ヤミヤミの実で宵闇の妖怪   作:にゃもし。

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35話 ルーミア参上

 

 

「クロコダイルやジンベエはともかく『暴君』までいないのが妙だな……」

 

 

 視線の先、防波堤の上にいる七武海の面々を見据えながら白ひげは言う。彼の記憶では、クロコダイルは名の知られていない海賊に討伐され、ジンベエは魚人島の恩のために海軍に反発、その後インペルダウンに投獄されたのを白ひげは知っている。そのため二人がこの場にいないことは理解できる。

 

 

 それゆえ、「七武海にして唯一政府の言いなりに動く男」と言われている彼の「暴君」がこの場にいないことに疑問を抱いていた。

 

 

「ふん。……まあ、いい。向こうの戦力が減っているんだ。悲観することはねェ。むしろ、ありがたいぐらいだ」

 

 

 何かあるのでは? ……と勘ぐりつつも白ひげは船員たちに進軍させる。

 

 

 白ひげ海賊団は開戦当初から湾内にとどまって海軍の「大将」や「七武海」と戦っていた。対して傘下の海賊たちは湾内に入って彼らを手助けするようなことはなく、島の外側に配置されている軍艦を相手にしていた。

 

 

 それは白ひげ海賊団が「大将」や「王下七武海」といった海軍の厄介な戦力を相手にするため、そして白ひげは傘下の海賊たちに処刑台にいるエースは偽者であり本物はすでに脱獄していてマリンフォードに向かっていること、エースたちと合流次第、自分たちが殿になって撤退する旨を前もって彼らに通達していた。

 

 

 傘下の海賊たちもまた白ひげ海賊団が撤退するときの負担を少しでも減らすためマリンフォード海域、島の外にある軍艦と戦って数を減らしていた。

 

 

 そして戦争の半ば、傘下の海賊の一人である──海軍に所属している巨人よりも倍以上の巨体を持つ古代巨人種──リトルオーズJr.が湾内入口、左側の防壁を腕力にものを言わせて破壊、さらに「氷の魔女」の異名を持つ女海賊ホワイティベティが大将青キジが凍らせた海を砕氷船で氷を砕きつつ右側の防壁に船ごと突っ込んで破壊、出入口を広げさせる。そしてそのまま氷で身動きが取れない白ひげ海賊団の船を自由にさせるべく湾内に足を踏み入れるが……

 

 

「『暴君くま』だと!? それもいっぱい居やがる!!」

「違う!! 暴君じゃない!! うわさの『パシフィスタ』か!?」

「それだけじゃない!! 大将もいるぞ!!!!」

「青キジだ!! 能力に気をつけろ!!!!」

 

 

 待ち構えてパシフィスタが海賊たちに向けて一斉に口から細い光線を発射、海賊たちの間に着弾したその場所に半円の光を作り出しては爆発、白ひげの救援に向かう海賊たちを駆逐していく。さらに大将青キジが彼らの船を海ごと凍らせて彼らの()を奪う。

 

 

 無論、彼らとて黙ってやられるわけがなく、各自で反撃を行うも、持っている武器がパシフィスタの肌にキズをつけるどころか逆に砕かれ、武器を失い無防備になったところを至近距離から光線を撃たれて返り討ちに遭う。

 

 

 白ひげがいる場所の後方、湾内入口に海軍の増援であるパシフィスタが出現したことにより、戦局に陰りが出始める。白ひげは海軍の増援に対応すべく、()()()()船の近くにいた傘下の海賊の船長の一人を自分の近くに呼び寄せる。

 

 

 大渦蜘蛛海賊団 船長 スクアードを……

 

 

 スクアードは白ひげと二言三言、言葉を交わすと、愛用の身の丈を超す刀を鞘から抜いて抜き身の状態にさせ、白ひげに背を見せるように刀を両手で持って水平に構えた後、切っ先を白ひげに向けて飛びかかった。

 

 

「「…………っ!!!?」」

 

 

 しかし、白ひげの腹に突き刺さるはずだった刀はどこからか飛んできた弾丸により刀身を半分ほどの長さに砕かれて失速、勢いが落ちる。それでもスクアードはところ構わず縦に振りかぶるが、白ひげはそれを空いた左腕で受け止め、スクアードの刀の刃は白ひげの腕の半ばで動きが完全に止まる。

 

 

「──失敗したか…… エースの件といい、脱獄の件といい…… こうも失敗が立て続けに続くとはな……」

 

 

 「ここら辺で優位に立ちたかったんだがな……」白ひげに致命傷を与えるため赤犬サカズキにスクアードと接触するよう使命を与えたセンゴク。彼は作戦を次の段階に移すため湾内に設置されている「包囲壁」を作動させるよう部下に指示を下す。

 

 

 センゴクの目には急いで駆けつけたマルコがスクアードを床に押さえつけて取り押さえる光景が映っていた。

 

 

 

 

 湾内で激しい戦闘が行われている一方でルーミアが乗る軍艦ではラフィットから送られてきた──傘下の海賊であるスクアードが白ひげを刺そうとした情報を聞いて事情を知るルーミアを除いた一同が驚愕する。

 

 

『──姫。傘下の海賊「スクアード」が白ひげを刺そうとしましたが、オーガーが阻止しました。……しかし、湾内に鋼鉄の壁がせり出し、湾頭には例の「パシフィスタ」と「青キジ」がおります……』

 

 

 『それでは合流先に……』と、そこで通信が一度途絶える。

 

 

「うちの船には「ウォーターセブン」や「シャボンディ諸島」から拾ってきた船医と医療王国「ドラム王国」の医者数名が乗っている。頭と心臓さえ守れば多少の無茶はどうにかなる。それこそ内臓を焼かれてもなー?」

 

 

 「安心してやられろ」と腰に手を当てて、木箱の上でふんぞり返るルーミアに「さすがにそれは無理だろ」と囚人服を着た脱獄囚の一人が言うがルーミアはこれを軽く聞き流す。そして仏頂面のクロコダイルに声をかける。

 

 

「うちの親父殿を討ち取るまたとないチャンスだが、そんなことをすれば海軍が喜ぶだけだが、お前はどうする? サー・クロコダイル?」   

 

 

 そう尋ねるルーミアにクロコダイルは面白くなさそうに一瞥した後、マリンフォードの方に顔を向ける。

 

 

「よし!! お前ら腹をくくれ!! これよりマリンフォードに突貫する!!!!」 

 

 

 なぜかバギーが先導して囚人たちを焚き付け、囚人たちが威勢のいい雄叫びを上げる。

 

 

 やがて軍艦は海と氷の境目まで到達すると……突如、船体の前方部分が浮き上がり、そのまま氷の上に乗り上げる。そして引っ張られるように前へ前へと氷を削りながら、時には横倒しになった船を撥ね飛ばしつつ凍った海の上を突き進む。

 

 

 それから程なくしてパシフィスタがいる湾頭にまで軍艦は到達する。

 

 

 当然、こんな目立つ登場の仕方して気づかれないはずがなくパシフィスタを率いている戦桃丸──金太郎を彷彿させる大男がパシフィスタに迎撃を命じる。

 

 

 1隻の軍艦目掛けて一斉に放たれるパシフィスタの光線。その数は優に20は超える。

 

 

 ──が、その全てが軍艦に突き刺さる寸前、上空から落ちてきた極太の落雷に遮られて一つも届かず雷に打ち消された。

 

 

 それを目の当たりにした戦桃丸は電伝虫で誰かに連絡する。

 

 

「さっきの落雷でわかったと思うが、ゴロゴロの実の能力者──ルーミアが来た」……と、

 

 

 軍艦の先端、(へさき)には腕を左右に伸ばした格好のルーミアが立っていた。

 

 

「金太郎に熊はつきものだけど、それはさすがに多すぎるから残り一体になるまで減らしてあげるよ」

 

 

 ルーミアのそれが合図になったのか、軍艦から脱獄囚たちが飛び出す。

 

 




( ´・ω・)にゃもし。

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