31話 船上でのひととき
【タライ海流】
海流という名がつけられているものの、それの正体は変形した巨大な渦潮であり、その渦潮を構成する三角形の角にはそれぞれ政府三大機関である──
海軍本部「マリンフォード」
大監獄「インペルダウン」
司法の島「エニエス・ロビー」
──がある。そして「タライ海流」はこれらの政府三大機関を結ぶ世界政府専用の巨大な海流でもある。
そのうちの一本、海軍本部が置かれてある「マリンフォード」に向かって流れている海流の上をインペルダウンの脱獄囚たちが乗っ取った1隻の海軍の軍艦が浮かんでいた。ルフィたちを乗せた船である。彼らはインペルダウンから脱獄できたことに感涙しており、そこかしこで喜びはしゃいでいた。
そんな彼らを見て同じ船に乗り合わせているクロコダイルが水を差すような発言をする。
「これからマリンフォードの戦争に乗り込むって時に随分とのんきなものだな?」──と……
そのことを思い出したのか、途端に表情を暗くする脱獄囚たち、やがて、そのうち一人がこの軍艦を乗っ取って逃げ出そうと言い放つ。
一応、彼らはルーミアからインペルダウンを脱獄した後はそのままマリンフォードで起きる戦争に参加すること、タライ海流に一度乗れば「正義の門」を使わない限り抜け出すことができないことを伝えられていたのだが、囚人たちにとっては戦争に参戦するよりはマシと考えたようである。そして彼らは自分たちを解放させたバギーを担ぎ出す。
「頼むぜ!! キャプテン・バギー!!」
「指示をくれ!!」
「「 バギー!! バギー!! 」」
そんな一触即発のその空気を収めたのは担ぎ出されたバギー。バギーは彼らに対して海賊としての矜持、誇り、恩義という単語を用いて彼らを説得、場を収めることに成功する。そのバギーに惚れたのか彼を讃える脱獄囚、もっとも当のバギーの内心では……
(──いくらこっちの人数が多いとはいえ、相手は「麦わら」だけじゃなく「元七武海」に「革命軍幹部」もいやがるんだぞ!? 今はいないが、どういうわけか悪魔の実の能力を2個、それも
……なんてことを思っていたりする。さらに、
(海軍と白ひげが争っているときにこいつらをぶつければ多少なりとも混乱するはずだ。そのどさくさに紛れてトンズラすれば……)
その企みを頭の中で想像したのか「ぎゃははは!!」と笑い始めるバギー。そんな彼を「戦争で勝つつもりでいる。海軍など大したことない」と解釈したのか脱獄囚のうち囚人たちはバギーを祈るポーズで尊敬の眼差しで見つめ、他の人間──クロコダイルは呆れた表情で眺め、一部ジンベエなどは囚人たちを纏めるその能力を評価する。
その後もマリンフォードに向けて航海する脱獄囚たち。突如、ルフィたちが乗っている軍艦の横の海域、その海面から巨大な顔が飛び出す。インペルダウンに収監されていた巨人の一人だ。ただし他の巨人と比べてもかなりの巨体で普通の巨人が子供ぐらいの大きさに見えてしまう程の大きさを誇っている。
次いでルフィたちが乗っている軍艦とは別の軍艦が海上に浮上する。どうやら巨人が手に持ってここまで移動していたようだ。その軍艦にいる人間たちのほとんどは「LEVEL-6」に収監されていた囚人たちのようで、そちらに乗っている脱獄囚たちもルフィたち同様に騒いでいる。
ともに脱獄した仲ということもあって彼らに大手を振るルフィ。その彼にイワンコフが注意を促す。奴らの中には「白ひげ」の手によってインペルダウンに送られたことを恨んでいる者もおり、白ひげの首を取るために戦争中に仕掛けてくる可能性があるということを……
「安心しろ!!
イワンコフの忠告が耳に入ったのか「LEVEL-6」の囚人の一人が応える。イワンコフが知っている顔らしく「悪政王」と小さく呟く。
「エースボーイ、海軍だけじゃなくあいつらにも目を光らせる必要があるブルね」
白ひげを助けたいであろうエースに声をかけるイワンコフ。そのイワンコフにエースは頼み込む。
「もしものとき、白ひげとは無関係のあんたにルフィを頼みたい」
そう言うと周りに人がいないことを確認してからエースはイワンコフに語り出す。
「──なるほどね!! エースボーイ!! よく白状してくれたブルね!! いいわよ、もしものときは首に縄を巻き付けてでも麦わらボーイを連れていくブルわ!!!!」
「……ああ、頼むぜ」
エースが密かにイワンコフにお願い事をしている時、軍艦のメインマスト、その根元近くに備え付けられている電伝虫が「プルルルル」と音を出しながら震え、ちょうど近くにいたルフィが反射的に受話器を取った。
『──こちら「海軍本部」……』
通話先は「海軍本部」。彼らは先のインペルダウンにいた艦隊から報告を受けて脱獄囚たちのことを知ったのである。通話相手である海軍の人間は脱獄囚相手に説明でもするかのように語っていく。
その内容は今回の脱獄の主犯は「
その3人の手によってインペルダウンを壊滅させられ「エース」を奪還されたこと、その3人の目的が「白ひげ」と「海軍」の戦争が激化する前に介入すること……
そして最後に白ひげを討伐するまで「正義の門」が開くことはない、彼の大海賊を討ち取った後は次はお前たちだ、と告げると一方的に通信を切った。
海軍のその話を聞いて苦々しい表情をするエース。ルフィに対して巻き込ませてすまないと頭を下げて謝罪をし、今からでも遅くない白ひげと関係のないお前は船を降りろと半ば命令に近い口調で告げるが、ルフィをこれを却下。その後、二人で言い争いを始めてしまう。
そんなとき、言い争うルフィたちが乗っている軍艦の甲板にインペルダウンに最後まで残っていたルーミアたちがふわりと舞い降りる。
「随分と騒がしかったけど、何かあったのかー?」
きょとんとした表情でルーミアは尋ねた。
少女に説明中……
「私が麦わらを助ける義理も義務もない」
事の経緯を聞かされたルーミア。エースはルーミアにルフィを連れて他の島へ逃げるよう頼み込むが彼女はにべもなくそれを断った。
「こっちは
そう答えるルーミアに納得したのかエースはイワンコフに目を向け、視線に気づいたイワンコフが無言で頷く。
船は進み、やがて大きな門が見えてくる。「正義の門」だ。その巨大な門を目しつつ船の舵を取りながらジンベエがルーミアに問う。
「ところでマリンフォードの「正義の門」はどうするつもりなんじゃ? あれは内部からの操作でしか開けんぞ?」
「『マリンフォード』にこっちの仲間が潜り込んでいる」
肩からぶら下げた赤いカバンに手を突っ込んで中から取り出し、手のひらに乗せたのは一匹の電伝虫。その電伝虫から通信が入る。
『──姫ですか? 門を開けますが気をつけてください。3隻の軍艦が待ち構えています。インペルダウンから軍艦で姫を追いかけている者もいるようですよ。数が正しければ5隻とのこと……』
軍艦の存在を聞かされ、甲板にいた人間たちに緊張が走る。さらに次の言葉で驚愕する。
『──それに偽者かと思われますが、処刑台に「エース」がいます……』
( ´・ω・)にゃもし。
*「残像だ。だが今のは残像でも痛かったぞ。
■朝4時にできた。
└ついでに特殊タグで遊ぶべ。
└できた。寝る。おやすみー。
■あとは活動報告に書くべ。