4話 白い海と白い雲
【ジャヤ島 東──猿山連合軍 本拠地】
ルーミアにとって「ゴロゴロの実」及び、その能力の入手は必ず達成しておきたい空島での案件の一つである。
その最初の段階、
それ故にジャヤ島にいる間、同じ海賊団のメンバーであるバージェスとドクQには「街で人目に付くような派手な事はするな、特に爆弾」と、あらかじめ言い含め、自身にもなるべく目立つような行動は起こさないように心掛けていた。
……が、それでも親しい人物が理不尽な暴力によって負傷した姿を目の当たりにすると怒りが込み上げてくるようで、空高く立ち昇る炎のように夜の闇よりも濃い闇を体に纏わせて、ベニヤ板に描かれているベラミーのシンボルマークを静かに眺めていた。
「……今のお前が行くと無関係のやつまで巻き込んで街を壊滅しかねん。……ここで大人しくしていろ……」
今にも飛び出さんばかりのルーミアに制止をかけたのは他ならぬモンブラン・クリケットだった。包帯を巻いた痛々しい体でマシラとショウジョウに指示を出してゴーイング・メリー号の修繕と強化に取り掛かる。
クリケットに言われたことも一つの要因になったのだろう、ルーミアは体から放出していた闇を小さく抑え、猿山連合軍の作業を黙って見つめていた。
「 朝までには戻る 」
今まで彼らのやり取りを静観していたルフィが突然そんな言葉を口にしたかと思えば、クリケットが止める間もなく街へと走っていく。遠ざかる彼の後ろ姿を見ながらルーミアはいつの間にかに側にいたナミに尋ねる。
「あいつ一人で大丈夫なのか?」
「ああ見えて強いから平気よ」
「いや、帰りに寄り道しないのかなーって……」
「 サンジ君、急いで後を追っかけて!! 」
「 任せてくださいナミさん!!! 」
言うや否、土煙を激しく上空に巻き上げながら先を行くルフィ以上に全力疾走でルフィの後を追う。
東の空が明るくなった頃、奪われた金塊が納められているであろう風呂敷を背負い、さらに大きな二本の角を持ったカブトムシ──ヘラクレスを誇らしげに掲げながらルフィが戻ってきた。その後ろにはルフィと同じように風呂敷を背負ったサンジもいるが、何故か見るからに疲労困憊した様子だった。
「もう虫は見たくねぇ……」
それだけ言うと切り株のイスに深く腰掛け、項垂れた姿勢でじっと地面を見つめたまま動かなくなる。どうやらルフィの虫取りに無理矢理、付き合わされたようである。精神的にかなり消耗したらしくナミの「ご苦労様」の労いの言葉にもいまいち反応を示さない。
「たとえ何が起きようと!!!
こいつらのために全力を尽くせ!!!」
「「 アイアイサー!!! 」」
ゴーイング・メリー号の修繕と強化が終え、麦わらの一味とともに一緒の船にルーミア一行も乗り込み、出航の準備が整った頃、クリケットは大声で猿山連合軍にそう呼び掛け、彼らもまた応える。その後、ゴーイング・メリー号を含む大小3隻の船はジャヤ島を後にし、空島へ移動するために
【海上──
波間に漂うこと数時間。その甲斐あってか、彼らの下に巨大な積乱雲の塊──積帝雲が夜を引き連れてやって来た。それに呼応したのか、海が荒れ始め、うねり、大きな渦を作り出す。……かと思えば、急におさまり、波が穏やかになる。
突如して巨大な水柱が立ち上がる。船すらも一口で呑み込む程の太さだ。空高く昇るその水柱はあっという間に天にある積帝雲の下部に突き刺さり、麦わらの一味とルーミア達を乗せたゴーイング・メリー号がその水柱に沿って上へ上へと昇っていき…… そのまま積帝雲の中に船ごと突っ込んだ。
そして
【???】
……見渡す限り白い海と白い雲の世界。麦わらの一味とルーミアの一行を乗せた船はそこに辿り着いた。
船が雲海へと突入、雲の中を突き進んでいる間、まともに呼吸ができず息を止めていた彼らはようやく息が吸えると肺に空気を送り込む。
「……猿山連合軍。連中のいる手前じゃあ、遠慮して聞けなかったが、そろそろ白状してもいいんじゃねェのか?」
全員の息が整った頃、親指で刀の鍔を押し出し、いつでも刀が抜ける状態に構えるゾロ。彼が放つ剣呑な雰囲気にバージェスも「お? やる気か?」と前に出る。
「『俺たちは空島を知っています。そこまで案内します』
ウソップの言葉じゃないがそこまで親切だと勘繰りたくもなる。ほいほい付いていって「ワナでした~」じゃあシャレにならねェだろ? 得体の知れない人間はここできっちり敵か味方か、はっきりさせた上で目的を吐かせるべきだ。この船には他にも
ちらっとロビンを一瞥し、ルーミア達三人と対峙するように向き合うゾロ。彼以外のメンバーは──事の成り行きを静かに見守る者、場をどうにかしようと双方を宥める者、ゾロを非難する者、訳が分からずオロオロする者──と、様々な反応を見せる中、彼らを前にしたルーミア達は……
「ウィ~~ッハッハッハ!!! 違いねェなァ!!! 俺だったら海に落とすぜ、こんな怪しい連中は!!
どうする、お嬢? 別にコイツらがいなくても目的は果たせるんだろ?」
「……だが、そうなるとこちらも只では済まなくなる。麦わらの一味とシャンディアの戦士をエネルにぶつけ合わせるべきだろう。最終的な判断は船長に任せるが……」
「わははー、ワイパーが使い物になるかどうか試すって言ってたからなー。あいつの邪魔になると不機嫌になるからここで降りるぞー。それに説明するのがすこぶる面倒だ」
ルーミアの「降りる」の言葉に訝しがる麦わらの一味。彼らの目の前でドクQからリンゴを受け取ったバージェスがリンゴを甲板に叩きつけると煙幕が発生、船が灰色の煙に覆われてしまう。やがて、煙幕が収まった頃にはルーミア達の姿は甲板のどこにもなく……
「ルフィ! アイツら小舟で! しかも速ぇ!! あと何か牛が四角く雲を走ってこっちに来るから大変だ~~~!!!」
双眼鏡を覗いていたチョッパーが指差す方向には誰も漕いでいないのに雲の上を独りでに爆走する小舟。それに乗ったルーミア達の、船から遠ざかっていく後ろ姿と、
「誰か来る!!! 雲の上を走ってくるぞ!!!」
腰みのに四角い仮面という未開の原住民のような出で立ちの男が一人。巨大な筒状の武器──大砲らしき物と盾を手に文字通り雲の上を走ってゴーイング・メリー号に向かってくる姿をサンジが捉えた。
「ルーミアが言っていたゴムゴムの実の能力者はいるか?」
白い雲の海の表面を蹴って船の手すりに器用に着地したかと思えばそんなことを尋ねてくる。尋ねられて半ば反射的にルフィが「俺だけど?」と答えると件の男は言った。
「やつらの試練を受ける前に俺がお前達を試す」
( ´・ω・)にゃもし。
●「なろう」で毎日更新してる奴は化け物か? ……と、思ふ。
●おかしいとこあったら誤字報告お願いします。
●ここから暴走、迷走するかも……