでいるんだ? ……また、ロビンを勧誘しに来たのか? ん?」

 

 

 ふてぶてしい態度で問うゾロにサンジが「おい、マリモヘッド。ルーミアちゃんに失礼だろ」と突っかかるも改める素振りは見せない。逆に「てめぇは黙ってろ」と苛立ちが混じった口調で返し、ナミもまたサンジに対して「サンジ君は黙ってて」と言う始末。他の面子も空島であった出来事を思い出したのか表情を引き締める。

 

 

「わはははー。安心しろ。今回は“アイスバーグ”氏に用があって来ただけだ」

 

 

 そう言うと懐から一つの貝殻を取り出し、その貝の殻頂を押す。

 

 

『……ジャヤ島を起点に(ダイアル)の養殖を始めている。そこで育てた“ダイアル”を買い取る気はないか?』

 

 

 貝から流れたのはルーミアの声。

 

 

「ンマー。声を録音し、再生できるのか? ちょっと見せてくれ」

 

 

 地上では物珍しい品物に思わず飛び付くアイスバーグ。麦わらの一味は「何で“ダイアル”を?」と言わんばかりに首をかしげる。

 

 ルーミアはアイスバーグの反応ににんまりと笑うと、能力を行使して足下に闇を展開、次いで身を屈んで闇の中に片手を突っ込み、そこから一抱えほどの風呂敷を取り出す。そして机の上で広げて中身を見せる。そこには数字の焼き印がつけられた“ダイアル”とおぼしき貝が幾つもあった。

 

 

「とりあえず空島で手に入る“ダイアル”を一通り揃えてきた。詳しいことはこの紙に書いてある」

 

 

 言って、紙の束をアイスバーグに手渡す。そこに書かれているのは“ダイアル”の種類とその番号。そして“ダイアル”のそれぞれの特性である。

 

 

「もっとも“ダイアル”の養殖の実験は始めたばかりだから数は揃えてないけどなー。成功したら、こっちから連絡を入れるか、人を送る。……最悪、失敗した場合は空島から仕入れるよ」

 

 

 視線を上に向けつつ、軽く曲げた右腕の人差し指で頭上を指差して空島を示すルーミア。

 

 

「……それじゃあ、用件は済ましたし、お前たちを捕まえに来た海軍と鉢合わせになると面倒だから帰る。じゃあなー」

 

 

 ……と大手を振って、そそくさと立ち去ろうとするが、さらりと言った海軍という言葉にナミがルーミアの肩を掴んで引き止め、彼女の顔を自分の方に向けると至近距離で詰問する。

 

 

「ちょっとルーミア!? 海軍ってどういうこと!?」

 

「海軍の重要拠点の一つ、エニエス・ロビーを落とされたんだ。追っ手が来るのは当然でしょ?」

 

 

 至極当然にきょとんとした表情で答えるルーミアにナミは思わず頭を抱えて蹲る。そんな彼女を憐れんだのか、ルーミアは提案してみる。

 

 

「この街にいる間、匿ってもらったら? 一応、アイスバーグ氏を助けた英雄だし、受け入れてもらえるんじゃないかなー?」

 

「お願いアイスバーグさん!! 海軍がいる間だけでいいから匿って!!!!」

 

「ンマー、助けてもらった手前だし、そういう事情なら……」

 

「ありがとう!! アイスバーグさん!!!!」

 

  

 感極まったのか、涙を流しながら感謝の言葉を述べるナミ。そこへ息を切らせた伝令が建物の中へ入ってきた。

 

 

「アイスバーグさん大変です! 海軍が来ました!!!!」

 

「「 もう来てんのかよ!!!? 」」

 

 

 

 

 ウォーターセブンの外れにある海岸、陸地の上の何もない空中に突然、丸い円の切れ目が入り……扉のように開き、そこからバージェスを先頭に男たちがぞろぞろと出ていき、最後にルーミアが扉をくぐって地面に両足で着地する。

 

 彼らはドアドアの実の能力を使用して仮設本社からここまで、誰にも見つからずに辿り着いたのである。

 

 

「ウィ~~~ハッハッハァー!! ドアドアの実の能力がここまで便利だとは思わなかったぜ!!!!」

 

……ああ、これを手にした俺たちは運がいい……

 

「ホホホホホ、実に隠密向きの能力ですね」

 

「ふむ。確かに海軍が来ているな、それも『海軍の英雄』だ」

 

 

 オーガーの視線の先には、猛犬を模した船首を持つ海軍の船が港に停泊していた。

 

 

「……『ガープ』が来たとなると、そろそろ『バナロ島の決闘』かなー? まー、どちらにしろ次の目的地は『シャボンディ諸島』だ。ドフラミンゴが『人間屋(ヒューマン・ショップ)』を切り捨てるなら、貰うとしようじゃないか? そんでそこの支配人をミョスガルド聖にやってもらうとしよう。わはははー」

 

 

 

 

【バナロ島】

 

 

「俺の仲間は無事なんだろうな……!!!!

 

 

 忌々しげに家屋の屋根に立つ二人の人物を凝視する青年──エース。

 

 

「キシシシシシ! まぬけが本気で来やがった!!」

 

「フッフッフッフ、ありがたい。お前が仲間を大切にするやつで助かったよ」

 

 

 エースを見下す二人は七武海の『ゲッコー・モリア』と『ドンキホーテ・ドフラミンゴ』だった。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

■朝の6時半にできた。

■GWは無理そう。すまん。いちおうガンバる。やれるだけ、やってみる。

■ここまで読んでくれて、ありがとう。

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