ヤミヤミの実で宵闇の妖怪   作:にゃもし。

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22話 オークション会場

  

 

【シャボンディ諸島】

 

 

 その正体は79本もの巨大なマングローブの集合体であり、そのため島特有の磁場が発生しない特殊な島。各々の樹木にはそれぞれ番号が付けられており、区画としても使われている。

 

 そのうちの一つ「41GR」という番号が付けられたマングローブの、一本一本が船よりも巨大な根の一つに一隻の船が横付けにして停泊していた。特徴的な顔をしたライオンの船首を持った船サウザンド・サニー号。麦わらの一味の船である。

 

 その船──サニー号を遠くからこっそりと覗き見している黒服の一団がいる。その中のリーダー格の一人が望遠鏡で甲板にいる麦わらの一味を観察しつつ電伝虫で連絡を取っていた。

 

 

 

 

人間屋(ヒューマンショップ)

 

 

 商品である奴隷を見せるための舞台と、扇状に広がっている観客席。その観客席の一角から、ややぐぐもった不明瞭な男の声が周囲の迷惑なんぞ気に止めずに聞こえてくる。

 

 

『──ボス。「41番GR(グローブ)」にいる『麦わらの一味』に動きがあります。巨大なトビウオに乗った一団が現れました。例の人攫い屋です……』

 

 

 会場内の出入口付近の席を陣取っている正装姿のルーミア一行とミョスガルド。席の中央、ミョスガルドの隣に座っているルーミアの手元には電伝虫の受話器が握られており、そこから41番GRで麦わらの一味を見張っている男の声が流れてくる。

 

 

「ウィーハッハッハァ~~~!! 麦わらの連中がようやくここに来るか!?」

 

……仲間を攫われたのか? 運のない連中だ……

 

「そのおかげで連中は()()に立ち寄らざる得ない状況になった。そういう巡り合わせなのだろう」

 

「ホホホホホ。彼らの中に人魚らしき女性がいましたから攫われたのはその女性かと……」

 

 

 受話器から流れてくる麦わらの一味の情報に黒服姿の船員が好き勝手に言い放ち、周囲にいた人間たちは露骨に怪訝な顔をする。そして、船員の会話から聞き取れたのか、あちこちで顔を見合わせながら「麦わらの一味」「人魚」という言葉を交えたひそひそ話を目にするようになる。

 

 彼らがここ──人間屋(ヒューマンショップ)にやって来たのはオークションが始まるほんの少し前、天竜人であるミョスガルドを先頭にルーミア一行を連れてやって来たのである。

 

 天竜人が少女を伴ってオークション会場に足を踏み入れる。しかも白ひげの娘と言われている少女を、だ。

 

 当然、オークション会場は蜂の巣をつついたような騒ぎが起こった。もっとも当人たちはざわつく会場など尻目にさっさと席に着いたが……

 

 

 

 

──人間屋(ヒューマンショップ)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を起こせば、乗っ取りやすくなると思わない?

 

 

 ここに来る道中、隣を歩くルーミアがそうミョスガルドに尋ねた。

 

 

──人身売買は禁止されている。でも犯罪の()()()の一端にはなってると思うなー。一向に減らない海賊対策としては、ね? それに全面的に禁止したら他の人間が黙ってるわけがない。

 

 

──海賊等の犯罪者。賭場での破産者。どーしてもお金が欲しい場合として自ら奴隷になる場合とか……

 

 

──前者はともかく後者には「()()()()()()()()()()」権利と、奴隷を買った人間があまりにも酷い場合はこっちで買い戻せるようにできれば……

 

 

──ようするに奴隷の地位と環境を向上することが目的だな。

 

 

──人攫いからの売買を禁止にする。それだけでも不幸な人間は減らせる。

 

 

──オーナーが()()()だったら面と向かって文句言うわけにもいかないと思わない?

 

 

 口元に人差し指を当てつつ、そう得意気に語るルーミア。彼女の言わんとしていることに嫌でも察したミョスガルドは少々辟易していた。

 

 

(──だが、不幸に捕まって奴隷にされてしまった無実の人間を減らせるのも事実。しかし、本当にそう上手くいくものなのか……?)

 

 

 麦わらの一味が連れている人魚。その人魚が人攫いに誘拐され、人魚を助けるために麦わらの一味がここにやって来る。……そうルーミアから聞かされたミョスガルド。

 

 

「麦わらの一味がやって来たら、こっちへ来るよう手配してくれ」

 

 

 近くにいた従業員の一人にそう告げるミョスガルド。慌てた従業員が会場内を早歩きで移動して舞台の裏へと消えていく。そして徐々に人が増えていく会場内。その中には同じ天竜人であるロズワードが現れ、ミョスガルドに対して如何にも侮蔑の含んだ視線を投げて……

 

 

「ミョスガルド殿は過去の事故で狂ってしまわれて心配していたが、完治なされたようでなによりだえ」

 

 

 ……と娘と一緒にイヤミを言う場面があったが、ミョスガルドはさして気にせずに時候の挨拶をするのみ。ロズワードもそれ以上のことはせずにさっさとVIP席へと着く。

 

 そして、会場の扉を開いて麦わらの一味であるナミがやけに自信のある表情を浮かべながら現れた。

 

 

 「新世界の怪物」あるいは「黄金帝」と呼ばれている『ギルド・テゾーロ』と一緒に……

 

 




ざわ…( ´・ω・)にゃもし。ざわ…

■突然、過ぎるかな? でも前々から出そうと思っていたんだ。

■朝の5時頃に出来た。

■あとは活動報告に書くよん。

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